この記事でわかること
コロナ渦と、それに伴うライフスタイル全般の急激な変遷によって加速するEC・D2C業界。前回の記事ではEC・D2C事業をこれからはじめる事業者の方々向けに「おすすめのECサイト構築方法・手順」をご紹介しました。
ECサイト構築のための方法や全体の流れを理解した後、次に気になるのは「どれほどの費用がかかるのか?」ではないでしょうか。
費用を見積もるうえで「初期費用」や「月額手数料」、そして取引にかかる「手数料」、それに加えて、本稿ではECサイト運用にかかる「人件費」や「機会損失」といったなどの「見えにくいコスト」についても、事業戦略や経営の視点から解説していきます。
具体的な売上と連動したカートシステムの費用シミュレーションや事例もあるので、ぜひ最後までご覧いただけますと幸いです。
この記事を最後までご覧いただいた方のために、事業にすぐ使える実践フォーマットを配布させていただいております。ぜひご活用下さい。
これからECカートを決める方・いまのECカートに満足してない方へ。以下の記事にも、あなたのお悩みが解決する情報が満載です。
【ECサイト構築サービス22個の比較表】おすすめ国産SaaS型ECシステムもご紹介
4つのECサイト構築事例。新鋭D2Cブランドの動向から読み解く「狙い」とは?
ECサイトの定義と費用相場に関する考え方
本稿における「ECサイト」とは何を指しているのでしょうか。最初にその定義を明確にして、費用相場に関する考え方をお伝えします。
一般的には「ECサイト」は以下の3つの要素に分解できます。
フロントエンド
- LP
- ブランドサイト
バックエンド
- カートシステム
フロントエンドはお客様が商品を選んで買い物かご(カート)に入れるまで、バックエンドのカートシステムはその後のお客様には見えない部分の処理を担います。お客様がECサイトで商品を購入する際の流れですが、一例としては以下のようになります。
- お客様自身が困りごとや商品名をネット検索する
- 商品ページを閲覧する
- 気になる商品をカートに入れる
- 注文を確定する
- 決済処理を行う
- 在庫を確認して配送手続きを行う
- 売上計上・会計処理を行う
- アフターフォローやリピート購入・別の商品の購入を促す
この一連の流れにおいて、お客様が商品をカートに入れるまでは主にフロントエンドの問題。フロントエンドの費用相場は制作会社それぞれですが、数社に問い合わせてみれば適正価格は大方イメージできるはずです。
一方でカートシステムは、システムにかかる(かけるべき)費用はピンからキリまで大きく差があります。
なぜなら年商規模や取り扱う商品点数、さらに社内にシステム開発ができる人材がいるかどうかによって、必要な機能要件が異なってくるからです(例えるなら、個人商店と大型ショッピングモールでは用意すべき設備が全く異なります)。
そこで本稿では主にカートシステムにフォーカスして、話を進めていきます。貴社のEC・D2C事業が「どのくらいの規模を見据えているのか?」をイメージしながら読み進めていただければ幸いです。
おすすめのECサイト構築方法「国産SaaS型ECシステム」
おすすめのECサイト構築方法については「おすすめのECサイト構築方法・手順」で詳しく紹介いたしましたが、ここで少しおさらいしましょう。
結論からお伝えすると、EC事業の成功のためにはカートシステムの選定が重要であり、最終的に選ぶべきカートシステムは以下の3つのポイントを抑えたものが望ましいです。
- カートのカスタマイズ性とコスト感のバランス
- 国産の安心感(国内ECビジネス環境をふまえた機能要件やCSサポート)
- ブランド視点やメーカーとしてのノウハウを持っているか(カスタマーサクセスの強さ)
この3つのポイントに沿って選ぶと、「SaaS型ECシステム」と呼ばれる適宜必要な機能を状況に合わせて使えるシステムは親和性が高いと言えます。
事業が急拡大する可能性があるD2Cにおいて、カートシステムのカスタマイズ性は非常に重要な要素。さらに言うと、日本人の思想やECビジネス環境にあった設計とコミュニケーションを体現している国産SaaS型ECシステムが最もおすすめです。
その他に気をつけたい点としては、システムにおいては未知・予想外・想定外といった事象が頻繁に発生するため、カスタマーサポート(CS)の充実も大事な要素です。
その点においても、何かわからないことがあった時に細かく丁寧にサポートしてくれる国産サービスが良いでしょう。
ちなみに私たちがご提供するecforceは国産のSaaS型ECシステムです。実績や機能のご紹介は、以下から詳しくご覧ください。
大事なのはROIの視点(費用・コストだけを見るのではない)。
ここからカートシステムの費用感を見て行きたいのですが、その前に一つだけ大事な視点をお伝えしたいと思います。
ROI(Return on investment:投資に対する利益)という視点です。
例えばシステム使用料だけを見ると、自前で設定を行えば無料で立ち上げられるオープンソースや、無料ASPは安く見えます。実際に個人の趣味の延長やお試し起業・副業などのマイクロビジネスでは、初期費用はなるべく抑えたいのでこれらの選択が魅力的です。
しかしROI(Return on investment:投資に対する利益)という視点では、かけた費用に対して、どれだけの見返りが期待できるかを考えていきます。
わかりやすい例は人材採用です。はたして給与の低い社員が良い社員、といえるでしょうか。年商を上げていきたい意志が明確にあれば、それに応じた「投資」が必要になります。
当社での経験則やecforce導入企業様の事例から言えることは、年商規模10億円が大きな壁です。
この売上規模になると課題も一挙に増える傾向にあるので、変更が容易ではないシステム面はボトルネックになりがちだからです(ecforceの運営元である私たちSUPER STUDIOも、多くのブランド様の様々なケースに立ち会ってきました)。
ROIの視点をもった適切なカートシステムの構築ができていなければ、大きな機会損失があるでしょう。
ECサイト構築のコスト・シミュレーション
しかし「無料ASPで自社ECサイトを構築してしまえば無料で済むんじゃないの?」このような根本的な疑問がある方もいるでしょう。
そこで無料ASPとSaaS型ECシステムの費用を比較したシミュレーションを作ってみました。実際に国産のSaaS型ECシステム「ecforce」と、無料ASPの月額費用の比較をしてみます。
上の図は無料ASPと国産SaaS型ECシステムであるecforceの3年間の月額費用(カート使用料と販売手数料を足した金額)を比較したものです。月商100万円からスタートして順調に成長し、3年後の月商は約12億と試算します。
すると、月額費用は無料ASPが約900万円、ecforceが約500万円と大きな開きがあります。
さらに月商がどのあたりで費用が逆転するかを示したのが下の図です。8ヶ月目の月商350万円でecforceの費用が安くなることがわかります。
※注釈:以上2つのグラフについて
・有料カートの例として、ecforceのエキスパートプランを利用したケース(月額99,800円+受注手数料30円/件+決済手数料3.6%)と無料カートを利用したケース(月額0円+受注手数料40円/件+決済手数料6.6%)でそれぞれ月次コストを計算し比較
・月商は初月100万円から開始し、2年目までは月次120%成長、3年目以降は105%の成長率で月商が増えていく前提でシミュレーション
・受注手数料計算のための月次受注件数は月商を客単価5,000円で割って算出
結論としてはビジネスの成長を考えれば無料ASPよりも断然SaaS型ECシステムがおすすめです。今回の試算では、年商3,900万円を超えると月額費用はSaaS型ECシステムの利用料が安くなりました。
費用面以外のメリットも当然あります。SaaS型ECシステムは、よりプロフェッショナルな機能と実績に裏打ちされたきめ細やかなサポートを活用できます。
これらを考えるとビジネスとして売上を上げていく前提であれば、SaaS型ECシステムの方がコストパフォーマンスがよい選択肢であると言えます。
ecforceにご興味のある方は、ぜひ以下よりお問い合わせいただければ幸いです。
6つのECサイト構築方法別の費用感
それではここからECサイト構築の費用感を方法別にお伝えします。先述したとおり、LP・サイト制作の費用相場は制作会社それぞれなので、ここではカートシステムの費用感を概算で出しています。詳しく見ていきましょう。
ECサイト構築方法別の費用感早見表
お時間がない方は、「費用感早見表」を作ったので最初にこちらをご覧ください。
※月額費用は商品点数・取引点数に制限のないプランを想定。
※クレジットカードなどの決済手数料は表記していません。
※価格は全て概算です。
お手頃価格で安心な「国産SaaS型ECシステム」
国産SaaS型ECシステムは先述したとおり、利用者側が必要な機能を利用することができるクラウド型のシステムです。特徴としては、カスタマイズ性の高さとお手軽さです。
0から開発するフルスクラッチに比べれば独自性は低いかもしれませんが、ベンダー(開発会社)が時流に合わせて機能のアップデートを行ってくれる点は、独自性以上に重要だと言えます。
費用感としては、初期導入費用が10万円程度~、取引件数や商品点数の制限がゆるい標準プランの月額が5万円程度~といった具合です。この金額を高いと思う方もいるかもしれませんが、先程のシミュレーションの通り、ある程度の年商規模を目指すのであればROIを考えて優れたシステムに投資する視点は重要です。
もっと具体的な料金プランをご覧になりたい場合は、以下からecforceの料金プランを参考にしてみてください。
費用感に差がある「海外SaaS型ECシステム」
世界中で利用されているブランドが日本でも展開されていますが、ベンダー(開発会社)が日本国内での支援実績はあるかなど、「伴走者」としての見極めも重要になってきます。
費用感としては、初期導入費用が2万円~100万円程度とブランドやプランによって大きく差がありますが、取引件数や商品点数の制限がゆるい標準プランの月額は、国産SaaS型ECシステムと同様に5万円程度くらいをイメージして問題ないでしょう。
費用・開発期間は”やや重たい”印象「パッケージ型ECシステム」
「パッケージ型ECシステム」はECシステムとして必要な機能を一式装備し、かつ社内で利用している他システムとの連携ができる、など自社向けにきめ細かにカスタマイズも可能です。
パッケージを自社で「買い上げる」イメージですので、都度の販売手数料は基本的にはかかりません。ただし初期導入の費用は数十~数百万円、月額費用も10万円単位で、さらに開発期間が場合によっては3ヶ月~6ヶ月ほどかかってしまう点は、“やや重たい”印象。この点は認識しておく必要があります。
決して“安価”ではない「オープンソース」
無料で公開されているオープンソースのコードを利用して、ECサイトを構築する方法です。自前でやってしまえば、無料にてECサイトを立ち上げることができますが、その場合は社内に専用の人材が必要です。
またオープンソースを利用した開発を外注するという選択も一般的です。その場合の初期費用は数十万円~100万円以上と受託会社によって幅があるため、自社のECサイトの要件定義をしっかり行ってから委託することが大切です。
またトラブル時の対応など、開発後のアフターフォローに関しては契約をしっかり確認しておく必要があるでしょう。以上のことを考えると、無料のソースコードを利用するオープンソースは決して安価な選択ではないと言えます。
0から構築する高価な「フルスクラッチ」
フルスクラッチは既存のASPやパッケージ、SaaSを利用せずにすべて自前で開発する手法で、最も大きな費用がかかります。メリットとしてはブランドとしての独自性が出しやすいことと、顧客データをすべて自社内で取得・自由に活用できることです。
初期費用は数千万円~数億円に及び、保守や先述のデータ活用など自社で専門人材を抱える必要があります。また、当初のシステムが時代の流れにより陳腐化するのも3~5年と言われており、更新や新規立ち上げにも膨大な費用が発生します。
また自社内で完結を目指すため、セキュリティ上のトラブルも自前で対処しなければなりません。フルスクラッチを選ぶのであれば、このあたりを踏まえた上で判断することをおすすめします。
とにかく費用を抑えるなら「無料ASP」
「無料ASP」は他のECサイト構築方法で必要な初期費用が無料です。それゆえ、とにかく費用を抑えたいスモールビジネスや、実験的にECサイトを構築する場合は最適な選択肢だと言えます。
ただ全てが無料ではありません。決済手数料だけを見ると、他の選択肢より高くつく場合があります。“無料”という言葉に惑わされず、何が良いかは本稿でもご紹介したシミュレーションを参考にすることをおすすめします。
ECサイト構築の費用・コスト関連の注意点
ECサイトを構築する際に真っ先に目が向くのは「初期費用」と「月額利用料金」ですが、実際はその他にも「料金表では見えにくいコスト」があります。
ここからは、そのような「見えにくいコスト」を注意喚起するとともに、具体的な事例を載せて皆様にリアルな費用感をお伝えしていきます。
カートシステムは要件定義が重要
「年商規模10億円が大きな壁」だとお伝えしましたが、この規模を目指す場合、カートシステムに“必要な機能は備わっているのか”、“急激な売上成長にも自社のカートシステムは耐えられるのか”を検討する必要があります。
ただ機能の多寡によって初期費用と月額費用は異なってきますし、最初からあまり多機能だと使いこなせず、担当者の負担になるケースもあります。そのため、現場担当者もあわせてシステムの要件定義を行い、必要な機能を選定する必要があるでしょう。
もちろん、成功パターンを熟知した提供会社が要件定義に力を入れてくれれば言うことはありません。
費用シミュレーションは必須アクション
先ほどもシミュレーションのグラフをお見せしましたが、カートシステムには実際の費用として、「月額利用料」だけでなく、従量課金や手数料も検討材料に含める必要があります。
商品登録点数や取引数によって課金される従量課金はもちろん、同じカートシステムでも「月額利用料は高いがこの売上規模だと上位のプランがお得」ということも起こりうるので、事前に綿密にシミュレーションを組むことは必須アクションです。
また、人件費やサイト制作期間といった“時間”など、各サービスの料金プランには表れない「見えないコスト」もあるので、信頼できるベンダー(開発会社)を見つけることは非常に重要なことです。
パートナー選定を熟考すべき
繰り返しになりますが、カートシステム導入の費用を考える上で「月額利用料が安い」というのは一面に過ぎません。
その他にも各種手数料や従量課金によってベストな選択は異なってきますし、さらに大きな絵としては、システムは事業の拡大にも耐えうるか、そのとき社内の人材などのリソースは十分に確保できるか、など経営戦略全体の話に及びます。
そうなるとカートシステムを単なるツールとして捉えるのではなく、ベンダー(開発会社)を事業の成功まで伴走してくれるパートナーとして選定するかは、重要な違いです。
他社事例のストーリーは自社にしっくりくるものであるか、見積もり段階からしっかりヒアリングを行ってくれるか、要件定義は甘くないか、サポートはあるかなど。カートシステムだけではなく、パートナー選定を熟考すべきでしょう。
ECサイト構築にかかる具体的な費用感
最後に、私たちSUPER STUDIO(ecforceの運営元)が培った具体的な事例から、実際にECサイトを構築すると、どれくらいの費用がかかるのかを明らかにしたいと思います。
今回事例としてpick upしたのは、「しぐにゃる」という尿検査ができる猫砂を企画・提供するD2Cブランド。ECサイト構築に以下のような費用がかかりました。
・サイト構築費用:
- KVデザイン+撮影:約35万円
- サイトデザイン:内製につき外注費なし。
- サイトコーディング::内製につき外注費なし。
・その他のコスト
- サイトワイヤーフレーム:内製につき外注費なし。
- ユーザーボイス素材:レビュー用商品提供で無償
- パッケージデザイン+パッケージ撮影:約20万円
- 全体アートディレクション
・カートシステム:ecforceなのでシミュレーションを参考にしてください。
・制作期間:約2ヶ月
ここでは主にブランドサイト・LPの制作に関する費用を出していますが、内製をメインにして外注費を抑えるとこの程度で作ることができます。
ただ、サイトデザイン・コーディングなどは、外注をすると数十万円~200万円、高い場合はそれ以上かかるケースもあるでしょう。あくまで一つの事例として、参考までにご確認ください。
<参考記事>
※2:ecforce導入クライアント38社の1年間の平均データ / 集計期間 2021年7月と2022年7月の対比
※3:事業撤退を除いたデータ / 集計期間 2022年3月~2022年8月