この記事でわかること
ECサイトの立ち上げや運営を支援するツールは、ビジネスの成長を左右する重要な選択肢です。
とはいえ、数多くのネット通販システム・ECツールが存在し、どれが自社に最適か判断に迷うケースも少なくありません。
本記事では、ECツールの基本的な役割や種類を整理した上で、実際に活用すべきツール5選と、導入時に押さえておきたい選び方のポイントを詳しく解説します。
自社に最適なシステムを見極め、ECビジネスの成長を確実に支えるためのヒントをお届けします。
これからECカートを決める方・いまのECカートに満足してない方へ。以下の記事にも、あなたのお悩みが解決する情報が満載です。
4つのECサイト構築事例。新鋭D2Cブランドの動向から読み解く「狙い」とは?
ネット通販システム・ECツールとは?
ネット通販システムとは、オンライン上で商品やサービスを販売するための基盤を提供するシステムです。
一方で、ECツールとは、ECサイトの構築・運営を効率化するために必要な機能をパッケージ化したソフトウェアやサービスを指します。
この2つはしばしば混同されがちですが、役割には明確な違いがあります。ネット通販システムは販売プロセス全体の管理を担い、ECツールはサイト立ち上げや運営のサポートを行う役割を果たします。
いずれも、オンラインビジネスを成功させるために欠かせない存在です。
近年では、初期費用を抑えたクラウド型や、拡張性に優れたオープンソース型、低コストで始められるSaaS型など、事業規模や目的に応じた選択肢が豊富に用意されています。特にD2Cブランドの台頭とともに、カスタマイズ性やマーケティング機能に優れたECツールへのニーズが高まっています。
次章では、ECサイト構築ツールが提供する具体的な機能について詳しく解説していきます。
ECサイト構築ツールでできること
ECサイト構築ツールは、単に商品を並べるだけのツールではありません。事業の成長を後押しするために、さまざまな機能が組み込まれています。代表的な機能を以下に紹介します。
- 商品登録・在庫管理
複数の商品をカテゴリ別に整理し、在庫状況をリアルタイムで把握・更新できます。 - 決済システム
クレジットカード、銀行振込、コンビニ払い、電子マネー、キャリア決済、最近ではBNPL(後払い)にも対応可能なシステムを備えています。 - 顧客管理(CRM)機能
顧客の購入履歴や属性データを管理し、マーケティング施策に活用できます。 - マーケティング支援機能
メルマガ配信、クーポン発行、SNS連携、リターゲティング広告連携など、多彩な集客施策をサポート。 - デザインテンプレート
ノーコードで高品質なサイトデザインを実現できるテンプレートが豊富に用意されています。 - SEO対策機能
サイトの基本的なSEO設定が簡単にできるため、検索エンジンからの流入も期待できます。 - 越境EC対応
多言語・多通貨対応、海外配送サポートなど、グローバル展開を視野に入れた機能も充実しています。 - AI活用・パーソナライズ機能
購入履歴データをもとに、顧客一人ひとりに最適な商品をレコメンドする機能も近年注目されています。 - セキュリティ対策
SSL証明書の標準装備、脆弱性対策、データのバックアップ機能など、安心して運営できる環境を整えています。
これらの機能をうまく活用することで、運営コストの削減や、リピーターの増加、売上の最大化が狙えます。
自社ECサイトを構築するメリット
近年では、自社でECサイトを構築・運営する企業が増えています。その背景には、以下のようなメリットがあります。
- 利益率の最大化
モール出店にかかる手数料や制約を回避でき、売上の大部分を自社収益として確保できます。 - 顧客データの蓄積と活用
購入データや行動履歴などを自社で管理できるため、リピート施策やクロスセル・アップセル戦略に活かせます。 - ブランド力の向上
オリジナルデザイン・オリジナル体験を提供できるため、ブランドイメージを統一し、ファン層を育てることが可能です。 - 自由度の高いプロモーション
自社の販促スケジュールに合わせて、自由にキャンペーンやセールを設計できます。 - 資産形成
自社ドメインで運営するECサイトは、将来的な事業価値の向上にもつながります。
ただし、自社ECサイト構築には、初期投資・運営リソースの確保といった課題もあるため、ツール選びと運用計画を慎重に立てることが成功のカギとなります。
ネット通販システムの種類
ECサイトを構築・運営するには、さまざまな種類のネット通販システムがあります。各システムは特徴や強みが異なり、ビジネスモデルや事業規模に応じて最適な選択が求められます。
ここでは代表的な4つのシステムタイプと、その違いについて解説します。
1.ECモール型
ECモール型とは、Amazonや楽天市場、Yahoo!ショッピングといった大規模な仮想ショッピングモールに出店する形式のネット通販システムです。
モールが提供するプラットフォームを利用することで、初期投資を抑えながら短期間でECビジネスをスタートできます。
【メリット】
- モール自体の集客力を活かせるため、独自の集客施策が不要
- 決済、物流、カスタマーサポートなどのインフラが整備されている
- すぐに販売を始められるスピード感
【デメリット】
- 出店手数料や販売手数料がかかる
- 顧客データをモールに依存するため、独自マーケティングが制限される
- 価格競争に巻き込まれやすく、利益率が低下しがち
【活用に向いている事業者】
- 初めてECを立ち上げる事業者
- ブランド認知がまだ低い新規ビジネス
- 短期で売上を立てたい事業者
2.ASPカート型
ASPカート型とは、クラウド型カートシステムを利用して、自社ドメインでECサイトを構築・運営する方法です。
テンプレートを利用してノーコードで立ち上げができるため、専門的な開発スキルがなくても運営が可能です。
【メリット】
- 初期費用・月額費用が低く、手軽にスタートできる
- 独自ドメインによるブランディングが可能
- システム側で機能アップデートが行われるため、最新機能を常に利用できる
- カスタマイズ性も比較的高く、デザインや機能の自由度がある
【デメリット】
- 大規模サイトや特殊なカスタマイズには向かない場合がある
- トラフィック増大時にパフォーマンスが落ちる可能性
- オプション機能や外部連携に追加コストが発生することも
【活用に向いている事業者】
- スモールスタートを切りたい中小企業・個人事業主
- デザインやブランドイメージにこだわりたい事業者
- 初期投資を抑えつつ、柔軟に運営したい事業者
3.SaaS型
SaaS型は、クラウドを通じてサービスを提供するECシステムで、常に最新機能が自動アップデートされるのが特徴です。
オンプレミス型のようなサーバー管理が不要で、導入後すぐにECサイトを立ち上げることができます。
Shopifyやecforceなどが代表的なSaaS型で、近年のD2Cブランドや成長志向の事業者に選ばれています。
【メリット】
- サーバーやインフラの管理が不要で運用コストが抑えられる
- 機能追加やバージョンアップが自動で行われるため、常に最新環境で運用できる
- カスタマイズ性が高く、デザインや機能拡張の自由度が高い
【デメリット】
- 高度なカスタマイズを行う場合、開発リソースや追加コストが必要になることがある
- サービス提供側の仕様変更に影響を受ける可能性がある
【活用に向いている事業者】
- 成長を見据えたD2Cブランドや中規模以上の事業者
- 初期投資を抑えつつ拡張性を重視する企業
- 海外展開やマーケティング機能強化を視野に入れた事業者
4.パッケージ型
パッケージ型とは、ソフトウェアパッケージを購入・導入して、自社でサーバーに設置・運用するスタイルのネット通販システムです。
オンプレミス型とも呼ばれ、カスタマイズの自由度が高く、大規模サイト向けに適しています。
【メリット】
- フルカスタマイズが可能で、オリジナル性の高いサイト構築ができる
- 顧客データやサイトのすべての情報を自社で保有できる
- 大規模アクセスにも対応できるスケーラビリティ
- セキュリティ対策を自社仕様に強化できる
【デメリット】
- 初期導入コストが高く、サーバーやセキュリティ、保守に専門知識が必要
- 機能追加・システム改修に都度コストと時間がかかる
- システム運用に専任人材が必要になるケースが多い
【活用に向いている事業者】
- 大規模な商品点数や顧客規模を持つ事業者
- 業種特有の業務プロセスや機能要件がある企業
- セキュリティや独自性にこだわる大企業
ネット通販システムには、手軽に始められるモール型から、柔軟に運営できるASPカート型、本格的なパッケージ型まで多様な種類があります。
事業の規模、予算、運営リソース、将来の成長戦略に合わせて、自社に最適なシステムを選択することが、成功の鍵となります。
失敗しない!ネット通販システムの選定ポイント
ネット通販システムの選定は、ECビジネスの成果を左右する極めて重要なステップです。
適切なシステムを選べば、運営の手間を減らし、売上向上を支援してくれます。
しかし、選定に失敗すると、機能不足やコスト過多に悩まされ、ビジネス成長の足を引っ張ることにもなりかねません。
ここでは、システム選定時に必ずチェックすべき5つの重要ポイントを解説します。
1. 導入の目的と解決すべき課題の洗い出し
最初に取り組むべきは、ネット通販システムを導入する目的と解決したい課題の明確化です。
例えば、新規顧客の獲得、リピート率の向上、海外市場への展開、業務オペレーションの改善など、どこに課題を感じているかを具体的に洗い出します。
また、すべての課題を一度に解決しようとすると、システム選びの軸がぶれてしまいます。
そのため、解決すべき課題に優先順位をつけることが非常に重要です。
今すぐ必要な機能と将来的に必要な機能を整理し、自社にとって本当に必要な要素が揃ったシステムを選びましょう。
2. コストと機能のバランスを重視
ネット通販システムには、初期導入費用、月額利用料、販売手数料、オプション機能の追加料金など、さまざまなコストがかかります。
これらをトータルで把握し、支払うコストに対して得られる機能・サービスが見合っているかを検討する必要があります。
- 初期費用は予算内に収まるか
- 月額コストが売上に対して適正か
- 標準機能でどこまでカバーできるか
- オプション機能・外部サービスとの連携に追加料金は発生するか
特に注意したいのが、見かけの低価格に惑わされないことです。
初期費用が安くても、必要な機能を追加するたびにコストが積み上がる場合もあります。
逆に、機能が豊富でも使い切れない機能に高額を払うのは無駄になってしまいます。
将来の事業成長を見越したコスト設計が重要です。
3. 実際の運用を想定した使いやすさを確認
どんなに高機能なシステムでも、運用する現場のスタッフが使いこなせなければ意味がありません。
ネット通販システムは毎日使用する業務ツールであり、使いやすさはスムーズな運営に直結します。
特に注目したいのは、管理画面の操作性です。
商品登録や在庫管理、受注処理、キャンペーン設定など、日常的に行う作業が直感的に操作できるかを確認しましょう。
また、システムのパフォーマンスも重要です。
ページ遷移の遅さや、動作のもたつきがストレスになると、業務効率に悪影響を及ぼします。
さらに、トラブル発生時に迅速に対応してもらえるカスタマーサポート体制も見逃せないポイントです。
チャットや電話サポート、ヘルプセンターの充実度も事前に確認しておきましょう。
4. 他システムとの連携がスムーズか
ネット通販システムは、それ単体ではなく、さまざまな周辺システムと連携して使われるのが一般的です。
たとえば、在庫管理システム、会計ソフト、マーケティングツール、配送管理システムなどとの連携が必要になります。
スムーズな連携を実現するには、以下をチェックしましょう。
- 会社の在庫・売上をまとめて管理するシステム(ERP)や在庫管理ツールと連携できるか
- API連携やCSV入出力機能が備わっているか
- 決済代行サービス、配送システム、マーケティングツールとの連携が容易か
特に、ビジネスが拡大した際に、業務の自動化や一元管理を実現するためには、柔軟な連携性が不可欠です。
連携できないシステムを選んでしまうと、手作業が増え、業務負荷やミスが発生するリスクが高まります。
5. ビジネスの成長にあわせて拡張できるか
ネット通販ビジネスは、成長すればするほどシステムに求めることが増えます。
小さな規模で始めたとしても、将来的な拡張性を考えた選定が必要です。
- 商品数やサイトアクセスが増えたときに耐えられるか
- 海外展開(越境EC)や多店舗展開に対応できるか
- 顧客データ管理やマーケティング機能を強化できるか
- SNS連携、ライブコマースなど新しい販売チャネルに対応できるか
今の規模だけでなく、これからの成長に合わせて無理なく拡張できるかを見ておくことで、リプレイスのリスクを避けられます。
ネット通販システムの選定は、単なる価格や機能の比較に留まるものではありません。
事業戦略に直結する複数の観点から慎重に検討することが求められます。
これらの視点を踏まえて最適なシステムを選択することで、業務効率の向上だけでなく、売上成長を支える堅実な基盤を築くことができるでしょう。
【徹底比較】おすすめのネット通販システム5選
ネット通販ビジネスを成功に導くには、自社の戦略や事業規模に合ったシステム選びが重要です。
ここでは、代表的なネット通販システムをピックアップし、特徴や料金、向いているビジネスモデルを比較しながら紹介します。
1.【ECモール型】Amazon
Amazonは、日本だけでなく世界中に展開しているグローバルなECモールです。小口出品プランが1商品につき100円の販売手数料、大口出品プランが月額4,900円となっています。
圧倒的なブランド力を利用して、知名度が低くても圧倒的な集客が期待できる一方で、商品ページが画一的で競合他社が多いため、差別化が難しい点には注意です。
Amazonがもつ抜群の知名度を利用して、集客したい方におすすめだといえます。
出典:Amazon 公式サイト(2025-01-29)
2.【ECモール型】楽天市場
楽天市場は、国内における知名度と充実したサポートが魅力のネット通販システムです。
楽天市場の出店料金は、以下のとおりとなっています。
- がんばれ!プラン:月額25,000円、登録商品数 10,000点まで、システム利用料 パソコン3.5〜6.5%、モバイル4.0〜7.0%
- スタンダードプラン:月額65,000円、登録商品数 50,000点まで、システム利用料 パソコン2.0〜4.0%、モバイル 2.5〜4.5%
- メガショッププラン:月額130,000円、登録商品数 無制限、システム利用料 パソコン2.0〜4.0%、モバイル 2.5〜4.5%
また、専任のECコンサルタントがサポートしてくれるので初心者にも安心です。物流のアウトソーシングサービスも利用可能で、裏方業務を一任するのにもピッタリ。楽天経済圏やスーパーセールを有効活用して、ECサイトの売上を伸ばしたい方におすすめです。
出典:楽天市場 公式サイト(2025-01-29)
3.【ASPカート型】BASE
BASEは、月額費用が無料で国内の利用者数がNo.1のネット通販システムです。自社ECサイトを開店する際にかかるコストは0円。商品が売れた場合にのみ、決済手数料として3.6%+40円、それにサービス手数料3%を上乗せした金額を支払う必要があります。
初期費用・月額費用が無料で売れた時にだけコストがかかるというシンプルな料金体系が魅力で、各種SNSとの連携もカンタンです。販売手数料を加味した上で、利益が出せる商品パッケージを確保している方に、おすすめのネット通販システムだといえます。
出典:BASE 公式サイト(2025-01-29)
4.【SaaS型】ecforce
ecforceは、日本国内のD2Cビジネスに特化した国産SaaS型ECプラットフォームです。
初期導入から成長フェーズまでを見据えた豊富な機能を備えており、CRM機能や広告運用支援機能、LTV向上施策の実施が可能です。
毎月10〜20件の新機能リリースを続けており、常に最新のECトレンドに対応できる環境が整っています。
また、UI/UXにも優れており、CS業務や広告運用にかかる工数を削減できる設計となっています。
ただし、導入にはある程度の初期設計・設定が必要なため、運用リソースの確保を見込んでおく必要があります。
自社ECサイトで長期的な売上成長を目指すD2Cブランドに特におすすめだといえます。
出典:ecforce公式サイト(2025-01-29)
5.【パッケージ型】EC-ORANGE
EC-ORANGEは、完全オリジナルソフトウェアでECサイトの仕組みをパッケージで販売するネット通販システムです。強固なセキュリティ性とアプリケーション、インフラを備えており、消費者向けだけでなく、販売者向けのECサイトにも柔軟に対応しています。
ソースコードを公開しているため、後から必要な機能を追加できるのも強みです。
ただし、サポート料金や構築費用に関しては、問い合わせなければなりません。
出典:EC-ORANGE 公式サイト(2025-01-29)
まとめ|最適なネット通販システム選びでECビジネスを成功に導こう
ネット通販システムは、ECサイトの立ち上げから運営、成長戦略までを支えるビジネスの基盤です。
モール型、ASP型、パッケージ型、そしてSaaS型と、多様な選択肢の中から、事業フェーズやビジネスモデルに最適なものを選定することが、競争優位性の確立につながります。
特に、システム導入に際しては、解決すべきビジネス課題を明確にし、必要な機能とコストのバランスを見極めることが重要です。
加えて、運用のしやすさや他システムとの連携性、将来的な拡張性といった観点も無視できません。
これらを総合的に評価し、自社に最適なネット通販システムを選ぶことが、長期的なビジネス成長を支える大きな要素となります。
市場環境が目まぐるしく変化する今、自社の成長戦略に最もフィットするシステムを見極め、ECビジネスの成功確率を高めていきましょう。
※2:ecforce導入クライアント38社の1年間の平均データ / 集計期間 2021年7月と2022年7月の対比
※3:事業撤退を除いたデータ / 集計期間 2022年3月~2022年8月