この記事でわかること
EC業界において、顧客獲得だけでなく顧客の育成=ナーチャリングの重要性が年々高まっています。とくにリピート購入・LTV(顧客生涯価値)最大化に注力する段階では、「マーケティングオートメーション(以下、MA)」ツールの活用がカギになります。
本記事では、MAの基本から導入の考え方、ツール比較、実際の活用事例までを網羅しています。施策設計やツール選定の参考になれば幸いです。
MAとは?マーケティングオートメーションの基本
マーケティングオートメーション(MA)とは、見込み顧客へのアプローチ・育成・管理を自動化する仕組みのことです。メール・LINE・Web接客・SNS広告などのチャネルを横断して、顧客の興味関心に合わせた最適なメッセージ配信が可能になります。
ECにおけるMA活用は、主に以下のような目的で活用されます。
- 離脱防止・再訪促進
- 初回購入後のフォロー
- リピーター育成
- 休眠ユーザーの掘り起こし
- キャンペーン施策の自動配信
これらを自動で行えるMAは、少人数体制のECチームにとって大きな武器となります。
EC事業者がMAを導入するメリット
離脱防止や再購入の自動化
「カートに商品を入れたのに離脱したユーザー」「初回購入後に音沙汰のないユーザー」など、ECにおける機会損失を減らすための自動アプローチが可能です。
たとえば「カゴ落ちリマインドメール」や「購入後のフォローアップメッセージ」など、手動だと実現しにくい施策をMAが担ってくれます。
顧客ごとの最適化(パーソナライズ)
閲覧履歴・購買履歴・流入経路などの情報をもとに、「Aさんには新作案内」「Bさんにはセール品」といったように、一人ひとりに合ったメッセージを配信できます。これにより、顧客の関心を引きやすくなり、CVRやLTVの向上が期待できます。
限られたリソースでも成果が出やすい
施策を一度設計すれば、その後は自動的に実行できるため、少人数体制のECチームでも継続的に成果を上げやすくなります。属人的な配信業務から解放され、戦略設計やクリエイティブ改善など、本質的なマーケティング業務に集中できるようになります。
ECに強いMAツールの主な機能
EC事業者がMAツールを導入する際には、「自社の運営スタイルやカート連携にどれだけフィットするか」が非常に重要な観点になります。特にEC向けのMAツールには、以下のような機能群が標準で備わっていることが多く、これらの有無がツール選定の分かれ道になります。
マルチチャネル対応
メール・LINE・SMS・Web接客・SNS広告など、複数チャネルでの一元配信機能が基本です。
たとえば「LINEでカゴ落ち通知」「メールでレビュー依頼」「Web上で再購入バナー表示」など、ユーザーの行動や段階に応じて最適なチャネルを使い分けることが可能になります。
- 商品をカートに入れたが購入に至っていないユーザー → LINEでリマインド
- 購入から7日経過後 → メールでレビュー依頼
- 休眠中のユーザー → SNS広告で再接触
顧客データの統合・セグメント管理
購買履歴・閲覧履歴・会員ステータス・流入経路などを横断的に統合し、精度の高いセグメント作成が可能になります。
EC運営でよく使う「購入回数が1回だけの人」や「最近3か月で購入がない人」などの条件も、画面上の操作だけで簡単に設定できます。こうした直感的な操作ができるのは、EC向けに最適化されたMAツールならではの特徴です。
シナリオ配信機能(ステップ配信)
ユーザーの行動やステータス変化に応じて、自動的にメッセージを段階的に配信する機能です。
シナリオ例:
- 購入後1日:サンクスメール
- 購入後5日:商品の使い方ガイド
- 購入後10日:レビュー依頼
- 購入後30日:再購入クーポン配布
このように、あらかじめ設計しておいたフローに従って配信が自動で行われるため、工数をかけずに寄り添ったマーケティングが実現できます。
スコアリング・属性管理
ユーザーのアクション(例:商品閲覧、メルマガ開封、購入など)に応じてスコアを付与し、購買意欲の可視化をする機能です。これにより、「スコアが高い=関心が強い」ユーザーを優先的にアプローチするなど、戦略的な配信対象の絞り込みができるようになります。
また、性別・年齢層・購買カテゴリなど、CRM的な属性管理との掛け合わせにより、精緻なパーソナライズも可能になります。
レポート・効果測定機能
どの配信が何件開封され、何件クリック・購入されたかをグラフや表で可視化できる機能です。多くのEC向けMAツールでは、KPIに応じたカスタムダッシュボードを作成できるほか、A/Bテストの結果比較、チャネルごとのCVR分析も可能です。
例:
- LINE vs メールの開封率比較
- シナリオAとBの売上インパクト比較
- 時系列でのLTV推移グラフ
ECならではのチェックポイント
上記機能を前提に、EC特化型MAツールを選ぶ際には次のような点も必ずチェックしておきましょう。
チェック項目 | 解説 |
---|---|
カート連携 | 自社で利用しているカートシステムとリアルタイムでデータ連携できるか |
定期購入や単品通販への対応 | 継続購入前提のCRMテンプレートがあるか |
LINEとのネイティブ連携 | API連携で配信できるか or 自社運用で完結するか |
テンプレートの柔軟性 | EC業種ごとに使える施策テンプレが用意されているか |
EC事業者におすすめのMAツール5選
ここでは、EC業界で導入実績のある代表的なMAツールを5つご紹介します。
1. ecforce ma
- 概要:統合コマースプラットフォーム「ecforce」と連携し、顧客セグメントに応じたCRM施策の実行および施策ごとの売上分析を行えるアプリケーションです。施策の準備・実施・分析を最適化し、リピート促進・LTV増加を効率的に実現します。
- 公式サイト:https://ec-force.com/
- 運営会社:株式会社SUPER STUDIO
2. KARTE
- 概要:Webサイトやアプリ内での顧客体験(CX)向上を目的としたプラットフォームです。リアルタイムでユーザーの行動を可視化し、サイト内外での顧客データ活用を通じて、最適なコミュニケーションを実現します。
- 公式サイト:https://karte.io/
- 運営会社:株式会社プレイド
3. b→dash
- 概要:ノーコードでデータの連携・取込・加工・統合・活用を実現するデータマーケティングプラットフォームです。マーケティングに必要な機能をAll in Oneで提供し、データ活用の効率化とスピードアップを支援します。
- 公式サイト:https://bdash-marketing.com/
- 運営会社:株式会社データX
4. Braze
- 概要:顧客との関係を深めるためのカスタマーエンゲージメントプラットフォームです。リアルタイムのデータを活用しながら、メール・アプリ・SNSなど複数チャネルで、ユーザーごとに最適化されたメッセージを配信できます。
- 公式サイト:https://www.braze.com/ja
- 運営会社:Braze Inc.
5. うちでのこづち
- 概要:EC事業者を始めとする850社以上に導入されているBtoC特化型CRMツールです。LINE・メールをはじめとしたチャネルで顧客接点を自動構築し、CRMのリソース削減とLTV最大化を支援します。
- 公式サイト:https://www.uchideno-kozuchi.com/
- 運営会社:株式会社E-Grant
気になるツールがあれば、公式サイトをご確認ください。
MA導入におけるよくある課題と対処法
MAツールを導入することで、顧客育成やLTV向上に取り組みやすくなる一方で、「うまく使いこなせなかった」「結局配信だけで終わってしまった」といった声も少なくありません。
ここでは、MA導入・運用の現場でよく見られる課題と、その対処法を整理してご紹介します。
社内でのMA理解不足と期待値のズレ
MAはあくまで「マーケティング施策を効率化・自動化するための仕組み」であり、導入しただけで成果が出るわけではありません。しかし、現場では「とりあえず導入すれば何か改善するはず」といった、ツールへの過信が起きがちです。
社内メンバーのMA理解が浅いまま運用が始まると、「誰がシナリオを設計するのか?」「成果指標はどこに置くのか?」といった基本設計があいまいになり、結局、配信するだけのメルマガツールになってしまうケースも少なくありません。
対処法としては、初期段階でMAの目的と自社で何を実現したいのかを言語化し、社内で共通認識を持つことが重要です。可能であれば、ベンダーによる導入トレーニングやセミナー等を活用するのも有効です。
担当者の属人化による運用停止リスク
ツールの操作や施策設計が特定の担当者に偏ってしまい、休職・退職・異動などで運用が一気にストップしてしまう属人化リスクも、多くの企業で見られる課題です。
MAツールは初期設定だけでなく、継続的な運用・改善によって効果を発揮するため、担当者の育成やマニュアル整備が不十分だと、ツールが次第に使われなくなってしまうケースもあります。
対応策としては、シナリオの設計意図や配信ロジックをドキュメント化し、誰でも運用できる体制をつくることに加え、週次で配信内容を見直すなど、運用負荷を最小限に抑えるスキーム設計が有効です。
要件に合わないMAツールの選定ミス
導入時に「有名だから」「安かったから」といった理由だけでツールを選ぶと、いざ運用フェーズに入ってから「LINE連携ができない」「このカートだとリアルタイムで情報取れない」などのできないことに直面しがちです。
特にECにおいては、「使っているカートシステムとの親和性」「リピート販促のためのテンプレートがあるか」など、現場の目的に合ったツールを選ぶことが極めて重要です。
失敗しないためには、ツールの機能だけでなく、「実現したい施策が具体的に叶うかどうか」までベンダーとすり合わせてから契約に進むことが推奨されます。
KPI未設定による成果の可視化不足
導入時点では「なんとなく必要そう」で始めたMAツールも、数ヶ月後には「これって成果出てるの?」と見えづらくなってしまうパターンがよくあります。
配信数・開封率・CVR・LTVなど、見るべき指標が複数ある中で、どこに注力すべきか定まっていないと、運用自体が迷走してしまうのです。
この課題を避けるには、導入前の時点で施策ごとに追うべきKPIを明確にし、ツール上でトラッキングできる設計にしておくことが重要です。また、毎月の数値レビュー会を設けて定期的に社内共有することで、改善サイクルが自然と回るようになります。
ECでのMA活用事例
ここでは、企業によるMA活用事例を3つ紹介します。
GRL(グレイル)|CVR13%アップを実現した“送料無料”の仕掛け
若年層向けアパレルEC「GRL(グレイル)」では、購入直前での離脱が課題に。プロダクト分析ツールのAmplitudeと、パーソナライズ配信ツールのMoEngageを活用し、ユーザー行動を分析した結果、「送料無料」に触れたユーザーのCVRが高い傾向が明らかになりました。そこで、送料無料条件までの残り金額を表示するポップアップを導入し、さらにカート放棄後1時間以内にリマインド通知を配信。この一連の改善施策により、CVRは13%向上、購入点数は1.6倍、購入金額は1.2倍にアップしました。
- 送料無料条件の残額をポップアップで訴求
- カート放棄ユーザーにPUSH通知でリマインド
- CVR13%向上、購入点数1.6倍、金額1.2倍に改善
参照URL:https://growth-marketing.jp/cases/case_grl_amplitude_moengage/
株式会社B・MORE|メールと資料DLの導線設計で商談化率が大幅改善
アパレルOEM/ODM支援のB・MOREは、新規BtoB事業「kugulu」の立ち上げにあわせて、MAツール「BowNow」を導入。初回接点後の育成や商談への導線不足が課題でした。そこで、見積もりや生産フローをまとめた資料をLPに集約し、メール配信とフォーム導線で関心度の高いユーザーを可視化・育成。その結果、メール送付ユーザーの約1/3が実商談に発展し、新規事業を短期間で自走化できました。
- BowNowを導入し、新規BtoB事業の商談導線を設計
- 資料DL×メールでユーザーの興味を育成
- メール配信の約1/3が商談化
参照URL:https://bow-now.jp/media/cases/bmore/
株式会社フルオーツ|LTV改善と顧客数倍増を実現したecforce ma活用
ヴィーガン&グルテンフリースイーツブランド「fruOats」は、定期購入・継続購入によるLTV最大化が重要なKPIでした。そこで導入したのが、ecforce maです。同社はまず、初回購入後のレビュー依頼メールを自動化し、購入体験をしっかり定着させるコミュニケーションを実施。加えて、LINEとの連携により、定期便のリマインドやアップセルの提案も自動で行える体制を構築しました。その結果、CVRは110%改善、顧客数は半年で2倍に増加。LTVも着実に向上しており、少人数運営でも高成果を出せるEC体制が完成しました。
- ecforce ma+LINE連携で継続購入促進
- レビュー依頼・アップセル施策を自動化
- CVR110%改善、顧客数2倍、LTVも改善
参照URL:https://ec-force.com/user_voice/fruoats
EC事業者がMAを活用するためのポイント
MAツールは、ただ「配信を自動化するためのツール」ではありません。本来の価値は、顧客一人ひとりの関係性を長期的に育て、ロイヤル顧客を増やす育成の仕組みを構築することにあります。
ここでは、MAを効果的に活用するために押さえておきたい3つの視点を深掘りして解説します。
1. 顧客育成を自動化する仕組みづくりが重要
MAの本質は「ステップ設計とパーソナライズによる育成の自動化」です。たとえば、以下のような段階的アプローチが考えられます:
- 初回購入直後:商品の使い方や活用シーンを案内(安心と満足感の提供)
- 購入1週間後:レビュー投稿依頼(コミュニケーション促進+UGC強化)
- 休眠3週間後:パーソナライズされた再購入提案(再活性化)
このように購入前後のタイミングや心理状態に合わせた設計が重要であり、LTV(顧客生涯価値)を意識した運用が鍵となります。
2. スモールスタートで施策を磨き上げる
MAに初めて取り組む企業ほど、「機能が多くて何から始めていいか分からない」と感じがちです。しかし、最初から完璧な設計を目指す必要はありません。むしろ、1施策(たとえばカゴ落ちフォローや初回購入フォロー)から試し、結果を見ながら改善するスモールスタート&PDCAの考え方が推奨されます。
たとえば:
- 第1フェーズ:1シナリオで成果を検証(例:カゴ落ちフォロー)
- 第2フェーズ:A/Bテストで件名やタイミングを改善
- 第3フェーズ:他のシナリオ(休眠復活、誕生日施策など)に横展開
3. 社内に「成果を追う担当者」を明確に置く
MA運用がうまくいかない原因の多くは、「誰が何をやるのか」が曖昧なままスタートしてしまうことにあります。
とくに少人数のECチームでは、マーケティング/分析/設定すべてを一人が抱えがちですが、これでは継続的な改善が難しくなります。
理想的には以下のように、最低限の役割分担を明確にしておくとスムーズです。
役割 | 担当すること |
---|---|
マーケ担当 | 配信シナリオの設計、KPI設計、効果分析 |
クリエイティブ担当 | 文章作成・画像制作(内製 or 外注でもOK) |
運用担当(またはベンダー) | ツール設定・配信の実行・データ連携 |
また、ツールベンダーのサポートを活用して、設定や分析部分を外部化するのも有効です。ポイントは成果を追い続ける人が社内にいるかどうかです。そこがMA成功の大きな分かれ道になります。
LTV向上につながるKPIの設計を意識する
多くの企業が「開封率」「クリック率」に終始してしまいがちですが、MAは行動の変化を起こしてこそ意味があるツールです。
- 配信からの再訪率
- 休眠復活の割合
- 継続率・定期率の変化
売上やLTVに直結する指標を設定し、それを改善するためのMA施策を考えるという視点が、単なる配信ツールとの差を生みます。
MAツールはどのタイミングで導入すべき?
MAツールの導入について判断する際、多くの企業が悩むのが「いつから導入すればいいのか?」というタイミングの問題です。導入の判断を間違えると、せっかくのツールが使われないまま放置されてしまうケースも少なくありません。
ここでは、成果につながりやすい3つの導入タイミングと、よくある失敗例や迷ったときの判断基準について解説します。
目安になる3つの導入タイミング
1. 新規顧客の獲得が安定してきたとき
最初の目安は「ある程度の新規流入が確保できるようになった段階」です。
スタートアップ期では新規顧客の獲得に注力しがちですが、ある程度の購入者が集まり始めたら、リピートにつなげる仕組みが必要になります。
たとえば、初回購入後に自動で「レビュー依頼」「再購入促進クーポン」を送るなど、ナーチャリングの自動化を目的にMAを導入する事例が多く見られます。
2. リピート率が課題として顕在化したとき
「新規は獲れているのに、LTVが伸びない」「2回目以降の購入率が低い」という課題が浮上してきた段階も、MA導入のタイミングとして最適です。
ここでは、休眠ユーザーの掘り起こしや、ステップメールによるロイヤル化といった施策が効果を発揮します。
ユーザーとの継続的な接点を、自動かつパーソナライズして設計できる点がMAの強みです。
3. 業務の属人化・非効率さが顕在化してきたとき
配信業務が担当者の手動作業に頼りきっていたり、PDCAが回せない状態が続いていると、マーケティング活動が頭打ちになります。
「キャンペーン配信のたびに同じ作業を繰り返している」「担当が休むと配信が止まる」といったケースでは、MAを使って“仕組み化・再現性のある運用”に切り替えることが必要です。
焦って導入して失敗するケースも
一方で、「周囲が使っているから」「とりあえず必要そうだから」といった理由だけでMAを導入すると、失敗するケースも多くあります。たとえば…
- 顧客データが十分に蓄積されていない状態で導入
シナリオが組めず、セグメントも作れずに停止 - 配信コンテンツ(メール文面や画像)が揃っていない
テンプレートだけでは効果が出ず、運用が形骸化 - KPI設計が曖昧で「成果」が測れない
効果が見えず、社内に説明できずに予算停止
実際に「稟議が通ってツールは契約したのに、誰も触れないまま半年が経過していた」といった例も珍しくありません。導入すること自体が目的になってしまうと、本来の成果にはつながりにくいのです。
判断に迷ったときのチェックポイント
最後に、「今、MAを入れるべきか?」を判断するための簡単なチェックリストを紹介します。
※✓の数が多いほど、導入に適したフェーズです。
チェック | チェックポイント(判断基準) |
---|---|
□ | 新規顧客は月50人以上いる |
□ | 継続率やLTVに伸び悩んでいる |
□ | メルマガやLINE配信が手動で面倒 |
□ | セグメント配信がうまくできない |
□ | 改善したいが何から手をつけていいか分からない |
3項目以上にチェックがつく場合、MAツールの導入・運用によって業務効率と成果の両立が可能になるフェーズに入っていると言えるでしょう。
必要なタイミングで適切にMAを導入することができれば、少人数でも売上・LTVの最大化を図る強力な武器になります。「いま入れるべきか?」と迷ったら、現状の課題とフェーズを冷静に見極めることが第一歩です。
MAと他ツール(LINE・CRM・メルマガ)との違いと使い分け
MAは「メルマガもLINEもCRMも、すべて代替できる万能ツール」と捉えられがちですが、実際にはそれぞれのツールと役割を分担し、連携して運用する前提で設計されています。
各ツールの機能や目的を正しく理解したうえで、どのようにMAと連携し、情報を活用していくかを整理することが、成果を最大化するポイントとなります。
ツール別の役割とMAとの連携ポイント
ツール名 | このツールでできること | MAと組み合わせてできること/連携内容 |
---|---|---|
メルマガ | 情報を一斉に配信する | MAのシナリオで条件に応じたメルマガを自動配信 |
LINE | 即時性のある個別配信 | 購入後のフォローやクーポン配布をMAから自動配信 |
CRM | 顧客情報を管理・蓄積する | CRMデータをもとに、MAでセグメント配信や施策設計 |
MA | 顧客育成・配信を自動化する | 各チャネルを統合して一貫した施策を展開 |
活用イメージの一例
- LINEでのカゴ落ちリマインドをきっかけに、MAで再購入を促すステップ配信を実施
- CRMでLTV上位のロイヤル顧客を抽出し、MAでアップセル施策を展開
- 新商品の情報をメルマガで一斉配信し、反応ユーザーに対してMAで追従フォローを実施
MAは、CRM・LINE・メルマガなどの各種チャネルを統合し、最適なタイミングで顧客にアプローチするための中核的な役割を担うツールです。
単体で完結するものではなく、既存のチャネルと連携しながら、一貫した顧客コミュニケーションを実現する仕組みとして活用することが重要です。
MAツール導入前に準備すべき社内体制とは?
MAツールを導入し、効果的に運用していくためには、あらかじめ社内の役割と体制を明確にしておくことが不可欠です。
以下に、MA活用において重要となる主なリソースと、それぞれの役割を整理します。
MAを運用するために必要な主なリソース
- マーケティング担当
配信シナリオの設計やコンテンツ作成、KPIの設定と進捗管理を担います。成果につながるコミュニケーション全体の設計を行う役割です。 - 運用・分析担当
MAを通じて実施した施策の効果測定、レポート作成、改善案の立案を担当します。日常的なPDCAを推進する役割です。 - ツール設定担当(またはベンダー)
データ連携や初期設定、テンプレート設計、トラブル対応など、システム面での実装と運用を支援します。ベンダー側に依頼するケースも多い領域です。
組織規模に応じた体制づくりが重要
これらの役割は、専任体制で分担することが理想ですが、少人数のチームでは1人が複数の役割を兼任するケースも一般的です。
その場合でも、導入前の段階で「誰が何を担うのか」を明確にし、属人化や認識のズレを防ぐことが成功への鍵となります。
まとめ
EC業界では新規顧客の獲得競争が激化しており、既存顧客との関係性をいかに強化・継続するかが、企業成長の鍵を握る要素となりつつあります。その中で、MAツールは「顧客育成の仕組みを構築し、LTV(顧客生涯価値)を最大化する基盤」として大きな役割を果たします。
本記事では、MAの基礎から導入すべきタイミング、代表的なツール、活用事例、運用体制の整備までを幅広くご紹介しました。
重要なのは、完璧を目指すのではなく、実行可能な範囲から着実に取り組みを始めることです。MAは単なる配信ツールではなく、事業の収益構造そのものをリピート型に最適化するための戦略的ツールと位置づけるべきです。初回購入後のフォローや、離脱防止、継続促進といった小さな施策の積み重ねが、将来的な売上やLTVの向上につながります。
もし現在、「MA導入を検討しているがタイミングを迷っている」「属人化した運用を改善したい」とお考えであれば、まずは自社の現状課題と成長フェーズを整理し、導入によって改善できる領域を明確にすることが重要です。小さな一歩からでも運用を開始し、データに基づいた継続的な改善を積み重ねていくことで、MAは確実に成果を生み出す仕組みへと進化します。最適な導入タイミングを見極め、次なる成長戦略の一手としてご活用ください。
※2:ecforce導入クライアント38社の1年間の平均データ / 集計期間 2021年7月と2022年7月の対比
※3:事業撤退を除いたデータ / 集計期間 2022年3月~2022年8月