パーソナルカラーケアサービス「irop」を提供する株式会社イロップは、2024年7月11日(木)〜17日(水)の7日間、RAYARD MIYASHITA PARKの「THE [ ] STORE(ザ・ストア)」に期間限定で出店しました。製品の認知向上と顧客接点の創出に向け、THE [ ] STOREをどう活用したのか。そして出店時に得た情報を今後の販売戦略にどう活かしていくのか。同社代表取締役 高橋 洋介氏と加藤 槙子氏にお話をうかがいました。
パーソナライズ診断で最適な製品を提案。100年以上にわたる研究から得たノウハウを活かしたiropとは
ー御社の事業概要について教えてください。
高橋 洋介氏(以下、敬称略):イロップは、ヘアカラーを楽しむ人のためのパーソナルカラーケアサービス「irop」を販売しており、親会社であるホーユー社が100年以上にわたってヘアカラーを研究してきたノウハウを活かして開発したカラーシャンプーやトリートメント、ダメージケアシャンプー・トリートメントなどを展開しています。
プロジェクトとして発足したのは3年ほど前です。ホームケア市場が拡大する中、自宅でのヘアカラー後の髪のケア=アフターカラーケアの提案ができないかと模索していました。その直後に新型コロナウイルス感染症が流行し、ますますホームケア市場が拡大していきました。またヘアカラーについては、ヘアサロンでカラーをした後、次にサロンに行くまでの期間のケア市場が空洞化しているという課題が浮かび上がり、その空洞を埋める製品を提案するためにイロップは立ち上がりました。販売形態についても、ホーユー社の製品は約99%が店頭での販売なので、今後オンラインでのマーケティングに関する知見を深め、新たなビジネスモデルを創出する目的もあり、イロップを設立しました。
ー製品の特徴やこだわりを教えてください。
加藤 槙子氏(以下、敬称略):髪をケアしながら髪色を長持ちさせるカラーチャージアイテム「イロップ タス シリーズ」と、ヘアカラー後の色落ちとダメージを抑制し美しい髪を保つデイリーカラーケアアイテム「イロップ マモル シリーズ」の2つを展開しています。
従来のカラーシャンプーと大きく異なるのは、ハイトーンではないベーシックな髪色でもしっかり発色することと、カラーバリエーションが豊富なことです。一般的なカラーシャンプーは、金髪やピンクといったハイトーンを対象にしているものがほとんどですが、iropはいわゆる茶髪のようにベーシックなヘアカラーを楽しんでいるお客さまにもご利用いただきやすいカラーバリエーションをご用意しています。そのため、今までカラーシャンプーを使ったことがなかった方や、ヘアカラーの色落ちに悩みがあったという方も広くターゲットとしています。
また、大人の方にもしっかり満足いただけるとともに、日常的なヘアケアに使っていただける製品にしようというこだわりを詰めています。カラーシャンプーと一言でいうと、「ディスカウントストアで売っている」「学生が使っている」「髪色が派手な人が使うもの」といった印象を受けられる方が多いと思います。そういうイメージを払拭するためにも、大人の女性がバスルームに置いても違和感のないパッケージにしたり、広告クリエイティブもおしゃれな大人の女性を採用しお客さまに身近に感じていただけるものにしたりと工夫を凝らしています。
高橋:iropがハイトーン以外の髪色にも対応しているのは、ホーユー社の技術があったからこそです。iropを使用するお客さまが次にヘアサロンを訪れた際、サロンでの施術を邪魔しないよう、カラーシャンプーを髪に残留させにくい処方になっています。そうした製品の品質的な優位性が、ターゲットを広げていく秘訣になると思います。
新たなビジネスモデル構築の基盤としてecforceを選んだ理由とは
ー自社ECサイトのシステムとしてecforceを選択した理由を教えてください。
高橋:iropのサービスの中核に、“髪色ケア診断”があります。サービスを考えていくなかで、「カラーシャンプーは選び方が難しい」「自分に合わない色を選んでしまい、使わなくなってしまった」といったお声を伺い、多くのお客さまが最適なケアに辿りつけていない状況を認識していました。お客さまに髪色や色落ちのお悩みに答えていただくことでおすすめアイテムを導き、適切なヘアカラーケアの習慣を始めていただくという体験を提供したいという思いから、研究チームとともに独自の診断ロジックで“髪色ケア診断”を開発しました。この診断ツールを起点とし、診断結果から購入できる導線を作ることが、販売においてはマストな条件でした。
また、CRM施策を行うことも見据えていたため、“髪色ケア診断”をきっかけにLINEの友だち追加をしていただくという導線の設計も、ブランド立ち上げ当初から考えていました。これらを「ecforce profile」*で実現できると知り、ecforceの導入を決めました。ecforceはSaaSのため、トレンドに合わせた機能が随時アップデートされていくのも魅力的でしたし、他サービスと比較しても必要な機能が揃っていると思いました。また、導入コストや今後の運用コストを考えても、負担が少ないことも導入の決め手になりました。
加藤:繋げたいツール同士がきちんと連携できるのかは、重視していました。また、“髪色ケア診断”のUXについても、他のサービスではあまりいじれないものが多く、“髪色ケア診断”を軸としたお客さまの体験を最重要視している私たちとしては譲れないところでしたが、ecforceは非常に柔軟性があったので決め手になりましたね。
*ecforce profile:一人ひとりにあった最適なコトやモノを提案するパーソナライズシステム。訪問者の属性や購買、行動履歴などを紐解き、マーケティングに新たな可能性を提案する。
ブランドローンチから3ヶ月後、初のリアル店舗出店に挑戦。そこで得られた答えとは
ー今回「THE [ ] STORE」への出店を決めた背景、経緯を教えてください。
高橋:まずカラーシャンプー自体の認知度が低かったため、製品を使用するきっかけづくりが必要だと考えていました。また、オフラインというリアルな場でお客さまに“髪色ケア診断”を体験いただくことで、オンラインの販売だけでは出会えなかったお客さまとの接点を創出し、今後オンライン上でCRMを行った際、お客さまご自身がカラーシャンプーの対象者で、ケアの方法が様々あると知っていただいた状態を作り出したいとも考えていました。これらを実現できるPRの場として、ブランドローンチから3ヶ月後にTHE [ ] STOREへの出店を決意しました。
ーTHE [ ] STORE出店では、具体的にどのような施策を行ったのでしょうか。
加藤:多くの方に“髪色ケア診断”を体験していただくことに重きを置き、LINEの友だち追加数を出店時のKPIに設定しつつ、その上で様々な施策や店内での導線設計を行いました。
まず、来店されるお客さまは皆、「iropを知らない」「カラーシャンプーに興味を持っていない」という前提で、入店ハードルを下げるための施策を準備しました。出店時期が7月の暑い時期だったので、無料で冷たいドリンクを配り、ドリンクを飲みながら店内で“髪色ケア診断”を体験いただくように導線を設計しました。また、診断を体験していただいた方には、オリジナルトリートメントコームをノベルティとしてプレゼントするなど、まずは気軽に入店しやすい雰囲気づくりを行いました。
あとは、“髪色ケア診断”をフックとした接客の仕方も工夫しましたね。診断を開始する際には、LINEの友だち追加とInstagramのフォローを促し、診断後には結果の解説、おすすめのアイテムのご紹介、最後にノベルティをお渡しする、という流れを組みました。診断結果の解説では、実際に毛髪サンプルを見せながらお話しすることで興味を持っていただけることが多く、その場でのご購入にも繋がりました。
他にも、THE [ ] STOREの空間の使い方は意識したところです。店内に2面ある大きなサイネージで映像を流してiropの世界観を表現したり、店内にある什器を組み合わせてサンプルを展示したり、THE [ ] STOREにあるもの全てを活用して魅力的な空間づくりに努めました。空間全体で接客ができたという実感がありますね。多くのお客さまが、“髪色ケア診断”に興味をもって入店してくださったのが印象的で、なかには、カラーシャンプーを利用しなさそうな方もiropに興味をもってくださいましたし、こういう製品があることを知れて良かったというお声もいただきました。最終的に、出店期間中LINEの友だち追加と“髪色ケア診断”を体験されたお客さまは1,000名を超え、次回髪を染めた時にiropを第一候補にしていただくことに繋がったのではないかなと感じています。
ーTHE [ ] STOREの出店で印象的だったことはありますか?
加藤:そうですね。まず一つ目は、オンラインでそれほど人気のなかったアッシュカラーの製品がTHE [ ] STOREでは一番売れたことですね。店頭で実際にお客さまにヒアリングをさせていただいた際、ヘアサロンなどでアッシュ系のカラーに染めると色が抜けやすく、すぐに色落ちしてしまっても、いつもこうなるからと諦めていた方が多くいらっしゃいました。実は、ドラッグストアやバラエティショップで売られているカラーシャンプーには、アッシュ系のカラーケアができる製品があまりないんです。そこでiropのシャンプーでカラーキープできることをお話しすると、購入いただけることが非常に多かったです。また、“髪色ケア診断”を体験いただきながら対面で接客した際に、診断結果を少しアレンジしてアッシュカラーの提案をしたところ、気に入っていただけたこともありました。この気づきは、今後“髪色ケア診断”のロジックの調整に採用しようと思っています。
そして二つ目は、毛髪サンプルの重要性ですね。お客様に毛髪サンプルを見せると髪色がどう変化するのかが視覚的にわかりやすいため、購入に繋がったり共感いただけたりすることが非常に多くありました。それとともに、それぞれのSKUごとの訴求ストーリーを創ることも重要で、THE [ ] STOREのスタッフと情報交換をしながら各アイテムにストーリーを設定して訴求ポイントを見つけ、それを接客トークに即座に取り入れるなど、日々店頭でもPDCAを回していました。こうしてオフラインで得られた答えをオンラインにも反映させていこうと、今まさにトライしているところです。
高橋:KPIとして設定したLINEの友だち追加数とは別に、THE [ ] STOREでのCVRが12%ほどあったことは大きな収穫でした。ブランド立ち上げ直後は試行錯誤の日々で、なかなかコンバージョンに繋がらなかったり、マーケティング施策の成果も芳しくない時もあったりしました。今回のTHE [ ] STORE出店では、次のステップに繋がるようなアクションを起こせる知見がだいぶたまってきたと感じています。D2Cを展開していく中で、こうしてお客さまとリアルな場でタッチポイントを設けることで、オンラインとオフラインの両方で新たな気づきを得たり訴求ポイントを発見できたりといったことができたと思います。
加藤:ブランドローンチ当初はとにかく“髪色ケア診断”経由でお客さまを獲得することに固執していましたが、THE [ ] STOREを展開したことが大きな転機になり、考え方が柔軟になりました。iropの魅力を伝えるためにはカウンセリングが重要ですが、口頭で会話をしたり、見本を見せたり、動画を見せたりと、その手法もいろいろあって、Web上の画面だけではないと気づかされました。この経験は今後のUGC施策やクリエイティブ制作においても応用できそうです。オンライン・オフライン全てのタッチポイントで、お客さまに最適なカウンセリングを提供していけたらと考えています。
オンライン主体のブランドだからこそ、早めにオフラインにチャレンジすることが重要
ー最後に、これからTHE [ ] STOREの出店を検討する方へメッセージをお願いします。
高橋:オフラインの場で得た情報は、データとしてオンラインに集約していくと思うのですが、D2C企業にとってTHE [ ] STOREでの出店は重要なきっかけになると思います。私たちもTHE [ ] STOREの出店を通じて、どういったコミュニケーションをすればお客さまは購入してくださるのか、どういう購入経路を選択するのかというところを知る良い機会を得られました。オンライン主体のブランドだからこそ、オフラインに答えがある。今回の出店を通じて、これを実感しました。
加藤:オンライン主体のブランドだからこそ、早めにオフラインにチャレンジすることが重要だと、THE [ ] STOREでの出店を通じて実感しました。Web上では出会えなかったお客さまから得られる情報は、非常に貴重なものです。オンラインだけでは3カ月、半年かかっても集められないような有益な情報を、1週間足らずの出店で得ることが出来る。これがTHE [ ] STOREの魅力の一つだと思います。
ー本日はありがとうございました。