この記事でわかること

※この記事は 時点の情報をもとに執筆しています。
ECサイトを立ち上げる際にかかる費用は、構築方法や事業規模、目的によって大きく異なります。初期投資だけでなく、運用や保守、広告などの継続コストも考慮し、計画的に進めることが大切です。本記事では、構築方法ごとの費用相場やコスト構成、さらに予算別の目安や見積もり時のポイントを丁寧に解説します。
構築方法によって変わるECサイト構築の費用と特徴

ECサイトの構築費は「どの方式を選ぶか」で大きく変わります。ここでは代表的な4つの方法を比較し、それぞれの費用感と特徴を整理します。
モール型|低コストで始めやすいが自由度は低い
モール型は楽天市場やAmazonなど、既存のECモールへ出店する方法です。自社でサイトを構築せずに販売を始められるため、初期費用が抑えられる点が最大の魅力といえます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 初期費用 | 出店料・登録料で数万円〜10万円前後(例:楽天市場は約6万円) |
| 運用費 | 月額利用料や販売手数料など月数万円〜(売上に比例) |
| 構築スピード | 最短1〜2週間で出店可能 |
| 自由度 | デザイン・機能のカスタマイズに制限あり |
モールの集客力を活かせる一方で、価格競争に巻き込まれやすく、独自ブランドを打ち出しづらい面もあります。
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ASP型|スピード重視で中小企業に人気
ASP型は、クラウド上のテンプレートを利用して構築する方法です。BASEやShopifyなどが代表的で、低コストかつ短期間での運用開始が可能です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 初期費用 | 無料〜数万円(有料テーマや設定代行など) |
| 運用費 | 月額5,000〜50,000円前後 +売上に応じた販売手数料 |
| 構築スピード | 約1週間〜1ヶ月で導入可能 |
| 自由度 | デザインや機能拡張に一定の制限あり |
サーバーやセキュリティの管理をASP側が担うため、専門知識がなくても安心して運用できます。ただし、機能追加やデザインの自由度は限定的です。
オープンソース・パッケージ型|自由度が高く中〜大規模向け
既存システムをベースにカスタマイズして構築する方式です。オープンソース型は低コストで始められ、パッケージ型はサポート体制が整っているのが特徴といえます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 初期費用 | オープンソース:10〜100万円/パッケージ:100〜500万円程度 |
| 運用費 | 月額数万円〜 |
| 構築スピード | 約2〜6ヶ月(カスタマイズ内容により変動) |
| 自由度 | 高い。機能拡張・デザイン変更・外部連携が可能 |
柔軟な機能拡張が可能で、中堅〜大規模企業に向いています。ただし、カスタマイズ範囲が広い分、開発コストが増える点には注意しましょう。
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フルスクラッチ型|完全オリジナルだが高コスト・長期開発
ゼロから設計・開発する構築方法です。機能やデザインをすべて自社仕様にできる反面、開発期間とコストは最も高くなります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 初期費用 | 500万円〜数千万円(大規模では数億円) |
| 運用費 | 月数十万円〜 |
| 構築スピード | 6ヶ月〜1年以上 |
| 自由度 | 最高レベル。全機能を自社設計できる |
ブランドの世界観を表現したい企業や、既存システムとの完全統合を目指す企業に適しています。長期的な運用を前提に、資金・人員体制を整えて進めることが大切です。
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ECサイト構築にかかる費用の全体像と費用構成

ECサイトの構築を検討する際、初期費用と運用費の両面を理解しておくことが重要です。構築方法や機能要件によって費用が大きく変化するため、費用の全体像と構成を整理しておきましょう。
初期費用と運用費(ランニングコスト)の違い
| 初期費用 | 運用費(ランニングコスト) |
|---|---|
| サーバー/ドメイン契約費用(立ち上げ時) | サーバー・ドメインの月額/年間費用 |
| デザイン・UI/UX設計 | SSL証明書・セキュリティ保守費 |
| 機能実装(カート・決済・会員機能など) | 決済手数料・カートシステム利用料 |
| システム構築・テスト・導入費用 | システム保守・更新・運用人件費 |
初期費用はサイトを作るための投資、運用費は維持・改善のための継続コストです。これらを明確に分けて予算を立てることで、構築後の想定外の支出を防ぐことができます。
費用を左右する主な要因
- サイト規模・商品数:商品数が多いほどシステム構築費が増加
- 機能要件:定期購入・会員機能・外部連携など追加開発は高額
- デザインの自由度:オリジナル設計はテンプレートより高コスト
- 構築方式:フルスクラッチほど初期費用が高い
- 運用体制:外注割合が高いとランニングコストが上昇
機能を増やしすぎると初期費用が膨らみますが、テンプレートを活用すればコストを大幅に抑えられます。構築方式によっては費用差が10倍以上になることもあるため、自社の規模や目的に合った方法を選ぶことが重要です。
見積もり時には「今必要な機能」と「将来的に追加する機能」を分けて整理し、開発・保守コストを最適化しましょう。
平均的な費用相場とコスト配分の目安
ECサイト構築費用は、小規模で10〜100万円、中規模で100〜500万円、大規模では500万円以上が一般的です。
費用配分の目安は以下の通りです。
| 費用項目 | 内容 | 配分の目安・金額感 |
|---|---|---|
| 設計・開発費 | システム設計、カート機能、決済・会員管理など | 約40%(中規模で40〜200万円) |
| デザイン費 | トップ・商品ページ・UI/UX制作 | 約20%(20〜100万円) |
| 撮影・登録・原稿制作(ささげ業務) | 商品撮影、説明文、登録作業など | 約20%(10〜80万円) |
| 保守・導入サポート | SSL、セキュリティ設定、テスト・マニュアル作成など | 約20%(10〜80万円) |
開発費に偏りがちですが、商品登録や撮影なども重要なコスト要素です。サイト公開後も決済手数料やシステム利用料などの運用費が発生するため、長期的な視点で予算を設計しましょう。
予算別に見るECサイト構築の費用と実現できる内容

ECサイト構築では、予算によって実現できるデザイン性や機能が大きく異なります。ここでは、3つの価格帯別に構築できるサイトの特徴と、どんな企業に向いているかを紹介します。
〜100万円|テンプレート型で小規模ECを構築
予算100万円以内では、ASP型やモール型のテンプレートを利用した構築が主流です。初期費用が低く、最短で1〜2週間ほどで販売を開始できるため、初めてECに挑戦する個人事業主や小規模事業者に適しています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 構築方法 | ASP型(Shopify、BASEなど)・モール型(楽天市場など) |
| 実現できる内容 | テンプレートによるデザイン構築、標準機能(カート・決済) |
| 制限される点 | 独自機能の開発やデザインの自由度は低い |
| 向いている企業 | 小規模事業者、EC初心者、テスト販売を行いたいブランド |
低コストながら、販売データを蓄積して今後のマーケティングに活かせる点が大きな利点です。まずは小規模で実績を作り、その後オープンソース型などへの移行を見据えると良いでしょう。
100〜500万円|デザイン・機能の両立を目指す中規模EC
中規模の予算帯では、オープンソース型やパッケージ型を活用し、デザイン性と機能性の両立を図るケースが多く見られます。自社の業態や顧客層に合わせた柔軟なカスタマイズが可能で、成長フェーズにある企業に適しています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 構築方法 | オープンソース型(EC-CUBEなど)・パッケージ型 |
| 実現できる内容 | 会員機能、ポイント制度、外部システム連携、デザインカスタマイズ |
| 制限される点 | フルスクラッチのような完全自由設計は難しい |
| 向いている企業 | 自社ブランドを確立したい中小企業、既存店舗からEC展開する企業 |
この価格帯では、ユーザー体験(UX)を意識したサイト設計が可能になります。デザインと機能のバランスを取りつつ、効率的な運営を実現できる構築方式です。
500万円以上|ブランド力強化と高機能を備えた大規模EC
500万円を超える予算では、フルスクラッチ型や高機能なパッケージ型が中心です。自社のビジネスモデルに最適化した独自設計が可能で、業務システムやCRMとの連携、海外展開などにも柔軟に対応できます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 構築方法 | フルスクラッチ型・大規模パッケージ型 |
| 実現できる内容 | 独自機能開発、システム統合、複数店舗・多言語対応など |
| 制限される点 | 開発期間が長く、保守費用も高額 |
| 向いている企業 | 年商数十億円規模の企業、ブランド価値を重視する企業 |
このクラスのECサイトは、販売だけでなくブランド体験の設計を重視します。長期的な運用を見据えて体制を整え、企業戦略の一環として継続的に投資していくことが求められます。
年商・事業規模別に見る適切なECサイト構築費用

事業の年商や規模に応じて、ECサイトにかけるべき構築費用や重視すべきポイントは異なります。ここでは年商ごとに3つのカテゴリーに分け、それぞれに適した費用設計と構築方式を解説します。
年商1億円未満の企業に適したコスト設計
年商1億円未満の企業では、まず立ち上げの速さとコスト抑制を重視することが合理的です。
例えば、年間売上が1,000万円〜8,000万円程度の企業では、初期費用を10〜50万円程度に抑え、運用しながら実績とノウハウを蓄積する構えが適しています。重要なのは、サイトを「まず機能させる」ことを目的とし、売上と集客に直結する部分にリソースを集中することです。デザインや高機能化は次のステージとして段階的に設計することが合理的です。
- 構築方式:モール型/ASP型
- 機能設計:テンプレート中心、決済・カート構築など基本機能に集中
- コスト設計:初期費用10〜100万円、月額運用費数千〜数万円
- 注意点:独自機能やデザインに過度な投資をせず、まずは販売基盤の構築を優先
年商1〜30億円規模の企業が意識すべき投資バランス
年商1億円以上、かつ30億円未満の規模の企業では、ECサイトを事業の主要チャネルとして育てる目的が出てきます。このフェーズでは、より高度な会員管理やCRM、ポイント制度、在庫・物流システム連携など、機能拡張を視野に入れた構築が必要です。
- 構築方式:オープンソース型/パッケージ型
- 機能設計:会員機能・定期購入・ポイント・外部システム連携・デザインカスタマイズ
- コスト設計:初期費用100〜500万円、月額保守・運用費数万円〜十数万円
- 注意点:機能を詰め込みすぎるとコストが急増するため、必須機能と将来追加機能を分けて設計することが重要
30億円以上の企業に求められる長期運用型システム
年商30億円以上の企業では、ECサイトは単なる販売チャネルではなく、ブランド戦略・グローバル展開・多拠点運営を支えるプラットフォームとなります。この段階では、500万円以上、場合によっては数千万円規模の初期投資が求められることもあります。
- 構築方式:フルスクラッチ型/大規模パッケージ型
- 機能設計:EC・会員・CRM・分析・物流・多店舗・多言語対応・アプリ連携などすべてを統合
- コスト設計:初期費用500万円以上、運用費月数十万円〜数百万円規模
- 注意点:開発期間が長期化しやすく、保守・運用の体制構築も同時並行する必要
ECサイト構築の費用内訳と主な項目

ECサイト構築にかかる費用は、大きく構築費と機能連携費、制作費の3つに分かれます。あらかじめ内訳を把握しておくことで、無駄な支出を防ぎ、効率的な予算配分が可能になります。
要件定義・設計・開発・テストなどの構築費
構築費は、ECサイトを立ち上げるための中核となる費用です。一般的に、要件定義 → 設計 → 開発 → テスト → 公開という工程で発生します。
金額はサイトの規模や構築方法によって異なりますが、ASP型なら数万円〜、オープンソース型やパッケージ型では100〜500万円、フルスクラッチ型では500万円以上が目安です。
| 工程 | 主な内容 | 費用目安 |
|---|---|---|
| 要件定義・設計 | 機能・画面構成・システム仕様の整理 | 数十万円〜 |
| 開発・実装 | カート・決済・会員登録・在庫管理などの機能構築 | 構築方法により変動 |
| テスト・導入 | 動作確認・修正・初期データ登録 | 数十万円前後 |
開発費用の多くは機能の複雑さに比例します。特に、定期購入や会員ランク、在庫自動連携などの機能は追加コストが発生しやすく、初期段階で最低限必要な機能に絞ることが、コストを抑えるポイントです。また、保守契約を前提にした設計にしておくと、リリース後の修正もスムーズに行えます。
外部システム連携やAPI開発にかかる追加費用
自社の基幹システムや物流・会計ソフト、CRMなどと連携させる場合、追加の開発費用が必要になります。これらは一見オプションに見えますが、業務効率化や在庫精度の維持には欠かせない工程です。
| 連携内容 | 概要 | 費用の目安 |
|---|---|---|
| 在庫・受発注システム | WMSや販売管理とのリアルタイム連携 | 初期50〜300万円前後 |
| CRM/MAツール | 顧客データや購買履歴の統合 | 初期数十万円〜 |
| 会計・POS連携 | 売上データ・請求処理の自動化 | 初期数十万円〜 |
| API開発 | オリジナル機能やアプリ連携を行う開発 | 数十万円〜数百万円 |
API連携の費用は、リアルタイム連携か定期バッチ処理かによって大きく異なります。さらに、既存システムの仕様によっては追加開発や調整が必要になる場合もあるため、見積もり時にはどのシステムとどのデータを連携するのかを明確にしておくことが大切です。
商品撮影・原稿制作など“ささげ業務”のコスト
「さ(撮影)」「さ(採寸)」「げ(原稿)」を指すささげ業務は、商品ページを整えるための重要な工程です。この作業をどこまで外注するかで、初期費用は大きく変わります。
| 項目 | 内容 | 費用の目安(1商品あたり) |
|---|---|---|
| 商品撮影 | 白背景・モデル着用などカット数により変動 | 1,000〜5,000円前後 |
| 採寸・登録 | サイズ情報や属性登録作業 | 数百円〜1,000円前後 |
| 原稿制作 | 商品説明文・キャッチコピー作成 | 1,000〜3,000円前後 |
撮影や採寸をまとめて外注する場合、1商品あたり3,000〜10,000円程度が一般的な相場です。SKUが多い場合は、撮影テンプレートを統一して効率化することでコストを抑えられます。また、登録作業をクラウドソーシングで分担する方法も、初期段階の費用軽減に有効です。
ECサイト運用で発生する費用の種類

ECサイトの運用には、固定費や変動費、人件費が発生します。どの費用をどこまで自社で負担するかを明確にすることで、継続的で安定した運用が可能になります。
サーバー・ドメイン・セキュリティなどの固定費
ECサイト運用では、サーバーやドメイン、SSL証明書などの維持費が継続的に発生します。これらは売上に関係なく毎月発生する固定費です。
サーバー費用はプランによって月数百円〜1万円前後が目安で、アクセス数や取扱商品が増えると上位プランが必要になる場合もあります。ドメイン費用は年数百円〜数千円が一般的です。独自ドメインを取得すれば信頼性やブランド認知の向上につながるでしょう。
SSL証明書は無料・有償どちらの選択肢もありますが、企業サイトではサポートや安全性の面から有償を選ぶケースも多く見られます。
広告・決済手数料・人件費などの変動費
変動費は、売上や集客状況に応じて増減する費用です。主に広告費・決済手数料・物流費・人件費などが含まれます。
広告費は、リスティング広告やSNS広告などを活用する場合に発生し、クリック単価や配信期間によって大きく変動します。集客を強化する時期には一時的に支出が増えるため、月ごとに上限を設定しておくと安心です。
特にASP型の場合、この決済手数料に加えてプラットフォーム独自の販売手数料(システム利用料)が売上に対して数パーセント上乗せされることがあります。そのため、固定の月額費用だけでなく、変動費率の合計が自社の利益構造を圧迫しないかを事前にシミュレーションしておくことが重要です。
また、受注処理やカスタマー対応にかかる人件費、梱包・配送の外注費なども取扱量に応じて増減します。売上が伸びるほど費用も増えるため、利益率を保つには、売上対コスト比を定期的に見直すことが重要です。
内製運用と外注運用のコスト比較と選び方
ECサイトの運用体制は大きく内製と外注に分かれ、それぞれでコスト構造が異なります。
内製運用は、担当者を自社で抱えるため固定的な人件費が発生しますが、ノウハウを蓄積でき、スピーディな改善が可能です。一方で教育コストや担当者のリソース不足が課題になることもあります。
外注運用は、専門知識を持つパートナーに委託する方式で、短期間で高品質な成果を得やすいのが特徴です。ただし、業務範囲の追加や修正が生じるたびに費用が発生する点には注意しなくてはいけません。
コストと品質の両立を図るには、更新や在庫登録など日常的な運営業務は内製化し、広告運用やシステム改修といった専門的な領域は外注する「ハイブリッド型」の体制が効果的です。
ECサイト構築の見積もり費用で確認すべきポイント

見積もりは、金額の妥当性と条件差によるずれを見極める重要な工程です。要件や範囲、保守内容などの前提をそろえ、同じ基準で各社の見積もりを比較できるよう準備しておきましょう。
目的とゴールを定義して見積もりを精度化する
見積もりの精度を上げるには、まずサイト構築の目的とゴールを明確にすることが欠かせません。「なぜ作るのか」「いつまでに何を達成したいのか」が曖昧だと、制作会社ごとに想定がずれ、金額の差が正しく比較できなくなります。
そのために役立つのが、RFP(提案依頼書)です。以下のような内容をまとめておくとスムーズです。
- プロジェクトの背景・目的
- 対象範囲とスケジュール
- 目標KPI(例:コンバージョン率やLTV向上)
- 想定する運用体制と予算レンジ
- 納品条件や検収基準
- セキュリティ・拡張性などの非機能要件(できれば数値化)
これらを事前に共有することで、各社が同じ前提で見積もりを出せるようになり、比較の精度が格段に上がります。
必須機能と拡張機能を分けて費用を最適化する
初期段階で今必要な機能と将来的に追加する機能を分けることで、無駄な投資を防げます。例えば、以下のように優先度を分けておくと判断がしやすくなります。
- Must(必須):初期リリースに欠かせない機能
- Should(優先):運用状況を見て早期に導入したい機能
- Could(検討):将来的に拡張予定の機能
これらを一覧でまとめたものを「スコープ表」と呼びます。スコープ表とは、サイトにどの機能を、どのタイミングで実装するかを整理した表のことです。機能名・リリース時期・担当範囲・工数などを記載しておくことで、社内でも合意形成がしやすく、見積もり依頼時に「どこまでが今回の範囲か」を明確に示せます。
スコープを段階的に設計しておけば、初期投資を抑えながらも、運用状況に応じて機能を追加していく柔軟な構成が可能になります。
複数社比較で費用差を見極める
複数の制作会社へ見積もりを依頼する際は、金額だけで判断しないことが大切です。同じ「ECサイト構築」という名目でも、対応範囲や保守体制の考え方によって費用は大きく異なります。
- 費用内訳(設計/開発/テスト/保守など)
- 非機能要件(サイト速度・稼働率・セキュリティ対応など)
- 保守範囲(更新・障害対応・サポート体制)
- 追加費用の発生条件(仕様変更・軽微修正・時間単価など)
- 成果物の権利や検収条件(ソースコードの扱いや納品後対応)
費用差の多くは、要件や条件の解釈違いによるものです。比較の前提をそろえて照らし合わせることで、「なぜこの会社は高いのか・安いのか」を正しく判断でき、後悔のない選定につながります。
6つのECサイト構築方法別の費用感早見表。コストシミュレーション&D2Cブランドの具体的な事例付き。
ECサイト構築で発生しやすい費用トラブルと回避策

ECサイトの構築では、見積もり時点では想定していなかった費用が後から発生するケースが少なくありません。仕様の認識違いやスケジュールのずれ、連携範囲の不足などが原因で、追加コストや納期遅延が生じることもあります。ここでは、代表的なトラブル事例とその回避策を整理しておきましょう。
仕様変更・納期遅延・費用超過などの事例と原因
EC構築で起こりやすいトラブルの多くは、要件定義の曖昧さから発生します。
| よくあるトラブル | 主な原因 | 回避策 |
|---|---|---|
| 仕様変更による追加費用の発生 | 要件定義が不十分で、後から「やりたいこと」が増える | 初期段階で「対応範囲」と「除外範囲」を文書化。変更時は再見積もりルールを設定する |
| 納期遅延 | 機能追加・修正対応によりスケジュールが圧迫 | マイルストーンごとに進捗確認を実施し、仕様変更は締切前に確定 |
| 想定外の再開発・修正 | 表示速度・稼働率などの非機能要件が曖昧 | 非機能要件を数値で明記(例:応答2秒以内・稼働率99.9%など) |
| 連携・移行作業の抜け | 既存システムの仕様やデータ構造を把握していない | データ項目・移行件数・更新頻度を事前にリスト化し、確認を徹底 |
トラブルの多くは、共通認識の不足が原因です。要件定義書やスコープ表でやること・やらないことを明示し、変更時には必ず再見積もりと納期調整をセットで行うことで、予期せぬコスト増を防げます。
リニューアルや乗り換え時に発生する追加費用
既存サイトをリニューアルする場合や、別のプラットフォームへ移行する場合も、見落としがちなコストが多く存在します。特に以下の項目は、事前に確認しておかないと追加費用が発生しやすい領域です。
- データ移行費:顧客・商品・受注データなどを新システムへ移行する際、件数や形式が異なると再整形が必要になり、コストが増加。
- 外部連携費:会計・在庫・倉庫管理など、既存システムとのAPIやCSV連携を再設定するための開発・テスト費用。
- SEO・計測設定の再構築費:URL構造変更に伴うリダイレクト設定やGoogleタグの再設定が必要。
回避策としては、現行環境の棚卸しを行い、移行対象と不要データを明確にしておくことが重要です。また、見積もり段階でデータ移行の件数、APIの再設定範囲、公開スケジュールを明記し、契約書にも反映しておくと安心です。
長期運用を見据えた保守契約・セキュリティ対策
ECサイトは、公開して終わりではなく継続的な保守・運用体制の構築が欠かせません。運用フェーズでのトラブルを防ぐには、契約時に保守範囲や対応条件を具体的に取り決めておくことが重要です。
保守契約で確認しておくべき主な項目
- 対応範囲:軽微な修正・障害対応・問い合わせ対応など、月額費用に含まれる範囲を明記。
- 対応スピード:受付から対応までの目安時間をSLA(サービスレベル合意)として設定。
- 監視・バックアップ:監視体制・データバックアップの頻度・復旧までの時間(RTO/RPO)を確認。
- 脆弱性対応:ライブラリ更新やパッチ適用など、セキュリティ維持の責任範囲を明確化。
セキュリティ面での基本対策
- 常時SSL化による通信の暗号化
- 管理画面への多要素認証・アクセス制限
- 権限管理と操作ログの保存
- 定期的な脆弱性診断とログ監視
こうした内容を契約書に盛り込み、どこまでが保守範囲か、どの頻度で対策するかを明確にしておくことで、トラブル時の責任分担が明確になります。また、社内でも保守対応の担当・連絡フローを整理しておくと、万が一の際も迅速な対応が可能です。
ECサイト構築に活用できる補助金・助成金制度

ECサイト構築にはデザインや開発など多くの費用がかかります。中小企業や個人事業主は、国や自治体の補助金・助成金を活用することで自己負担を大きく抑えることが可能です。最後に、EC構築で利用できる代表的な制度と申請のポイントを紹介します。
小規模事業者持続化補助金・事業再構築補助金の概要
EC構築で特に活用されているのが、小規模事業者持続化補助金と事業再構築補助金の2つです。どちらも中小企業庁が実施しており、対象経費に「ECサイト制作費」「システム開発費」「広告宣伝費」などが含まれます。
| 制度名 | 対象者 | 補助率・上限額 | 対象経費 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| 小規模事業者持続化補助金 | 商業・サービス業で常時使用する従業員が5人以下の事業者など | 補助率2/3以内 上限50万円(特定枠は最大200万円) |
ECサイト構築費、デザイン費、広告費、外注費など | 販路拡大を目的とした小規模事業者向けの補助金。難易度が低く申請しやすい。 |
| 事業再構築補助金 | コロナ禍などで売上が減少した中小企業・個人事業主 | 補助率:1/2〜2/3 上限:100万円〜1億円規模 |
システム開発、EC構築、新事業への設備投資など | 新分野進出・業態転換を支援する制度。大規模投資にも対応可能。 |
いずれも、事業計画の内容が採択可否を左右します。ECサイトの構築目的や投資の効果を数値で示すことで、採択率を高めることができます。
申請条件とスケジュール管理のポイント
補助金はいつでも申請できるわけではなく、年数回の公募期間に合わせて申請する必要があります。また、採択後に事業を実施し、完了報告後に補助金が交付される「後払い方式」が一般的です。
申請から交付までの流れ
- 公募開始(年数回実施)
- 申請書・事業計画書を作成
- 商工会議所または認定支援機関の確認を受ける
- 提出・審査(約1〜2か月)
- 採択・交付決定
- ECサイト構築・完了報告 → 補助金交付
補助金の多くは後払い方式のため、構築開始時には一時的に自己資金が必要です。また、パソコン本体や既存サイトの維持費、広告運用費などは対象外経費となる場合があるため、事前に必ず確認しておきましょう。
さらに、補助金の申請スケジュールとサイト構築の進行を連動させることも重要です。採択前に発注してしまうと補助対象外になるケースがあるため、着手時期には十分注意が必要です。
補助金対象外でも費用を抑えるための工夫
補助金の対象外になる場合でも、設計段階での工夫次第でコストを最適化できます。
費用を抑えるための実践的な方法
- ASP型・クラウド型の採用:ShopifyやBASEなどを使えば、初期費用を数万円に抑えられる。
- テンプレートデザインの活用:既存テーマを利用して、デザインコストを削減。
- 撮影・登録作業の内製化:社員による撮影・商品登録で外注費を軽減。
- 段階的な機能追加:初期は標準機能に絞り、売上拡大後に拡張する。
- クラウドソーシングの活用:原稿作成・登録業務をスポットで外注。
また、自治体独自のデジタル化支援金や販路拡大補助を実施している地域もあります。こうした制度は申請書類が比較的簡単で、国の補助金よりも短期間で支援を受けられるケースもあります。
構築前に、国・自治体・商工会議所の情報を一度チェックしておくことが、結果的に大きなコスト削減につながります。
【2025年最新版】ECサイト構築に使える補助金ガイド|3大制度と失敗しない申請のコツ
ECサイト構築にかかる費用を理解して無理のない運用を実現しよう

ECサイト構築は一度きりの投資ではなく、長く育てていく事業資産です。日々の改善を積み重ねることで、売上だけでなくブランドの信頼も着実に育っていきます。全体のコスト構造を正しく理解し、無理のない予算設計で運用を続けていきましょう。
ecforce では、初期構築から運用・改善までをワンストップでサポートしています。そのため、成長フェーズに合わせた拡張や機能追加も柔軟に行うことができ、長期的なEC運営を安心して続けられます。自社に合ったECサイトの構築や運用についてお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。
※2:ecforce導入クライアント38社の1年間の平均データ / 集計期間 2021年7月と2022年7月の対比
※3:事業撤退を除いたデータ / 集計期間 2022年3月~2022年8月

