この記事でわかること
※この記事は 時点の情報をもとに執筆しています。
ECサイトで商品を販売する際に欠かせないのが「ささげ」業務です。
これは「撮影」「採寸」「原稿」の頭文字を取ったもので、商品の魅力を伝えるための情報作成プロセスを指します。実店舗とは異なり、ECでは商品を実際に手に取れないため、画像やサイズ情報、説明文が購買判断の決め手となります。
この記事では、ささげ業務の基本から、業務ごとのポイント、効率化や外注の方法までをわかりやすく解説します。
ささげとは?ECにおける重要性
「ささげ」とは、ECにおける商品情報作成の基本プロセスであり、購買率に大きく影響する重要な業務です。
「ささげ」とは?
「ささげ」は、ECサイトで商品を販売する際に必要となる3つの主要業務、「撮影」「採寸」「原稿」の頭文字を組み合わせた造語です。
- 撮影:商品の写真を撮影し、視覚的に魅力を伝える
- 採寸:正確なサイズを計測し、商品情報に反映する
- 原稿:商品の特徴や魅力を伝える説明文を作成する
この3つが揃うことで、ユーザーは商品をより正確に理解し、安心して購入に踏み切ることができます。
ささげ業務の重要性
ECサイトでは、実物を手に取れないため、写真や情報の精度が購買体験を左右します。
特に、アパレルや家具などサイズや質感が重要な商品では、撮影・採寸・原稿のクオリティが売上に直結します。
また、返品やクレームを減らす上でも、正確で魅力的な商品情報は不可欠です。
ささげ業務の各工程とポイント
ここからは、ささげ業務を構成する3つの要素(撮影・採寸・原稿)について、それぞれの役割と注意点を解説します。
撮影|商品を魅力的に伝える第一印象
撮影は、ユーザーが商品ページを開いた瞬間に目にする最初の情報です。いわば商品の「第一印象」になります。
視覚的に商品を魅力的に見せることで、購買意欲を高めることができます。
以下のような撮影パターンを押さえると、情報としての網羅性と視覚的な訴求力のバランスが取れます。
基本の撮影カット
- 正面・背面・側面・斜め:全体のフォルムやデザインの印象を伝えるための基本アングル。
- ディテールのアップ:素材の質感、縫製、ボタンや金具など、こだわり部分を拡大して表現。
- サイズ感のわかる比較カット:手に持った様子や、一般的なアイテムと並べて撮影することで、実物の大きさがイメージしやすくなります。
利用シーンの演出
- 着用シーン(アパレル):モデルが実際に着用している様子を掲載すると、サイズ感や着たときの雰囲気が伝わりやすくなります。
- 生活シーンの中での使用例:家具・家電・雑貨などは部屋に置かれている様子を撮影することで、使用イメージが湧きやすくなります。
商品の強みを伝える演出
- 撥水性や収納力などの機能性:機能の実演を写真で伝える(例:防水バッグに水をかけている写真など)
- 軽さ・携帯性:人が片手で持っている、バッグに収納している様子など
このように、写真ごとに「何を伝えたいのか」という意図を持つことが重要です。
見た目の美しさだけでなく、「使いやすさ」「特徴」「質感」などの判断材料になる情報をビジュアルで伝えましょう。
採寸|返品を防ぐ精度の高い情報
採寸は、特にアパレルや家具など「サイズの合う・合わない」が購入判断に直結する商品において、最も重要な工程のひとつです。
正確な採寸情報は、返品率やクレーム率を大きく左右します。
採寸で押さえるべきポイント
- 主要寸法の測定:着丈、肩幅、袖丈、身幅、ウエスト、ヒップ、股下など、商品カテゴリーに応じて必要な箇所を正確に測ります。
- 採寸基準の統一:どこからどこまでを測るか、測定位置の定義をマニュアル化しておくことで、スタッフによる誤差を減らせます。
- cm単位での表記:ユーザーが自分の手持ちアイテムと比較しやすいように、すべてcmで統一することが重要です。
- 図解やビジュアル補足:可能であれば、測定箇所を示した図を一緒に掲載すると、ユーザーの誤解を防げます。
- モデル情報の併記:アパレルであれば、モデルの身長・体型・着用サイズを記載することで、サイズ選びの参考になります。
採寸データは、購入判断を左右する“スペック情報”です。正確かつ信頼性のあるデータを提示することが、購入前の不安解消に直結します。
原稿|商品の価値を言葉で伝える
原稿作成では、商品に対するお客様の「欲しい理由」を引き出せるかどうかが鍵です。スペックの羅列ではなく、「この商品が自分の生活にどう役立つのか」が伝わる文章が理想です。
伝えるべき情報の要素
- 商品の基本情報:素材、サイズ、カラー、ブランド名など、検索時の参考になるデータです。
- 商品の魅力・こだわり:「撥水加工で雨の日も安心」「軽量で持ち運びやすい」など、商品の強みを端的に伝えましょう。
- 利用シーン・ベネフィット:「出張時に便利」「子育て中のママに最適」といった、具体的な利用イメージです。
- ブランドストーリー・開発背景:共感を呼びやすく、購入の後押しになる要素になります。特にD2Cブランドでは有効です。
SEO観点での配慮
検索エンジンからの流入を意識するなら、商品説明文にもSEOの視点を取り入れることが重要です。
たとえば、商品名や素材、機能、季節性といった、ユーザーが実際に検索に使いそうな言葉を自然な形で盛り込むことで、検索結果での露出が高まります。
「リネンシャツ 夏」「防水 ナイロン バッグ 通勤」などのように、検索意図に即したキーワードを文中に組み込むことで、ターゲットユーザーに届きやすくなります。
ただし、キーワードを不自然に詰め込むと読みづらくなり、かえって購買意欲を下げてしまうリスクもあります。
重要なのは、あくまで読者がスムーズに理解できる文章の中に、適切にキーワードを含めることです。
「読みやすさ」と「検索に引っかかる文章」のバランスをとることが、効果的なSEO対策に繋がります。
ささげ業務は効率化できる?外注活用の選択肢と判断基準
ささげ業務は、工数のかかる領域である一方、外注や仕組み化によって大幅な効率化が可能です。
すべてを内製するには人的リソースや設備が必要なため、EC事業者の多くは外部パートナーを活用しています。
ここでは、ささげ業務の効率化手法と、外注における選択肢や注意点について解説します。
自社内でできる効率化の工夫
まず検討すべきは、自社内で仕組み化・標準化できる部分です。たとえば、原稿テンプレートを用意すれば毎回のライティングにかかる時間を削減できます。
撮影では、構図や背景、ライティング環境を固定することで、撮影時間の短縮やクオリティのばらつき防止が可能です。
採寸においても、測定箇所や基準をマニュアル化し、表記ルールを統一することで再作業やミスを減らせます。
近年では、撮影補助ツールや自動画像補正ソフト、AIによる商品説明文の下書き作成など、業務を支援するツールも増えてきました。
リソースが限られている場合でも、こうした手段を取り入れることで、内製でも一定の効率化が実現可能です。
外注を検討すべきタイミング
業務量が一定以上になり、ささげに多くの時間が取られるようになったら、外注を検討するのが有効です。
特に以下のようなケースでは、外部パートナーの導入が効果的です。
- 新商品の掲載スピードが追いつかない
- 撮影・採寸・原稿の品質にばらつきがある
- 社内で属人化しており、他業務との兼務が難しい
商品数が多い、またはシーズンごとに大量の商品登録が発生するECでは、内製より外注の方がコストパフォーマンスに優れることもあります。
ささげ業務の外注先は主に3タイプ
ささげ業務の外注先には、大きく以下の3つの選択肢があります。それぞれの特徴と向いているケースを整理しておきましょう。
- 専門業者への依頼
撮影・採寸・原稿作成まで一括で対応可能な業者が多く、品質の高さと対応力が魅力です。
特にブランドイメージやクリエイティブにこだわる商材におすすめです。撮影スタジオやモデル手配、画像加工までワンストップで任せられるため、業務負担も大幅に軽減されます。 - 物流倉庫内での委託
商品保管から撮影・採寸までを同一拠点で行えるため、物流とささげ業務の一体化が可能です。
移動・配送コストを抑えつつ、スピーディに商品ページを整備したいEC事業者に適しています。
ただし、撮影クオリティや演出力は業者によって差があるため、事前確認は必須です。 - フリーランスへの依頼
撮影だけ、原稿だけといった個別の業務を必要なときに依頼できます。
柔軟な対応が可能な反面、業務の進行管理や品質管理は自社側で行う必要があります。
ブランドの世界観を重視しつつコストを抑えたいケースに向いています。
外注時の注意点と見極めポイント
外注化を進める際は、費用や納期だけでなく、成果物の品質とブランド適合性をしっかり確認しましょう。
特に注意したいのが以下の3点です。
- 品質の一貫性:撮影・原稿のトーンがブランドに合っているか
- ノウハウの蓄積:完全外注にすると社内にナレッジが残らない可能性
- コスト構造の把握:1商品あたりの単価だけでなく、追加修正やオプション費用の有無も事前に確認
信頼できるパートナーを選ぶには、事前のサンプル提出やテスト依頼を活用し、コミュニケーションコストを最小限に抑える工夫も重要です。
ささげ業務を外注するメリットとデメリット
ささげ業務は、商品撮影・採寸・原稿作成といった複数の専門工程が必要になるため、リソースやノウハウが限られる企業にとっては大きな負担になりがちです。
そこで選択肢となるのが、外部パートナーへの委託。ここでは、外注化による主なメリットと、導入前に把握しておくべき注意点を解説します。
外部委託のメリット
- 社内リソースの削減と業務の効率化ができる
- 専門性の高いサービスを活用できる
- 初期設備や人件費を抑えられる
- 商品数が多い場合、コスト面でも有利
- 新商品の早期販売や繁忙期対応にも強みを発揮
外部委託のデメリットと注意点
- 一定の費用が発生する(例:1商品あたり数千円など)
- ノウハウが社内に蓄積されにくい
- 成果物が期待と異なる場合があるため、初期のすり合わせが重要
- 納期や進行管理体制を整える必要がある
ささげ業務におけるその他の重要事項
撮影・採寸・原稿それぞれの工程に加えて、ECサイト全体のクオリティを安定させるには、日々の運用ルールや体制づくりも欠かせません。
ここでは、特に意識したい「表記ルールの統一」と「作業スケジュールの管理」について解説します。
表記ルールの統一
商品情報の一貫性を保つためには、社内で表記ルールを明確に定めておくことが重要です。
たとえば、以下のような要素についてあらかじめルールを作成しておくと、複数人での運用でも品質が安定します。
- 数字の半角・全角や単位の使い方(例:cm / センチ)
- カタカナとひらがなの使い分け(例:カラー / いろ)
- 商品名やカテゴリ名の命名規則
- 句読点の使い方、敬語・語尾のトーン
撮影や画像加工においても、画角や構図、背景色、明るさなどのルールを設けることで、ECサイト全体に統一感が生まれ、ブランドイメージを崩さずにすみます。
また、採寸に関しては「どこからどこまで測るのか」を定義し、全スタッフが同じ基準で作業できる状態にすることが大切です。社内マニュアル化して定期的に見直すことで、属人化の防止にもつながります。
作業スケジュールの管理
ささげ業務は、「新商品の販売日」や「キャンペーン公開日」に合わせて進行させる必要があります。
そのため、撮影・採寸・原稿作成・商品登録までの各工程に明確なスケジュールを設定することが重要です。
特に商品数が多い場合や季節商戦に向けて複数アイテムを同時に扱う場合、進捗管理が不十分だと納期遅れや販売機会の損失につながります。
作業工程ごとの所要時間や人員配置をあらかじめ見積もり、納品から公開までのリードタイムを逆算したスケジュール設計を行いましょう。
また、撮影や原稿の修正対応など、イレギュラー対応にも備えて余裕を持ったバッファの設定も重要です。
スプレッドシートやタスク管理ツールを活用し、関係者が常に最新の進捗状況を共有できる体制を整えておくと、全体の遅延防止にもつながります。
まとめ
ECにおける「ささげ(撮影・採寸・原稿)」業務は、商品ページの質を左右する重要なプロセスです。
ユーザーは商品を手に取れないからこそ、正確で魅力的な情報が購買判断の決め手になります。
ささげ業務を効率的かつ高品質に行うには、各工程のポイントを押さえることはもちろん、表記ルールの統一や進行管理の体制づくりも欠かせません。
また、リソースが限られる場合は、外注を活用することで業務負荷を下げつつ、品質やスピードを両立することも可能です。
自社にとって最適な運用体制を整えることで、商品登録の精度とスピードが上がり、結果としてECサイト全体の売上や顧客満足度にもつながっていきます。
※2:ecforce導入クライアント38社の1年間の平均データ / 集計期間 2021年7月と2022年7月の対比
※3:事業撤退を除いたデータ / 集計期間 2022年3月~2022年8月