この記事でわかること
かつてECは代金引換やクレジットカードくらいしか決済手段がありませんでした。
しかし今やペイメント(決済)領域の革新は著しく、ここ数年で様々な決済手段が生まれています。
顧客は選択肢が増えて嬉しいものの、EC事業者からすると対応することが増えて頭を悩ませることもあるでしょう。
そこで今回はD2Cブランドを展開するEC事業者が、どの決済を用意すべきかをじっくり考えてみたいと思います。
その判断における1つの指標として決済手段別のLTV(Life Time Value/顧客生涯価値)を見るのですが、そもそもなぜLTVなのでしょうか。まずはその疑問に応えていきます。
D2CにおけるLTVの意味とは
ECのマーケティングもこの5年ほどで大きな変遷があります。単品通販業界での5年ほど前のスタンダードな手法は、多額の広告予算を投下して安価で新規顧客を増やし、定期購入にアップセルするといったものでした。
この時代は主にCPAに注力していて、LTVまで見る単品通販のEC事業者は少ない印象でした。あるいは、LTVまで見れるほど各EC事業者が多くのデータを集めていなかったとも言えます。
しかし、D2CではLTVを重視して顧客と長期的な関係性を作ることを試みます。
顧客のLTVが高いということは、末永く顧客から愛されるブランドであることの証明です。
D2Cは最初から定期購入を用意するサブスクリプションモデルが多いため、長期的な関係性を築きLTVを伸ばすことが何よりも重要なのです。(同時にチャーンレートも重要ですが、ここでは説明を省きます。)
また別軸の理由としては、Web広告のCPAがここ数年高騰していることも挙げられます。数年前までは多額の広告予算を投下し、新規顧客を増やすことで事業を成長させていました。
CPAが上がるにつれてこの1が成立しにくくなったため、LTVを上げて長い期間で投資回収をしていくモデルに変遷してきたのです。
決済手段を考える重要性
ECサイトの導線を見直してCVRを改善する際、影響度を考慮し、一般的にはコンバージョンに近いポイントから順を追って改善を試みます。
決済はコンバージョンの直前のステップで、いわばECの購入における最終決定です。それだけ改善のインパクトが大きく、決済手段を変えるだけで顧客のLTVに大きな影響があります。
せっかく決済前までのクリエイティブやECサイトの導線が良くても、決済で顧客が離脱してしまったら元も子もありません。
それだけ決済は重要な要素なのです。
一方で、どの決済が良いかわかっていれば、比較的すぐに対応できることでもあります。ここからまずどんな決済手段があるのかを確認しましょう。
どんな決済手段があるのか?
ECの決済手段は大きく以下の2つに分けることができます。
1. オンライン決済(オンライン上で完結する)
2. オフライン決済(代金引換など、オフラインで自ら支払う)
従来から存在するオフライン決済に対して、ここ数年で様々な選択肢が増えてきたのはオンライン決済です。それでは双方の選択肢を確認してみましょう。
1. オンライン決済
オンライン決済には主に以下6個の選択肢があります。
・クレジットカード
・Amazon pay
・ネットバンク
・携帯キャリア
・電子マネー
・後払いアプリ(決済を代行して後払いを可能にしてくれるアプリです)
オンラインで完結するため顧客にとって非常に利便性が高い一方で、人によっては不安を抱いたり信頼性が低かったりとデメリットもあります。
D2Cブランドの場合、オンラインではクレジットカードとAmazon Payの利用率が高く、主な決済手段となっています。
2. オフライン決済
オフライン決済には主に以下3個の選択肢があります。
・銀行振込
・コンビニ後払い
・代金引換
顧客にとっては先ほどのデメリットの裏返しで安心して支払いができる一方で、EC事業者にとっては入金意思をすぐに確認できなかったり、入金がなくて発送ができない場合があるなどのデメリットもあります。
D2Cではオフライン決済はコンビニ後払い、代金引換が主な決済手段です。
LTVが高い決済手段は?
では先ほどの決済手段を踏まえて、顧客のLTVが高い決済はどれだと思いますか?
結論からお伝えするとクレジットカードとAmazon Payなのですが、大きく3つの理由が挙げられます。
1. 引き落としが自動更新
2. クレジットカードは手数料が実質無料
3. 顧客のリテラシーが高い傾向
それでは3つの理由をそれぞれ見ていきましょう。
1. 引き落としが自動更新
まず自動更新の件ですが、クレジットカードもAmazon Payもオンライン決済なので、定期購入の代金引き落としは自動で行われます。
顧客にとって毎月の支払いを自ら行うよりも、自動更新で引き落とされる方が心理的ハードルが低いことは言うまでもありません。
毎月超えなくてはならないハードルがある顧客より、クレジットカード・Amazon Payの顧客の方がLTVが伸びるのは必然だと言えます。
2. クレジットカードは手数料が実質無料
クレジットカードの場合、EC事業者側の選択にもよるのですが、顧客が負担する手数料は基本的に無料です。
一方で代金引換は基本的に手数料がかかり、コンビニ後払いも一部かかります。
LTVは顧客が継続して定期購入をすることで伸びる指標です。顧客にとって手数料は無料の方が月々の負担が減るのは当然なので、顧客にとってクレジットカードの方がより継続しやすいと言えるでしょう。
3. 顧客のリテラシーが高い傾向
そもそもクレジットカード決済はクレジットカードを所持している必要がありますし、Amazon PayはAmazonのアカウントが必要です。
そう考えると顧客はある程度の金融とネットのリテラシーが求められますし、そういった物事に対するリテラシーが高い顧客であれば、商品への理解も深めた上で定期購入する可能性は必然的に高くなります。
商品への納得感がないまま定期購入を続ける顧客はいません。裏を返せば、LTVが高い顧客は商品への理解を深めた上で継続していると言えるのです。そのためクレジットカード・Amazon Payを利用する顧客は自然とLTVが高くなるのでしょう。
以上3つの理由を総合的に考えると、クレジットカード・Amazon Payを選択する顧客のLTVが高くなることがわかるでしょう。
※何らかの別の理由でクレジットカード・Amazon Payが使えない顧客もいるため、コンビニ後払い、代金引換の顧客はリテラシーが低いという意味ではありません。
Amazon PayがLTVを伸ばす?
さてここまで読んでもまだ懐疑的な方に、Amazon Payを選択した顧客のLTVが伸びた事例をご覧に入れます。
こちらは当社が調べた、ある健康食品と化粧品商材を扱うECサイトで、決済ごとのLTVを集計したデータです。
【健康食品/決済毎の定期継続率】
【化粧品/決済毎の定期継続率】
データから代金引換やコンビニ後払いに比べ、Amazon Payを選択した顧客のLTVが上昇していることがわかります。
さらに信頼がないショップ立ち上げ期に、多くの人が知るAmazonロゴを掲載できるメリットや、顧客情報を入力する必要がないので顧客の負担が軽くCVRが高いなど、Amazon Payの良い点は他にもあります。
以下に詳しいので、ぜひあわせて読んでみてください。
『定期通販と親和性の高いAmazon Payとその実力』
最適な決済はデータドリブンで見つける
ここまで決済手段について見てきましたが、LTVが低い決済は選択肢から外せばいいのかと思案する方もいるかもしれません。
しかし、闇雲に選択肢を狭めることはおすすめできません。例えばコンビニ後払いですが、実は単品通販系の顧客と相性が良い場合があります。(クレジットカードなどを持ってない人もいるため)
あるいは単純にショップの信頼性が低いため、顧客がクレジットカードを使用することが恐いのかもしれません。このケースの場合、TVや雑誌などで露出が増えたらクレジットカードの割合が上がるかもしれません。
顧客の選択肢を減らすことが得策であるとは言えないのです。
なんども繰り返しますが、D2Cはデータドリブンで行うべきです。
まずは各決済手段における顧客の比率とLTVをみて現状を把握すること、LTVが高い決済手段にクリエイティブのメッセージを駆使して顧客を導くこと、施策の結果をデータで振り返り改善を続けることで、全体LTVを上げることができるのです。
ちなみに実際に当社で以上の流れで改善を試みたところ、あるクライアントは顧客のLTVが106.2%増加しました。106.2%と聞くと大したことない数字に見えますが、これはLTVです。
例えばLTVが10万円、顧客が1万人の商材(売上10億円)であれば、LTV(10万円)×増加分(6.2%)×顧客数(1万人)= 6,200万円売上があがることになります。
LTVの少しの伸びが売上にどれだけ大きなインパクトがあるか、想像に難くないでしょう。
最適な決済手段を見つけたいのなら、データを元に貴社独自の判断を下すことが重要です。
【最後に】
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特徴2. 売上を最大化する多彩なマーケティング機能
クライアントニーズや自社経験を元にトレンドを抑えてた「効果がある」機能を搭載。「広告改善・CVR向上」や「LTV向上/CRM最適化」まで顧客獲得〜リピート化といった各フェーズに対応した機能群で、マーケティング施策を一貫して実施できます。
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※2:ecforce導入クライアント38社の1年間の平均データ / 集計期間 2021年7月と2022年7月の対比
※3:事業撤退を除いたデータ / 集計期間 2022年3月~2022年8月