この記事でわかること
プロダクトマネージャー(=PDM)は、ショップの立ち上げから運営開始後も一貫して事業を成功させるための総監督のようなものです。
総監督をする以上、事業全体を俯瞰で見て、各業務/タスクは何のために、いつやっていくのか、そういった設計をしていかねばなりません。
本記事では、実際に私が企画から運営までPDMとして関わっているデオドラント系商品を例にしながら、どのようなことを考え、どういった判断をしていったか、いくつかの例を文章化していきたいと思います。
事業計画段階でプロダクトマネージャーが行うこと
今回の事例は、クライアントより「売れている定期販売商材でマーケットインしていきたいから、商材含め企画して作って欲しい。マーケティング予算はかけても大丈夫。」という依頼を受けたことからはじまりました。
市場分析
こういった依頼の場合、私が商品企画のためによく活用する情報収集源の一つはアフィリエイトサイト及びクリエイティブ検索ツールです。
まず、いくつかのアフィリエイトサイトで報酬価格、いつから出稿されているかを比較検討し商品をピックアップします。
ここでの判断は、報酬単価が高いにもかかわらず長く掲載されているものとは、その価格で報酬を支払ったとしても事業成立している(LTVが高い)可能性が高いので、そういった商品群の中から近い将来需要が増えそうで、長く需要が見込めるものを選定します。
その後、ピックした商品のマーケティング戦略(クリエイティブ検索ツールでインパクト指数を比較する)も調査し、後発でも勝ち筋がありそうなものかを総合的に判断します。
実際に私は、市場では季節性商品と思われがちですが、実は年間を通して一定数以上の需要があるデオドラント商品と、高額ではあるが継続率は一定担保できる美容液を候補として検討した結果、原価を安く抑えることが出来ること、露出を増やしてニーズのある特定層向けにマーケティングできることを鑑み、デオドラント系商材としました。
事業全体の設計
商品が決まったら、その商品が訴求しているものがどのような顧客の課題解決に役立つのかターゲット、課題両側面に立って商品を具体化させ、そのうえで独自の強みとなり得る要素を検討し、事業が成り立つかどうかリーンキャンバスを用いて設計していきます。
※この時点で勝ち筋が見えなかったら商品選定からやりなおします。
私が手掛けたデオドラント系商材の場合は、マーケット市場は存在している一方で、あまり洗練されたクリエイティブで勝負をしている競合がいないこともあり、プライシングやオファー内容を調整すれば後発でも十分勝ち筋があると判断し、展開をしていくことを決めました。
事業の詳細検討と資金計画
ここまでで、ある程度勝ち筋が見えているはずなので、次にやるべきことは事業計画に具体的な数字を当て込んでいくことです。
ここでいう数字とは【商品価格】【継続率】【CPA(商品獲得コスト)】【原価】【その他想定し得る販管費】を元にした【売上】【営業利益】です。
上記、数字をもとに直近3年間程度のPLとCFを作り、この事業を行ううえで最低限いくら必要で、利益はどれほど出そうなのか、万が一、事業が上手くいかなかった場合の想定される最大の赤字幅はどれほどになるのか、すべてを計算しておくことが肝要です。
もちろん想定通りにいく可能性は決して高くはありません。しかし、私の経験上、事業運営を通して一番大事なのはこの事業設計部分です。
ここでどれだけ試行錯誤をしておくかで事業の成否が決まると言っても過言ではないので、とにかく時間をかけて納得のいく戦略を描いていただきたいと思います。
前述のデオドラント商材の場合は、3年間の数字及び販管費、及び起こりうる事象にかかるコストを想定で計算しPLを作成。資金準備の依頼と諸々の準備をクライアントに依頼し、事業準備を始めていくことになりました。
事業を立ち上げ段階でプロダクトマネージャーが行うこと
事業の設計がまとまったら、次は事業を成立させるための具体的な部分の構築と、この時点で準備可能なものを仕込んでいきます。
OEM含め関わる事業者や、マーケティングの戦略を誤るとPLの悪化等事業存続に伴うクリティカルな要素となる可能性もあるので、検討の幅は広めにとり、費用が出そうな場合は必ず相見積を取って総合判断をしていく必要があります。
OEMの選定&交渉
商品自体の製造単価(原価)は一顧客のLTVに大きく寄与してくるため、妥協しないよう私は特に以下の5点を意識して総合的な判断をしています。
【原価】安さでこだわるか、効果効能でこだわるかPDM判断が必要
【製造期間】ローンチ予定時期からの逆算で要検討
【支払いサイト】前払いか、納品後支払いかでCFが変わるので要交渉
【ロット数】原価にも影響あるが、当初は在庫リスクを鑑みて要検討
【商材特性ごとの検討ポイント】医薬部外品推し等、訴求で考えているものは、即提供可能なのか含め検討
上記を調整しながら、2〜3社からの相見積もりを取得して考えます。
※OEM企業自体はインターネットで検索もするし、展示会に足を運び常に企業情報をストックしておくことも重要です。
本商材の場合は、ローンチ優先(製造期間)ということ、及び医薬部外品の申請が通っていること(商材特性ごとの訴求)を意識してOEMの選定を行い、ロット数と原価の交渉をして大体の納品日まで決めました。
マーケ戦略とLPの構成のイメージ(方向性まで)
次になんとなく描いていたマーケティング施策と販売サイトの詳細を検討していきます。
しばしば販売サイトを先行して作ってしまう方がいますが、販売方法や広告施策と連動してサイトを開発することで顧客の購買動線を「流れ」で設計していくことが可能となるため、
①マーケティング施策策定:どう売るのか?
②販売サイト制作着手:流入顧客は何を考えて購買動線を辿るか。
という流れで整理していくと効率がよいでしょう。
本商材では、記事広告を間に挟むことで目に止めてもらえる顧客の課題意識を解決意識を教育し、販売サイトは敢えてシンプルにして購入動線を簡素にすることにすることで抜本的なCVR向上を見込む設計としました。
フルフィルの交渉(物流、CS)
フルフィルメントとは簡単にいうと、物流倉庫とコールセンターの外注先の選定と、要件定義のことです。
この段階でオファー内容は大方決まっていると思うので、そちらを元にそれぞれ以下を加味して決めていきます。
本商材は、1種類で同梱物の数も少ないので、今後のオファー変更にフレキシブルに耐えられ、作業費用含めたランニングコストがかからない物流倉庫を選定しました。
コールセンターは、商品数が少なく、継続率が最重要となる商品特性上、ダウンセルの提案率やオペレーターの基本的実力が高いところを選定しました。
カートシステムや決済会社との検討と審査進捗管理
そして、具体的に販売するにあたり、どのように売るかを決めているのであれば、その売り方に対応できるカートシステムを選定することも必要です。
また、決済会社の審査は長いと2ヶ月ほどかかる可能性(平均1ヶ月)もあるので、ローンチスケジュールを考えて逆算して申込みを進める必要があります。
なお、決済会社の審査に販売ページが必要な場合(ページ記載内容が薬事法や景表法に抵触していないかのリスクマネジメントも必要)があることや、商材的に審査を通すことが難しいものもあるため、事業で使用したい決済会社の審査要件は事前に確認しておいた方が無難でしょう。
デオドラント系商材の場合は、定期通販形式の一般的なLPを活用した販売方法ということもあり、LP一体型でカートを設置できること、その後CRM施策をするために分析がしやすく、顧客リストを抽出しやすいシステムを選択しました。
また、決済審査は概ね順調に進みましたが、一部LPの変更依頼箇所等もあったため全体で1.5ヶ月程度要しました。
事業立ち上げた日にプロダクトマネージャーが行うべきこと
ここまでの準備期間で事業立ち上がり時点の成功は決まるといっても過言ではありません。
しかし、ここで安心してはいけません。
D2C(EC)事業は、同梱物含め商品とメーカー側の想いがしっかりと顧客のもとに届くかどうかがもっとも重要です。
ローンチ日には、まず上記が達成され、すべての部門が販売に耐えられる状態になっているのかを顧客が販売ページを閲覧する前に確認しておくことが必要です。
細かい部分は割愛しますが、販売するための核となる以下の部分は特にしっかりと確認をしておきましょう。
その他にも商材特性に応じて特筆すべき確認事項も存在する場合があるため、PDMは細やかに把握しておく必要があります。
【販売】
・特商法や利用規約、キャンセルポリシー等の中身は問題ないか、表示されているか
・トラブル起きた際のレポートラインの最終調整
【マーケ】
・LPが表示されるか
・カートシステムが反応しているか購入試験(全決済が問題ないかも確認)
・タイトルやメタディスクリプションの表示は問題ないか
【物流】
・配送テストを実施
・受注処理
【コール】
・自分の事業の担当オペレーターに繋がるか
・オペレーターがトークスクリプト通り対応できるか
デオドラント系商材に関しては、ローンチ一週間前を目安に想定しうる事項を洗い出し、当日確認することをリストアップ。午前中にはすべての確認事項はチェックを終えて、当日から販売〜発送まで実施することができました。
事業立ち上げ後にプロダクトマネージャーが行うべきこと
事業の立ち上げが終わってからは本格的に事業の数字管理とそこから導かれる打ち手を管理していくことになります。
算出される数字とそれに対応する施策例については別記事でご紹介していきますが、まずPDMとしてD2C事業で特に考えておかないとならないのは以下の2点です。
・CPAを下げて獲得効率を上げる
・LTVを上げて利益を上げる
両者ともに、全商材共通で100%効果が出る打ち手というものは存在しません。
数字を上げるためには商材特性を詳細まで理解し、訴求内容を突き詰め、施策PDCAを高速でまわして、ひたむきに数字の分析をしていくことが大切です。
また、数字だけではなく顧客の声も積極的に確認していく姿勢も必要です。
D2C事業の醍醐味はメーカーが顧客の声を直接聞くことができ、その声を商品や売り方に反映できることです。
数字とリアルなユーザーの分析。地道ではありますが、確実に効果を上げていくためにPDMは常に両者を意識化に置いておかなければなりません。
デオドラント系商材では、解約率が著しく上がっている定期回数を見つけ出し、その定期回目に合わせたキャンペーンや同梱物で継続することの意味等の情報共有に取り組み、数字を向上させました。
また、顧客の声から商品を別部位で使用しても効果があることがわかり、それを販売にも活かすという取り組みを定常的に行っています。
プロダクトマネージャーになるために
以上が、プロダクトマネージャーについての記載となります。ここまで読んでいただいた皆さんはどのような感想をもたれたでしょうか。
『考えていたより大変そう』『こんなに苦労してまでやることではない』というようなことを考えられた方もいらっしゃるかもしれません。
さらに、PDMはゼネラリストにならないとなりません。事業全体を見通すことはもちろん、チームメンバーが力を発揮できるように関係各所のマネージメントも必要です。
また、リスクマネジメント、フルフィルメント、CRM、広告運用など外部委託できる部分はコストを鑑みて発注することも事業戦略の一つですが、しっかりとそれぞれのコスト感を掴んでおかないと交渉すらできないため、上記を行えるように予め知見も広げておくことも必要です。
さらに、ここまで準備をしても確実に成功するというようなことはありません。
しかし、私はPDMの仕事においてあなたが「やりがい」を感じることを保証することができます。
自分が育てたプロダクトが世に出て、顧客に認められる。この喜びは他の仕事ではなかなか得ることは出来ません。
皆様のプロダクトを市場で見つけること、楽しみにしております。
【最後に】
ここまで読んでいただきありがとうございます。ここで最後にecforceのご紹介をさせていただきます。ecforce(イーシーフォース)は日本国内のEC・D2Cビジネスの現場を知り尽くした、わたしたちSUPER STUDIOが提供する国産SaaS型ECシステムです。EC・D2Cサイト構築の際の要件定義から成長拡大まであらゆるフェーズをサポートします。
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※2:ecforce導入クライアント38社の1年間の平均データ / 集計期間 2021年7月と2022年7月の対比
※3:事業撤退を除いたデータ / 集計期間 2022年3月~2022年8月