この記事でわかること
※この記事は 時点の情報をもとに執筆しています。

ブランドの立ち上げを検討する際、最初に直面するのが「どれくらいの費用が必要なのか?」という課題です。商品開発やデザイン費だけではなく、ECサイト構築費や運転資金まで考えるべき項目は多岐にわたります。
この記事では、ブランド立ち上げに必要な費用の内訳や、ムダを抑えるためのポイント、資金調達の方法を解説します。さらに黒字化を目指すための損益分岐点についても触れていますので、これから事業を始める方も参考にしてください。
ブランド立ち上げに必要な費用

ブランドを立ち上げる際には、大きく分けて「初期費用」と「運転資金」の2つの費用が必要です。両方を正しく把握しておくことで、無理のない資金計画が立てやすくなります。
初期費用
初期費用とは、ブランドを立ち上げる準備段階で必要な費用のことです。商品を作るための製造費、ロゴやパッケージのデザイン費、ECサイトの構築費、法人登記費用などが含まれます。
個人のハンドメイドブランドなら数万円~数十万円でも始められますが、本格的なD2CブランドとしてOEM(委託製造)を利用する場合、一般的に50万円~300万円程度が目安といわれています。
運転資金
事業を開始した後、継続的に運営するために必要な費用です。商品の追加仕入れ、広告宣伝費、ECシステムの月額利用料、配送料、人件費などが該当します。売上が安定するまで事業を続けられる資金を用意しましょう。最低でも3ヵ月、できれば6ヵ月分の運転資金を確保しておくと安心です。
ブランド立ち上げ費用の内訳

ブランド立ち上げにかかる費用の内訳を見ていきましょう。ブランド立ち上げの費用は、商品開発やデザインだけでなく、ECサイト構築費や広告費なども含まれます。各項目の特徴と費用相場を理解することで、より正確な資金計画が立てられます。
商品開発・製造原価(OEM・仕入れ・資材費)
商品開発・製造にかかる費用です。アパレルや化粧品などをOEM(委託製造)で製造する場合、最小ロット数(MOQ)が決まっていることが多く、まとまった資金が必要です。必要な金額はロット数によりますが、初期ロットで数十万円〜数百万円になるケースもあります。
商品そのものの原価だけではなく、タグやパッケージといった資材費もここに含まれます。
ロゴ・デザイン・ブランディング費
ブランドの印象を決めるロゴデザイン、商品パッケージ、ブランドコンセプトの策定にかかる費用です。外注する場合は個人なら数万円から、デザイン会社なら10万円〜50万円程度が相場です。ブランドの核となる要素なので、価格だけで安易に選ばず、長く使えるデザインに投資しましょう。
Webサイト・ECサイト構築費
オンラインでブランドを展開するために必要なWebサイトやECサイトの構築費用です。利用するカートシステムや制作会社により、無料(月額費のみ)から数百万円まで幅があります(次章参照)。
広告宣伝・マーケティング費
ブランドの認知度を高め、顧客を獲得するための費用です。Google広告やSNS広告などのデジタル広告、自社によるSNS運用やインフルエンサーマーケティングなどが考えられます。初期予算の20〜30%程度をマーケティング費に充てるのが一般的です。少額からテストを始め、効果を見ながら予算を調整しましょう。
その他
在庫を保管する倉庫の契約費用、サンプル作成費、撮影機材やPCの購入費などの雑費も発生します。またJANコード(バーコード)登録料や商標登録費用なども考慮しましょう。
JANコード(バーコード)は、商品を流通させる際に必要です。GS1 Japan(一般財団法人流通システム開発センター)へ登録します。※1 初回登録料は年商規模により異なりますが、年商1億円未満の場合10,500円(3年払いの場合)です。
商標登録費用は、ブランド名やロゴを法的に保護するための費用です。特許庁への支払いは、自分で行う(ダイレクト出願)場合、出願料12,000円+登録料(5年分)17,200円〜(1区分の場合)程度、合計約3万円〜かかります。弁理士に依頼する場合は、別途手数料(数万〜十数万円程度)が発生します。
※1 参考:GS1 Japan「GS1事業者コードの新規登録手続き」
https://www.gs1jp.org/code/jan/jan_apply.html
※2 参考:特許庁「産業財産権関係料金一覧」
https://www.jpo.go.jp/system/process/tesuryo/hyou.html
ブランド立ち上げでのEC構築にかかる費用

ブランドを立ち上げる際、オンライン販売をどのように始めるかは大きなポイントです。どのカートシステムを使うか、初期費用や運用コストをどう見積もるかによって、立ち上げ後の収益性が大きく変わります。EC構築に必要な費用のポイントを紹介します。
【比較】カートシステムの種類と費用
カートシステムとは、ECサイトで商品が購入されるまでの一連の流れを管理・実行するためのシステムです。大きく分けて、「モール型」「ASP型」「オープンソース・パッケージ型」「フルスクラッチ型」の4種類があり、それぞれ費用感や自由度が異なります。
【比較】カートシステムの種類と費用
カートシステムとは、ECサイトで商品が購入されるまでの一連の流れを管理・実行するためのシステムです。大きく分けて、「モール型」「ASP型」「オープンソース・パッケージ型」「フルスクラッチ型」の4種類があり、それぞれ費用感や自由度が異なります。
| 種類 | 特徴 | 費用目安 |
|---|---|---|
| モール型 | 楽天市場やAmazonなど既存モールに出店する方式。初期費用が抑えられるが自由度は低い | 月額数千円〜数万円+販売手数料 |
| ASP型 | 短期間で構築でき、デザインやCRM機能が揃う。中小規模ブランドに人気 | 初期無料〜数万円/月額数千円〜数万円 |
| オープンソース・パッケージ型 | カスタマイズ性が高く独自機能を追加しやすい。保守には専門知識が必要 | 初期数十万〜数百万円+保守費 |
| フルスクラッチ型 | 完全オリジナルで構築できる。高コストで開発期間も長い。大規模向け | 初期数百万円〜数千万円 |
初期費用(サーバー・ドメイン・制作代行など)
初期費用はサイトを作るための費用です。ECサイトの構築費用は、小規模で10〜100万円、中規模で100〜500万円、大規模では500万円以上かかるのが一般的です。デザインや機能にこだわるほど費用は増えます。デザインや機能を制作会社に外注する場合、制作費として30万円〜100万円程度かかることがあります。独自ドメインの取得・維持費は年間数千円程度です。
運用費用(月額利用料・決済手数料・運用人件費など)
ECサイト公開後の運用にかかるランニングコスト(月額・年額で発生する費用)です。システム利用料(月額数千円〜数万円)、決済手数料(売上の3〜4%程度)、販売手数料(サービスにより異なる)、運用人件費(体制により変動)などが必要です。
【参考】ecforceのプランと機能
ecforceは、D2Cブランドに特化したECカートシステムです。定期販売(サブスクリプション)に強く、LPO(ランディングページ最適化)機能やCRM機能など、ブランド運営に必要な機能を標準搭載しています。
| 各種プラン | スタンダードプラン | エキスパートプラン |
|---|---|---|
| 特徴 | 定期販売に特化したecforceの全ての標準機能が使える | 大型受注にも耐えられる専用サーバーを利用したハイエンドプラン |
| 初期費用 | 148,000円 | 248,000円 |
| 月額固定 | 49,800円/月 | 99,800円/月 |
| 月額従量 | 30円/件 | 30円/件 |
| 可能受注件数 | ~2000/月 | 制限なし |
| データ移行 | × | ◯ |
| サーバープラン | 共有クラウド | 専用クラウド |
※料金はすべて税抜価格です。
ECサイト構築の費用はいくらかかる?方法別の相場とコストを抑えるポイント
4つのECサイト構築事例。新鋭D2Cブランドの動向から読み解く「狙い」とは?
ブランド立ち上げ費用を抑えるコツ

限られた予算でブランドを立ち上げるために、費用を効果的に抑える方法を紹介します。
ブランドを立ち上げる際は、限られた予算をどのように効率よく使うかが重要です。ECカートシステムの活用や商品の種類や数の制限、SNS運用など、工夫次第で費用を抑えられます。
ECカートシステムを利用する
ECサイトを構築する際、パッケージ型やフルスクラッチ型は数百万円以上の費用がかかりますが、ASP型のカートシステムを利用すれば初期費用を抑えられます。
ASP型は月額無料のものから数万円の有料プランまで選択肢が豊富で、EC運営に必要な機能が標準搭載されています。サーバー管理やセキュリティ対策はASP事業者が行うため、専門知識がなくても運用可能です。スモールスタートでブランドを立ち上げ、売上が安定してから機能を拡張していくことで、事業リスクを最小限に抑えられます。
商品の種類や数を絞る
初期段階では商品ラインナップを絞ることで、製造や仕入れの費用、在庫リスクを抑えられます。
製造や仕入れの費用は、商品単価×個数で決まるのが一般的です。業者は商品ごとに最小単位(ロット)を設定していることが多く、ロットを多くすることで商品単価を抑えられます。事業が軌道に乗るまでは商品を絞り込み、まとまった数で仕入れましょう。
SNSを活用する
Instagram、X(旧Twitter)、TikTokといったSNSを活用すれば、広告費をかけずにブランドの認知度を高められます。
特にブランド立ち上げ初期は、創業ストーリーや商品開発の裏側など、ブランドの世界観を発信することでファンの獲得を期待できます。ハッシュタグを効果的に使えば、ターゲット層にリーチすることも可能です。SNS経由でECサイトへ誘導することで、広告費をかけずに売上も伸ばせるでしょう。
ただし、継続的な投稿と質の高いコンテンツ制作には時間がかかるため、その労力を考慮に入れる必要があります。
ブランド立ち上げのための資金調達方法

ブランドの立ち上げには、まとまった資金が必要です。自己資金だけでブランドを立ち上げるのが難しい場合、外部の資金調達手段を検討してみましょう。融資、補助金、クラウドファンディングなど、それぞれの特徴を理解することで最適な選択ができます。代表的な資金調達方法を紹介します。
融資を受ける
事業資金の調達方法として最も一般的なのが、融資を受ける方法です。
日本政策金融公庫は創業融資に力を入れており、現在は主に「新規開業・スタートアップ支援資金」という制度を通じて支援を行っています。無担保・無保証人での利用も可能で、創業間もない事業者でも借りやすいのが特徴です。
地方銀行や信用金庫でも創業融資を行っています。日本政策金融公庫よりも審査が厳しい傾向がありますが、事業計画がしっかりしていれば融資を受けられる可能性があります。
参考:日本政策金融公庫「新規開業・スタートアップ支援資金」
https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/01_sinkikaigyou_m.html
補助金・助成金を活用する
融資とは別に、国や自治体が実施している補助金・助成金も有効です。要件を満たせばECサイト構築や広告宣伝、商品開発など、幅広い費用に活用できます。ただし、原則後払い(清算払い)なので、先に費用を立て替える必要があります。
代表的な制度は、次のとおりです。
- 小規模事業者持続化補助金
- ものづくり補助金
- IT導入補助金 など
補助金・助成金は募集期間が限られていることが多く、申請から受給までも時間がかかります。募集期間や金額は、年度や制度の改正によっても変わるため、関係行政機関のサイトなどを確認してください。
クラウドファンディングを利用する
Makuake、CAMPFIREといったプラットフォームで、商品を先行販売する形で資金を集める方法です。
クラウドファンディングのメリットは、製造資金を事前に確保できるだけでなく、テストマーケティングやプロモーションとしても機能できる点です。ただし、プロジェクトページの制作やリターン(返礼品)の設計に時間がかかり、手数料も10〜20%程度発生します。
D2Cブランドがクラウドファンディングで支援を集める方法【目標金額995%達成の事例付】
ブランド立ち上げで押さえておきたい収益計画と損益分岐点

ブランドを継続的に成長させるためには、どの時点で黒字に転じるのかを把握しておく必要があります。損益分岐点を理解することで、投資計画や販売戦略が組み立てやすくなります。ここでは、ブランド運営に欠かせない収益計画の基本を解説します。
損益分岐点とは
損益分岐点(Break-even Point)とは、売上高と費用が等しくなり、損益がプラスマイナスゼロになる地点のことです。これを超えれば黒字になり、下回れば赤字となります。損益分岐点を把握することで、「毎月いくら売れば事業を継続できるのか」「黒字化するためにはどれだけの売上が必要か」を明確にできます。
ブランド立ち上げにおける損益分岐点の考え方
費用は「固定費」と「変動費」に分けて考えます。固定費とは、売上に関係なく発生する費用のことです。家賃や人件費、システム月額費用などが挙げられます。変動費は売上に比例して発生する費用です。商品原価や配送費、決済手数料などがあります。
ブランド立ち上げ時は、初期投資(固定費の先出し)が大きくなりがちです。毎月の固定費を回収するために、CPA(顧客獲得単価)を考慮しつつ、最低限何個商品を売らなければならないかを計算しておきましょう。
損益分岐点を下げるには、以下が有効です。
- 固定費を削減する(システムの見直し、業務効率化など)
- 変動費率を下げる(原価交渉、配送費の最適化、広告効率の改善など)
- 販売価格を上げる(ブランド価値を向上させるなど)
定期的に損益分岐点を見直し、事業の健全性を確認するのが大切です。
【無料配布】損益分岐計算テンプレート
数値を入力するだけで、損益分岐点を算出できるテンプレートを用意しました。収益計画の作成にお役立てください。
ブランド立ち上げ費用を検討する際の注意点

ブランド立ち上げでは、費用を用意するだけでなく「何に」「どの順番で」投資するかの判断が大切です。長く続くブランドに育てるには、費用の優先順位付け、十分な運転資金の確保、撤退ラインの設定など、事前に押さえておきましょう。ここでは、資金計画で見落としがちな注意点を解説します。
費用の優先順位を決める
ブランド立ち上げの際、やりたいことをすべて実現しようとすると予算はいくらあっても足りません。限られた資金を効果的に使うためには、どこに投資し、どこを抑えるのか優先順位を決めることが大切です。
「商品クオリティには妥協しないが、パッケージは既製品を使う」「サイトのデザインはシンプルにするが、写真はプロに頼む」など、ブランドの価値を左右する要素にはしっかり費用を投じ、優先度の低い部分は思い切って削るというメリハリが必要です。
初期費用だけではなく「半年分の運転資金」を確保する
最低でも半年分(6ヵ月分)の運転資金を確保しておきましょう。ブランドが認知され、安定して売れるようになるまでには時間がかかります。初期費用で資金を使い切ると、広告運用や追加生産に回す余力がなくなり、事業が続かなくなるリスクがあります。売上が立たない期間も事業を継続できるように運転資金が必要です。
売上予測は楽観的に立てず、さまざまなケースを想定しながら保守的に見積もります。そのうえで、事業計画書や資金計画書を作成し、商品開発(とくにOEM)の費用内訳も事前に把握しておくと、資金不足を防ぎやすくなります。段階的に事業を広げていく場合は、堅実な費用計画と柔軟な資金調達戦略が必要です。
最悪のケース(撤退ライン)を想定する
ブランド立ち上げでは、成功のシナリオだけでなく、最悪の場合の「撤退ライン」を決めておくことも大切です。事業が思うように伸びないとき、感情に流されてズルズルと継続してしまうと、資金が尽きて再起が難しくなるリスクがあります。
「在庫が〇〇個残ったらセールで現金化する」「資金が残り〇〇円になったら撤退する」といった撤退ラインを決めておきましょう。
撤退ラインを設定することで、サンクスコスト(すでに投じたお金)に縛られず冷静に判断でき、無理な追加投資を避けられます。
ブランド立ち上げ費用を理解し、小さく始めて黒字化を実現しよう

ブランド立ち上げには、初期費用や運転資金など多くの費用がかかりますが、必要な項目を把握し、優先順位をつけて進めていけば、小さな投資で事業をスタートできます。損益分岐点を意識した堅実な運営で、長く愛されるブランドを育てていきましょう。
ECサイト構築は、コストを抑えながら成長に必要な機能を揃えられる「ecforce」が強い味方になります。ブランドの世界観づくりからLTV最大化まで支えるプラットフォームを使うことで、少ないリソースで効率的に事業を伸ばせます。ブランド立ち上げでのECサイトの構築や運用についてお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。
※2:ecforce導入クライアント38社の1年間の平均データ / 集計期間 2021年7月と2022年7月の対比
※3:事業撤退を除いたデータ / 集計期間 2022年3月~2022年8月
