この記事でわかること
カミソリのD2Cブランドと言えばDollar Shave Club(ダラーシェイブクラブ)。
そう思う人は多いかもしれません。
しかし、忘れてはならないのがHarry's(ハリーズ)の存在です。
Harry'sは創業こそDollar Shave Clubに比べて遅いのですが、決して模倣ではなく、Dollar Shave Clubとは違ったアプローチで顧客を増やしてきました。
カミソリ×サブスクリプションというビジネスモデルも含め、同じ領域なのに異なるアプローチをとるHarry'sには学ぶ点がたくさんあります。
本稿ではHarry'sにまつわる5つのTIPSから、D2Cにおいて重要な「世界観を作る」ことについて一緒に考えていきましょう。
Harry'sとDollar Shave Clubの初動
Harry'sは2012年7月に創業しました。Dollar Shave Clubが2011年1月なので、まさに後を追うように事業をスタートしたのです。
両者はアプローチが違うと前述しましたが、特に顕著にわかるのが初動です。Dollar Shave Clubは業界を寡占する巨大企業、つまりGillette(ジレット)を痛烈に批判しつつ、自分たちのアイデンティティを伝える動画でバズりました。
この動画のインパクトはものすごく、制作費用が数十万にも関わらず、Inc.の記事によると2日で定期購入者が12,000件になったというから驚きです。
一方で、Harry'sは「低予算のバズ動画」といったアプローチはせず、まず販売価格を高めにして商品原価にお金をかけつつ、よりブランディングに力を入れました。
ブランディングで買う意味をつくる
ここでD2Cにおけるブランディングについて、おさらいしましょう。
「ブランディングの3つの特徴」では、ブランディングで買う意味をつくる重要性を、このように述べました。
現代は、多くのモノがすでに世に溢れています。
モノが足りない時代に比べると課題解決型の訴求は響きにくく、機能面で推してもなかなか若者に振り向いてもらえません。こんな時代だからこそブランディングに求められることは大きく、課題解決以外に「買う意味をつくる」こともその内の1つです。
例えばAppleのiphoneを買う人は、電話が必要だから買うのでしょうか。この問いには多くの人が首を横に振るはずです。電話という”機能”が必要であればiphoneでなくても良いですよね。
Appleの秀逸なブランディングは顧客に情緒的な価値訴求を行い、顧客が買う意味をつくっているのです。
Harry'sがブランディングで行ったことも、まさに「買う意味をつくる」に他なりません。『D2C 「世界観」と「テクノロジー」で勝つブランド戦略』でもこう述べられています。
デジタルの可能性を極限まで活用した「コミュニケーションチャネルの多様化」と「世界観の重層性」の2つを兼ね備えていることが、D2Cブランドの大きな特徴となる。(P.45)
Harry'sは後者の「世界観を重層的に作る」ことで顧客体験を向上させ、顧客がGilletteでもDollar Shave Clubでもなく、自分たちを選ぶ理由を作ったのです。
Harry'sのシックで洗練された世界観
Dollar Shave Clubは「ものが良くて、安い」という、わかりやすいメッセージで顧客に訴えかけています。
これほどまでにシンプルなメッセージに対抗するには、安いDollar Shave ClubよりHarry'sに余計にお金を払うことを、顧客に納得してもらう必要があります。
つまりユーザーが「俺はちょっと高いけどHarry'sの方が好きだね。なぜなら-」に言葉が続く、何か良い体験を提供しなくてはならないのです。
そこで世界観を作るブランディングの力に頼るわけですが、どのような世界観を作ればいいのでしょうか。
Dollar Shave Clubの世界観を理解するために、象徴的である動画を振り返ってみましょう。多少のチープ感とユーモアがあり、ラディカルで破壊的な、いわば男っぽいパンクな印象を受けるはずです。
Harry'sは、Dollar Shave Clubと対比されることを意識するわけですが、Dollar Shave Clubを好まない人から一定の支持を得ることで、ポジションを確立し、ある種の対立構造を作ることができます。(すくなくとも競合を避けられます)
Harry'sのシックで洗練された、おしゃれでかっこいい大人の世界観に、少なからずDollar Shave Clubの影響があったことは否定できないでしょう。
Harry'sが店舗を構えた狙い
両者の「世界観の作り方」が違う顕著な例があります。
Dollar Shave Clubはリアルな場での顧客とのタッチポイントとして、自動販売機を選びました。一方でHarry'sは、ニューヨークに店舗を構えたのです。Harry'sのプロダクトが手に入るのはもちろんのこと、ここで散髪や髭剃りもできます。
顧客とのタッチポイントを効率的に作るのであれば、Dollar Shave Clubが選択した自動販売機は理に適っています。しかし、Harry'sの狙いが顧客に世界観を体験して欲しかったのであれば、店舗は最適な選択肢です。
AwayやCasperが実店舗を構えたように、Harry'sもカミソリから拡張して男性の身だしなみ、ファッションといった世界観を空間で表現しました。この点はDollar Shave Clubと「世界観の作り方」のアプローチが異なる顕著な例だと言えます。
ちなみに創業者の一人、Jeff Raider(ジェフ・レイダー)氏はWarby Parkerの共同創設者でもあります。D2Cにおいて世界観を作る重要性を理解し、かつどのような手法が良いかも熟知している点は、Harry'sにおいても大いに活かされています。
13億ドルで買収されたHarry's
Harry'sは2019年、髭剃りで有名なブランドSchick(シック)を有する、Edgewell Personal Care(エッジウェル・パーソナルケア・カンパニー)に13億ドルで買収されました。
現在は直販ではなく卸売も行っていますし、販売方法・価格の変更やブランディングのマイナーチェンジを行い変化しています。
顧客とダイレクトにコミュニケーションをとり、中間業者を排除することが仮にD2Cの条件だとすると、すでにHarry'sはD2Cではないのかもしれません。
それでもHarry'sが偉大なブランドであることに異論はないはずです。従来のブランドが成しえなかった、シックで洗練された世界観をここまで作り込みました。
カミソリ業界において、この功績は賛辞を集めるのに十分なものではないでしょうか。
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<参考記事>
【Pick Up! Vol.27】〜Harry’s体験レポート〜(ハンズラボブログ)
あえて Amazon 独占販売を選ぶ、新興 D2C 企業たちの狙い : カミソリのビックの場合(DIGIDAY)
スタートアップ支援に特化する、専業エージェンシーの勝算:DTCブームに乗じて台頭(DIGIDAY)
D2C 競争激化で、ブランディング代理店が進化を強いられる(DIGIDAY)
D2Cの戦い方の正解は1つじゃない。DSC vs Harry's(haztr | snaq me hattori − note)
※2:ecforce導入クライアント38社の1年間の平均データ / 集計期間 2021年7月と2022年7月の対比
※3:事業撤退を除いたデータ / 集計期間 2022年3月~2022年8月