この記事でわかること
※この記事は 時点の情報をもとに執筆しています。
OMOは、現代のマーケティングや顧客体験設計において欠かせない概念です。オンラインとオフラインの垣根がなくなりつつある今、消費者の購買行動やブランドとの接点は多様化しています。
こうした時代背景の中で、OMO(Online Merges with Offline)はすべてのチャネルを顧客体験中心で統合する革新的なアプローチとして注目を集めています。
本記事では、OMOの基本定義から、混同されやすいオムニチャネルやO2Oとの違い、具体的な企業事例、導入ステップ、そして成功に必要な組織やツールまで、幅広く丁寧に解説します。
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オムニチャネルとは?マルチチャネルとの違いやメリット、事例から学ぶ顧客体験最適化のマーケティング戦略
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OMO(Online merges with Offline)とは?

OMO(オーエムオー)とは、オンライン(ECサイト・アプリなど)とオフライン(実店舗・対面接客など)の垣根をなくし、すべての顧客接点を一体化して捉える新しいマーケティングの概念です。
チャネルを増やす発想とは異なり、顧客視点で最適な体験を提供することに重きを置く点が特徴です。
ここでは、OMOの定義や注目される背景、企業にもたらす変化について詳しく解説します。
OMOの定義
OMOとは「Online Merges with Offline(オンラインとオフラインの融合)」を意味し、オンライン(ECサイトやアプリなど)とオフライン(実店舗・カスタマーサポートなど)の区別をなくし、あらゆる顧客接点を一体として設計するマーケティング戦略です。
近年、スマートフォンの普及率は90%を超え、インターネット利用率やSNS利用時間も増加傾向にあります。
こうした中、消費者は「店舗で商品を確認し、後からECサイトで購入する」「SNSで話題の商品を知り、店舗で試す」といったように、複数のチャネルを横断して商品やサービスに触れるのが一般的になりました。
一方で、企業側がオンラインとオフラインの情報や体制を分断して運用している場合、顧客はチャネルを切り替えるたびに体験の一貫性を失い、結果として不満や機会損失が発生する可能性があります。
OMOはこうした課題を解消し、すべてのチャネルにおいて顧客視点でシームレスな体験を実現することを目的としています。
たとえば、以下のような取り組みがOMOの代表例です。
- 実店舗での購買履歴をもとに、ECサイトで関連商品をレコメンドする
- アプリで商品在庫を確認・取り置きし、来店時にスムーズに受け取る
- オンラインの閲覧履歴に基づいたパーソナライズされた接客対応を実店舗でも提供する
このように、OMOは単なるデジタル化やチャネル連携ではなく、顧客体験の最適化を軸に企業のマーケティングやサービス設計を再構築する考え方です。
顧客満足度の向上やLTV(顧客生涯価値)の最大化にもつながるため、特に小売・飲食・アパレルなどの業界を中心に導入が進んでいます。
OMOが注目されるようになった背景
OMOが注目されるようになった背景には、3つの大きな社会変化があります。
- デジタルデバイスの浸透
スマートフォン、スマートウォッチなどの普及により、常時オンラインで情報収集・比較・購入が可能に。これにより「オンラインが日常化」しました。 - コロナ禍による生活様式の変化
非接触ニーズの拡大により、モバイルオーダーや無人店舗など、物理的な接触を避けるOMO型サービスが急速に普及しました。 - CX(顧客体験)重視の潮流
単なる商品・サービス提供ではなく、「どのような体験を通じてブランドとつながるか」が重視され、体験設計が競争力の源泉となっています。
たとえば、「アプリで商品を探して、実店舗で受け取り」「店舗で試着して、オンラインで後日購入」といった行動が日常化したことで、企業側もそれに対応するマーケティングやシステムを設計する必要が生じています。
OMOがもたらす顧客体験の変化
OMOの本質は、チャネルの統合ではなく「顧客視点での体験設計」にあります。
たとえば、OMOによって次のような体験変化が生まれます。
- 統合された顧客データにより、パーソナライズされた提案が受けられる(例:店舗で買った商品に合うアイテムをオンラインでレコメンド)
- オンライン・オフラインの在庫や価格情報の一元化により、どのチャネルでも迷わず買える
- 店舗とデジタルの連携によって、試着予約・レジ待ち回避・スタッフ提案など、ストレスのない購買体験が可能に
このように、OMOは「どこで買うか」ではなく「どんな体験で買うか」を重視する顧客ニーズに対応した、次世代型マーケティングといえるでしょう。
OMOは「デジタルの力で、実体験の質を高める」アプローチであり、企業にとってはブランド価値やLTV(顧客生涯価値)を高めるための重要な施策となっています。
OMOとオムニチャネル・O2Oの違いとは?
OMOという言葉は、オムニチャネルやO2Oと混同されやすい概念のひとつです。
いずれも「オンラインとオフラインをつなぐ」という点では共通していますが、それぞれ目的や設計思想が異なります。
ここでは、OMO・オムニチャネル・O2Oの違いを整理し、企業が適切な戦略を選択するための基礎知識を提供します。
オムニチャネルとの違い
OMOと特によく比較される概念に「オムニチャネル」があります。両者は一見似ているように見えますが、その設計思想や目的には明確な違いがあります。
オムニチャネルは、顧客との接点(チャネル)を増やし、どこからでも購入できるようにすることを目的とした戦略です。
具体的には、ECサイト・アプリ・実店舗・SNSなど複数の販売チャネルを整備し、それぞれのチャネル間で在庫情報やポイントなどを共有することで、スムーズな購買体験を提供する仕組みです。
一方でOMOは、チャネルを「つなぐ」だけではなく、すべての接点を通して統一された顧客体験を設計することを重視します。
つまり、チャネルの管理が目的なのではなく、顧客がブランドとどのような体験をするかを中心に全体を構築するのがOMOの本質です。
- オムニチャネル:企業視点で「チャネル」を整備・連携する戦略
- OMO:顧客視点で「体験」をシームレスに設計する戦略
簡単にまとめると、上記のような違いがあります。
なお、オムニチャネルについて詳しくは次の記事でも解説しています。
オムニチャネルとは?マルチチャネルとの違いやメリット、事例から学ぶ顧客体験最適化のマーケティング戦略
O2Oとの違い
OMOとあわせてよく登場する関連キーワードに「O2O(Online to Offline)」があります。
O2Oは、オンラインでの情報発信や広告施策を通じて、実店舗への来店や購買行動を促すマーケティング手法です。
例えば、次のような施策はO2Oに該当します。
- SNS広告やアプリのプッシュ通知でクーポンを配信し、店舗への来店を促す
- メールマガジンでセール情報を配信し、ECではなく実店舗での購買へ誘導する
- Googleマップや検索広告から「近くの店舗へ誘導」するローカルSEO施策
O2Oは、あくまでオンラインを起点に、オフラインでの行動を喚起するという一方向の考え方に基づいています。そのため、施策の主目的は「送客(来店促進)」です。
一方、OMOはオンラインとオフラインを分けることなく、すべての顧客接点を統合して、どのチャネルを通じても一貫した体験を設計することに重点があります。
つまり、O2Oが「オンライン → オフライン」という流れに注目しているのに対して、OMOは「体験の質」や「顧客中心の設計思想」に主眼を置いています。
OMO・オムニチャネル・O2Oの特徴 一覧表
| 項目 | OMO | オムニチャネル | O2O |
|---|---|---|---|
| 主な目的 | 顧客体験の最適化 | チャネルの連携と整備 | オンラインから実店舗への送客 |
| 出発点 | 顧客視点 | 企業視点 | オンライン(Web・アプリ・SNSなど) |
| 特徴 | チャネルの境界をなくし、一貫した体験を提供 | 複数チャネルでの統一感ある購買手段を提供 | オンラインの施策でオフライン行動を促進 |
| 方向性 | オンラインとオフラインを融合 | 並列展開・チャネル拡張 | オンライン → オフラインの一方向 |
| 施策例 | モバイルオーダー、データ連携による接客など | EC連携アプリ、ポイント統合、店頭引き取りなど | クーポン配信、位置情報広告、アプリ来店誘導など |

各モデルの具体的な事例
OMO・オムニチャネル・O2Oの違いをより深く理解するには、実際に企業がどのような形でこれらの概念を取り入れているかを知ることが有効です。
ここでは、それぞれのモデルに該当する具体的な企業事例を紹介し、違いを整理していきます。
OMOの事例|Zoff
Zoffでは、オンライン(スマホアプリ/EC)と実店舗をつなぎ、顧客がどこからでも「試して/買える」体験を設計しており、まさにOMOモデルの好例です。
Zoffはスマホで「バーチャル試着」ができるサービス「Zoff Virtual Counter」を導入。AIレコメンド機能を活用し、自宅にいながら店舗スタッフ同様の提案を受け、結果としてオンライン購入や店舗来店を促す仕組みに発展しています。
出典:スマホで試着ができるサービス「Zoff Virtual Counter」|Zoff公式サイト
オムニチャネルの事例|UNIQLO
UNIQLOは、オンラインと実店舗のチャネルを「どのチャネルでも同じブランド体験が可能」という観点で整備しており、典型的なオムニチャネル戦略を構築しています。
UNIQLOは、ECサイト・スマホアプリ・実店舗を統合的に活用。例として「オンラインで購入→店舗受取」「店舗でバーコードスキャン→在庫確認・EC購入」という流れを設け、チャネルの境界を低くしています。
顧客がどのチャネルを選んでも利便性が高く、ブランド体験が切れない設計です。
出典:
プロが考察するユニクロの7つのオムニチャネル戦略|forUSERS株式会社
ユニクロのオムニチャネル戦略がすごい!実店舗×ECの最前線|MarkeCheck
O2Oの事例|マクドナルド
マクドナルドでは、オンラインアプリ・モバイルオーダーを起点に実店舗での受け取り・購買という動線を設計しており、O2O戦略の典型例といえます。
マクドナルドは「モバイルオーダー」を公式に展開。ユーザーがアプリから注文・支払いを完結させ、ドライブスルーや店舗受け取りなどオフラインの来店行動をスムーズに促しています。デジタルからリアルへの動線を重視した送客型の設計です。
出典:モバイルオーダーの使い方・ご注文・お支払い・受取方法|マクドナルド公式
OMOの成功事例
OMOは日本国内でもさまざまな業種・業態で導入が進んでいます。
ここでは、国内企業を中心に、オンラインとオフラインを融合させた先進的な取り組みを紹介します。
スターバックス|モバイルオーダーと店舗受取で待たせない体験を提供
スターバックスでは、公式アプリまたはWebを使って商品を事前に注文・決済し、店舗でスムーズに受け取れる「Mobile Order & Pay」を導入しています。
これにより、注文の待ち時間やレジ行列を解消し、顧客は自分の好きなタイミングで商品を受け取れるようになりました。
この仕組みは、時間や混雑を回避したい顧客ニーズに応えると同時に、スタッフの業務効率化にも貢献しています。
まさに、オンラインとオフラインをつなぐOMO型の購買体験を実現した好例です。
出典:Mobile Order & Pay|スターバックス コーヒー ジャパン公式サイト
ファミリーマート|無人決済×アプリ連携で次世代型店舗へ進化
ファミリーマートは、最新の無人決済システムを活用した「ファミマ!! サピアタワー/S店」(東京都千代田区)を2021年にオープンしました。
この店舗では、入店時にゲートでチェックインし、商品を手に取るだけで、専用端末によって自動で商品を認識・決済できる仕組みを導入しています。
この取り組みは、オフラインの購買体験にオンライン技術を融合させたOMO型の店舗運営モデルです。
店舗スタッフの業務負担を軽減しつつ、利用者にとってはスムーズで非接触な買い物体験を実現しています。
今後の小売業界における次世代店舗モデルの一つとして、OMO施策の象徴的な事例といえるでしょう。
出典:無人決済システムを活用した店舗を都内に出店|株式会社ファミリーマート
ナノ・ユニバース|来店予約サービスで接客のパーソナライズを実現
ナノ・ユニバースでは、実店舗での購買体験をよりパーソナルなものにするために、「来店予約サービス」を展開しています。
顧客はWebページから来店日時と試着したい商品を選択でき、当日はスタッフが事前に用意したアイテムをもとに接客対応を行う仕組みです。
これにより、顧客は限られた時間の中でも効率的に商品を比較・検討でき、スタッフ側も顧客ニーズに合わせた提案を事前に準備できるため、より精度の高い接客が可能になります。
また、2023年には公式オンラインストア・アプリ・会員プログラムの3サービスを同時にリニューアル。検索性やレビュー機能の強化、店舗と連携した会員証提示機能など、利便性の向上が図られています。
出典:
来店予約サービス|ナノ・ユニバース公式サイト
NANO universe オンラインストアがリニューアル|ナノ・ユニバース公式ブログ
OMOを導入するメリット

OMOは単なるトレンドワードではなく、企業の売上やブランド体験を本質的に向上させる戦略です。
ここでは、OMOを導入することで得られる代表的な3つのメリットについて、マーケティング実務の観点から具体的に解説します。
1. 顧客の本当のニーズを把握できる
OMOでは、オンライン・オフライン問わず顧客の行動や購買履歴などのデータを横断的に取得・統合できます。
これにより、顧客がどのような接点で何を求めているのかをより深く把握することが可能になります。
たとえば、以下のような洞察が得られます。
- オンラインで複数回閲覧した商品を、実店舗で購入している傾向
- 実店舗ではカゴに入れなかった商品を、オンラインで再検討して購入している行動パターン
- 特定の時間帯・エリアでの来店頻度と購買単価の相関
こうしたデータを基にセグメント別のニーズを可視化し、パーソナライズ施策や商品提案に活用することで、マーケティングの精度が飛躍的に向上します。
2. 機会損失を最小限にできる
OMOは、顧客とのあらゆる接点での取りこぼしを減らす仕組みとしても機能します。
たとえば、ECサイトで在庫切れだった商品を実店舗で案内できる仕組みや、店舗で商品を見かけたが在庫がなかった際にアプリで再入荷通知を設定する機能など、リアルとデジタルの相互補完により機会損失をカバーできます。
さらに、来店予約や事前試着、決済済み商品の受け取りなどを事前に設計しておけば、ピークタイムの混雑や人的ミスによる離脱リスクも回避できます。
これは特に、アパレルや飲食・美容業界で効果を発揮するアプローチです。
3. LTVの向上とリピーター化につながる
OMOにより顧客体験の質が高まると、リピート率の向上=LTV(顧客生涯価値)の最大化に直結します。
オンライン・オフラインを問わず快適で一貫性のある体験を提供できれば、「このブランドなら安心して使える」「また利用したい」と感じてもらいやすくなります。
さらに、購買履歴や来店頻度などを活用したポイント施策やパーソナライズドクーポンも、リピーター化を後押しします。
結果として、一人あたりの購入単価・年間購入頻度が上がり、広告費や新規集客に依存しない強固な収益構造が築けるのです。
このように、OMOの導入は単なるチャネル統合にとどまらず、企業全体の売上構造やブランディングに中長期的なインパクトを与える重要な施策です。
OMOの導入に必要なステップ

OMOの成功は、単にツールやシステムを導入することではなく、戦略的な設計と段階的な実行によって実現します。
このセクションでは、自社に最適なOMO体制を構築するために必要な導入ステップを、実務に即した形でわかりやすく整理します。
ステップ1|目的の明確化と現状の課題整理
OMOの導入において最初に行うべきは、「なぜOMOを導入するのか」という目的を明確にすることです。
下記のような課題がある場合、それに対してOMOがどのように貢献できるかを整理することで、投資の優先順位や方向性がクリアになります。
- 実店舗とECの顧客情報が分断されている
- オンライン接点のコンバージョン率が伸び悩んでいる
- 購買体験がチャネルごとにバラバラで離脱が多い
ステップ2|カスタマージャーニーの構築
OMO導入において最も重要なのが、オンラインとオフラインを横断した顧客体験全体の設計です。
顧客がブランドと出会い、情報を収集し、購入や利用、さらには再来店・リピートに至るまでの一連のプロセスを「カスタマージャーニー」として描き、その中でどの接点にOMOの仕組みを組み込むべきかを検討します。
たとえば、アプリで商品を検索・在庫確認した顧客が、そのまま店舗で試着・受け取りできるようにする流れや、SNSで話題の商品を知った顧客が店舗で実物を確認し、オンラインで後日購入するという動線など、現実的な購買行動を具体的に想定することが重要です。
設計の際には、単にチャネルを増やすだけでなく、顧客がどの段階でどの情報や体験を求めているのかを丁寧に分析し、各接点を最適化していく視点が求められます。
ステップ3|必要なデータ基盤とツールの選定
顧客体験の設計ができたら、それを支えるデータ基盤とツール環境を整備する段階に入ります。
OMOを本質的に実現するには、オンラインとオフラインにまたがる顧客データを一元的に管理・活用できる仕組みが欠かせません。
顧客の購買履歴、店舗での行動ログ、アプリの操作履歴、Webサイトでの閲覧情報など、点在するデータを統合し、顧客ごとのプロファイルや行動傾向をリアルタイムに把握できる状態を作る必要があります。
そのためには、CDP(Customer Data Platform)やMA(マーケティングオートメーション)ツール、CRM(顧客管理システム)、POS連携システムなどを活用し、自社の業態や課題に応じた構成を検討します。
この段階で重要なのは、既存システムとの連携可否や導入コスト、将来的な拡張性までを見据えて、無理のないロードマップを描くことです。
ステップ4|スモールスタートとKPIの設定
OMOの導入は、すべてのチャネルや全店舗を一斉に変革するような一足飛びのプロジェクトではありません。
まずはスモールスタートで一部の拠点・機能から試験的に導入し、その効果を定量的に検証しながら改善を重ねていくアプローチが現実的かつ効果的です。
たとえば、限られたエリアの店舗でモバイルオーダー機能を導入し、アプリ経由の売上比率や来店頻度、顧客単価の変化といったKPIを設定してモニタリングを行います。
データに基づいた改善ポイントを洗い出し、必要に応じて施策を調整しながらPDCAを回すことで、徐々に他の店舗やサービスに展開していくことができます。
このプロセスを通じて、リスクを最小限に抑えながら、OMO施策を自社の中に無理なく根付かせることが可能になります。
ステップ5|組織横断でのOMO推進体制の構築
OMOはマーケティング部門だけで完結する取り組みではなく、EC、店舗運営、カスタマーサポート、システム部門などとの横断的な連携が不可欠です。
よって、社内にOMO推進プロジェクトチームやCoE(Center of Excellence)を設置し、部門横断での意思決定・実行体制を整えることが、スムーズな導入・拡張のカギとなります。
また、現場スタッフへの教育や意識共有も成功の要素の一つです。
このようにOMO導入には、戦略設計からツール選定、組織体制まで多面的な準備が必要です。
段階的かつ柔軟に進めることで、自社に合ったOMO施策の形が見えてくるはずです。
OMOを成功させるポイント

OMOは、単に「オンラインとオフラインを連携させればよい」という単純なものではありません。
多くの企業がOMO施策を導入しながらも成果につながらないケースがあるのは、組織体制や運用方法、顧客視点の不在といった根本的な要因があるからです。
ここでは、OMOを真に機能させ、顧客体験と成果の両立を実現するために重要な成功のポイントを解説します。
1. 部門横断で取り組める体制をつくる
OMOは、マーケティング部門やDX推進部門だけで完結する取り組みではありません。
店舗運営、EC、カスタマーサポート、商品開発、システム部門など、複数の部署が連携して動く必要があります。
例えば、オンラインで得た顧客の閲覧履歴を実店舗で活用するには、システム連携はもちろん、現場スタッフがその情報を理解し、接客に活かせる運用設計も求められます。
そのためには、部門を超えてOMOを推進できる専任チームの立ち上げや、役職横断での意思決定体制の整備が欠かせません。
2. 顧客視点に立った体験設計を徹底する
OMOの本質はチャネルの連携ではなく、体験の連続性です。
そのため、企業側の都合で設計された施策ではなく、顧客がストレスを感じずに行動できるかどうかが最も重要です。
たとえば、「オンラインで在庫が見られるのに店舗では取り置きができない」「アプリで注文したのに受け取り時に本人確認が煩雑」など、チャネルの統合がかえって体験を複雑にしてしまうケースも見受けられます。
顧客が望む体験は何か、どこにストレスや離脱の要因があるのかを、顧客インタビューやデータ分析を通じて継続的に見直す姿勢が求められます。
3. データと現場オペレーションの両立を意識する
OMOを支えるデータ基盤の整備は非常に重要ですが、それと同時に、現場でそのデータをどう活用するかという視点が抜け落ちがちです。
例えば、購買履歴や来店頻度を基にパーソナライズされたクーポンを配信しても、それを店舗スタッフが知らず、接客で活かせなければ顧客に一貫性のある印象は残りません。
テクノロジーと現場のオペレーションを一体化させるためには、システムと運用の接点に十分な時間とリソースを割き、店舗研修やナレッジ共有の仕組みも同時に設計することが成功の鍵です。
4. スモールスタートと改善前提の運用
OMOは、どれだけ綿密に設計してもやってみなければわからない部分が多く、計画通りにいかないのが前提です。
だからこそ、まずは小さな範囲からテストを始め、実データをもとに改善しながら拡大していくアプローチが求められます。
最初にKPIを設定し、数値の変化をもとに改善点を抽出し、仮説検証を繰り返すPDCAサイクルを回す体制を用意しておくことで、現場にも負担をかけずにOMOを段階的に組織に定着させることが可能になります。
このように、OMOの成功には「戦略」「体制」「設計」「運用」のすべてが噛み合うことが重要です。
テクノロジーだけではなく、企業文化や現場の巻き込みも含めて設計することが、持続可能なOMOの鍵となります。
まとめ
OMO(Online Merges with Offline)は、オンラインとオフラインの垣根をなくし、あらゆる顧客接点で統一された体験を提供する戦略です。
オムニチャネルやO2Oとは異なり、OMOは「チャネルをつなぐこと」ではなく、「顧客体験を中心に設計すること」に重きを置いています。
OMOの導入によって、企業は顧客の本質的なニーズを把握し、機会損失を最小限に抑え、リピート率やLTVの向上といった成果を期待できます。
ただし、それを実現するには、データ統合やシステム導入だけでなく、部門横断の連携体制や現場への運用浸透など、組織全体での取り組みが求められます。
成功するOMO施策は、常に顧客の視点に立ち、小さく始めて改善を重ねる姿勢から生まれます。
だからこそ、最初の一歩は「顧客がどんな体験を求めているのか」を改めて見つめ直すことから始めてみてください。
※2:ecforce導入クライアント38社の1年間の平均データ / 集計期間 2021年7月と2022年7月の対比
※3:事業撤退を除いたデータ / 集計期間 2022年3月~2022年8月

