この記事でわかること
最近、巷で「クッキーレス時代に突入!」とか、「ポストクッキーに対応するには?」というキャッチフレーズを耳にしませんか?
もし読者のなかで、「ふわっと聞いたことあるけど、実はよくわからない」という方がいたら、この記事を読んで学んでいきましょう!
クッキーとはそもそも何なのか、クッキーがなくなる(レス)と何が起こるのか?
ポストクッキー時代に、果たして何に対応する必要があるのか?
などなど、クッキーにまつわる体系的な基礎知識をお届けします。
(この記事はawoo Japan株式会社 吉澤和之氏の寄稿となります)
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そもそもクッキーってなに?
まずは、クッキー(Cookie)とは何かを整理していきましょう。
クッキーとは、サイト訪問者の様々な情報を一時的にブラウザ上に保存する仕組みです。
訪問した日時や回数、閲覧履歴、ID、パスワード、メールアドレス、IPアドレス、利用環境など、保存する情報は多岐にわたります。
ファーストパーティクッキーとサードパーティクッキーの違い
クッキーは2種類のタイプが存在します。
1つはファーストパーティクッキー(1st Party Cookie)です。こちらは、訪問したウェブサイト(自社のドメイン)から直接吐き出される情報です。
一方、サードパーティクッキーというのも存在します。こちらは他のドメイン(外部のサイト)から発行されるものです。
上記で述べたように、取得できる情報はいずれも多岐にわたります。これらの情報を使って、様々な広告計測の仕組みやユーザーインターフェース上の体験設計に活用されます。
広告の計測にはサードパーティクッキーの付与が欠かせない
自社サイトのアクセス情報を可視化し、マーケティングに生かすためにファーストパーティクッキーを活用するのは想像できますが、ではサードパーティクッキーはなぜ必要なのでしょうか?
それは主に、外部サイトからの流入を分析したりターゲティングするために使われます。
例えば特定のサイトを見た後に、全く違うサイトに訪れると、さっきまで見ていたサイトがディスプレイ広告やバナー広告として表示される、という経験があると思います。
このように、サードパーティクッキーを活用することで、サイト横断(ドメイン横断)でユーザーの情報を連携させ、パーソナライズな広告配信などを可能にするわけです。
いわゆるリターゲティング(通称リタゲ)広告というものです。これまでのデジタル広告のほとんどは、このサードパーティクッキーをベースに成立していました。
クッキー活用のユーザー側のメリット
ログイン情報などの入力の手間を省ける
ユーザー側の最もなメリットは、ログイン情報の入力が省略できることだと思います。わざわざサイトを訪れるたびにログイン情報を入力するのは大変不便です。
そこでファーストパーティクッキーを使って入力情報を保持させておけば、その手間を省くことができます。
また、1度の認証で複数のサイトにアクセスできる「シングルサインオン」という機能もクッキーベースで利用されています。こうした体験はユーザーにとってストレスを軽減させる、価値あるものと言えるでしょう。
買い物履歴やカートインの情報を保持できる
ECサイトで買い物をしたときに、何を閲覧したか、何をカートに入れたのかをブラウザ上で保存できるのもクッキーの利点です。
閲覧したものを保存できるのは、ユーザーにとっては大きなメリットですし、顧客体験としても有益でしょう。
クッキー活用のユーザー側のデメリット
広告に追跡されるような感覚に陥る
リターゲティング広告などは、ともするとユーザーに嫌われてしまうリスクがあるので注意が必要です。
ユーザーの趣味嗜好に基づいて、その人の好みに合わせた広告の配信ができる一方、やりすぎると「うざい広告」として認知されてしまいます。
事業側からすればCVRが高くて効果のでる施策ですが、ユーザー体験としてはあまり望ましくないというのが一般消費者側のイメージです。あるアンケートでは、ネット広告を不快に思ったという人が75%存在するようです。※
※参照:https://webtan.impress.co.jp/n/2018/06/05/29463
プライバシーリスクの危険が存在する
ブラウザ上に様々な情報が保持されているので、個人情報漏洩のリスクがあります。
ログイン・パスワード情報、カード情報なども保持されているので、万が一スマホのロックを外されたら、そこで不正利用される可能性もあります。
クッキーの何が問題になってるの?
メリットとデメリットが存在するクッキーですが、インターネットの世界では長年使われてきた技術です。
しかし、なぜ最近このクッキーが問題視され始めたのでしょうか?
それは、近年インターネット上の個人情報の取り扱いを強化しようという動きが出てきたためです。
要因は様々ですが、発端となった大きなきっかけは欧州で2018年に始まったGDPR(General Data Protection Regulation:一般データ保護規則)ではないでしょうか。
インターネットを取り締まる法律はまだまだ明確化されておらず、ネット上に存在する情報の所在をどう管理すべきか、あやふやなところがありました。
そこで欧州では、インターネット上にある自分の情報を削除したり修正したり、他に持ち運べるかどうかを決定できる権利を付与したのです。
しかも、ネット上は国境がないため、ヨーロッパのユーザーを含む場合はたとえ日本の事業者であろうと、この権利をしっかり留意する必要があります。
こうした動きが各国に拡散し、やがてGoogleやFacebookなどのメガプラットフォーマーも巻き込んだ大きな課題へと発展していきます。
要は、インターネット上にある個人を特定でき得る様々な情報は個人情報として扱うことになるよ、という風潮に変わっていったのです。
そしてその中に、「クッキー」という存在も含まれるようになりました。
なぜクッキーを廃止するように至ったのか?
こうした個人情報保護の強化の観点から、クッキーはちょっとした悪者扱いに変わっていきます。
SafariやFirefoxなどは相次いでクッキーをデフォルトで無効にするなど風当たりが強くなり、ユーザーの間でも問題視されるようになったため、いよいよGoogleも自社製ブラウザのChromeにおいて、クッキーを廃止する動きが出てきたのです。
ちなみになぜGoogleの動きが注目されるかというと、彼らがネット広告のほとんどを独占しているためです。
つまり、影響力がとても大きいので、彼らがどう対応するか、というのが必然的に注目されているわけです。
クッキーはいつ廃止されるの?
ちなみにGoogleがクッキーの規制を行う時期は、まだ明確になっていません。
当初は2022年の前半とされていたのですが、何度かの延期があり、GoogleはChromにおけるサードパーティクッキーの廃止を2024年内からさらに時期を延長すると発表が行われました。
事業側からすれば、ポストクッキーの対応準備期間が伸びた形ですので、この機会にポストクッキーの対策についてしっかり議論して方針を固めていくべきでしょう。
参考:グーグルがトラッキングクッキー廃止を2023年後半まで延期
EC事業者は今後クッキーレスにどう対応すればいいのか
こうして、クッキーは徐々にその需要が縮小していくことになります。
そうなると次は「じゃあ変わりの技術は?」「もうリターゲティングはできないの?という疑問に変わっていきます。
ここは実は正解はなく、誰も次の答えを持っていない状態です。これがいわゆる「クッキーレス問題」です。
次の方針が固まってないため、みんなどうアクションしたらいいかわからず、戦略も描けない状態になっているのです。
突如現れた代替技術 Flocをめぐる論争
そんななか、Googleが開発している新たなクッキー代替技術「Floc(Federated Learning of Cohorts)*フロック」が急にクローズアップされ、注目を浴びるようになりました。
詳しい説明はこちらのブログにも記載しているので参考にしてみてください。
Googleが開発予定のクッキー代替技術FLoC(フロック)について解説しよう
Flocとクッキーの大きな違いは、クッキーがユーザーの行動を個々に捉えるのに対して、Flocはユーザーを群(グループ)で捉えるということです。
これまで懸念とされてきた、個人情報が特定されてしまうというリスクを排除しているという点で評価できる技術です。
しかも、ちゃんとクッキーと同等レベルの精度を保ちますというのがアピールポイントなので、一見とてもいい代替サービスではないかと思いますが、実は賛否両論が巻き起こっています。
参考:グーグル「FLoC」に逆風、アマゾンがブロックと米メディア報道
参考:Googleが進める代替技術「FLoC」が問題視されている理由とは?
否定的な意見を要約すると「結局この技術でも個人情報リスクは依然として残っており、唯一の解決策として受け入れられるものではない」というものです。
各ブラウザ・プラットフォーマー間のポジショントーク的な論争にもなりつつありますが、賛否があるのは事実です。
今現在(2021年7月時点)の「ポストクッキー問題」は、このGoogleが開発したFlocの取り扱いが議論の焦点に変わっているという印象です。
これまで不透明だったポストクッキー時代の道筋が、このFlocによって少し光が差してきたとも言えます。
しかし、まだまだ議論がされ尽くされていないため、明確な答えにはなっていない。というのが今の状況です。
業界全体でオーサライズが取れていない状態は依然として続いています。
混沌とした状況のなかで、EC事業者は何を進めていくべきか
こうしたなか、ポストクッキー対策をどのように進めればいいか悩んでいる方々が多いと思います。現時点では、以下の2つのことに注力すべきだという見解が数多く聞かれています。
1st Party Dataを整備して顧客理解を深める
1st Party Dataとは、自社の顧客情報や、サイトに訪れたユーザーに関連する収集データのことを指します。
今後、より顧客との「エンゲージメント」が重要になっていきます。
既存顧客とのリレーションを深め、ポイントプログラムなどのロイヤリティ施策を生かしながら離脱されないようにカバーする工夫をしたり、よりLTVを高められるようなカスタマージャーニーの設計とアウトプットがより重要度を増すでしょう。
こうした、顧客との関係意地・構築にウェイトを置く必要が出てきます。
ブランドの体験価値を高める
こちらはどちらかというとそもそも論に近いものです。
そのサービスや商品は、何のために存在するのか。どういうベネフィットを消費者に提供しているのか。そこを突き詰めつつ、いかにユーザー体験の価値を高めるかの工夫が必要になっていきます。
例えば商品開発のプロセスを可視化させて、商品が作られる過程を見せながら、その商品に対する想いも一緒に届けていったり、長く使っていただけるためにさまざまなコンテンツを発信して、顧客のそばに寄り添うような体験を提供して情緒的価値を高めるなど、さまざまなブランド体験向上の工夫が必要です。
まとめ
いかがでしたでしょうか。ポストクッキー問題がどのような問題で、なぜ起こり、今どのような議論がされているのか、ある程度理解いただけたでしょうか?
このクッキーレスの問題は、現在進行中で議論されている内容で、いまだ明確な方向性は見えていません。
こんなときに大事にしたいのは、広告に頼らずにビジネスを成長できるビジネスモデル作り、つまり顧客基盤をしっかり強固にしていくということです。
ちなみにちょっとだけ宣伝ですが、寄稿した私が所属するawoo Japanという会社のnununi(ぬぬに)というサービスは、このクッキーレス時代に対応した、人工知能によるマーケティングプラットフォームです。
どのように対応しているかというと、我々は消費者・ユーザーの行動を特定・分析するツールではなく、商品の情報を理解し、その特徴をハッシュタグへと変えるソリューションです。その商品情報からユーザーの購買動機を推定していくという新しいマーケティングアプローチを採用しています。
つまり、個人情報を一切取得せずに、ユーザーに最適な顧客体験を提供できるAIを開発しました。
今後、我々のようなクッキーレス時代に対応したマーケティングソリューションは、これからのトレンドになっていくのは間違いありません。
マーケティングツールはどんどん進化をしていきます。ポストクッキー時代の新しい方向性は、このような最新技術によって定められていくことでしょう。
【寄稿者】
awoo Japan株式会社 日本事業開発責任者
執行役員 吉澤和之
フリーライターからキャリアを始め、創刊誌の初代編集長を務める。その後広告代理店でクリエイティブデイレクターを経験した後、外資系マーケティングオートメーション企業に転職。Business Architectとして新規事業・事業開発などを担当。その後独立し、
各SaaS企業の事業コンサルティングを行う傍ら、ニューヨーク発のIT企業MovableInkの日本進出支援、 Repro株式会社にてCBDOを経験。
現、台湾発AI×MarTechスタートアップ企業awoo Japanの執行役員 事業開発責任者に就任。
サービスサイト:https://www.nununi.jp
【最後に】
ここまで読んでいただきありがとうございます。ここで最後にecforceのご紹介をさせていただきます。
ecforce(イーシーフォース)は日本国内のEC・D2Cビジネスの現場を知り尽くした、わたしたちSUPER STUDIOが提供する国産SaaS型ECシステムです。EC・D2Cサイト構築の際の要件定義から成長拡大まであらゆるフェーズをサポートします。
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※2:ecforce導入クライアント38社の1年間の平均データ / 集計期間 2021年7月と2022年7月の対比
※3:事業撤退を除いたデータ / 集計期間 2022年3月~2022年8月