この記事でわかること
EC市場の成長はとどまるところを知りません。スマートフォンやSNSの普及により、ECを通じた購買行動は日常の一部となり、ブランドや企業がオンライン上で顧客と接点を持つことが当たり前の時代になりました。
こうした状況において、ただネットショップを立ち上げるだけでなく売れるECサイトを構築することが求められています。
そして、その鍵を握るのがEC制作会社の存在です。デザイン、UX設計、システム構築、集客、運用保守まで、さまざまな工程において高度な専門性が求められる今、信頼できるパートナーの選定は成功と失敗を分ける決定的な要因となります。
本記事では、EC制作会社の基礎知識から、選定基準、制作の流れ、代表的な会社紹介まで、網羅的に解説します。これからECサイトを立ち上げる方も、既存サイトを改善したい方も、自社に最適なパートナーを見つけるための道しるべとなる情報を提供します。
EC制作会社とは?役割と提供サービス
EC制作会社とは、ECサイトの立ち上げに必要な「企画・設計・デザイン・開発・運用」までを一貫して支援する専門会社です。
従来の「Web制作会社」とは異なり、最近ではマーケティング戦略やブランド構築までを含めた、より包括的なサービスを提供する企業が増えています。たとえば、次のような業務を担うのが一般的です。
- ECサイトの企画・構成設計
- UI/UXを重視したデザイン制作
- カートシステムの選定・導入(Shopify・Makeshopなど)
- 決済や配送とのシステム連携
- SEO対策や広告運用といった集客支援
- サイト分析・改善のPDCA提案
- 運用保守・カスタマーサポートの体制設計
ECサイトの成果を最大化するためには、これらの領域を横断的に支援してくれるパートナー選びが重要になります。
フルスクラッチとパッケージ導入の違い
制作のアプローチには大きく分けて2つあります。
-
フルスクラッチ開発
システムをゼロから開発する方式で、複雑な仕様や独自性の高いサービスに対応できます。コストは高めで、開発期間も長くなる傾向があります。
-
パッケージ・クラウド型カート導入
Shopify、ecforce、Makeshopなどの既存サービスを活用し、スピーディに構築する方式。初期費用や導入負荷を抑えやすく、中小規模のブランドに適しています。
EC制作会社の3つの選び方
EC制作の会社選びをする際には、以下の3つのポイントが重要です。
- 制作会社の過去の事例や実績が豊富
- 制作費用とスケジュール感を確認
- ECサイト構築後のサポートの有無
自社に合ったEC制作の会社を選んで、ECサイト事業を成功させましょう。
1.制作会社の過去の事例や実績が豊富
EC制作の会社を選ぶ際は、過去の制作実績や具体的な事例を見ていきましょう。EC制作の会社は数多くありますが、まだまだ実績・成功事例が少ない制作会社や、公式ホームページを見ても具体的な実績が掲載されていない制作会社は信頼性が低いです。
たとえば、いくら魅力的な公式サイトのデザインやコピーで「何かいいかも?」と惹かれる制作会社でも、具体的な実績・評判がないと満足度の高いサービスかどうかわかりません。
そのため、EC制作の会社を選ぶ際には実績や評判は要チェックです。
2.制作費用とスケジュール感を確認
EC制作の会社は、コストとスケジュール感のニーズを満たす会社がおすすめです。
EC制作には、数十万〜数百万円のコスト、数ヶ月から1年前後のコストと時間がかかります。費用感と納期は異なるので複数の制作会社を比較検討しましょう。
3.ECサイト構築後のサポートの有無
EC制作の会社によって、ユーザー向けのサポート内容は異なります。自社が求めているカスタマーサポート・アフターフォローを提供している制作会社がおすすめです。
たとえば、ECサイトの公開後に問題が発生した場合のサポートやECサイトの集客支援など、ECサイト運用がはじめての方向けのサポートが手厚い会社は心強いです。
自社がEC制作・運用で必要とするサポートを提供している会社を選びましょう。
EC制作会社に依頼する際の相場
EC制作の会社にECサイトの制作を依頼する際の相場感は以下のとおりです。
ECサイトの制作方法 |
相場感 |
ショッピングモール型 |
5~10万円 |
ASP型 |
10~100万円 |
パッケージ型 |
10万円~ |
オープンソース型 |
10万円~ |
フルスクラッチ型 |
数百万円~1,000万円 |
このように、ECサイトの構築方法によって相場感は大きく変わります。すでに存在するプラットフォーム上で立ち上げるショッピングモール型やASP型、パッケージ型などは比較的安くECサイトを制作できる一方で、一からサイトを立ち上げる場合はコストが高めです。
ECサイト制作の流れと制作会社の関与範囲
ECサイトを制作するには、複数のフェーズがあり、どの段階でどのような支援が得られるかは制作会社によって異なります。以下が一般的な制作の流れです。
1. ヒアリング・要件定義
ビジネスモデル、販売商品、ターゲット顧客、KPIなどを明確にするフェーズです。この段階で「どのようなサイトにしたいのか」を言語化し、プロジェクトの土台をつくります。
2. 情報設計・ワイヤーフレーム作成
顧客導線やページ構成を設計し、簡易的な設計図を作成します。ユーザーの視点に立ったUI/UXが求められる重要な段階です。
3. デザイン制作
ブランドの世界観や視認性・操作性を重視したデザインを行います。競合と差別化を図るビジュアル表現が売上に直結する要素になります。
4. フロントエンド・バックエンド開発
HTML・CSS・JavaScriptによるフロント開発や、カート機能、商品管理、決済などのシステム開発が行われます。クラウド型のECカートを使う場合は、この作業の一部が短縮されます。
5. テスト・品質確認・公開
全体の動作確認、決済やメール送信のチェック、表示崩れの確認を経て、本番公開へと進みます。
6. 運用・改善
公開後も定期的に分析・改善を繰り返しながら、コンバージョン率やLTVの最大化を図ります。ここで制作会社が継続的に伴走する体制があるかは非常に重要です。
おすすめのEC制作会社5選
ECサイト制作・運用の初心者にもおすすめできるEC制作会社は以下のとおりです。
- 株式会社これから
- 株式会社いつも
- 株式会社アートピース
- ジェイクラブ株式会社
- 株式会社Proteinum
ここでは、それぞれのECサイトの特徴やおすすめポイントについてチェックしましょう。
1.株式会社これから
株式会社これからは、自社ネットショップ支援実績が業界No.1の制作会社です。19,000社以上の支援実績があり、経験豊富なコンサルタントが対応してくれます。売れるECサイトを熟知したプロがデザインや導線、効率的な集客、サイトの更新をサポートします。
ネットショップ向けの自動集客サービスのAdSISTも利用可能な点も魅力です。
サービスの特徴 |
・19,000社以上の自社ネットショップ支援実績 ・ネットショップの自動集客ツールがある ・実績豊富なコンサルサービスも充実 |
費用感 |
・要相談 |
おすすめな人 |
・実績豊富な自社ECサイト支援を利用したい人 |
出典:株式会社これから 公式サイト(2025-01-09)
2.株式会社いつも
株式会社いつもは、ECサイト制作・運用実績が13,000件を超えている制作会社です。モール型だけでなく、ASP型・セミスクラッチ型などで自社EC制作にも対応しています。ECサイト構築後の集客サポートも充実。とくにSNS集客サービスが特徴です。
加えて、ECサイトのバックヤード業務を代行する従量課金制のパッケージサービス、世界29か国と地域に対応したグローバル展開サポートもあります。
サービスの特徴 |
・ECサイト制作・運用・裏方サポートに幅広く対応 ・業界を問わず13,000件以上の支援実績がある ・ECサイト向けのSNS支援サポートもある |
利用できるプラン |
・要相談 |
おすすめな人 |
・ECサイトへの集客と越境ECを考えている人 |
出典:株式会社いつも(2025-01-09)
3.株式会社アートピース
株式会社アートピースは、経験と実績豊富なプロのデザイナーが、企業や商品の魅力が伝わりやすく、集客・売上につながるデザインのECサイト制作をサポートする会社です。
マーケティングと市場動向を考慮したECサイトを作りたい方におすすめとなっています。
サービスの特徴 |
・マーケティング支援に特化したデザイン ・企業や商品の強みが伝わるECサイト制作 ・チラシやパンフレット、展示会等のデザインも |
利用できるプラン |
・要相談 |
おすすめな人 |
・売れるデザインのECサイトを作りたい人 |
出典:株式会社アートピース 公式サイト(2025-01-09)
4.ジェイグラブ株式会社
ジェイクラブは、越境ECサポートに特化したECサイトの制作会社です。ヒアリングをもとにテストマーケティングを行い、国内外に向けたECサイトの展開をサポートします。
各自治体や公的機関のサポート実績が豊富なので、非常に信頼性の高い制作会社です。
サービスの特徴 |
・越境ECに特化したEC制作・運用サポート ・3,000社を超える支援実績がある ・自治体支援の実績も豊富で信頼性がある |
利用できるプラン |
・要相談 |
おすすめな人 |
・国内外に自社商品を展開したい人 |
出典:ジェイクラブ 公式サイト(2025-01-09)
5.株式会社Proteinum
株式会社Proteinumは、初期のECサイトの構築とその後の集客サポートに特化した制作会社です。楽天グループ出身の社員や営業・マーケティングのプロがサポートします。ECサイトの枠を超えて、SNSやLP、メルマガなどのマーケティング施策も幅広く実行可能です。
サービスの特徴 |
・初期サイト構築~運用をサポート ・ECサイトへの集客に特化している ・リピーター獲得の戦略立案にも強み |
利用できるプラン |
・要相談 |
おすすめな人 |
・ECサイトの集客戦略を幅広く実行したい人 |
出典:株式会社Proteinum 公式サイト(2025-01-09)
よくある失敗とその回避法
ECサイト制作は、ビジネスの未来を左右する重要なプロジェクトです。しかし、事前の準備やパートナー選びを誤ると、時間とコストを無駄にしてしまうこともあります。ここでは、よくある失敗とその回避策について紹介します。
要件定義が不十分なまま進行してしまう
「やりたいこと」や「必要な機能」があいまいなままプロジェクトが始まり、完成したサイトが当初の期待とズレてしまうケースはよくあります。
仕様が食い違っていたり、後から重要な要素が抜けていたことに気づくと、スケジュールにも影響が出てしまいます。
回避策
初期段階で要件を文書に整理し、ページ構成や機能一覧、公開後の運用イメージまで含めて具体的に共有・合意しておくことが重要です。
コミュニケーション不足による認識のズレ
デザインの方向性やユーザー導線に関する意図がうまく共有されず、完成したサイトがイメージと異なる…というケースは少なくありません。
特に抽象的な表現の多いブランディング要素では、ちょっとした行き違いが仕上がりに大きく影響します。
回避策
進行中は中間レビューの機会を定期的に設け、FigmaやNotionなどの共有ツールを活用して、ビジュアルや設計意図を見える化しながらすり合わせを行うのが効果的です。
デザイン重視になりすぎて「売れる導線」が弱い
ブランドの世界観を丁寧に表現したものの、ユーザーの購買行動が考慮されておらず、結果的にコンバージョンにつながらないサイトになってしまうケースも見受けられます。
見た目は良くても、売上という成果に結びつかなければ本末転倒です。
回避策
UI/UX設計のスキルに加え、購買導線の最適化やKPI設計まで対応できる制作会社を選ぶことが大切です。
感覚的なデザインだけでなく、データをもとに導線を設計する文化があるかどうかが、見極めのポイントになります。
制作後の運用を想定していない
「サイトは完成したけれど、更新や改善を社内でまったく回せない」といった状況は、想像以上に多く起きています。
運用体制が整っていないと、サイトはすぐに情報が古くなり、成果を出せない状態に陥ってしまいます。
回避策
納品後の運用までしっかり支援してくれる会社を選ぶか、CMSを導入して社内で更新しやすい構成にしてもらうのが有効です。
また、更新フローの設計や担当者向けのレクチャーがあるかどうかも確認しておくと安心です。
目的別に見るEC制作会社のタイプと選び方
EC制作会社には、それぞれ異なる強みや支援スタイルがあり、自社の目的やフェーズに応じて選ぶべきパートナー像も変わります。ここでは、よくある3つの目的別に、どのようなタイプの制作会社が適しているのかを紹介します。
ブランディング・世界観重視型
自社ブランドの魅力を最大限に伝えたい、差別化されたビジュアルや体験設計を重視したいという場合は、「ブランディング特化型」の制作会社が適しています。
このタイプの会社は、アートディレクションやビジュアル設計に強みを持ち、ブランドコンセプトの言語化やユーザー体験の設計に長けています。デザイン制作の前に、丁寧なヒアリングと世界観のすり合わせを行う傾向があります。
マーケティング・集客支援型
集客や売上拡大を最重視したい場合は、マーケティング支援に強みを持つ制作会社が適しています。このタイプの会社は、SEOや広告運用の知見を活かし、アクセス数やコンバージョンの最大化に向けた導線設計・LP制作・A/Bテストなどを得意としています。
特に、「制作したあとの運用成果」を重視する企業にとっては、単なる見た目の完成度ではなく、数字で改善を繰り返せる体制が重要です。
内製化・運用効率重視型
社内での更新や改善をスムーズに行いたい、運用の属人化を防ぎたいという企業には、「内製化支援型」の会社がマッチします。
このタイプは、CMSの導入支援や社内担当者へのレクチャーなどを含めた、長期視点での自走支援を得意としています。必要に応じて、更新テンプレートの整備やワークフロー設計まで行うことで、運用の負荷を最小限に抑えることができます。
ECサイト制作で申請できる補助金
ECサイト制作で申請できる補助金には以下のような種類があります。
- 事業再構築補助金:中小企業向けで補助率は最大2/3
- 小規模事業者持続化補助金:中小企業向けで最大50万円
- ものづくり補助金:中小企業向けで補助率は最大2/3
- IT導入補助金:中小企業向けで補助率は最大3/4〜4/5未満
自社のECサイト制作に利用できる補助金は要チェックです。
ECサイト立ち上げ後に必要な運用支援とサポート体制
制作フェーズが終わった後、実は「運用」こそがEC事業成功のカギとなります。
運用フェーズで発生する代表的な業務
- 商品ページの更新/追加
- セール・特集ページの制作
- バナー差し替え
- レビュー対応・FAQ管理
- コンバージョン率分析・改善案の実装
サポート体制を事前に確認すべき理由
サイト公開後の更新や改善にかかる工数を内製するのか、外注するのかによって必要なサポート内容は異なります。
- 「月◯時間まで更新対応」などのプランを用意している制作会社も多い
- サポート費用は固定か従量か、契約前に明示してもらうことが重要
- 緊急時の対応スピードやチャネル(メール、チャット、電話)も要確認
サポート付きで安心できる制作会社の特徴
- 担当ディレクターが制作後も引き続き支援
- マーケティングチームと連携し改善提案を実施
- 毎月のアクセス・売上レポート提供あり
よくある質問と業界トレンド
Q. 小規模のブランドでも制作会社に頼むべき?
A. 初期設計こそ外部の知見を取り入れることで、失敗を避けられます。特にUI/UXやCV導線、商品設計の観点ではプロの力を借りることが有効です。
Q. ECカートはどれを選べばいい?
A. Shopifyやecforceなど、目的やスケールに応じて選ぶのがベストです。制作会社に相談しながら、「初期導入コスト」「自由度」「外部連携」などを比較検討しましょう。
Q. 今注目されているECトレンドは?
- CRM中心設計: 顧客ごとのLTV最大化が重視され、ステップメールやリピート設計がより洗練されている
- 生成AI活用: 商品説明文や広告文の自動生成による業務効率化が進行中
- BtoB ECの急成長: 法人向け購買でもEC化が進み、個別ログイン・価格設定などが求められている
まとめ:最適なパートナーを選び抜くために
ECサイトの制作は、単なる「Web開発」ではなく、事業戦略そのものに深く関わる意思決定です。
誰に、何を、どう届けるのか、その設計をともに描ける制作会社と出会えるかどうかが、今後の成果に直結します。
あらためて、パートナー選定時に意識すべきポイントを整理しておきましょう。
- 自社の課題・目標・ターゲット像を具体化する
- カートの種類と制作会社の得意分野を照らし合わせる
- 実績・費用・サポート範囲を横断的に比較する
- サイト公開後も改善提案や運用支援が継続される体制かを確認する
ECサイトの制作は、作って終わりではなく、事業を育てるためのスタート地点です。
自社のフェーズや目的に合ったパートナーとともに、長く成長していける仕組みをつくっていきましょう。
※2:ecforce導入クライアント38社の1年間の平均データ / 集計期間 2021年7月と2022年7月の対比
※3:事業撤退を除いたデータ / 集計期間 2022年3月~2022年8月