この記事でわかること
※この記事は 時点の情報をもとに執筆しています。
近年、ネット通販市場はますます拡大しており、ECサイトの開設を検討する企業や個人事業主が増えています。
その中でも特に注目されているのが自社ECです。しかし、ECといえば楽天やAmazonのようなモール型ECも有名で、「結局どちらを選ぶべきなのか?」「自社ECのメリットは何?」と迷っている方も多いのではないでしょうか。
本記事では、「自社ECとは何か?」という基本から、モール型ECとの違い、それぞれのメリット・デメリット、自社ECを構築する方法と費用の目安まで、初心者の方にもわかりやすく丁寧に解説します。
事業の性質やリソースに合わせた最適な選択ができるよう、具体的な判断ポイントについても触れていきますので、これからECサイトを始めたい方はぜひ最後までご覧ください。
自社ECとは?
「自社EC」とは、企業や個人が独自に構築・運営するオンラインショップのことを指します。
楽天市場やAmazonのようなモール型ECとは異なり、自社のブランドサイトとして自由に設計・運営できる点が大きな特徴です。
自社ECの定義
自社ECとは、企業や個人事業主が自社で独自にドメインを取得し、オリジナルのウェブサイトを構築・運営して商品やサービスを販売する形態のことを指します。
Amazonや楽天市場といった大手ECモールに依存せず、販売の場をすべて自社で管理・運用することが特徴です。
自社ECサイトでは、以下のような一連のプロセスをすべて自社主導で行います。
・サイトデザインや構築
・商品登録・管理
・カートや決済の設定
・アフターサービスやカスタマーサポート
こうした運営体制により、ブランドの世界観や商品の魅力をダイレクトに伝えることができるのが大きな強みです。
たとえば、商品の背景やストーリー、開発者の想いなど、モールでは伝えきれない情報も自由に表現できます。
また、従来は大企業の専売特許のように思われがちだった自社ECも、ShopifyやBASEなどのクラウド型サービスの普及により、中小企業や個人でも手軽に構築できる時代になっています。
ブランドの個性を大切にしたい、自由な販促や顧客体験を設計したいという企業にとって、自社ECはますます魅力的な選択肢となっています
自社ECとモール型ECの違い
「ECサイト」とひとくくりにされがちですが、自社ECとモール型ECでは構造や運用の仕組みが大きく異なります。ここでは両者の違いを明確にしておきましょう。
モール型ECとは?
モール型ECとは、既存のプラットフォーム上に出店する形態を指します。
このプラットフォーム内には多数の出店者が存在し、それぞれの店舗が商品を販売しています。
モール型ECには、以下の2つの形があります。
1. テナント型EC
テナント型は、ショッピングモール内に自社の店舗を持つような形式です。出店者はショップページを所有し、ロゴやバナー、ページデザインなどをある程度カスタマイズできます。
代表例は、楽天市場やYahoo!ショッピングです。
モール自体の集客力を活かしながら、一定のブランド表現も可能なのが特徴です。加えて、モール全体のセールやポイントキャンペーンに参加できるため、販促効果も期待できます。
ただし、完全な自由設計は難しく、モールのテンプレートやルールに従う必要がある点はデメリットです。
2. マーケットプレイス型EC
マーケットプレイス型は、商品の掲載・販売のみを行い、ショップページを持たない形式です。代表例はAmazonで、同一商品は1つのページに統合され、複数の出品者が競合する構造になっています。
この形態は、出品が簡単で物流サポートも充実している反面、価格競争が激しくなりやすく、ブランド訴求は難しいという特徴があります。
まとめると、テナント型はモールの集客力を活かしながら、自社ブランドの世界観をある程度反映できるという点で、ブランド構築の余地がある形式だと言えます。
一方、マーケットプレイス型は、出店や運営が手軽で参入障壁が低い反面、価格や販売条件での競争に巻き込まれやすい傾向があります。
どちらの形態にもメリットと注意点があるため、自社の目的や扱う商品特性に応じて、適切な形式を選ぶことが重要です。
また、モール型ECについて詳しくは下記の記事でも解説しています。
はじめてのECモール出店ガイド|仕組み・種類・メリットから主要5モール比較まで一挙解説|ecforce blog
自社ECとモール型ECの主な違い
項目 | 自社EC | モール型EC |
---|---|---|
サイト構築 | 独自構築 | モールが提供 |
ブランド表現 | 自由度が高い | 制限あり |
集客 | 自社で行う | モールに依存できる |
利益率 | 高くなりやすい | 手数料が発生 |
顧客情報 | 自由に活用可能 | 制限あり |
費用構成 | 初期費用・運営費あり | 手数料・月額利用料あり |
モール型ECは、集客力や販売の即効性では有利ですが、ブランド構築や利益率・顧客情報の活用という面では制約があります。
一方、自社ECは自由度が高く、自社の理想的な顧客体験を設計できますが、その分、自力で集客やマーケティングに取り組む必要があるため、リソースやノウハウの確保がカギとなります。
これらの違いを理解した上で、自社の商材や目的に合ったEC戦略を選ぶことが重要です。
自社ECのメリット
自社ECを構築・運営することで得られるメリットは非常に多く、単なる「商品を売る場所」にとどまらない価値を生み出します。
モール型ECでは制約が多い部分も、自社ECであれば自由にコントロールできるため、ブランディングや利益率、マーケティング戦略の柔軟性など、多方面での優位性が期待できます。
ここでは、自社ECならではの主なメリットについて、4つの観点から詳しく解説します。
デザインや機能の自由度が高い
自社ECの最大の強みのひとつは、サイトのデザインや機能を自由に設計できる点です。
モール型ECでは、用意されたテンプレートや仕様の中で運営する必要がありますが、自社ECであればその制限がありません。
たとえば、高級感のあるブランドであれば、写真やフォント、色彩にこだわり、世界観を丁寧に演出することで差別化が可能です。商品ごとのストーリーや作り手の想いなども、特設ページで表現することで、顧客に深い印象を与えることができます。
また、機能面でも柔軟な対応が可能です。たとえば以下のようなカスタマイズが可能になります。
・商品詳細ページの構成変更
・クーポン機能やポイント機能の追加
・購入導線の最適化(UI/UXの改善)
・動画やレビュー機能の組み込み
このように、自社ECでは販売戦略や顧客ニーズに合わせて、機能やデザインを最適化できる自由度が大きな武器となります。
高い利益率を確保しやすい
自社ECは、売上に対する利益率が高くなる傾向にあります。
モール型ECでは、売上ごとに手数料が発生し、月額利用料や広告費も加わるため、利益が圧迫されがちです。
特に手数料は10〜20%程度が一般的で、売上が大きくなるほど負担も増していきます。
それに対して自社ECは、初期構築費用や月額のシステム利用料は発生するものの、販売手数料は基本的に不要です。そのため、売上が増加するほど利益がそのまま自社に残りやすくなります。
また、広告やキャンペーンも自社の裁量で運用できるため、費用対効果を意識した施策が可能になります。利益を確保しながら戦略的に販促を進めたい企業にとって、自社ECは有利な選択肢です。
ブランド構築に貢献できる
自社ECは、ブランドの世界観を伝え、ファンを育てる場として機能します。
モール型ECでは、あくまで「モール内の1店舗」として見られがちで、他社と並列的な存在になります。
その結果、顧客に「どこで買ったか」よりも「何を買ったか」が重視されやすく、ブランドへの愛着が生まれにくい傾向があります。
一方、自社ECでは、デザイン・コンテンツ・顧客体験の全てを自社のブランドコンセプトに沿って構築できます。
商品にまつわるストーリーコンテンツ、ブランドの歴史やビジョンの紹介、独自の購入体験(包装、購入後メール等)などの要素を組み合わせることで、顧客は「このブランドで買いたい」「また利用したい」と感じるようになります。
つまり、自社ECは単なる販売チャネルではなく、ブランド価値を育てるメディアとしての役割を果たすのです。
顧客データを自由に活用できる
モール型ECでは、顧客データは基本的にモール運営側が管理しており、出店者には十分な情報が開示されない場合が多くあります。
しかし、自社ECでは、すべての顧客データを自社で取得・活用することが可能です。
取得できる主なデータは以下のとおりです。
・購入履歴
・ページ閲覧履歴
・会員情報
・購入頻度や離脱ページ
・問い合わせ内容
これらのデータをもとに、以下のような施策が可能になります。
・顧客セグメントごとのメール配信
・購入履歴に基づくレコメンド提案
・離脱要因の分析とUI改善
・リピーター向けの特別クーポン配信
このように、データに基づいたパーソナライズ施策を打つことで、LTV(顧客生涯価値)の最大化を図ることができ、事業全体の安定成長にもつながります。
自社ECのデメリットと注意点
自社ECは大きなメリットがある一方で、運用するには乗り越えるべき課題や注意点も少なくありません。
特に立ち上げ初期の集客や運営体制の構築には、リソースとノウハウが必要不可欠です。
ここでは、自社ECに取り組む上で事前に理解しておくべき3つの主要なデメリットを紹介し、それぞれにどのような対応が求められるのかを解説します。
集客の難しさ
自社ECの最大のハードルとも言えるのが、立ち上げ当初の集客の難しさです。
モール型ECであれば、プラットフォーム自体に膨大な訪問者数があり、出店するだけで一定の流入が期待できます。
一方、自社ECではゼロからのスタートとなるため、自然流入を得るには集客施策の立案と実行が欠かせません。
たとえば以下のような施策が必要です。
・SEO対策による検索流入の強化
・SNSによるファンコミュニティ形成
・コンテンツマーケティングによる情報提供
・Web広告(リスティング・SNS広告など)による認知拡大
これらは短期的に成果が出るとは限らず、中長期的な戦略と継続的な投資が求められます。
とくに認知度の低いブランドやスタートアップにとっては、「誰にも知られていない状態からどう顧客を獲得するか」が大きな課題となるでしょう。
成果が得られるまでに時間がかかる
集客や売上の安定化には時間がかかることを覚悟する必要があります。
自社ECでは、サイト構築から集客・販促・リピート促進までをすべて自社で行うため、それぞれの施策が機能するまでに一定の期間を要します。
SEOやSNS運用、顧客育成のようなマーケティング施策は、以下のようなタイムラインで動くことが一般的です。
・SEO:成果が出るまで3〜6ヶ月以上
・SNS:フォロワーやエンゲージメント獲得に継続的な運用が必要
・リピーターの獲得:初回購入から数ヶ月かけて関係性を築く
さらに、集客の成果が出てもサイトのUI/UXや商品導線に課題があると、購入につながらないケースも多く、改善を繰り返しながら売上につなげていく必要があります。
短期的な利益だけを目的にすると、「思ったより成果が出ない」と感じやすくなります。
そのため、自社ECを運営する際は長期的な視野を持ち、PDCAを回しながら徐々に成果を積み上げる覚悟が不可欠です。
構築と運用に必要な知識
自社ECを立ち上げるには、ECサイト運営に関する幅広い知識とスキルが必要になります。
例えば、構築段階では以下のような要素に対応する必要があります。
・ドメイン取得とサーバー管理
・ECカートシステムの導入(例:Shopifyやカラーミーなど)
・サイトデザインやレイアウトの調整
・商品データの登録や写真の最適化
・決済・配送・セキュリティ設定
構築後も、日々の受注・在庫管理、問い合わせ対応、UIの改善、マーケティング施策の実行など、継続的な運用タスクが発生します。
特に中小企業や個人事業主の場合、社内にこれらすべてをカバーできる人材が揃っていないケースも多く、外部の制作会社やコンサル、代行サービスの活用を視野に入れる必要があります。
また、EC業界のトレンドは日々進化しており、「一度作ったら終わり」ではなく、変化に対応し続ける体制づくりが重要です。
ECモールのメリット
自社ECと比較されることの多いECモールには、独自の強みがあります。
とくに「すぐに売上を立てたい」「EC初心者なのでまずは小さく始めたい」といったニーズに対して、モール型は非常に有効な選択肢です。
ここでは、ECモールを利用することで得られる代表的なメリットを3つに整理し、どのような企業に適しているのかを具体的に解説していきます。
優れた集客力
ECモールの最大の魅力は、圧倒的な集客力にあります。
Amazon、楽天市場、Yahoo!ショッピングといった大手モールは、日常的に何百万・何千万人というユーザーが訪れる巨大なプラットフォームです。
このため、自社で集客施策をゼロから構築しなくても、モールに出店するだけで一定の閲覧数や購入機会を得られるという利点があります。
特に以下のような状況下では、大きな恩恵を受けやすいです。
・ブランドや商材にまだ認知度がない
・オーガニック集客に時間をかけられない
・SEOやSNSマーケティングに不安がある
また、モール内で実施される大型セールやキャンペーン(例:楽天スーパーセール、Amazonタイムセールなど)に参加すれば、露出と販売のチャンスが一気に拡大します。
短期的に売上を立てたい企業にとっては、モール型ECの集客力は非常に頼れる存在です。
出店・運用が手軽で始めやすい
ECモールは、初心者でもスムーズに出店・運営が可能な設計になっています。
多くのモールでは、商品登録用の管理画面やテンプレートが用意されており、専門的な知識がなくても直感的にショップを立ち上げられるように設計されています。
たとえばAmazonでは、商品画像や説明文をアップロードするだけで販売ページが完成しますし、楽天市場では出店者向けのサポートやマニュアルが充実しています。
さらに、決済システムやカート機能、ログイン機能など、ECに必要な基本機能はすべてモール側が提供してくれるため、自社でシステムを開発・設定する手間がありません。
物流面でも、AmazonのFBA(フルフィルメントbyAmazon)のように、商品の保管・梱包・配送・カスタマー対応を代行してくれるサービスも充実しています。
このように、リソースが限られている企業や個人にとって、負担が少なく始めやすい環境が整っているのがモール型の大きな利点です。
出典:フルフィルメント by Amazon(FBA)|アマゾンジャパン合同会社
初期費用を抑えられる
自社ECをゼロから構築しようとすると、ドメイン取得・デザイン制作・システム開発など、多くの初期コストが発生します。
一方、ECモールでは、初期費用を抑えて出店できるケースが多く、初期投資を最小限に抑えながらオンライン販売をスタートできます。
主なモール別の費用イメージは以下のとおりです。
・楽天市場:初期登録費+月額固定費+システム利用料など(プランにより異なる)
・Amazon:月額出品料+カテゴリーごとの販売手数料
・Yahoo!ショッピング:初期費用無料・出店料無料(売上連動型)
このように「大きなリスクを取らずにまずは試してみたい」という事業者にとって、ECモールは適した入り口となります。
また、初期費用を抑えることで、その分の商品仕入れや広告費に資金を回すことも可能になります。
出典:
楽天市場|楽天グループ株式会社
Amazon出品サービス|アマゾンジャパン合同会社
Yahoo!ショッピング|LINEヤフー株式会社
ECモールのデメリットと注意点
ECモールには強力な集客力や出店の手軽さなど、さまざまなメリットがありますが、その反面、いくつかのデメリットや制約も存在します。
とくに、競合との価格競争や手数料、ブランディング面での限界は、長期的な運営を考える上で無視できない要素です。
ここでは、モール型ECに出店する際にあらかじめ認識しておきたい主な注意点を4つ紹介します。
競合による価格競争が起きやすい
ECモールでは、多くの店舗が同じカテゴリの商品を扱っており、顧客は簡単に価格や条件を比較できる環境にあります。
このため、差別化がしづらくなり、価格を下げなければ売れにくいという状況に陥りやすいのが現実です。
特に以下のような商材では、価格競争が激化する傾向にあります。
・日用品や消耗品など、ブランドよりも価格重視の商品
・他社と類似性の高い商品(OEM・汎用品など)
・差別化要素が少ない商材
価格で競い合う状態が続くと、利益率が圧迫されるだけでなく、値引き依存の運営体質になりやすいというリスクもあります。
このような競争環境では、価格以外の価値(例:レビュー対応、発送スピード、サービス品質など)をどう訴求するかが重要になります。
各種手数料が利益を圧迫する
ECモールでは、出店にかかる初期費用や月額利用料が抑えられる一方で、売上に応じて一定の手数料が発生するのが一般的です。
この販売手数料はモールや商品カテゴリー、プランによって異なり、5%〜20%程度の範囲で設定されていることが多くあります。
さらに、モールによっては以下のような費用も加算されます。
・システム利用料
・アフィリエイト手数料
・広告掲載費(検索結果上位表示など)
売上が増えれば増えるほど、手数料の総額も比例して増えるため、単純な売上だけでなく「粗利率」を意識した運営が求められます。
事前に料金体系をしっかりと把握し、手数料込みでも採算が合うビジネスモデルかどうかを見極めることが不可欠です。
ブランド表現に制限がある
モール型ECでは、プラットフォーム全体のデザインや構成が統一されているため、自社独自の世界観やブランディングを打ち出しにくいという課題があります。
ページデザインはテンプレートに準じる形となり、表現の自由度は限定的です。
その結果、ユーザーにとっては「モール内のショップのひとつ」にすぎず、ブランドとしての認知や印象が残りにくいことがあります。
特に以下のようなブランドは、モール型では十分な表現が難しい可能性があります。
・高価格帯で世界観が重要なブランド
・ストーリーテリングを重視する商材(クラフト系・アート系など)
・ファンとの関係性構築を目指すブランド
ブランディングや顧客体験を重視したい場合は、自社ECとの併用(マルチチャネル戦略)も視野に入れるとよいでしょう。
顧客情報を十分に活用できない
ECモールにおける大きな制約のひとつが、顧客データの取り扱いです。
モールによっては、顧客の個人情報(メールアドレス、住所など)の利用が制限されており、自由なマーケティングやCRM(顧客関係管理)施策を実行しづらい場合があります。
たとえば、以下のような施策は制限を受けやすくなります。
・購入者へのメルマガ配信やDM送付
・顧客属性に基づいたレコメンド
・リピート促進のためのステップメール
これにより、リピーターの育成やファン化に向けた戦略が立てにくくなることもあります。
顧客との継続的な接点を設けてLTVを最大化したい場合には、モールだけでなく、自社ECでのデータ活用も併用していくことが重要です。
自社ECとモール型EC、どちらを選ぶべきか?
「自社ECとモール型EC、結局どちらが自分たちに合っているのか?」
これは、EC事業を始めようとする多くの企業・事業者が抱える共通の悩みです。
実際には、どちらが優れているかではなく、ビジネスの目的や体制、商材特性に応じて最適な選択肢が変わるというのが現実です。
このセクションでは、「自社ECがおすすめのケース」と「モール型ECがおすすめのケース」に分けて、それぞれの特徴と判断軸を整理していきます。
自社ECが適しているケース
自社ECが向いているのは、以下のような目的や条件を持つ企業・ブランドです。
・ブランドの独自性を強く打ち出したい
・顧客との関係構築を重視したい
・利益率を最大化したい
・顧客データを活用したい
・すでに一定の集客チャネルや顧客基盤がある
たとえば、ブランド力のある商品や、こだわりの世界観を持つ商材を販売している場合、モール内ではその魅力を十分に伝えきれない可能性があります。
また、SNSやブログ、メールマガジンなどで継続的にコミュニケーションを取る設計ができる企業であれば、リピーターを育てながら長期的な関係を築く「資産型EC」の構築が可能です。
さらに、広告運用やSEOなど、ある程度のWebマーケティング知識が社内にある、または支援を受けられる環境がある場合には、自社ECで自由な施策を展開する方が、効率的かつ柔軟に売上を伸ばしていくことができるでしょう。
モール型ECが適しているケース
一方で、モール型ECが向いているのは、以下のようなニーズを持つ事業者です。
・できるだけ早く売上を立てたい
・EC事業の経験がなく、スモールスタートしたい
・初期投資を抑えたい
・商材が価格重視・比較対象になりやすい
・モールの集客力を活用したい
モール型ECは、すでに多くのユーザーが訪れるプラットフォーム上で販売ができるため、集客にかける時間やコストを大幅に削減できます。
特に日用品や消耗品など、価格比較が活発なカテゴリにおいては、購入動線が短くコンバージョン率も高いため、短期的な売上を求める事業者にとっては非常に効率的です。
また、Amazonや楽天市場のように出店支援や販促施策が整っているモールでは、EC未経験者でも比較的簡単に運用を始めることができます。
自社ECとモール型ECを併用するという選択肢
なお、どちらか一方に絞る必要はありません。
実際には、「モールで短期売上を確保しながら、自社ECでファンを育成する」といったハイブリッド戦略(マルチチャネル展開)を採用している企業も数多く存在します。
このような併用によって、それぞれのメリットを最大限に活かしつつ、リスクを分散することが可能になります。
自社ECサイトの構築方法と費用
自社ECを始めるにあたって、多くの企業がまず悩むのが「どうやってサイトを作ればいいのか?」という点です。
一口に構築といっても、使うシステムや構築方法によって、コスト・機能・運用の自由度が大きく異なります。
このセクションでは、自社ECの主な構築手法を4つに分類し、それぞれの特徴をわかりやすく解説します。
あわせて、おおよその費用感も紹介しますので、自社の規模や目的に合った選択肢を見つける参考にしてください。
主な構築手法の種類
自社ECサイトを構築する方法は、大きく以下の4つに分けられます。
ASPカート(クラウド型)
クラウド上で提供されるEC構築サービスを利用する方法です。
月額費用と販売手数料を支払うことで、初期投資を抑えて手軽にサイトを開設できるのが特徴です。
テンプレートを使えば専門知識がなくても始めやすく、小規模な事業や個人ECにも適した手法です。
一方で、機能の拡張性や自由度にはある程度の制限があります。
オープンソース
無料で公開されているECパッケージを活用して構築する方法です。
自社サーバーにインストールして使うため、カスタマイズ性が高く、独自機能の追加も可能です。
ただし、開発や保守にはプログラミングやインフラの知識が必要となるため、制作会社やエンジニアに依頼するケースが一般的です。
自由度は高い一方で、構築・運用コストがかかります。
ECパッケージ(商用ソフト)
中〜大規模の企業に多く使われている方式で、あらかじめ開発された有償のECソフトウェアをベースに構築します。
独自の要件に合わせた柔軟なカスタマイズが可能であり、業務システムやCRMとの連携などにも対応しやすいのが利点です。
その分、初期費用は高めで、ライセンス費・開発費・保守費が必要になります。
フルスクラッチ開発
既存のサービスやソフトを使わず、ゼロから完全オリジナルで開発する方法です。
すべての機能・UI・インフラ構成を自由に設計できるため、独自のビジネスモデルやUXを追求したい場合に最適です。
ただし、開発期間が長く、費用は数千万円〜億単位になることもあり、十分な予算と体制が求められるのが現実です。
構築費用の目安
以下に、各構築方法の代表的な費用感と特徴を比較できるようまとめました。
自社EC構築手法別の費用比較表
構築方法 | 初期費用 | 月額費用 | 特徴 |
---|---|---|---|
ASPカート | 0〜5万円程度 | 数千円〜数万円 | 手軽に始められる。小規模・個人向け |
オープンソース | 50〜300万円 | 数万円〜数十万円 | カスタマイズ性が高く、中規模向け |
ECパッケージ | 300万円〜数千万円 | 数万円〜数十万円 | 拡張性・業務連携に優れる。中〜大規模向け |
フルスクラッチ | 500万円〜1億円以上 | 要相談(保守別途) | 完全オリジナル。予算・開発力が必要 |
上記のように、構築方法によって初期費用や運用負担、カスタマイズ性は大きく異なります。
たとえば、スピーディーに立ち上げたい小規模事業者であればASPカートが適していますし、独自機能や業務連携が求められる企業であればECパッケージやフルスクラッチの導入も検討すべきでしょう。
重要なのは、「自社のフェーズ・予算・リソース」に応じた無理のない選択をすることです。
初期費用だけで判断するのではなく、中長期的な運用や将来的な拡張性まで見据えて構築方法を選ぶことが、自社ECの成功に繋がります。
まとめ
自社ECとモール型ECは、それぞれ異なる強みと課題を持つ販売チャネルです。
自社ECは、ブランドの世界観を自由に表現でき、顧客データを活用したマーケティング施策を展開できるという大きなメリットがあります。
一方で、サイト構築や集客、運用体制の整備には時間とリソースがかかるため、戦略的な設計と継続的な努力が求められます。
一方、モール型ECは、プラットフォーム自体が高い集客力を持ち、すぐに販売を開始できる点で優れています。
導入も手軽で、初期費用を抑えられるため、EC初心者やスモールスタートを目指す事業者にとって非常に有効です。
ただし、価格競争の激化やブランディングの制約、手数料の発生など、長期的には課題も少なくありません。
どちらを選ぶかは、自社がECにおいて何を重視するかによって変わります。
利益率やブランド価値の最大化を目指すのであれば自社EC、短期間での売上獲得や事業の立ち上げを優先するのであればモール型ECが適していると言えるでしょう。
また、両者の強みを活かす「併用」という戦略も、多くの企業で実践されており、有効な選択肢となります。
さらに、自社ECを立ち上げる際には、構築方法の選定も成功に直結する重要な判断です。
自社のビジネスモデルや成長計画、予算に合わせて、最適な構築手法を選びましょう。
本記事を通じて、EC事業における選択肢と判断軸が整理できたなら幸いです。
自社の現状と目標に合わせて、最適なEC展開を検討してみてください。
※2:ecforce導入クライアント38社の1年間の平均データ / 集計期間 2021年7月と2022年7月の対比
※3:事業撤退を除いたデータ / 集計期間 2022年3月~2022年8月