この記事でわかること
パーソナライズサービスは、一朝一夕で生まれたものではありません。
かつて「ダイレクトマーケティング」や「One to Oneマーケティング」という言葉が生まれたように、顧客それぞれに最適化されたマーケティング、ひいては顧客へのサービスとしての「パーソナライズ」は一つの理想とされてきました。
D2Cにおいても例外ではなく、「パーソナライズD2C」と呼ばれるパーソナライズを主軸においたブランド、サービスも次々と誕生しています。
前回、サクボでは「パーソナライズD2Cまとめ」と題して11ブランドをまとめましたが、その際に「パーソナライズ」と「カスタマイズ」の違いに頭を悩ませました。
今回はそもそも「パーソナライズ」とは何かについて考えつつ、「カスタマイズ」とのたった一つの本質的な違いを紐解いていきたいと思います。
続々と誕生する多領域のパーソナライズD2C
まずは「パーソナライズD2Cまとめ」のレビューです。
「パーソナライズD2Cまとめ。11ブランドをヘルスケア・ヘアケア・フード&ドリンクの3領域で特集!」
タイトルにもあるように、すでに様々な領域でパーソナライズD2Cが世に出ています。
パーソナライズする上での前提として、顧客個人の性質(例えば髪質など)や趣味嗜好が多数存在し、提供できる商品が多種多様であることが挙げられます。
そうでないと、せめて複数選択肢から顧客に好きなものを選んでもらえば良いので、わざわざパーソナライズする必要はないからです。
この前提に立つとサプリメントやシャンプーはパーソナライズに適しているため、ローンチ時期も比較的早かったですし、「パーソナライズD2Cまとめ」でも多く登場しました。
しかし、今ではコーヒーのパーソナライズD2C『PostCoffee(ポストコーヒー)』やスムージーのパーソナライズD2C『GREEN SPOON(グリーンスプーン)』など、ユニークなブランドも続々と誕生しています。
パーソナライズサービスの背景にある時代の流れ
それでは念のため明確にしておきたいのですが、そもそも「パーソナライズサービス」とは一体なんでしょうか。
端的に説明すると、顧客に対して同じサービスを提供するのではなく、一人ひとりに最適化したサービスを展開するのが「パーソナライズサービス」です。
パーソナライズが注目を集める背景には、企業 / ブランドが不特定多数の顔の見えない顧客に対してメッセージを送るマスコミュニケーションから、インターネットやテクノロジーの浸透・革新によって、個別最適化されたOne to Oneコミュニケーションへと移り変わってきた大きな時代の流れが存在します。
今まではモノや体験をパーソナライズする難易度が高かったので、ユーザーに最適なコンテンツを露出するといった意味でWeb広告領域で「パーソナライズ」が謳われることがよくありました。
しかし、昨今D2Cの勃興と相まってモノや体験をパーソナライズする潮流が強まっているので、前述の通り多数のブランドが誕生しています。
顧客にとっては、最大公約数として提案される体験よりも、自分の嗜好に近いものを求めるのは当然のことです。これからも「パーソナライズD2C」が増えていくことは、必然だと言えるでしょう。
プロダクトを送って終わりではない「パーソナライズD2C」
パーソナライズサービスを理解したところで、「パーソナライズD2C」について改めて考えてみましょう。
これまた端的に言えば、「パーソナライズD2C」は、一人ひとりに最適化された体験を提供するサービスをD2Cで展開することを指しています。
例えばPostCoffeeは、10個の質問に答えることで一人ひとりに最適化されたコーヒーボックスがポストに届き、あなただけのコーヒー体験を楽しむことができます。
つまりパーソナライズD2Cは購入前の顧客とのタッチポイントにおいて、アンケートやクイズを行うことで事前に顧客の嗜好を理解することが特徴として挙げられるのです。
あとはその嗜好に合わせてプロダクトを送るのですが、送って終わりではなく、顧客のニーズと合致しなければ顧客に継続意思がある限りプロダクトを変えて提案し続けます。
これらの一連のサービスをもってして、パーソナライズD2Cは成立します。
大事なことは、D2Cが「体験 / コト」を提供する以上、プロダクト(モノ)を送って終わりではないということです。
パーソナライズD2Cとカスタマイズの違い
最後に似た言葉として挙げられる「カスタマイズ」との違いを挙げて、「パーソナライズD2C」の理解を深めましょう。本質的な違いは、たった一つです。
パーソナライズとは違い、カスタマイズはプロダクトやサービスを顧客が選びます。
前述の通り、パーソナライズD2Cの場合、基本的に顧客はアンケートやクイズの結果を元にプロダクトをリコメンドされますが、これはブランドがパーソナライズするので、顧客からすると受動的なアクションです。
一方、カスタマイズの場合は顧客が主語となり、顧客が自ら複数商品の中から選びます。
よって、こう言い換えることができるのです。
・パーソナライズ=顧客に合わせる
・カスタマイズ=顧客が合わせる
実は「パーソナライズD2Cまとめ」の調査段階では、複数の商品が存在して一見パーソナライズD2Cに見えるものもあったのですが、「顧客が合わせる」ものは、パーソナライズD2Cとしませんでした。
パーソナライズD2Cは、顧客にいかに合わせるかのロジックが大事な要素です。複数のプロダクトを用意しても、顧客に合わせることができなければ顧客は満足しません。この違いを理解することで、より良いパーソナライズD2Cを志向することができるはずです。
※2:ecforce導入クライアント38社の1年間の平均データ / 集計期間 2021年7月と2022年7月の対比
※3:事業撤退を除いたデータ / 集計期間 2022年3月~2022年8月