この記事でわかること
※この記事は 時点の情報をもとに執筆しています。
LINEとCRMを連携させることで、顧客管理を効率化し、顧客一人ひとりに最適なアプローチが可能になります。
本記事では、LINE連携によるCRMの基本から、導入メリット、失敗を防ぐポイントまで幅広く解説します。自社に合った活用方法を見つけ、LTVの向上やマーケティング成果の最大化に役立ててください。
LINE連携によるCRM(顧客管理)とは?
CRM(Customer Relationship Management/顧客関係管理)は、顧客情報をもとに関係性を深めていくための考え方・システムを指します。日本では「顧客管理ツール」と呼ばれることも多いです。
LINE連携によるCRMとは、LINE公式アカウントを活用して、顧客情報や行動履歴をCRMシステムに統合し、データにもとづいた施策を展開していく仕組みです。
LINEは多くの人にとって日常の連絡手段であるため、企業側からのメッセージも届きやすく、双方向のやり取りが自然に行えます。これにCRMを組み合わせることで、個別最適な対応やキャンペーン配信などの施策がより高い精度で行えるようになります。
LINE公式アカウントの基本的なCRM機能
LINE公式アカウントには、CRM的に活用できる標準機能が多数搭載されています。
顧客との継続的な接点づくりや販促施策の自動化に役立つ以下のような機能が、基本プラン内で利用可能です。
メッセージ配信機能
LINE公式アカウントでは、テキスト、画像、動画、スタンプ、クーポン、リッチメッセージ、リッチビデオメッセージ、リサーチ(アンケート)など、さまざまな形式のメッセージを配信できます。
- 一斉配信:すべての友だちに対して同一のメッセージを一括で配信可能
- セグメント配信:性別・年齢・地域・OSなどのユーザー属性や、友だち期間・行動データに基づいたターゲティング配信が可能
パーソナライズされた情報配信により、開封率やクリック率の向上が期待できます。
出典:LINEヤフー for Business「メッセージ配信を作成する」
クーポン・ショップカード機能
販促やリピーター獲得に直結する機能として、クーポンとショップカードが利用可能です。
- クーポン:割引やプレゼントなどの特典を設定し、メッセージやメニューから配布
- ショップカード:購入や来店などのアクションでスタンプを付与し、一定数で特典提供
LINE上で完結する設計で、実店舗との連動施策にも活用できます。
出典:LINEヤフー for Business「ショップカード」
リッチメニュー機能
ユーザーのトーク画面下部に常時表示できるナビゲーションメニューで、タッチポイントを強化します。
- 各ボタンに多彩なアクション設定(リンク、ショップカード、アンケートなど)
- セグメントごとにリッチメニューを切り替えることも可能
コンバージョンを促す導線として、施策効果を高める重要なUIパーツです。
出典:LINEヤフー for Business「リッチメニューを作成する」
チャット・自動応答機能
カスタマーサポートや問い合わせ対応の効率化に役立つ機能も充実しています。
- チャット:1対1のリアルタイム対応が可能
- 自動応答:あらかじめ設定した時間帯やキーワードに応じて、定型メッセージを自動返信
人手による対応と自動処理をうまく組み合わせることで、対応品質と効率の両立が可能です。
出典:LINEヤフー for Business「応答メッセージ」
分析機能
LINE公式アカウントでは、配信効果やユーザー属性を可視化する分析ツールも提供されています。
- メッセージ分析:開封率、クリック率、ブロック率などを確認可能
- 友だち分析:友だちの属性(性別、年代、地域など)や増減の推移をグラフ化
これらのデータを活用して、施策の精度を高める改善サイクルが構築できます。
出典:LINEヤフー for Business「分析(ステップ配信追加)」
補完が必要な領域とCRMツール連携の重要性
LINE公式アカウント単体でも基本的なマーケティング施策は実施可能ですが、CRM的な深掘り活用には以下のような限界があります。
- ユーザー単位での詳細履歴管理ができない(例:過去の購入履歴や開封傾向の長期保存など)
- 複雑なシナリオ配信や条件分岐の自動化が困難
- メールやSMS、アプリ通知などとのクロスチャネル連携が非対応
これらを補完するには、CRMツール(またはMAツール)との連携が不可欠です。
CRMと連携することで、LINE上の行動データをもとにセグメントを動的に切り替えたり、ユーザーごとのLTVに基づいて配信内容を最適化したりと、より高度で成果につながる施策を展開できます。
LINE顧客管理(CRM)ツールのメリット
LINEとCRMツールを連携させることで得られるメリットは多岐にわたります。単なる一斉配信ツールから、個客対応のマーケティング基盤へと進化させることで、成果につながる顧客体験を構築できます。
以下に、主要なメリットを詳しく解説します。
1. 顧客の属性や行動に応じた「パーソナライズ配信」が可能に
LINE公式アカウント単体でもセグメント配信は可能ですが、CRMと連携することで、より深いデータに基づいた配信設計が実現します。
たとえば、以下のような複合条件にも対応可能になります。
- 過去30日間で購入実績がないが、サイト訪問はしているユーザーへの再購入促進メッセージ
- LINE登録後7日以内で初回購入未完了のユーザーに向けたサポート誘導
- 高頻度購入者かつレビュー投稿経験ありのVIP顧客への限定キャンペーン案内
このように、ユーザーごとの状態や関係性に応じて最適なメッセージを届けることが可能になり、開封率やCVRの向上が期待できます。
2. 顧客ごとの行動データを一元管理できる
LINEで取得した開封・クリック・ブロック・チャット応答・クーポン利用などの行動データを、CRM上で一元的に蓄積・可視化できます。
これにより、マーケティング部門やカスタマーサポート部門が、顧客ごとのステータスや過去対応履歴を正確に把握しながら施策や対応を行うことができます。
加えて、購買履歴や来店履歴、ECとの連携データも統合すれば、より多角的な「顧客像の把握」が可能になります。
3. シナリオ配信・自動化による運用負荷の軽減
CRMツールとLINEが連携していると、ユーザーの行動や属性に応じてシナリオ(ステップ)配信を自動化することができます。
以下のようなフローも、事前に設計しておくことで人手をかけずに実行可能になります。
- 登録直後に「ようこそメッセージ」→3日後に「クーポン配信」→未使用の場合は7日後に「リマインド」
- カート放棄ユーザーに対して24時間後に再訪促進メッセージ
- 一定期間購入がないユーザーに、割引施策やヒアリングアンケートを配信
こうしたフローを一度設計してしまえば、毎回手作業でターゲット設定や文面作成を行わずに済み、継続的かつタイムリーな顧客対応が可能になります。
4. ブロック率の低減とエンゲージメントの最適化
配信コンテンツの精度が高まり、ユーザーにとって「必要な情報だけが届く」状態を実現できることで、LINEの運用において避けがちなブロック率の上昇を抑制する効果もあります。
特に以下のような工夫がしやすくなります。
- 配信タイミングや頻度をユーザー属性ごとに調整
- クリック率や反応が高いユーザーを優先ターゲットに設定
- 興味関心タグに応じて情報ジャンルを自動出し分け
結果として、LINEを通じたエンゲージメントの質が上がり、長期的な関係構築にも寄与します。
5. オフライン・オンラインのデータ連携が実現
CRM連携によって、LINEでの行動だけでなく、店舗での購買・来店・イベント参加などのオフライン行動も統合可能になります。
- 店舗での購入時にLINE会員証を提示 → CRM側に来店情報を連携
- キャンペーン応募・アンケート回答 → 属性情報として自動反映
- イベント予約・来場記録をもとに、個別のフォローメッセージを配信
こうしたデータ統合により、チャネルをまたいだ施策設計やオムニチャネルマーケティングの精度が格段に向上します。
6. 売上・LTVに直結するコミュニケーションが可能に
最終的な成果として、「売上アップ」「LTV最大化」「再購入促進」といったマーケティングゴールに直結しやすくなるのが、LINE CRMツール導入の最大の魅力です。
高度なターゲティング、自動配信、反応データの分析を組み合わせることで、「最適なタイミングで、最適な内容を、最適な顧客に届ける」という理想的な顧客体験が実現でき、LINEを収益化できる接点として機能させることができます。
LINE顧客管理ツールの種類
LINEを顧客管理(CRM)に活用するためのツールは、大きく以下の3タイプに分類されます。それぞれの特性を理解することで、自社の目的や規模に合った適切な選択がしやすくなります。
LINE公式アカウント単体
LINEが公式に提供するアカウント管理機能をそのまま使うシンプルな運用形態です。
無料プランを含む低コストで導入でき、メッセージ配信やクーポン発行、リッチメニューの設置などの基本機能が揃っています。
ただし、詳細なセグメント配信やステップ配信などの高度なマーケティング機能は制限があります。
そのため、シンプルな配信や初期フェーズのテスト用途には適していますが、継続的なCRM施策にはやや物足りない場合もあります。
向いている企業:小規模事業者、個人店舗など
代表的なツール:LINE Official Account
LINE公式アカウント拡張型ツール
LINE公式アカウントにCRM機能を追加するかたちで提供される拡張型のツールです。
シナリオ配信やセグメント配信、ユーザースコアリングなどの機能を備え、LINE上でより高度なパーソナライズ施策を行えるようになります。
さらに、外部データベースやECカートとの連携、APIによるリアルタイム情報の取り込みなどにも対応しており、リピート促進やLTV向上施策を強化できます。
向いている企業:EC事業者、中〜大規模のBtoC企業など
代表的なツール:L Message、KUZEN、MicoCloud、E-Grant
CRM・MAツールからLINEに連携
すでに導入しているCRMやマーケティングオートメーション(MA)ツールとLINEをAPIで連携し、LINEを1チャネルとして活用するタイプです。
顧客データベースやスコアリング情報をそのまま活かした柔軟な配信が可能で、LINE以外のチャネル(メール・SMSなど)との統合運用にも適しています。
ツール間でのデータ統合や独自開発による柔軟性を重視する企業にとっては、最も高度で拡張性の高い運用形態です。
向いている企業:データ活用重視の中〜大企業、開発リソースがある企業
代表的なツール:Salesforce Marketing Cloud、b→dash、カスタム開発型
どのタイプを選ぶかは、「どのくらいの範囲まで管理したいか」「LINE以外の施策も同時に行いたいか」「現場のスキル・体制に合っているか」といった観点から決めるのが理想です。
LINEとCRM連携でできること
LINEとCRMシステムを連携させることで、顧客ごとの情報や行動に基づいた高度な施策をスムーズに実行できるようになります。
マーケティングの質を高め、業務効率を向上させるために、以下のような具体的な活用が可能です。
セグメントごとの最適なメッセージ配信が可能になる
CRM上で保有する顧客属性や購買履歴、行動ログなどのデータをもとに、LINEでのメッセージをセグメント別に出し分けることができます。
これにより、顧客一人ひとりに対して最適な内容・タイミングでのアプローチが可能になります。
- 過去3ヶ月間購入履歴がないユーザーに対して、再購入を促すクーポンを配信する
- 新規登録から1週間以内のユーザーに対して、使い方ガイドを段階的に案内する
- 高い購買頻度を持つユーザーに対して、限定キャンペーン情報を先行公開する
ターゲットごとに適切な情報を届けることで、開封率やクリック率の向上、ブロック率の低下にもつながります。
顧客ごとに最適化されたシナリオ配信が実現できる
CRMと連動したシナリオをLINE内で自動化することで、ユーザーの行動や状態に応じた段階的なメッセージ配信が可能になります。
これにより、購買促進や定着支援など、目的に応じた施策を効率的に展開できます。
- 商品カート投入後に購入が完了していないユーザーへ、数時間後にリマインドメッセージを送信
- クーポン未使用のユーザーに対して、有効期限を知らせるフォローアップを自動で配信
- 初回購入を完了したユーザーに、レビュー投稿を促すメッセージを段階的に送信
このような段階的なコミュニケーションは、CVRやLTVの向上に大きく寄与します。
オンラインとオフラインの顧客行動を統合できる
LINEを通じて得られるオンライン上の行動情報と、CRMに蓄積されたオフラインの顧客データを統合することで、立体的な顧客像の把握が可能になります。
これにより、来店促進やリアルイベントの効果測定にも活用できます。
- 実店舗での購入時にLINEを通じてポイントを即時付与し、購入履歴とCRMを連携させる
- 店頭イベントへの参加登録をLINE経由で行い、当日の来場情報を顧客管理に反映する
- スタンプラリーやアンケート参加をLINE上で記録し、CRM内で自動的に属性やタグとして活用
こうしたオンラインとオフラインの統合によって、チャネルをまたいだ施策設計と改善がより戦略的に行えるようになります。
行動データをCRM側で一元管理し、施策に活用できる
LINE内でのユーザー行動(開封・タップ・クリック・回答など)をCRMにリアルタイムで連携することで、スコアリングやセグメント更新に活用できます。
施策のチューニングと継続的な自動最適化が可能となり、運用効率が飛躍的に高まります。
- メッセージの開封回数が多いユーザーに「アクティブ」タグを付与し、次回の配信対象として優先化する
- 特定リンクのクリック履歴をもとに関心ジャンルを判断し、該当ジャンルの情報配信に自動反映する
- アンケートに回答したユーザーをフォロー対象として別シナリオを分岐させ、応答率を最大化する
CRMとLINEのデータを相互活用することにより、より緻密で持続可能なコミュニケーション施策の実現が可能になります。
LINE CRMツールの費用体系と比較ポイント
LINEとCRMを連携させる際には、ツールの導入費用・維持費・活用範囲に応じたコスト感をしっかり把握しておくことが重要です。以下に、主な比較ポイントを項目別に解説します。
初期費用
多くのLINE連携CRMツールでは、初期設定費用が必要なケースがあります。0円からスタートできるツールもある一方で、企業規模やサポート内容に応じて数万円〜数十万円程度の初期費用が発生する場合もあります。
この初期費用には、以下のような費目が含まれます。
- LINE公式アカウントとの接続設定
- APIキーの取得・連携設定代行
- 初期キャンペーンの設計支援
- 導入マニュアルや教育コンテンツの提供
特に自社内にLINEマーケティングのノウハウがない場合、初期支援が含まれるプランを選ぶことでスムーズに運用を開始できます。
月額料金
基本的なCRM機能に加えてLINE連携ができるツールでは、1〜10万円台前後の月額課金が発生するのが一般的です。
料金は以下のような要素によって変動します。
- アカウント数・登録ユーザー数
- 同時運用チャネル(メール、SMS、広告など)の数
- 分析機能やレポート出力の高度さ
- 管理画面のカスタマイズ性
スタートアップや中小企業では、LINE特化型で低価格なSaaSを選ぶケースが多く、一定の施策に慣れてきたら総合CRMに移行するという段階的な導入もおすすめです。
従量課金
LINE公式アカウントでは、契約プランごとに月間の無料メッセージ通数が設定されており、上限を超えるとメッセージ単位での従量課金が発生します。
この従量課金はLINEヤフー株式会社が定めた料金体系に基づき、利用ツールや配信手段にかかわらず共通で適用されます。
具体的な料金設定は以下の通りです。
- フリープラン:月1,000通まで無料、追加配信は不可
- ライトプラン:月15,000通まで月額5,000円、追加配信は1通あたり5.5円(税込)
- スタンダードプラン:月45,000通まで月額15,000円、追加配信は段階制で1通あたり3.3〜6.6円(税込)
この料金体系により、月間の配信数が多い企業ほど、従量課金の影響が大きくなります。
特に以下のようなケースでは、事前の費用試算が欠かせません。
- 配信対象のフォロワー数が多い(例:1万人以上)
- メッセージ配信頻度が高い(例:週2回以上)
- 一斉配信が多く、セグメントを絞らない場合
- ECやキャンペーンでステップ配信を多用する場合
サポート・運用支援の有無
同じような価格帯のツールでも、「サポート体制の差」によって使い勝手や定着率は大きく変わります。
無料サポートしか提供していないツールもあれば、以下のような運用伴走が組み込まれているツールもあります。
- 月1回の戦略ミーティング
- シナリオ設計・改善の提案
- LINE公式アカウントのアナリティクス分析代行
- 導入時の講習・動画教材の提供
導入初期〜運用軌道化まで外部サポートをどれだけ必要とするかによって、選ぶべきツールやプランが変わります。
LINE×CRMのAPI連携による活用例と運用メリット
CRMツールとLINEをAPIで連携させることで、システム間でリアルタイムに顧客情報を同期できるようになります。これにより、各チャネルで得たユーザーの行動や属性データを即時に活用し、ブレのない顧客体験を構築することが可能になります。
Webフォーム入力と同時にLINEでフォローアップ
資料請求や問い合わせのWebフォーム送信と同時に、LINEを通じてサンクスメッセージやフォローメッセージを自動で配信する運用が可能です。
生命保険会社B社では、LINE公式アカウントとフォームをAPIで連携し、ユーザーに対する即時フォローを自動化。これにより、顧客対応のスピードと信頼感を高め、資料請求後の離脱を防止する効果を得られています。
出典:TORCHLIGHT「LINE×CRMの活用を最大化するAPI連携とは?」
購入完了時にLINEで配送通知・サンクスメッセージを送信
ECとの連携によって、購入完了をトリガーにLINEで配送状況の通知やお礼メッセージを送ることもできます。
「CRM PLUS on LINE」では、Shopifyと連携することで、購入完了後にLINEで自動的にサンクスメッセージや発送連絡を送信できる仕組みを提供しています。
出典:CRM PLUS on LINE「Flex Messageでリッチなメッセージを配信する」
ユーザー行動に応じてセグメントを更新しリッチメニューを自動切り替え
LINEのMessaging APIを活用すると、ユーザーのクリックやリアクションなどのアクションに応じて、その場でセグメント情報を更新し、表示されるリッチメニューを自動で切り替えることができます。
たとえば、「キャンペーンAに参加したユーザー」にはクーポン付きのリッチメニューを、「参加していないユーザー」には案内メニューを表示させるといった出し分けが実現します。
出典:LINE Developers「リッチメニューを使用する」
LINE CRM施策のよくある失敗例と注意点
LINEとCRMの連携は非常に効果的な手法ですが、適切な運用ができなければ期待した成果が出ないどころか、かえって業務負荷を増やす原因にもなります。
ここでは、現場でありがちな失敗とその回避ポイントを紹介します。
顧客セグメントを細かくしすぎて混乱する
配信の効果を上げようと、顧客を年齢・地域・購入履歴などで細かく分けすぎてしまうケースがあります。
しかし、セグメントが増えすぎると管理が煩雑になり、どのグループにどんなメッセージを送るべきか混乱することに。
さらに、十分なデータ量がないままセグメントを切ると、逆に成果が出にくくなります。
対策:最初は「新規・既存」や「リピート回数別」などシンプルな軸から始め、徐々に精度を高めていくのが現実的です。
ツール導入で満足し、使いこなせない
LINE CRMツールを導入しただけで「施策が進んだ」と感じてしまい、その後の運用や設定が放置されてしまうことも多く見られます。
結果として「結局LINEで何もできていない」という状態になりがちです。
対策:運用ルールを最初に整備し、ツールの初期設定・コンテンツ設計・配信スケジュールなどを明確にしておくことが重要です。外部ベンダーからの伴走支援やトレーニングの活用も効果的です。
API制限や仕様を理解せずに進めてしまう
LINE公式APIや連携ツールには、仕様上の制約や料金発生のタイミングが細かく定められています。
たとえば「無料メッセージ数を超えると1通あたり〇円発生」「配信タイミングに制限あり」といった点を見落としていると、想定外のコストや技術的制限に悩まされます。
対策:導入前に公式APIやツールのマニュアルを確認し、「できること・できないこと」を正しく把握しておきましょう。必要であれば、専門のパートナー企業に相談するのも一つの手です。
コンテンツの配信頻度やタイミングが適切でない
どれだけ良いセグメントを作っても、配信内容や頻度がユーザーの期待に合っていないと、逆にブロックや離脱につながる可能性があります。
対策:開封率やブロック率のデータを見ながら、ユーザーにとって適切なタイミング・頻度を見極め、内容のチューニングを続けましょう。
社内の運用体制が整っていない
LINEとCRMの連携は、マーケティング部門だけでなく、システム・カスタマーサポートなど複数の部署が関与する場合が多いため、社内調整が不十分だと施策が滞ります。
対策:導入段階で関係部署を巻き込み、役割分担や運用フローを事前に設計しておくことが重要です。定期的な振り返りやナレッジ共有の仕組みを持つことで、継続的な改善も促せます。
このように、LINE CRM施策を成功させるには、「機能を使うこと」以上に、「使い方」や「運用体制づくり」が鍵となります。
実装だけで満足せず、データの見直し・運用の最適化を丁寧に積み重ねていくことが、成果への近道です。
導入のステップと運用体制づくり
LINEとCRMを連携させた施策を成功させるためには、導入から運用までを段階的かつ着実に進める計画が不可欠です。各ステップにおいて明確な目的とチェックポイントを持つことで、施策全体の精度と再現性を高めることができます。
導入ステップの例
1. 現在のCRM環境やLINE活用状況を整理
まずは、現在利用しているCRMシステムの仕様(データ構造・ID管理方法・APIの有無など)を正確に把握します。
加えて、既存のLINE公式アカウントがある場合は、配信履歴やフォロワー数、開封率などの運用実績も確認します。
この整理が甘いと、連携に必要な前提条件が漏れ、技術的なトラブルや要件漏れにつながる恐れがあります。
2. LINE連携の目的とKPIを定める(LTV向上/再購入率改善 など)
導入のゴールを明確に定めることが、その後の設計全体に方向性を与えます。
KPIは「フォロワー増加」など表面的なものにとどまらず、「LINE経由の売上比率」「ブロック率の低減」など、CRM連携だからこそ実現できる数値を重視しましょう。
施策単位でのゴールも決めておくことで、PDCAを回しやすくなります。
3. 必要なツールを比較検討し、試用・デモで検証
市場にはLINE連携に対応したCRMツールが多数存在し、それぞれ得意領域や機能構成が異なります。
比較の際は「配信の自動化レベル」「セグメント設定の柔軟性」「LINEのUIとの一貫性」など、実運用に直結する観点を重視しましょう。
可能であれば無料トライアルやデモを通じて、実際の画面や操作感を事前に確認することが重要です。
4. CRM側のID連携設計・API設定などの技術要件を詰める
LINEとCRMを安全かつ正確に連携するためには、技術的な仕様設計が不可欠です。
LINEのユーザーIDとCRM上の会員IDをどのように紐づけるか、同意取得はどう行うか、APIキーやWebhookの設定に関しても事前に詰めておく必要があります。
システム部門との連携やセキュリティポリシーの確認もこのフェーズで行います。
5. 初期キャンペーンや施策の設計・配信スケジュールを策定
運用開始直後は、短期間で効果を測定できる施策から始めるのが理想的です。
たとえば「LINEフォロワー向け初回購入クーポン」や「セグメント別のステップ配信」など、成果が見えやすく、ユーザーにも利便性が伝わりやすい施策を優先します。
配信タイミング、文面、ターゲティングのルールもこの時点で明確に決めておきましょう。
6. 実行しながら開封率・ブロック率などのデータを分析し改善
施策を実行したあとは、配信レポートやCRMデータをもとにした結果分析が不可欠です。
開封率・クリック率・ブロック率・CVRなど、KPIごとの指標をトラッキングしながら、文面や配信頻度の見直し、セグメント条件の最適化などを繰り返します。
可能であれば、週次または月次の振り返りを運用プロセスに組み込みましょう。
また、運用体制としては、マーケティング・システム・カスタマーサポート部門が横断的に関わる体制をあらかじめ整備しておくことが重要です。
たとえば、施策設計はマーケチーム、API設定は情報システム部門、問い合わせ対応やブロック率の管理はCSチームが担うなど、役割分担を明確にし、SlackやNotion、定例ミーティングなどで連携ルールを明文化しておくことが推奨されます。
このように導入〜運用までのステップを体系化することで、属人化を防ぎながら、LINE CRM施策の効果を最大化できます。
まとめ
LINEとCRMを連携させることは、単なるメッセージ配信の最適化にとどまらず、顧客一人ひとりの行動や属性に基づいたパーソナライズされたコミュニケーションを可能にします。
ユーザーが日常的に使い慣れているLINEというプラットフォームを通じて接点を持つことで、メールやSMS以上に高い開封率や反応率が期待できるのはもちろんのこと、継続的な関係構築にも大きく寄与します。
また、連携に用いるツールやAPIの選定次第で、セグメント配信やステップ配信、IDベースのシナリオ設計といったマーケティング精度の向上も実現できます。
導入にあたっては、料金体系や機能面の比較に加えて、自社の組織体制やリソース、目的に合致した運用フローを構築できるかどうかが成功の鍵となります。
CRMの機能をLINEという生活導線の中に落とし込むことができれば、顧客接点の質と量を飛躍的に高めることが可能です。
競争が激化する中で、LINEとCRMの連携を戦略的に活用することは、これからの時代におけるマーケティングの中核となる取り組みといえるでしょう。
※2:ecforce導入クライアント38社の1年間の平均データ / 集計期間 2021年7月と2022年7月の対比
※3:事業撤退を除いたデータ / 集計期間 2022年3月~2022年8月