この記事でわかること
D2C事業を順調に成長させるには、広告のようなペイドメディアだけに頼っていても難しいものがあります。
ペイドメディアを活用したマーケティングは、費用対効果が合っている間は問題ないのですが、いずれCPAの高騰が足かせになり、ブレーキがかかる可能性を常に秘めています。
そこで重要になるのはPRです。
本稿ではD2CにおけるPRについて、具体的な事例を見ながら一緒に再考しましょう。どうやらPRには2つの軸がありそうです。
D2CにおけるPRの本質
そもそも「PR」とは何でしょうか。「PRする」というと「宣伝する」と同義だと思う人もいますが、実際は違います。
PRは「Public Relations」の略で、直訳すると「公衆との関係」です。この言葉から想像できる通り、ただ知ってもらうだけではなく、人々と広く良い信頼関係を作るというニュアンスが暗に込められています。
D2CにおけるPRの本質も当然「宣伝」ではなく、「信頼関係を作る」ことにあります。
ひいてはPRとは、ブランドに対して何らかの好意を持ってくれた人により、ブランドにとって「良い情報が勝手に広まっていく仕組みをつくること」だと言い換えられるのです。
レガシーなPRとモダンなPR
従来のPRと言えば暗黙の了解で、テレビや新聞などの、いわゆるマスメディアでのPRを指しました。
しかし影響力のある個人がSNSを起点に、自分が発見したものを「良い」と伝播することで、時にレガシーなマスメディアでのPR以上の効果が期待できます。
なぜなら過去には「信頼できるメディア」に顧客向けの情報流通が依存していた時代があり、それがSNSを始めとした個人起点の情報発信&流通が、顧客の購買を左右する時代に変化したからです。
熱狂的な顧客を発見して繋ぎ止めるためにはモダンなPRに取り組む必要がありますが、一方で「レガシーなPRは不要」という意味ではなく、依然としてマスに向けて広く知ってもらうにはレガシーなPRも必要です。
つまりD2CブランドがPRに取り組む場合、レガシー&モダンの両軸でPRを考えることが求められるのです。
※「PR」という言葉には「レガシーなPR」のイメージが強い人が多いかもしれませんが、個人起点のモダンなPRは、4Eマーケティングの一つ「Evangelism(伝道)」に近いニュアンスだと理解するとわかりやすいかと思います。
PRには2つの軸がある
ここからはD2CにおけるPRを、具体的な事例と共にお伝えしたいと思います。
PRはストーリー軸とグラフィック軸の2軸に分けることができるので、それぞれ見ていきましょう。
ストーリー軸のPR
ストーリー軸のPRには3つのポイントがあります。
1. PRで関係性を作りたい顧客像の設定
2. 購買要因につながるかの見極め
3. 情報の新規性
1を見誤るとストーリーが伝播しないばかりか、こちらが訴求したい内容がうまく伝わらない可能性もあります。2も3も重要ですが、何よりも1をしっかり設定することから全ては始まります。
2では1で設定した顧客に対してストーリーを届けた場合、購買行動につながるか否かを見極めます。
よくあるケースですが、美談だけが伝わって顧客が購買というアクションを起こさない場合、PRとしては失敗と言わざるを得ません。
例えばRitual(リチュアル)の創業ストーリーは「創業者が妊娠期に信頼できるサプリがなくて、困って自ら立ち上げたサプリブランド」です。
つまりRitualは「サプリを信頼できない人のためのサプリ」であり、だからこそ創業ストーリーが共感を呼び、サプリの購買に至ります。Ritualの場合、「 」内がフックとなるストーリーで、このフックが口コミで広がっていくのです。
しかし、ブランドストーリーに新規性が全くないと興醒めです。どこかで聞いたことがある話で口コミは生まれません。その点、3の「情報の新規性」が重要になってきます。
例えば元サッカー日本代表の鈴木 啓太 氏が開発したAuB(オーブ)の場合、「幼少期から母親が発酵食品を食べさせてくれた」といったバックグランドから、「腸を大事にしてアスリートとして第一線で活躍した」といったストーリーがあります。
しかし、それだけではなく「トップアスリートから1000検体以上の便(データ)を収集し、研究した」という新規性が加わることで、AuBのストーリーはいっそう人々が語りたくなるものに昇華するのです。
すでにお気づきかもしれませんが、PRの対象は潜在顧客だけではありません。「良い情報が勝手に広まっていく仕組みをつくる」ためには、メディアも同様に対象となります。その場合も「情報の新規性」は大きな武器となるのです。
メディアも対象である点は、グラフィック軸でのPRも同様です。
グラフィック軸のPR
ここでの「グラフィック」とは商品が梱包されている箱のルックス、開けた時の見栄え・メッセージカードなどを総じて指しています。
Unboxing(アンボクシング)をご紹介した時もお伝えしましたが、顧客にとって商品との出会いは楽しみです。
ブランド側は顧客が箱を開けた時の感動を冷ますことなく、シェアしたくなる設計を論理的かつ情緒的に設計することが求められます。そのためには、ブランド側が顧客に撮って欲しい写真をあらかじめ設計しておく必要があるのです。
逆を言えば、ブランド側は顧客の最終アクション(写真撮影→SNSシェア)から逆算して、梱包の型、内容、梱包の順番などを決めるべきです。
例えば私たちが担当する某サプリメントブランドでは、配送箱と化粧箱が一体化した箱になっていて、顧客が箱を開いた時にすぐに冊子が目に入るように設置されており、冊子を持ち上げるとプロダクトがあるという構造になっています。
つまり「箱→冊子→商品」という流れで、グラフィックによる訴求が連続して行われるように設計されています。あらかじめこの点を考え抜いたので、予想通り多くの顧客が写真を撮ってシェアしてくれました。グラフィック軸でのPRは、うまくいったと言えます。
ただ予想外のこともありました。顧客は冊子に書いてあるメッセージをメインに写真を撮ると考えていましたが、メッセージを斜めによけて、プロダクトが映り込むように写真に撮る人が多かったのです。
このように顧客が想定とは異なるアクションをすることもありますが、設計段階では論理的に考えて顧客の行動を想像しましょう。
さらに論理的な思考以上に重要なのは、どのようにすれば顧客の五感に情緒的に訴えかけられるかを追求することです。そのためには、グラフィックの作り手と顧客の共感度が高いことが必然だと言えます。
例を挙げると、海外D2Cブランドの中でも、Glossier(グロッシアー)は五感に訴えるグラフィック軸のPRが非常に秀逸です。顧客の共感度も高く、Glossier自体にファンが多数います。
それを証拠にYouTubeでは多くのUnboxing動画を見ることができます。
コスメはレビューを参考にする人も当然いますが、言葉以上に問答無用で「かわいい」と感じさせるグラフィックが重要なのです。
D2C成功のためにはPRこそ真剣に考えるべき
冒頭で「CPAの高騰」についても触れましたが、実はこれも従来の形から現代への変化で説明できます。
従来はテレビ、雑誌、新聞などが多数の顧客にとって信頼される情報流通を担っていました。しかし現在はレガシーなメディアは引き続き影響力を持ちながらも、顧客の信頼する情報接点が多様化しており、様々な情報の広がりを設計する必要があるのです。
その際、ペイドメディアに出稿することで、多様な配信面を抑えることはできますが、競合他社も同様に出稿するため、配信面(顧客が信頼する情報接点)の奪い合いがある以上、「CPAの高騰」は半永久的に解決されない課題なのです。
PRは「良い情報が勝手に広まっていく仕組みをつくること」と前述しましたが、PRがうまくいって全体CPAが半分になった事例もあります。
ペイドメディアが不要だと言うつもりはありませんが、D2C事業の成長のためには、PRこそ真剣に考えるべき重要なことなのです。
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※3:事業撤退を除いたデータ / 集計期間 2022年3月~2022年8月