この記事でわかること
ECサイトの運営において、ユーザーの「カゴ落ち」は避けて通れない課題です。
ユーザーが商品をカートに入れたにも関わらず、購入に至らずサイトを離れてしまうこの現象は、売上の機会損失に直結します。
米国の調査によれば、カゴ落ち率は平均で約7割にも上るとされており、多くのECサイトで改善が求められています。
出典:Baymard Institute|Cart Abandonment Rate Statistics
本記事では、このカゴ落ちの定義やその計算方法、そしてなぜカゴ落ちが発生するのか具体的な原因を解説します。
さらに、カゴ落ちを減らし購入率を向上させるための実践的な対策についてもご紹介します。ECサイトの売上向上を目指す方は、ぜひ参考にしてください。
これからECカートを決める方・いまのECカートに満足してない方へ。以下の記事にも、あなたのお悩みが解決する情報が満載です。
4つのECサイト構築事例。新鋭D2Cブランドの動向から読み解く「狙い」とは?
カゴ落ちとは?
ECサイトにおけるカゴ落ちとは、ユーザーが商品をカートに入れたものの、購入手続きを完了せずにサイトから離脱してしまう状態を指します。
これはECサイト運営において、売上の機会損失につながる重要な課題です。
カゴ落ち率が高いと、サイトへの集客やカート投入までの施策が成功していても、コンバージョン率が低下し、売上目標の達成が困難になります。
そのため、ECサイトで売上を伸ばすためには、カゴ落ちの原因を特定し、適切な対策を講じることが不可欠です。
カゴ落ち率の平均値
ECサイトの運営において、カゴ落ち率の平均値を知ることは、自社サイトの課題や改善点を見つける上で非常に重要です。
米国の調査機関Baymard Instituteによると、世界のECサイトにおけるカゴ落ち率は平均で約70%とされています。
この高いカゴ落ち率は、EC事業者にとって大きな機会損失に繋がっています。
また、株式会社イー・エージェンシーの調査では、カゴ落ちによる機会損失額は売上の約2.5倍にのぼるとされています。
この高いカゴ落ち率が発生する原因としては、想定外の追加費用(送料や手数料)、購入プロセスの長さ、利用可能な決済手段が少ないことなどが挙げられます。
これらの原因を特定し、ECサイトを改善することで、カゴ落ち率を下げ、売上向上につなげることが期待できます。
出典:Baymard Institute|Cart Abandonment Rate Statistics
出典:株式会社イー・エージェンシー|【調査レポート】カゴ落ち率の改善には“リカバリー施策のタイミング”が重要
カゴ落ち率の計算方法
カゴ落ち率の計算方法はシンプルで、以下の計算式で算出できます。
「(カートに入れたユーザー数 - 購入を完了したユーザー数)÷ カートに入れたユーザー数 × 100」
例えば、100人のユーザーが商品をカートに入れたとして、そのうち購入を完了したのが30人だった場合、カゴ落ち率は(100 - 30)÷ 100 × 100 = 70%となります。
この数値が高いほど、多くのユーザーが購入の途中で離脱していることを意味し、改善の余地が大きいと言えます。
一般的にカゴ落ち率の平均は60%〜70%程度とされているため、自社サイトのカゴ落ち率がこの平均値と比較して高いか低いかを把握することが、具体的な改善策を検討する上で最初のステップとなります。
ECサイトでカゴ落ちが起きる7つの原因
ECサイトでカゴ落ちが発生する背景には、ユーザーの購入体験を損なう様々な要因が存在します。
例えば、購入手続きの途中で予期せぬ送料や手数料が加算されることや、利用できる決済方法が限られている場合に、ユーザーは購入を躊躇しやすくなります。
また、アカウント作成が必須であったり、購入完了までのステップが多かったりすると、ユーザーの購買意欲が低下し、サイトから離脱してしまう可能性が高まります。
これらの様々な原因を深く理解し、適切な改善策を講じることが、カゴ落ち率を減らすために不可欠です。
この章ではECサイトでカゴ落ちが起きる7つの原因について解説します。
1.購入時に想定外の費用がかかる
カゴ落の主な原因の1つは、購入時に表示される想定外の追加費用です。
ユーザーは商品ページで本体価格を確認して購入を進めますが、送料や決済手数料などが加算された最終的な合計金額は、購入手続きの画面で初めて認識することが多いです。
特に送料は購入をためらう大きな要因となり、想定より高額だと購入意欲が削がれてしまいます。
また、決済方法による手数料も、事前に明確でないとユーザーは予期せぬ出費と感じ、購入をやめてしまうことがあります。
これらの隠れた費用は「思っていたより高くつく」という印象を与え、カゴ落ちに直結しやすいのです。
2.商品を購入完了するプロセスが長い
ECサイトでカゴ落ちが発生する理由の2つ目は、商品購入までのプロセスが長いことです。
ユーザーが商品を購入しようと決めてから、実際に購入手続きを完了するまでには、通常いくつかのステップがあります。
具体的には、会員登録、氏名や住所、支払い方法などの個人情報の入力、そして利用規約やプライバシーポリシーへの同意などが含まれます。
これらのステップが多い、または入力項目が多岐にわたると、ユーザーは手続きを面倒に感じてしまい、購入を諦めてしまうことがあります。
特にスマートフォンを利用しているユーザーは、小さな画面での入力に手間を感じやすく、離脱しやすい傾向があります。
カゴ落ちを防ぐためには、購入プロセスを可能な限り簡潔にし、ユーザーがストレスなく手続きを完了できるように配慮することが重要です。
3.普段利用している決済手段が使えない
ECサイトでユーザーが普段利用している決済手段に対応していない場合、カゴ落ちの可能性が非常に高まります。
これは、使い慣れた方法で支払いができないことによる不便さや手間に加え、セキュリティ面での不安を感じるユーザーもいるためです。
また、SBペイメントサービスが2024年に行った調査によると、ECサイトで希望する決済手段がない場合、物販サイトでは6割以上が購入せずに離脱すると回答しています。
特に男性では65.0%、女性では60.6%が購入せずに離脱するという結果が出ており、決済手段の不足が直接的な機会損失に繋がっていることがわかります。
また、ネットプロテクションズが2019年に行った「実店舗やネットショップでの決済ニーズに関する調査」でも、初めて買い物をするネットショップで希望する決済方法がなかった場合に、利用者の約半数がそのネットショップで購入しないと意思決定していることが明らかになっています。
これらの調査結果から、多様な決済方法を提供することは、ユーザーの利便性を高め、カゴ落ちを防ぐ上で極めて重要と言えます。
出典:SBPaymentService|【2024年度版】5回目となる決済手段のEC利用実態調査結果を公開
出典:ネットプロテクションズ|令和版 決済ニーズのアンケート結果を公開
4.商品決済するためにアカウントが必要になる
商品購入のために会員登録が必須となっている場合、ユーザーによっては手続きを面倒に感じ、購入を諦めてしまうことがあります。
特に時間がないユーザーは、会員登録の手間を省きたいと考える傾向があります。
そのため、会員登録を必須とせず、ゲスト購入が可能な選択肢を用意することが重要です。
これにより、ユーザーは会員登録の手間なくスムーズに購入手続きを進めることができ、カゴ落ちを防ぐ効果が期待できます。
5.商品の配送に時間がかかりすぎる
商品配送に時間がかかりすぎると、ユーザーは購入を諦め、他のECサイトへ移ってしまう可能性があります。
特に、すぐに商品を必要としているユーザーは、配送が遅いことでカゴ落ちしやすい傾向が見られます。
配送に時間がかかることはカゴ落ちの大きな理由の一つです。ユーザーは迅速な商品到着を望んでおり、配送日数が長いと購入意欲が低下してしまいます。
迅速な配送に加えて、コンビニ受け取りや置き配など、多様な受け取り方法を提供することで、ユーザーの利便性を高め、カゴ落ちを防ぐ効果が期待できます。
6.システムエラーが頻発
システムエラーが頻繁に発生することも、カゴ落ちの大きな原因となります。
例えば、決済中にエラーが発生したり、サイトがクラッシュしたりすると、ユーザーはECサイトへの信頼を失い、購入を断念してしまう可能性が高まります。
このようなシステムエラーは、ユーザーの購買体験を著しく損なうため、発生しにくいEC作成プラットフォームを選んだり、サイトの安定性を確保したりすることが重要です。
エラーが発生した場合でも、エラーの内容を分かりやすく表示し、ユーザーが迅速に対処できるよう配慮することで、カゴ落ちを防ぐ効果が期待できます。
7.クレジットカード情報入力に抵抗がある
ECサイトでのお買い物において、クレジットカード情報の入力や登録に抵抗を感じるユーザーも一定存在します。
これは、個人情報が漏洩するリスクや、毎回入力する手間を避けたいという気持ちがあるためです。
特に初めて利用するECサイトでは、セキュリティへの不安から情報提供に慎重になる傾向が見られます。
多くのECサイトでクレジットカード決済が主流となっていますが、ユーザーが希望する決済手段がないことがカゴ落ちの原因となることがあります。
実際に、SBペイメントサービスが行った調査では、希望する決済手段がないために購入しないユーザーが少なくないという結果が出ています。
このようなユーザーを取り込むためには、クレジットカード決済以外の多様な決済手段を用意することが重要です。
コンビニ決済、銀行振込、後払い決済、PayPayや楽天ペイといったQRコード決済など、幅広い選択肢を提供することで、クレジットカード情報の入力に抵抗があるユーザーも安心して買い物をすることができます。
出典:SBPaymentService|【2024年度版】5回目となる決済手段のEC利用実態調査結果を公開
ECサイトでカゴ落ちを防止するための7つの対策
カゴ落ちを防ぐためには、ユーザーがスムーズに購入へ進めるよう、サイト側でさまざまな工夫を行うことが大切です。
たとえば、決済手段を豊富に用意したり、入力項目を最小限に抑えたりすることで、離脱率を大幅に下げることができます。
本章では、ECサイトにおけるカゴ落ちを防止するための具体的な7つの対策をご紹介します。
1.各種手数料が加算された合計金額を明記する
商品ページに表示されている本体価格だけでなく、送料や各種手数料が加算された合計金額が、購入手続きの画面で初めて表示されるケースがあり、これによりユーザーは予期せぬ出費に驚き購入を断念してしまうことがあります。
このようなカゴ落ちを防ぐためには、早い段階で正確な合計金額をユーザーに提示することが重要です。
例えば、商品をカートに入れた時点で、送料や手数料を含めた税込価格を表示する、あるいは商品詳細ページやカートページに送料に関する情報を分かりやすく明記するなどの対策が効果的です。
これにより、ユーザーは事前に最終的な支払い金額を把握できるため、「こんなはずではなかった」といったギャップをなくし、安心して購入手続きを進めることができます。
事前に合計金額が分かれば、ユーザーは予算に合わせて購入内容を調整することも可能になり、カゴ落ちのリスクを減らすことができます。
2.購入までのフローを簡素化する
ECサイトで商品を購入する際、手続きに手間がかかるとユーザーは離脱しやすくなります。
購入完了までのステップを少なくし、例えば会員登録を必須とせずゲスト購入を可能にする、入力フォームを分かりやすくするなどの工夫が必要です。
不要な入力項目を省き、入力エラーが起こりにくい設計にすることで、ユーザーはストレスなくスムーズに購入を完了できます。
また、スマートフォンの小さな画面でも快適に入力できるよう、UI/UXの改善も重要です。
3.さまざまな決済手段に対応する
ECサイトにおいて、ユーザーの利便性を高め、カゴ落ちを防ぐ上で、多様な決済手段を提供することは非常に重要です。
多くのユーザーは普段から使い慣れているクレジットカードやQRコード決済などを好んで利用しており、これらの選択肢が限られていると、購入の途中で離脱してしまう可能性があります。
特に、クレジットカードを持っていないユーザーや、オンラインでのカード情報入力に抵抗があるユーザーにとって、コンビニ決済や後払い決済、キャリア決済などの代替手段が用意されているかどうかは、購入を決定する上で大きな要素となります。
クレジットカード決済を中心に、PayPayや楽天ペイといったQRコード決済、コンビニ決済、後払い決済など、幅広い決済手段を導入することで、より多くのユーザーのニーズに応え、カゴ落ち率を低減し、結果として売上向上に貢献することが期待できます。
4.重いサイトや頻繁なエラーを防止する
ECサイトの読み込み速度が遅かったり、操作中にエラーが頻繁に発生したりすると、ユーザーはストレスを感じて購入意欲を失います。
特に、ページ遷移に時間がかかったり、カート追加や決済時にエラーが表示されると、多くのユーザーは購入を諦めて離脱してしまう可能性が高いです。
快適なショッピング体験を提供するためには、サイトの表示速度を最適化し、システムエラーを減らす対策が非常に重要です。
定期的なパフォーマンスチェックと改善を行いましょう。
5.プッシュ通知やリマインドメールを活用する
カゴ落ちしたユーザーへの効果的なアプローチとして、プッシュ通知やリマインドメールの活用が有効です。
商品をカートに入れたものの購入を完了しなかったユーザーに対し、買い忘れや再検討を促します。
特にカート投入直後は購買意欲が高いため、カゴ落ちから1時間後や2時間後、さらに24時間後や3日後など、複数回に分けてリマインドを送るのが効果的です。
ただし、短期間に頻繁に送信するとユーザーに敬遠される可能性があるため、適切な頻度とタイミングの見極めが重要となります。
また、単なるリマインドだけでなく、送料無料や期間限定割引、ポイント付与などの特典情報、商品のメリットやレビューなどを盛り込むことで、購入を後押しできます。
自社サイトで購入するメリットを明確に伝え、ユーザーにとって魅力的な情報を提供することが、カゴ落ちからの回復率向上につなげましょう。
6.ECサイトの表示スピードとUIの見直し
ECサイトにおいて、ページの表示速度が遅いことは、ユーザーが離脱する大きな原因の一つです。
ページの読み込みに時間がかかると、ユーザーはストレスを感じ、他のサイトへ移動してしまう可能性が高まります。
したがって、ECサイトの表示速度を改善することはカゴ落ち対策として非常に重要です。
また、ECサイトの使いやすさを示すUI(ユーザーインターフェース)もカゴ落ち率に影響を与えます。
ボタンの配置が分かりにくい、商品写真の見せ方が適切でないなど、サイトの使いやすさが不足している場合も、ユーザーが離脱する原因となります。
快適な購買体験を提供するためには、ECサイトの表示速度の最適化に加え、ボタン配置や商品写真の見せ方など、UIの改善にも積極的に取り組むことが求められます。
7.カゴ落ち原因をデータで分析し改善につなげる
カゴ落ちの要因を把握するには、データに基づいた分析が不可欠です。
ECサイトの分析ツールを導入することで、ユーザーがどの段階で離脱しているか、どのような行動パターンでカゴ落ちに至るかを詳細に解析できます。
データ分析を通して、具体的な対策を検討し、効果的な改善につなげましょう。
例えば、特定のページでの離脱率が高い場合は、そのページの構成や情報に問題があると考えられます。
自社の状況に合わせて分析ツールを活用することで、カゴ落ち率の改善が期待できます。
カゴ落ちを防止するリマインドメールのコツ
カゴ落ちしたユーザーに購入を促す手段として、プッシュ通知やリマインドメールは非常に有効です。
これらを活用することで、ユーザーが商品をカートに入れたことを思い出し、購入完了へと繋げることができます。
ここでは、リマインドメールを送信する際の最適なタイミングや、ユーザーの購買意欲を高めるためにメールに含めるべき内容について解説します。
適切なアプローチでカゴ落ち率を改善し、売上向上を目指しましょう。
1.適切なタイミングでリマインドメールを送る
カゴ落ちしたユーザーへのリマインドメールは、早めのタイミングで送ることが効果的です。
ただし、短期間に何度も送信すると、ユーザーにしつこいという印象を与えかねません。
商材にもよりますが、最初のメールは商品をカートに入れた1〜3時間後くらいに送信するのがおすすめです。
その後は、翌日や3日後、7日後など、期間を空けて複数回送ることも有効です。
適切な頻度とタイミングで送信することで、ユーザーの購買意欲を再度高め、購入へと繋げられる可能性が高まります。
2.ビジュアルで未購入の商品をリマインドする
また、リマインドメールでユーザーにカートへ戻るよう促す施策も効果的です。
メール本文には、ユーザーがカートに入れた商品の画像を掲載し、視覚的にアピールすることで、買い忘れに気づかせたり、再び購買意欲を高めたりする効果が期待できます。
HTMLメールを活用し、魅力的な商品画像を掲載することで、ユーザーの興味を引きつけ、購入完了へと後押ししましょう。
また、単に商品をリマインドするだけでなく、サイトへのリンクを分かりやすく設置することも重要です。
3.自社サイトで購入する価値をPRする
リマインドメールでは、単にカゴに残っている商品を通知するだけでなく、自社ECサイトならではの特典をアピールすることも効果的です。
例えば、お得なキャンペーン情報やポイント制度、充実したアフターサービスなどを具体的に伝えることで、ユーザーにサイトで購入するメリットを感じてもらい、購入への後押しが期待できます。
単に商品を思い出させるだけでなく、サイトの価値を訴求することで、カゴ落ちからの回復率を高めることに繋がります。
まとめ|カゴ落ちの要因を知り、売上改善につなげる第一歩を
ECサイトにおける「カゴ落ち」は、訪問者の約70%がカートに商品を入れても購入に至らないという、非常に大きな機会損失です。
本記事では、カゴ落ちが発生する代表的な7つの要因と、それに対応する具体的な対策を解説しました。
特に、購入フローの簡素化や決済手段の多様化、さらにはカゴ落ちユーザーへのフォローメールの活用などは、即効性があり導入しやすい改善策です。
加えて、表示速度やUIの見直しなど、ユーザー体験を向上させる工夫も、カゴ落ちを防ぐ上で欠かせません。
重要なのは、カゴ落ちを単なる「離脱」として捉えるのではなく、「売上につながる可能性が高いユーザーの離脱」として、データをもとに要因を分析し、継続的に改善することです。
ユーザーが安心して購入できる環境を整え、買いやすいECサイトを実現していきましょう。
※2:ecforce導入クライアント38社の1年間の平均データ / 集計期間 2021年7月と2022年7月の対比
※3:事業撤退を除いたデータ / 集計期間 2022年3月~2022年8月