この記事でわかること
※この記事は 時点の情報をもとに執筆しています。
「ECモールに出店すれば売上は伸びる?」「自社に合うモールってどう選べばいい?」
そんな疑問をお持ちではありませんか?
Amazonや楽天市場など、すでに多くのユーザーを集めているECモールは、これからECを始めたい事業者にとって強力な選択肢です。
しかし、モールごとに費用や販売スタイル、向いている商材が異なるため、やみくもな出店では成果につながりにくいのも事実です。
本記事では、主要なECモールの種類とその特徴、出店のメリット・注意点、成功のために押さえておきたいポイントまでを詳しく解説します。
ECモールとは?
ECモールとは、インターネット上に複数の店舗が集まる「ショッピングモール型」のECサイトを指します。
実店舗でいうところの「百貨店」や「ショッピングモール」のようなイメージで、1つのプラットフォーム内に多数のショップが出店しており、ユーザーはその場で複数のブランドや商品を比較しながら買い物ができます。
代表的なECモールには、Amazon、楽天市場、Yahoo!ショッピングなどがあり、いずれも圧倒的な集客力を誇ります。
モール自体に日常的に訪れるユーザーが多いため、出店したばかりのショップでも一定のアクセスや購入機会を得やすいというのが大きな魅力です。
また、商品登録や決済、物流、カスタマーサポートなど、EC運営に必要な仕組みがあらかじめ整っているため、専門的な知識がなくても比較的手軽にECビジネスを始められるという点も、特に初めての事業者に支持される理由です。
ECモールの特徴
ECモール最大の特徴は、すでに構築されたプラットフォームを利用して出店できる点です。
商品を登録し、ショップページを開設すれば、すぐに販売をスタートできます。
これにより、ECサイトの構築やシステム開発にかかる手間やコストを大幅に削減できます。
さらに、Amazonや楽天市場のような大手モールでは、高いブランド認知と集客力を持っているため、出店するだけで多くのユーザーの目に触れる機会が増えます。
特にEC未経験の事業者や小規模ビジネスにとっては、初期段階から安定したトラフィックを獲得できる点は大きな利点です。
一方で、出店料や販売手数料、決済手数料などの費用が継続的に発生する点には注意が必要です。
加えて、テンプレートに沿ったショップ構成になるため、デザインや機能のカスタマイズには制限があることも多く、自社らしさを出しにくいというデメリットもあります。
また、多くのショップが同じモール内にひしめき合うため、競合との比較・競争が激しくなりやすい傾向があります。商品力や情報発信の工夫によって、他社との差別化を図る戦略が不可欠です。
自社ECとの違い
ECモールとよく比較されるのが、自社でECサイトを構築・運営する「自社EC」です。
ECモールが「既存のプラットフォームに出店する」のに対し、自社ECは「独自ドメインでゼロから構築する」形式で、運営の自由度が高い点が特徴です。
自社ECでは、サイトデザインや導線設計、決済方法、マーケティング施策などをすべて自社で決定できます。
その分、ブランドイメージや販売戦略を反映しやすく、データの取得・分析もしやすいため、中長期的な利益の最大化を目指せます。
ただし、構築には時間とコストがかかり、集客も自社で行う必要があります。
一方、ECモールは出店ハードルが低く、すでに集客力があるため、初期段階から商品を見てもらいやすいというメリットがありますが、手数料による利益率の低下や、顧客情報の取得が限定されるなどのデメリットも。
両者の違いを理解したうえで、「短期的に売上を立てたいのか」「長期的にブランドを育てたいのか」など、自社の目的に合った選択が求められます。
ECモールの種類
ECモールにはいくつかの運営形式が存在し、それぞれ出店方法や運営体制に違いがあります。
ここでは、主に次の3タイプに分けて、それぞれの特徴や向いている事業者像を解説します。
マーケットプレイス型ECモール
マーケットプレイス型は、モール運営側が構築した「市場」に複数の販売者が商品を出品する形式です。
代表例はAmazonやQoo10で、ユーザーが検索した商品に対して「商品単位」での比較・購入が行われるのが特徴です。
出品者はテンプレートに沿って商品情報を登録し、モールの仕組みを使って販売を行います。
サイト構築や決済導入の手間がないため、スピーディーに出品を開始でき、初心者でも参入しやすい形式です。
ただし、出品ページは共通化されており、店舗ごとの独自性が出しづらい点には注意が必要です。
ユーザーは「ショップ」ではなく「商品」を中心に比較するため、ショップとしてのブランド認知を高めるのはやや難しくなります。
テナント型ECモール
テナント型は、モール内に「自社のショップページ」を持ち、独自に運営するタイプです。
楽天市場やYahoo!ショッピングがこの形式に該当し、実店舗で言うところの「モール内のテナント出店」に近いイメージです。
各ショップは自社ページのレイアウトやバナー、カテゴリ設計を比較的自由に行うことができ、ブランドの世界観や商品ラインナップを表現しやすいのが特長です。
ただし、ショップ運営に必要な業務(商品登録、注文処理、カスタマー対応、物流など)は基本的に自社で対応する必要があります。
そのため、一定のリソースやEC運営経験がある企業に向いている形式とも言えます。
統合管理型ECモール
統合管理型は、1つの企業が複数ブランドを一元的に展開するモール形式です。
たとえば、アパレル企業が複数のブランドを展開している場合、それらを1つのモールに集約する形で構築されます。
この形式の最大のメリットは、運営の効率化とブランド間での相互送客が可能になることです。
在庫管理・顧客データ・キャンペーン情報を一元管理することで、オペレーションの負荷を下げながらクロスセル・アップセルの機会を広げることができます。
一方で、システムの設計・開発が複雑になりやすく、初期投資や構築工数が大きくなる点は注意が必要です。
また、複数ブランドを扱うことから、UI設計やナビゲーション構造の最適化が欠かせません。
このように、ECモールには出店形態ごとに異なる特徴があり、自社の商品特性や運営体制に合ったモール形式を選ぶことが重要です。
モール型ECを利用するメリット
モール型ECサイトを利用することで、初期投資を抑えながらオンライン販売をスタートできるという大きなメリットがあります。
ここでは特に、ECビジネスの初心者やリソースの限られた企業にとって有益な、4つの主要な利点を詳しく解説します。
1.プラットフォームの集客力を利用できる
最大の魅力は、圧倒的な集客力を持つプラットフォームに出店できることです。
たとえば楽天市場は1億以上の会員を保有し、Amazonは日常的に商品検索や購入に使われている「購買目的の高い検索エンジン」として機能しています。
このようなECモールに出店すれば、自社ブランドの知名度がまだ低くても、多くのユーザーの目に触れる機会を確保できます。
検索結果やランキング、特集ページに掲載されることで、自然検索だけでなくモール内の導線からもアクセスを集めることができます。
特にスタートアップや小規模事業者にとって、自社ECサイトに集客するにはSEOや広告、SNS運用など多くのリソースが必要ですが、モールなら既存のトラフィックを活用して初速の売上をつくりやすいのです。
さらに、モール自体の信用力も強みです。
Amazonや楽天といったモールのブランドに対する消費者の信頼があるため、あまり有名でないブランドでも「モールに出店している」というだけで一定の安心感を与え、購入に繋がるケースが多いのも特徴です。
2.手軽にECサイトを立ち上げられる
ECモールでは、既に用意されたテンプレートやシステム環境を活用して、簡単にショップ運営を始めることができます。
一般的に、商品情報の入力、画像登録、決済設定といった初期設定を済ませれば、数日〜1週間程度で販売を開始できるケースも多く、スピード感のある立ち上げが可能です。
この手軽さは、特にEC未経験の企業にとって大きな魅力です。
自社ECを構築する場合、CMSの選定、サーバー環境の整備、セキュリティ対策、カート機能の導入など、多岐にわたる専門知識や工程が必要になります。
対してモールでは、これらすべてが事前に整っており、運営側のサポートを受けながら始められるという安心感があります。
たとえばAmazonの出品者登録や、楽天市場の出店手続きもオンラインで完結し、審査を通過すればすぐに運用を始めることが可能です。
運用開始後も、受注管理や顧客対応などをサポートする機能が揃っており、省人化・自動化もしやすいという利点もあります。
3.手厚いサービスを受けられる
多くのECモールでは、出店者向けにサポートや機能が非常に充実しています。
たとえば楽天市場では、売上を伸ばすためのマーケティング施策、担当コンサルタントのアドバイスが利用可能です。
こうした支援によって、「何をどう改善すれば売上が上がるのか」という具体的なヒントを得られるため、PDCAを回しながらEC運営のスキルを高めていくことができます。
また、キャンペーン設計、メルマガ配信、レビュー対策などに関してもナレッジが蓄積されているため、初心者でも迷わず施策を進めやすい環境です。
さらに、Amazonでは「FBA(フルフィルメント by Amazon)」のような物流代行サービスも提供しており、在庫保管から梱包・発送、カスタマー対応までを一括で任せることができます。
このようなバックエンド業務をアウトソースできることで、リソースの少ない企業でも業務負荷を軽減しながら販売規模を拡大できるようになります。
出典:
ECコンサルタントが店舗運営をサポート|楽天グループ株式会社
フルフィルメント by Amazon(FBA)|Amazonジャパン合同会社
4.ブランドの信頼性を補完できる
モールに出店することで、自社ブランドの信頼性を補完できるという点も大きな強みです。
特にEC市場においては「初見で信用できるかどうか」が購買率に大きく影響します。
その点、楽天やAmazonのような運営元が明確なプラットフォームに出店しているという事実が、ユーザーに安心感を与える材料となります。
また、多くのモールでは出店審査が設けられており、一定の品質や運営体制が担保されたショップしか登録できません。
そのため、「モールにある=信頼できるショップ」というブランディングが成立しやすく、有名でないブランドでも認知と信頼を一気に獲得しやすいのです。
加えて、モール独自のポイント還元施策なども活用できるため、価格以外の「お得感」をユーザーに提供できるという点も、ブランド力を補完する重要な要素となります。
モール型EC利用時に注意すべきデメリットとリスク
モール型ECには多くのメリットがある一方で、事前に理解しておくべきデメリットや制約も存在します。
特に「出店すれば売れる」というイメージだけで始めてしまうと、思うような成果が出ず、運営負荷やコストが無駄になってしまうケースもあります。
ここでは、モール出店を検討する事業者が把握しておくべき注意点を解説します。
1.初期費用やランニングコストがかかる
モール型ECは「手軽に始められる」とよく言われますが、実際には一定のコストが継続的に発生します。
具体的には以下のような費用があります。
- 初期出店費(審査・アカウント開設費用など)
- 月額利用料・固定費
- 販売手数料(売上の数%)
- 決済手数料
- 広告費・キャンペーン参加費 など
たとえば楽天市場では、基本的なプランでも月額5万円以上の費用が発生し、さらに広告や有料オプションを活用すると月10〜30万円以上のコストになるケースもあります。
Amazonの場合、月額固定費は抑えられるものの、FBA利用時の手数料や出荷コストが積み重なりやすく、売上が伸びるほど費用も増加するという構造になっています。
つまり、利益を確保するためには「単価・粗利・販売数」のバランスを考慮し、シミュレーションを行ったうえで出店判断をすることが不可欠です。
「集客力に任せて商品を並べれば利益が出る」と考えるのではなく、あくまでビジネスとして採算が取れる構造を構築する必要があります。
2.競合が多く価格競争に陥りやすい
モールは参入障壁が低い分、同業他社や類似商品との競合が非常に激しくなります。
特にAmazonやQoo10のようなマーケットプレイス型では、「同じ商品を複数の出品者が扱っている」ケースも多く、価格が唯一の比較要素になりがちです。
さらに、モールの検索アルゴリズムも「売れている」「価格が安い」「レビューが多い」といった指標に基づいて表示順位が決まる傾向があり、価格を下げなければ露出されないジレンマも存在します。
価格競争に巻き込まれると、売れても利益がほとんど出ない状況になり、広告費や運営リソースを投じても費用対効果が合わなくなるリスクがあります。
これを回避するためには、以下のような工夫が必要です。
- 独自性のある商材を扱う
- 付加価値を明確に訴求する
- 商品画像や説明文で差別化を図る
- セット売り・定期便などでLTVを高める
つまり、単なる出品ではなく「売り方の設計」も含めて戦略を立てなければ、価格競争に沈む可能性が高くなります。
3.他社ブランドとの差別化が難しい
モール上では、多くのショップが同じフォーマットの中で販売しているため、見た目や機能面での差別化が難しいという課題もあります。
たとえば楽天市場ではある程度ページデザインが可能ですが、Amazonでは商品ページの構成が共通化されており、「ブランドの世界観」や「独自の導線設計」を表現しにくい仕組みとなっています。
さらに、顧客との接点も限定的です。
モール経由で商品が売れても、顧客の情報(メールアドレスや購入傾向)を自由に取得・活用できないケースも多く、リピーター育成やCRMが困難になる可能性があります。
また、モール全体のセールやキャンペーンに依存した運営になりやすいため、自社のブランディングや価格戦略がモールの方針に左右されるといった側面も。
そのため、モールは「新規顧客の獲得チャネル」として活用し、リピーターやファンの育成は自社ECで行うという役割分担を意識した設計が理想的です。
ECモールで成功するための6つのポイント
モール型ECへの出店は、あくまでスタートラインにすぎません。
実際に成果を上げるためには、モール特有の環境やアルゴリズムを理解したうえで、戦略的な運用を行う必要があります。
ここでは、ECモールで売上を伸ばすために重要なポイントを具体的にご紹介します。
1.自社商品と相性がいいモールを選ぶ
モールごとに、集客しているユーザー層・検索傾向・売れ筋ジャンルが異なります。
たとえば、Qoo10では20〜30代女性が中心でコスメや韓国ファッションが人気、ZOZOTOWNでは感度の高い若年層に向けたアパレル商材が多く売れています。
これに対し、Amazonは年齢層が幅広く、利便性や価格重視での購買行動が中心です。楽天市場ではポイント施策を重視するファミリー層や主婦層も多く見られます。
このように、自社の商品特性・価格帯・ターゲットに応じて、出店先のモールを選定することが、初期の成果を大きく左右します。
複数モールに出店する場合も、まずは一番マッチ度が高いモールからスタートし、ノウハウを蓄積したうえで展開を広げることが成功の近道です。
2.商品画像を魅力的にする
ECでは実物を手に取れない分、商品画像の情報量と訴求力が購買率を大きく左右します。
特にモール内では、一覧ページで複数商品が並ぶため、視覚的に目を引く画像がないとクリックされません。
ファーストビューで伝えるべき要素をしっかり詰め込むことが重要です。
有効な施策としては、下記が挙げられます。
- 商品の特徴を補足するテキスト入り画像(例:送料無料・レビュー高評価)
- サイズ比較や使用シーンを写した画像
- 安心感を伝える保証バッジや認証マーク
- 楽天などで許可されている装飾(リッチ画像)
また、スマホ閲覧の割合が圧倒的に高いため、スマホに最適化された画像サイズ・フォント・構成に調整することも忘れてはいけません。
3.トレンドや季節感を意識した販売戦略を立てる
モールでは「流行を取り入れた商品」や「季節イベントに合わせた特集」が大きな集客源となります。
そのため、タイミングに合わせた品揃え・キャンペーン設計が売上拡大に直結します。
月ごとの需要に応じた販促テーマをあらかじめ準備し、ページ更新・広告出稿・在庫調整を含めた「販促カレンダー」を運用するのが理想です。
販促カレンダーの例としては以下のようなイメージです。
- 4月:新生活・引っ越し・入学グッズ
- 7月:夏物衣料・日焼け止め・クール系コスメ
- 12月:ギフト・クリスマス・年末セール
また、モール独自のイベント(楽天スーパーSALE、Qoo10メガ割など)にも合わせてプロモーションを強化する戦略も重要です。
4.レビューを充実させる
レビューはモール内での検索順位や転換率(CVR)に大きく影響する要素です。
ユーザーは「他の人がどう評価しているか」を非常に重視するため、レビューが少ない商品は後回しにされがちです。
商品レビューを集めるためには以下の施策が有効です。
- 購入後数日でレビュー依頼メールを自動配信
- 投稿特典(クーポンやポイント)の付与
- 商品にメッセージカードを同梱しレビュー投稿を促す
- 低評価にも丁寧に返信して信頼感を保つ
また、ポジティブなレビューだけでなくネガティブな内容にも誠実に対応している姿勢が他のユーザーの信頼獲得につながります。
レビューは単なる口コミではなく、信頼性と購入を後押しする要素として戦略的に育てていくべき資産です。
5. 広告運用でモール内の露出を高める
近年のモール運営では、自然流入だけで売れる時代は終わりつつあります。
Amazon広告(スポンサープロダクト)、楽天のRPP広告、Qoo10のBoost広告など、モール内検索連動型広告を活用することが売上拡大のカギとなっています。
出稿にはコストがかかりますが、適切なキーワード選定・入札調整・除外設定を行えば、効率的に投資対効果を最大化することが可能です。
広告は売上を伸ばすだけでなく、レビュー獲得や検索順位上昇にも間接的に寄与するため、出店初期から積極的に活用すべき手段といえます。
6.在庫・受注・顧客情報を一元管理できる体制を整える
複数モールに展開したり、モールと自社ECを並行運営する場合、在庫のバラつきや出荷ミス、重複注文などのトラブルが発生しやすくなります。
これを防ぐには、在庫や受注、顧客情報を一元的に管理できる体制を整えることが不可欠です。
具体的には、以下のようなツールや仕組みを活用することで、運営負担を軽減しながら精度の高いEC運営が可能になります。
- ネクストエンジンやTEMPOSTARなどの一元管理ツールを導入する
- 在庫・商品情報を複数モールにリアルタイム同期する体制を構築する
- モールと自社ECの売上データや顧客データを統合し、施策に活用する
また、CRMツールを併用することで、以下のようなマーケティング施策を効率的に展開できます。
- リピーター育成を目的としたステップメールやポイント施策
- 顧客属性に応じたセグメント配信やターゲティング広告
- 解約や離脱を防止する導線設計とフォローメール施策
このように、運営オペレーションと顧客管理の基盤を整えることで、「売る」だけでなく「継続的に買ってもらう」体制が構築でき、LTVの最大化にもつながります。
ECモール・自社ECの同時運用がおすすめ
モール型ECと自社ECは、どちらか一方を選ぶのではなく、戦略的に併用することで相互のメリットを活かし、事業全体のパフォーマンスを高めることができます。
それぞれの特性を理解し、役割を分けて活用することで、新規顧客の獲得からLTV(顧客生涯価値)の最大化までを一貫して設計できるのが、同時展開の最大の魅力です。
モールは「新規集客」自社ECは「育成・ファン化」
モール型ECは、すでに多くのユーザーを抱えるプラットフォームであり、検索やランキングからの流入が見込めます。
そのため、初回購入や商品との「出会いの場」として非常に優れたチャネルです。
一方、自社ECでは顧客データ(属性、購入履歴、閲覧傾向など)を取得できるため、メールマーケティングやLINE配信などを通じたリピート施策が実施可能になります。
価格やデザイン、導線、クーポン配信、広告設計なども自由に設計できるため、自社ブランドの世界観や価値を伝える場所として最適です。
このように、モールで集客して自社ECで関係性を深めるという役割分担は、現在多くのD2Cブランドや中堅EC事業者が採用している成功モデルの一つです。
モールと自社ECの同時運営によるメリット
モールと自社ECを並行して運用することで、以下のような具体的なメリットがあります。
- モール側で広告出稿→獲得した顧客に同梱チラシで自社EC誘導
- モールで売れた人気商品をもとに、自社ECで定期便や限定セットを展開
- 自社ECでリピーターに対して高単価なアップセル商品を提案
- 顧客情報をCRMで一元管理し、購入チャネルを問わず施策を展開
このように、チャネルごとの特性に合わせた役割分担型のマーケティング設計ができることで、短期的な売上だけでなく、中長期的なファン獲得や収益性向上にもつながります。
運営効率を高めるためのツール活用
モールと自社ECを併用する場合、在庫や注文情報の管理が煩雑になる可能性があります。
そのため、以下のようなツールを活用し、業務効率化と人的ミスの防止を図ることが重要です。
- ネクストエンジンなどによる在庫・受注一元管理
- 自社ECカートシステムとモール連携アプリ活用
- メール・LINE・レビューなどの一括顧客対応ツール導入
これにより、販売チャネルの拡大による運営負荷の増加を最小限に抑えながら、スムーズな両立が可能になります。
モール依存のリスクを軽減
モール単体、自社EC単体に依存していると、外部要因による売上変動リスクをもろに受けてしまいます。
たとえば、モールのアルゴリズム変更や手数料改定、自社ECでの広告配信停止などが原因で、売上が急落するケースも少なくありません。
複数チャネルを持っていれば、どちらか一方が不調でも、全体の売上を安定させることが可能です。
これは中長期的なEC事業の継続性・安定性を高めるうえでも、非常に重要な視点です。
定番ECモール5社の特徴と選び方のポイント
数あるECモールの中から自社に合った出店先を選ぶためには、それぞれのモールの特徴や費用、ユーザー層、出店条件などを正しく理解することが重要です。
このセクションでは、国内で特に利用者が多く、事業者からの支持も厚い主要5モールを厳選し、それぞれの強みやおすすめポイントを比較しやすい形でご紹介します。
出店コストや運営形態、ターゲット層などの違いを知ることで、自社商材と相性の良いモール選定のヒントになるはずです。
1.楽天市場
公式サイト: https://www.rakuten.co.jp/
運営会社:楽天グループ株式会社
楽天市場は、国内最大級のECモールで、月間アクティブユーザー数は約1億人を超えます。
楽天ポイントや楽天スーパーSALEなど、独自のキャンペーンによる集客力が非常に高いのが特徴です。
ショッピングモール型のため、店舗単位でブランド設計ができ、運営自由度が比較的高い点も魅力です。
【特徴】
・出店形態: テナント型
・初期費用: 60,000円
・月額料金: 19,500円~100,000円(プランにより異なる)
・販売手数料: プランや商品カテゴリにより異なる
【おすすめの事業者】
・ブランド認知度を高めたい企業
・ポイント施策を積極的に活用したい事業者
・幅広い商材カテゴリを取り扱う事業者
2.Amazon
公式サイト: https://www.amazon.co.jp/
運営会社:アマゾンジャパン合同会社
Amazonは、日本国内でも圧倒的な認知度と検索流入を誇るマーケットプレイス型のECモールです。
FBA(フルフィルメント by Amazon)を活用すれば、在庫管理・梱包・配送・顧客対応までをAmazonに任せられるため、運営体制が整っていない場合でもスムーズに販売を開始できます。
【特徴】
・出店形態: マーケットプレイス型
・初期費用: 無料
・月額料金: 4,900円(大口出品プラン)
・販売手数料: 商品カテゴリにより異なる(約8~15%)
【おすすめの事業者】
・少人数で効率的にEC運営を行いたい企業
・物流の外注化を検討している事業者
・Amazon内検索での集客を活かしたいブランド
3.Yahoo!ショッピング
公式サイト: https://shopping.yahoo.co.jp/
運営会社:LINEヤフー株式会社
Yahoo!ショッピングは、初期費用・月額固定費が無料で始められるテナント型モールです。
PayPayとの連携やYahoo!アプリ内流入を活かし、スマホユーザーの購買導線を広くカバーできます。
柔軟な出店条件と低コストが魅力のため、小規模事業者にも人気です。
【特徴】
・出店形態: テナント型
・初期費用: 無料
・月額料金: 無料
・販売手数料: ストアポイント・決済・アフィリエイト手数料など(売上に応じて変動)
【おすすめの事業者】
・低コストでECを始めたい事業者
・PayPay経済圏のユーザーにリーチしたい企業
・モバイルユーザーをターゲットにした商品展開をするブランド
5.Qoo10
公式サイト: https://www.qoo10.jp/
運営会社:eBay Japan合同会社
Qoo10は、若年層女性ユーザーに特化したECモールで、コスメ・ファッション・雑貨などに強みがあります。
「メガ割」などの大規模セールイベントが定期的に開催され、手数料も比較的低く設定されている点も魅力です。
eBayグループが運営しており、将来的な越境EC展開を見据えたチャネル戦略にも活用可能です。
【特徴】
・出店形態: テナント型
・初期費用: 無料
・月額料金: 無料
・販売手数料: 6~10%(カテゴリによって異なる)
【おすすめの事業者】
・10〜30代女性をメインターゲットとする企業
・韓国系コスメやトレンド商品を扱うブランド
・将来的に海外展開も視野に入れている事業者
ZOZOTOWN
公式サイト: https://zozo.jp/
運営会社:株式会社ZOZO
ZOZOTOWNは、ファッション分野に特化した国内最大級のECモールで、出店は基本的に審査・招待制となっています。
ブランドイメージを重視したショップ構成や、感度の高いユーザー層へのリーチが可能で、アパレル系のブランディングに特に適したプラットフォームです。
【特徴】
・出店形態: テナント型(招待制)
・初期費用: 非公開(要問い合わせ)
・月額料金: 非公開(要問い合わせ)
・販売手数料: 約20〜40%
【おすすめの事業者】
・アパレルやファッション雑貨を展開する企業
・ブランドイメージの統一や訴求力を重視したい事業者
・感度の高いファッションユーザーと接点を持ちたい店舗
まとめ
ECモールは、手軽に始められて集客力のある販売チャネルとして、多くの事業者にとって魅力的な選択肢です。
Amazonや楽天市場、Yahoo!ショッピングのような大手モールには、すでに多数のユーザーが集まっており、出店直後から商品を見てもらえる機会が得られる点が強みです。
一方で、モールごとに手数料体系やユーザー層、運営の自由度が異なるため、自社の商品やターゲットと相性の良いモールを選ぶことが成功の鍵となります。
また、モール内での価格競争や差別化の難しさといった課題にも注意が必要です。
さらに、モール出店とあわせて自社ECの構築・運用を並行して進めることで、集客と顧客育成の両立が可能になります。
モールで新規顧客を獲得し、自社ECでリピートやLTV向上を図るという流れを戦略的に設計することで、より安定的かつ持続可能なEC事業へと成長させることができます。
本記事で紹介した内容をもとに、モールごとの特徴や自社のリソース、商材、顧客層などを総合的に踏まえながら、自社に最適なEC運用体制を設計していきましょう。
※2:ecforce導入クライアント38社の1年間の平均データ / 集計期間 2021年7月と2022年7月の対比
※3:事業撤退を除いたデータ / 集計期間 2022年3月~2022年8月