この記事でわかること
※この記事は 時点の情報をもとに執筆しています。

損益計算書に出てくる経常利益とは、企業が通常の経営活動を通じて、安定してどれだけ利益を出せているかを表す指標です。
本業で得た営業利益に、受取利息や支払利息などの営業外の収益・費用を加えて計算されます。
そのため、会社の「平常時の稼ぐ力」を知る手がかりになります。
しかし、営業利益や当期純利益と何が違うのか?計算方法はどうするの?と多くの疑問を感じる方もいるのではないでしょうか。
この記事では、損益計算書における経常利益について、意味や役割、具体例や計算方法、他の利益との違い、さらに企業分析への活かし方までを、会計の知識がない方にも分かるように順を追って解説します。
経常利益を正しく理解することで、決算書の見え方が大きく変わるはずです。
関連するテーマについては、下記の記事もあわせてチェックしてみてください。
損益計算書(PL)の作り方|見方・手順・注意点・EC/D2C事業のPLシミュレーション
損益計算書における経常利益とは

損益計算書に書かれている「経常利益」とは、会社が普段の経営活動を通じて、どれくらい安定して利益を出せているかを表す数字です。
一時的な出来事ではなく、通常の経営が続いた場合に見込める利益を示している点が大きな特徴です。
会社の利益にはいくつか種類がありますが、経常利益は「会社の実力」を見るための代表的な指標として使われています。
営業利益だけでは分からない部分まで含めて確認できるため、決算書を読むうえで欠かせない存在です。
経常利益の定義
経常利益は、営業利益に営業外の収益と費用を加減して計算される利益です。
簡単に言うと、「本業のもうけ」に「お金の貸し借りや運用の影響」を足し引きした結果だと考えると分かりやすいでしょう。
たとえば、商品やサービスの販売で利益が出ていても、借入金の利息負担が大きければ、その分だけ利益は減ります。
逆に、余った資金を運用して利息や配当金を得ていれば、利益は増えます。こうした要素を含めた結果が、経常利益として表れます。
経常利益が「平常時の収益力」と言われる理由
経常利益が「平常時の収益力」と言われるのは、毎年くり返し発生する経営活動の結果を表しているからです。
土地の売却や災害による損失など、その年だけに起こる特別な出来事は、経常利益には含まれません。
そのため、経常利益を見ることで、「この会社は、特別なことが起きなくても、どれくらい安定して利益を出せているのか」を判断しやすくなります。
一時的な数字に左右されにくく、会社の本来の力を知るための目安になる点が、経常利益の大きな強みです。
経常利益を投資家や金融機関が重視する理由
投資家や金融機関が経常利益を重視する理由は、将来も同じように利益を出し続けられるかどうかを判断しやすいからです。
一時的に大きな利益が出ていても、それが特別な理由によるものであれば、継続性は期待できません。
その点、経常利益は通常の経営活動を前提とした利益のため、
- 安定した経営ができているか
- 借入や資金運用に無理がないか
といった点を読み取る材料になります。
決算書を初めて見る方にとっても、経常利益は「この会社は、普段どれくらい稼げているのか」を知るための、分かりやすい入口となる指標です。
経常利益と「経常損失」の違い
経常利益がマイナスになった場合、その状態を「経常損失」と呼びます。
これは、通常の経営活動を行った結果、利益ではなく損失が出ていることを意味します。
ただし、経常損失だからといって、必ずしも本業がうまくいっていないとは限りません。
たとえば、本業では利益が出ていても、借入金の利息負担が大きい場合などには、経常損失になることがあります。
そのため、経常利益を見るときは、数字だけで判断せず、理由にも目を向けることが大切です。
経常利益は損益計算書のどこに書いてある?

経常利益は、損益計算書の中間地点に記載されています。
ただし、初めて決算書を見る方にとっては、「どの数字が経常利益なのか分かりにくい」と感じやすい部分でもあります。
損益計算書フォーマットの書き方・構成を解説【無料テンプレート付】
損益計算書では、売上高からスタートし、いくつかの段階を経て利益が計算されていきます。
経常利益は、その流れの中で営業利益の次、税引前当期純利益の前に位置しています。
このセクションでは、まず損益計算書全体の構造を確認したうえで、営業利益・経常利益・税引前当期純利益がどのような順番で並んでいるのかを整理します。
あわせて、簡単な表を使いながら、経常利益が損益計算書のどこに書かれているのかを視覚的に分かりやすく説明していきます。
損益計算書の基本構造
損益計算書は、会社が一定期間にどのように利益を生み出したのかを、順番に分解して示した書類です。
売上高からスタートし、費用や収益を一つずつ加減しながら、最終的な利益へとたどり着く構造になっています。
この構造を理解するうえで大切なのは、「利益は一気に計算されるのではなく、段階ごとに意味を持って積み上がっている」という点です。
以下では、損益計算書で利益がどのような流れで算出されていくのかを、順を追って見ていきます。
利益が算出される流れ(売上〜当期純利益)
まず、商品やサービスの販売によって得た売上高から、仕入れや製造にかかった費用を差し引いたものが売上総利益(粗利益)です。
ここでは、商品やサービスそのものがどれくらい利益を生んでいるかが分かります。
原価が高すぎないか、価格設定に無理がないかを確認する段階です。
次に、売上総利益から、人件費や広告費、家賃などの販売費および一般管理費を差し引くと、営業利益が求められます。
営業利益は、本業でしっかり利益を出せているかどうかを見るための指標であり、会社の事業そのものの調子を表しています。
その営業利益に、受取利息や配当金などの収益を加え、支払利息などの費用を差し引いたものが経常利益です。
ここで初めて、本業の結果に加えて、資金の借り方や運用状況といった会社全体の経営の影響が反映されます。
さらに、不動産の売却益や災害による損失など、その年だけに発生した一時的な要因を加減すると、税引前当期純利益になります。
最後に、法人税などの税金を差し引いたものが、最終的に会社に残る当期純利益です。
利益の算出ステップ一覧表
上記の流れを、表で整理すると次のようになります。
| 段階 | 利益の名称 | 計算式 | この利益でわかること |
|---|---|---|---|
| ① | 売上総利益(粗利益) | 売上高 − 売上原価 | 商品やサービス自体が、どれくらいの利益を生んでいるかが分かる。原価が高すぎないか、価格設定に無理がないかを見る指標。 |
| ② | 営業利益 | 売上総利益 − 販売費・一般管理費 | 人件費や広告費などを差し引いたうえで、本業がしっかり利益を出せているかが分かる。本業の成績を判断するための重要な数字。 |
| ③ | 経常利益 | 営業利益 + 営業外収益 − 営業外費用 | 本業に加えて、借入や資金運用の影響も含めた「通常の経営全体」での稼ぐ力が分かる。会社の平常時の実力を判断する指標。 |
| ④ | 税引前当期純利益 | 経常利益 + 特別利益 − 特別損失 | 土地の売却や災害など、一時的な出来事を含めた利益が分かる。その年特有の要因がどれくらい影響したかを確認できる。 |
| ⑤ | 当期純利益 | 税引前当期純利益 − 法人税等 | 税金を支払ったあとに、最終的に会社に残る利益が分かる。配当や内部留保の原資となる数字。 |
このように見ると、経常利益は営業利益の次に位置し、特別損益の前にあることが分かります。
つまり経常利益は、「本業の結果」に「お金の借り方や運用の影響」を加えた、通常の経営状態を表す利益だと言えます。
また、土地の売却や災害など、毎年起こるとは限らない出来事は、経常利益には含まれません。
それらは「特別利益・特別損失」として、さらに下の段階で反映されます。
損益計算書の構造を押さえておくと、経常利益がなぜ会社の実力を判断する指標なのか、そして当期純利益だけを見て判断すると見誤りやすい理由が明確になります。
損益計算書に記載される5種類の利益

損益計算書には、「利益」という言葉が何度も登場しますが、実はすべて同じ意味の「利益」ではありません。
それぞれの利益は、どこまでの収益や費用を含めているかが異なり、役割もはっきり分かれています。
ここでは、損益計算書に記載される代表的な5種類の「利益」についての意味を整理します。
売上総利益(粗利益)
売上総利益(粗利益)は、売上高から売上原価を差し引いて計算される利益です。商品やサービスそのものが、どれくらい利益を生み出しているかを表しています。
この段階では、人件費や広告費などの経費はまだ含まれていません。
そのため、売上総利益を見ることで、原価が高すぎないか、価格設定に無理がないかといった点を確認できます。
「商品自体はきちんと儲かっているのか」を見るための、いちばん最初の利益だと考えると分かりやすいでしょう。
営業利益
営業利益は、売上総利益から、販売費および一般管理費を差し引いた利益です。
販売費および一般管理費には、人件費、広告費、家賃、通信費など、事業を運営するために必要な費用が含まれます。
営業利益を見ることで、本業がどれくらい利益を出せているかが分かります。
そのため、会社の事業そのものが順調かどうかを判断する際によく使われる指標です。
経常利益
経常利益は、営業利益に営業外収益を加え、営業外費用を差し引いた利益です。営業外収益には受取利息や配当金などが、営業外費用には支払利息などが含まれます。
本業の結果に加えて、お金の借り方や資金の運用状況まで含めた利益である点が特徴です。
このため、経常利益は「会社の平常時の実力」を表す指標として使われます。
営業利益が良くても、借入金の利息負担が大きければ経常利益は伸びません。
逆に、資金管理がうまくいっていれば、営業利益以上に経常利益が安定することもあります。
税引前当期純利益
税引前当期純利益は、経常利益に特別利益や特別損失を加減した利益です。
特別利益や特別損失とは、土地の売却や災害による損失など、毎年繰り返し発生するわけではない出来事による損益を指します。
この利益を見ることで、その年だけの特殊な要因が業績にどれくらい影響したのかを把握できます。
当期純利益
当期純利益は、税引前当期純利益から法人税などの税金を差し引いた、最終的な利益です。決算書のいちばん下に記載される数字で、「最終的に会社に残る利益」を表します。
配当や内部留保の原資となる重要な数字ですが、一時的な要因の影響も含まれるため、この数字だけで会社の実力を判断するのは注意が必要です。
5種類の利益比較一覧表
ここまで説明した5種類の利益を、役割ごとに整理すると次のようになります。
| 利益の名称 | 主に何を表しているか | どんなときに見るか |
|---|---|---|
| 売上総利益(粗利益) | 商品・サービスそのものの儲け | 原価や価格設定を確認したいとき |
| 営業利益 | 本業での利益 | 事業が順調かを判断したいとき |
| 経常利益 | 通常の経営全体での利益 | 会社の実力を見極めたいとき |
| 税引前当期純利益 | 一時的な要因も含めた利益 | その年特有の影響を確認したいとき |
| 当期純利益 | 税引後の最終利益 | 最終的な成果を確認したいとき |
このように、損益計算書にある利益はそれぞれ役割が異なります。
5種類の利益を正しく使い分けることで、損益計算書から読み取れる情報の精度は大きく高まります。
出典:「5つの利益とは?それぞれの違いと計算方法をわかりやすく解説」|社長の夢(ビジョン税理士法人
経常利益の計算式と内訳|具体例で解説
経常利益は、いくつかの要素を組み合わせて計算される利益です。
計算式だけを見ると少し難しく感じるかもしれませんが、内容を分解して考えると、決して複雑ではありません。
ここでは、経常利益を構成する要素を一つずつ確認したうえで、最後に簡単な数値例を使って、実際にどのように計算されるのかを見ていきます。
内訳①経常利益の土台となる営業利益
営業利益は、会社が本業でどれだけ利益を出せているかを表す数字です。
売上から原価を引き、さらに事業運営に必要な経費を差し引いて計算されます。
【営業利益の計算式】
営業利益 = 売上総利益 − 販売費および一般管理費
販売費および一般管理費には、人件費、広告費、家賃、通信費などが含まれます。
経常利益はこの営業利益を土台として計算されるため、営業利益が安定しているかどうかが非常に重要です。
内訳②経常利益に「足される」営業外収益
営業外収益とは、本業とは別の形で、安定して入ってくる収入のことです。
たとえば、銀行にお金を預けていると利息がつくように、会社も預金から利息を受け取ります。また、他の会社の株を持っている場合、その会社の利益の一部として配当金を受け取ることもあります。
このように、「お金をうまく持っている・運用していることで得られる収入」が、営業外収益です。
【営業外収益の考え方】
営業外収益 = 本業以外で継続的に得られる収益の合計
営業外収益は、経常利益を計算する際に営業利益に加えられます。
そのため、営業外収益が安定している会社は、資金運用や財務管理が比較的うまくいっていると判断できます。
内訳②経常利益から「差し引かれる」営業外費用
営業外費用とは、本業とは関係ない部分で、定期的に出ていくお金のことです。
たとえば、会社がお金を借りている場合、その借金に対して支払う利息が営業外費用にあたります。
これは商品を作ったり売ったりするための費用ではありませんが、借入がある限り支払い続ける必要があります。
そのため、経常利益を見るときには、「利息の負担がどれくらいあるか」も重要なチェックポイントになります。
【営業外費用の考え方】
営業外費用 = 本業以外で継続的に発生する費用の合計
営業外費用は、経常利益を計算する際に差し引かれます。
そのため、営業利益が黒字でも、営業外費用が大きいと経常利益が減少したり、赤字になることもあります。
【具体例】経常利益を計算してみよう
ここまでの内容を踏まえて、架空の会社を例に、経常利益がどのように計算されるのかを見てみましょう。
たとえば、ある会社の1年間の業績が次のような内容だったとします。
本業で得た営業利益:1,000万円
銀行預金の利息や株式の配当による営業外収益:100万円
借入金に対する利息などの営業外費用:300万円
この場合、経常利益は次の計算式で求められます。
経常利益 = 営業利益 + 営業外収益 − 営業外費用
経常利益 = 1,000万円 + 100万円 − 300万円 = 800万円
つまり、この会社の経常利益は800万円です。
この数字は、「本業では1,000万円の利益が出ていたものの、借入金の利息などの負担があり、最終的には通常の経営活動全体で800万円の利益が残った」ことを意味しています。
もし営業外費用(支払利息)が少なければ、経常利益は営業利益に近づきますし、逆に借入金が多く利息負担が重ければ、本業が順調でも経常利益は大きく減ってしまいます。
経常利益を見ると、本業の成果に加えて、財務面の負担がどれくらいあるのかも分かります。
次のセクションでは、営業利益や当期純利益と比べながら、その違いについて整理していきます。
経常利益と営業利益・当期純利益の違い
損益計算書における経常利益については、前のセクションで解説したとおり、本業の成果に加えて、日常的な財務活動の影響まで含めた利益を表します。
ここではその前提を踏まえたうえで、営業利益・当期純利益と何がどう違うのかを比較に絞って整理します。
「どの利益を見るべきか」で迷ったときの判断基準として押さえておきましょう。
営業利益との違い|会社の本業の実力
営業利益は、会社が本業でどれくらい稼げているかを見る数字です。
商品やサービスを売って得た売上から、仕入れや人件費、広告費などを差し引いた結果が営業利益になります。
たとえば、「商品はちゃんと売れているか」「本業で利益が出ているか」といった点を確認したいときに見るのが営業利益です。
一方で、経常利益は、この営業利益をもとにして、
- 銀行に預けたお金の利息
- 借りたお金に対する利息
といったお金の管理に関する影響も含めた数字です。
そのため、営業利益と経常利益との違いとしては次のような整理になります。
・本業だけの調子を知りたい → 営業利益
・本業に加えて、借入や資金管理も含めて知りたい → 経常利益
当期純利益との違い|「その年の結果」をまとめた数字
当期純利益は、1年間の経営活動の結果を、すべてまとめた最終的な利益です。
経常利益に、土地の売却益や災害による損失などの一時的な出来事を反映し、さらに税金を差し引いた数字になります。
たとえば、
- たまたま土地を売って大きな利益が出た
- 逆に、災害で大きな損失が出た
といった場合、当期純利益は大きく増えたり減ったりします。
そのため、当期純利益は「その年の成果は最終的にどうだったか?」を知るための数字であり、会社の実力そのものを表しているとは限りません。
利益の違い一覧表
ここまでの内容を、役割ごとに整理すると次のようになります。
| 利益の名前 | 何を見る数字か | こんなときに役立つ |
|---|---|---|
| 営業利益 | 本業だけの成果 | 商品やサービスがきちんと利益を生んでいるか、本業が順調かを確認したいとき |
| 経常利益 | 本業+お金の管理状況 | 借入や資金管理も含めて、会社の安定した実力を見極めたいとき |
| 当期純利益 | すべて含めた最終結果 | その年の経営の最終的な成績や、会社にどれだけ利益が残ったかを知りたいとき |
「どの利益が一番大事なのか?」と迷った場合は、会社の実力を見たいなら、まず経常利益を見ると覚えておくと分かりやすいです。
営業利益は本業の調子を見る数字、当期純利益は1年の結果をまとめた数字、その中間にある経常利益は、普段の経営が安定しているかどうかを判断するための指標です。
次のセクションでは、この経常利益を使って、企業の経営状況を見極めるポイントを解説していきます。
経常利益から企業の経営状況を読み解く3つの分析方法

経常利益は、会社の普段の経営状態を見るための重要な数字です。ただし、数字をそのまま見るだけでは、会社の経営状態が良いのかどうかは判断できません。
ここでは、経常利益を使った代表的な分析方法を、具体例を交えて解説します。
会社の総合的な収益力を評価する
まずは、経常利益そのものの金額を見ることで、会社の総合的な稼ぐ力を確認します。
たとえば、次の2社を比べてみましょう。
A社:経常利益 5,000万円
B社:経常利益 500万円
単純に見ると、A社のほうが大きな利益を出しており、収益力が高い会社に見えます。
ただし、この段階では「どれくらいの規模で、どれくらい効率よく稼いでいるか」はまだ分かりません。
このように、経常利益の金額は「会社が通常の経営で、どれくらい利益を出せているか」を大まかにつかむための第一歩として使います。
営業利益との差額から財務体質を分析する
ここで見たいのは、簡単に言うと「本業で稼いだ利益が、利息などでどれくらい減っているか(増えているか)」です。
財務省の資料では、損益計算書の流れとして
営業利益 →(営業外損益)→ 経常利益
という並びが示されています。つまり、経常利益は営業利益に「営業外損益(利息など)」を加味した利益です。
まずは次の式で差額を出します。
・差額=営業利益 − 経常利益
この差額が大きいほど、「本業の利益が、利息などで削られている可能性が高い」と考えます。
【具体例】
・営業利益:2,000万円
・経常利益:1,200万円
この場合、差額は 800万円です。本業では2,000万円稼げているのに、利息などの影響で最終的に1,200万円になっている、ということが読み取れます。
逆に差額が小さい場合は、本業で稼いだ利益がそのまま経常利益につながっているので、利息負担などの影響が相対的に小さいと判断しやすくなります。
ここでは、「借金がある=悪い」とみなすのではなく、本業の利益に対して利息負担が重すぎないか?ということを見るのが重要です。
売上高経常利益率で収益性の高さを測る
経常利益の金額は、会社の規模が大きいほど大きくなりやすいため、会社同士を比べる際は「率(割合)」で見るのが基本です。その代表的な指標が売上高経常利益率です。
これは、売上に対してどれだけの経常利益が残っているかを割合で示したもので、財務省の資料でも、売上高利益率の一つとして位置づけられ、計算式が明記されています。
売上高経常利益率を見ることで、会社が売上をどれだけ効率よく利益につなげられているか__つまり、収益性の高さを比較できます。
例として次の計算をしてみます。
売上高経常利益率=経常利益 ÷ 売上高 × 100
= 5,000万円 ÷ 10億円 × 100
= 5%
これは「売上10億円のうち、経常利益として5%(5,000万円)が残った」という意味です。数字が大きいほど、売上に対して効率よく利益を残せていることになります。
売上高経常利益率は、業種によって「当たり前の水準」が大きく異なります。ここを知らずに数字だけを見ると、判断を誤りやすくなります。
たとえば、飲食業や小売業は、仕入れや人件費がかかりやすく、利益率は低くなりがちです。一方で、情報通信業のように、仕組みやシステムを提供するビジネスでは、比較的高い利益率になりやすい傾向があります。
つまり、同じ5%でも、業種が違えば意味はまったく変わるということです。
だからこそ、この指標でいちばん大切なのは、「数字が高いか・低いか」ではなく、同じ業界の中でどうかを見ることです。
業界平均や同業他社と比べて高ければ、売上を利益につなげる力が相対的に高いと考えられます。
売上高経常利益率は、売上に対して経常利益がどれだけ残っているかを示す、収益性を見るための指標です。
数字が大きいほど効率よく稼げていると判断できますが、必ず「業界内での位置づけ」をセットで見ること。これが、この指標を正しく使うための最重要ポイントです。
経常利益を分析する際に押さえておくべき注意点

経常利益は、会社の「普段の稼ぐ力」を見るうえで重要な指標ですが、この数字だけを見て判断してしまうと、誤解につながることもあります。
ここでは、経常利益を見るときに特に注意しておきたいポイントを整理します。
経常利益が高い=本業の業績が良いとは限らない
経常利益が黒字であっても、必ずしも本業の業績が好調とは限りません。
なぜなら、経常利益には営業外収益が含まれているからです。
たとえば、多額の預金による受取利息、他社株式からの配当金といった収益が多い場合、本業の利益がそれほど伸びていなくても、経常利益が高く見えることがあります。
そのため、「本業がうまくいっているかどうか」を確認したい場合は、営業利益とあわせて見ることが大切です。
経常利益はあくまで「会社全体の通常の経営状態」を示す数字だと理解しておきましょう。
単年度だけでなく複数年度の推移で判断する
経常利益は、1年分の数字だけを見て判断するのはおすすめできません。
なぜなら、その年だけの要因で一時的に増えたり減ったりすることがあるからです。
たとえば、「借入金を返済して利息負担が減った」「為替の影響で一時的に利益が増えた」といった理由で、その年だけ経常利益が大きく変動するケースもあります。
そのため、2〜3年分の推移を並べて見ることで、経常利益が安定して出ているのか、一時的なものなのかを判断しやすくなります。
業種差・企業規模差に注意
経常利益の水準は、業種や企業規模によって大きく異なります。例えば原価や人件費がかかりやすい業種と、設備投資が多い業種では、どうしても利益が出にくくなります。
また、大企業と中小企業では、資金調達の方法、利息負担の大きさなども違うため、単純に金額だけを比べても正しい評価はできません。
経常利益は、同じ業種・似た規模の会社同士で比較することが基本です。
経常利益は便利な指標ですが、本業の状況、年ごとの変化、業種や規模の違い等を考慮せずに見ると、判断を誤ることがあります。
「経常利益が高い=状態の良い会社」と単純に考えるのではなく、ほかの利益や推移、比較対象とセットで見ることを意識すると、より正確に会社の状態を読み取れるようになります。
経常利益に関するよくある質問

ここでは、経常利益について多くの方が疑問に感じやすいポイントをまとめています。
「重視すべき利益は何か」「赤字の場合はどう考えればよいのか」など、記事を読み進める中で生じやすい疑問を、できるだけ分かりやすく解説します。
Q1.経常利益と当期純利益は、どちらを重視すべきですか?
会社の実力や安定性を見たい場合は、経常利益を重視するのが一般的です。
当期純利益は一時的な要因や税金の影響を受けやすいため、その年の最終結果を見る数字として使い分けると良いでしょう。
Q2.営業利益が黒字なのに、経常利益が赤字になるのはなぜですか?
借入金の利息など、営業外費用の負担が大きいことが主な原因です。
本業では利益が出ていても、利息負担が重いと経常利益がマイナス(経常損失)になることがあります。
経常利益は、「お金の借り方や財務面の影響を映す数字」だと理解しておくと分かりやすいでしょう。
Q3.売上高経常利益率は、どれくらいあれば良いですか?
一律の基準はありません。業種によって水準が大きく異なるため、同業他社や業界平均と比べてどうかを見ることが重要です。
また、前年と比べて改善しているかどうかも、収益性を判断するうえでの大切なポイントです。
Q4.「ケイツネ」とはなんですか?
「ケイツネ」は、経常利益を略したビジネスシーンで使われる俗称です。
口頭でのコミュニケーションや、社内での会話などで、より簡潔に情報を伝達するために用いられることがあります。
経常利益は企業の総合的な収益力を示す重要な指標であるため、ビジネスパーソンにとって馴染み深い言葉となっています。
まとめ

経常利益は、会社が普段どれくらい安定して稼げているかを知るための大切な指標です。本業の成果だけでなく、利息などのお金の動きも含めて見ることで、会社全体の経営状態が分かります。
ただし、経常利益の数字だけを見て判断するのは避けましょう。営業利益や当期純利益と比べたり、前年からどう変わっているかを確認したりすることで、数字の意味がはっきりしてきます。
また、売上高経常利益率を使えば、会社の規模に左右されず、収益性を比べることもできます。
まずは損益計算書を開いて、経常利益がどこに書かれているかを確認し、営業利益との違いを見てみてください。
「なぜこの数字になっているのか」を考えることが、企業分析の第一歩です。
経常利益を理解できるようになると、損益計算書の数字が「ただの金額」ではなく、会社の状態を表す情報として読めるようになります。
※2:ecforce導入クライアント38社の1年間の平均データ / 集計期間 2021年7月と2022年7月の対比
※3:事業撤退を除いたデータ / 集計期間 2022年3月~2022年8月
