この記事でわかること
「OEMで商品を作る」。言葉で言うのは簡単ですが、経験がないと何からはじめればよいかわかりませんよね?
OEMはOriginal Equipment Manufacturing(オリジナル・エクイップメント・マニュファクチャリング、またはOriginal Equipment Manufacturer)の略。「自社の製品を製造する会社」という意味です。わかりやすく言うと、製造技術のあるメーカーが他社ブランドの商品を製造することです。
メーカー機能をもたないEC事業者にとっては、OEMを理解することは事業を成長させる上での必須項目。
今回は、EC運営者やネットショップ事業者がOEMで商品を作る際に知っておきたい基礎知識として、以下のような内容をご紹介します。
- OEMとは何か?
- OEMとODM・PBの違い
- OEM商品製造のメリット・デメリット
その上で、OEMで商品を製造する際の3つの具体的な注意点をお伝えするので、これからOEMに製造を委託しようと考えている方はぜひ参考にしてみてください。
また、この記事を最後までご覧いただいた方のために、事業にすぐ使える実践フォーマットを配布させていただいております。ぜひご活用下さい。
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OEMとは何か?
最初にOEMの基礎知識を得るために、言葉の理解からはじめましょう。
OEMの言葉の意味
繰り返しますが、OEMとは、「Original Equipment Manufacturing(オリジナル・エクイップメント・マニュファクチャリング)」を略した言葉です。
「委託者の製品を製造すること」あるいは「ブランド企業の製品を製造する受託者(メーカー)」のことで、日本では自動車業界や家電・化粧品・食品といった領域で普及しています。
分かりやすく言えば、ある商品を販売しているブランドがあったとして、その商品を自社製造ではなく他社に作ってもらう。これがOEMです。実際に製造しているメーカーがOEMなのですが、こういった製造販売の一連の仕組みそのものを指してOEMと表したり、商品そのものをOEM商品と呼んだりします。
自店で売る商品を自分で製造するという昔ながらの製造システムももちろん健在ですが、様々な観点からOEMの需要が高まっており、今では非常に多くの製造システムでOEMが採用されています。
OEMの種類
OEMは大きく分けて2種類あります。
- 自社ブランド商品の製造をメーカーに委託
- メーカーが企画した商品をブランドの名前で製造
1つ目は、ブランド側が「自社ブランド商品の製造を委託」する場合。委託者(ブランド側)が商品の企画開発を行ない、仕様を決めて、製造をメーカーに依頼します。この場合、委託者は受託者(メーカー)と契約し、完成した商品の管理権と所有権は委託者のものとなります。
取り扱う商品の幅が狭く専門性が高い場合は、自社製造することも可能でしょう。
しかしながら、消費者からの需要が高く自社製造で提供できる量以上の生産を望む場合は、OEMを利用することで解決できます。
また、様々な商品企画でいいアイディアはあるのに、自社に製造技術や環境がない場合も、OEMが活用されています。
2つ目は、「メーカーが企画した商品をブランドの名前で製造」する場合。先ほどの場合とは異なり、メーカーが商品の企画開発を行ってブランド側に提案します。当然ながらブランドが求めている商品であることは大前提ですが、その点で両者が合意すれば製造に踏み切ります。
メーカーにとっては、知名度のある相手先のブランド名で製造することにより、販売力が得られて売り上げ増になりますし、何より自分のところで製造できます。ブランド企業にとっては、自社で一から商品開発をする手間やコストが省くことができます。
OEMとODM・PBとの違い
ODMとは、「Original Design Manufacturing(オリジナル・デザイン・マニュファクチャリング)」の略です。委託者のブランドで販売することを前提に、受託者(メーカー)が商品設計・生産を行います。
先述したOEMの2つ目の形態に非常に似ていますが、分業内容が少し異なります。まず始めにブランド側が主体となって大まかな方向性を決定し、商品製造を提案。そこから先の商品企画やデザイン、場合によっては市場調査などもすべてメーカー側に委託されます。製造の現場では、OEMとODMの明確な区分けがなされないケースも散見されます。
商品企画からサンプル作成までをメーカーに委託するため、委託者(ブランド企業)は、人件費や開発費などの負担を大きく削減することが可能です。主な事例としては、パソコン・携帯電話などの業界で多く見られます。
つづいてPBですが、これは「Private Brand」を略した言葉です。小売店・卸売業者が自社のブランド名をつけて企画販売するブランドで、メーカーは基本的に製造のみを担当。身近な事例としては、大手のスーパーやコンビニエンスストアがPBを提供しています。
自社の製造拠点のないブランドが、自社ブランド名を冠したオリジナル商品を販売している形態がこのPBにあたります。製造システムそのものはOEMと変わらないのですが、販売側からの視点で消費者に分かりやすくするため「プライベートブランド」と呼んでいるのが現状です。
小売店などが独自で企画や開発を行うことにより、同業他社との差別化がしやすくなります。また、商品の価格を自社で設定できるため、コスト的な利点もあります。製造を担当するメーカー工場の空き時間帯にPB商品を生産してもらえば、さらなるコストダウンを図ることも可能です。
ただし知名度が高くないと売り上げが伸びない場合もあるので、しっかりとした市場調査や分析が必要です。
OEMのメリット・デメリット
いまや製造システムの主流ともなっているOEM。ブランド側、製造メーカー側どちらにも大きなメリットがあり、それと同時にデメリットももちろん存在します。OEMを採用する場合はそれらを理解した上で活用していきましょう。
まず、ブランド側の最大のメリットはコストです。製造を外部委託にすることで、消費者の需要に合わせた急な増産が可能となります。
原料、資材の確保、人件費などどれをとっても、自社でフル稼働させれば在庫リスクが高まります。また、製造に必要な工場や設備を新設するのにも莫大なコストがかかります。
もともと製造設備があるメーカーに委託することで、こういったリスクやコスト面での心配は最小限に抑えることができます。
アイディアはあるのに自社では製造対応できない、そんな商品でもOEMなら製造が可能。これは商品の幅を広げ、ブランド力を高めるチャンスになるでしょう。
製造を担当する委託者(メーカー)側にとっても大きなメリットはたくさんあります。外部からの委託を受ければ、生産設備をフル稼働させられます。せっかく製造技術があっても自社だけでは需要量が見込めなかったものが、他社ブランドと提携することで効率的に生産することができるのです。
ブランド側の生産技術が上だった場合は、メーカーに技術提供や指導があることもあります。こういった場合はメーカーが技術やノウハウを吸収するチャンス。より高度な商品を製造することができるようになり、委託先としての価値が高まることもメリットです。
メリットがある一方、デメリットも理解しておきましょう。
外部に製造を依頼する側のブランドは、自社の製造技術が伸びにくくなります。自社製品を完全にOEM化するならそれでもかまいませんが、将来的にメーカー側が同じような商品のライバルに成長してしまうこともあるでしょう。企画や商品開発まですべてOEM頼りにしていては、自社ブランドの発信力が低下する可能性があります。自社ブランドの成長のためには、コストとのバランスを考えつつOEMの調整をする必要があるでしょう。
メーカー側のデメリットとしては、生産量や稼働率のコントロールが難しくなる点が挙げられます。ブランド側からの急な増産依頼などがあれば、工場全体の稼働率に大きな影響があります。また、メーカーが自社ブランド製品を生産している場合、自社の製品がOEMに押されて製造困難になるかもしれません。
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OEMで商品を製造する際の3つの注意点
OEMとは何かをご理解頂けたところで、ここからはOEMで商品を製造する際に気をつけるべき注意点を3つご説明します。
- 製造スケジュールを握る。
- エビデンスをとる。
- 原価を下げる。
これで全てのトラブルが回避されるわけではありませんが、この3つに注意して商談を進めることで、想定外の事態に巻き込まれる可能性は低くなるでしょう。
製造スケジュールを握る
「売れるものを希望した数だけ作りたい!」と誰もが思うことでしょう。
ただし、OEMメーカーには受注できるリソースに上限があり、売れるものを好きなだけ作れるわけではありません。
工場の製造機械数、原料、時間、人的リソースなど、委託先のOEMメーカーによりキャパシティがあり、委託先に他のEC事業者の依頼が殺到すると製造ラインに融通がきかなくなり、リードタイムが長くなります。
実例をご紹介します。
あるEC事業者は、特殊な美容向け商材を製造しているOEMメーカーに商品の企画を持ち込むことにしました。
しかし、企画検討に時間がかかり発注が遅れていた最中、大手美容企業が同じ商材を発注。
その美容企業が記者会見を行なったことで話題となり、多くのEC事業者が興味を持った結果、製造元であるOEMメーカーに依頼が殺到し、当初のリードタイムが3ヶ月であったにも関わらず、8ヶ月以上が必要になってしまいました。
この結果、事業計画を見直さなければならなくなってしまいました。
製造のリードタイムを短くするためには、早い段階でOEMメーカーと発注を前提とした調整が必要です。
例えば
委託者側の製造予定数と理想スケジュール
初回発注後の製造ライン確保(仮押さえ)
上記2つが共有されているだけでOEMメーカー側も製造スケジュール組みが可能となり、製造が遅れる事態を防ぐことができます。
エビデンスをとる
前述のようなトラブルを回避するため、OEMメーカーに対しては予めエビデンスを取り、スケジュールを確実なものにしましょう。
例えば
先に発注書を発行しておく(必ず納期を明記すること)
業務委託契約を結ぶ
メールなどでエビデンスを残しておく
契約書など確実なエビデンスが理想ですが、形式的な契約を結ばずフランクな受発注を行っているOEMメーカーも珍しくありません。状況に見合った握り方をしておくと後のトラブル回避に繋がります。
原価を下げる
最後は、原価を下げるための注意点です。
製造依頼をする際にもらう見積もりですが、どんな商材でも必ず相見積もりを取ることをおすすめします。
商品原価の値下げは利益を出すための大切な要素の一つだからです。
依頼するOEMメーカーにより製造工程や原料仕入れルートが異なるため、価格の変動や調達スピードなどに必ず違いが生じます。例えば化粧品の場合、製造工程や仕入れルートによって価格に影響が出やすいのがバルク(商品の中身)と容器です。
特に容器は近年価格が高騰しており、入手がしづらくなっています。
中には安く仕入れられるOEMメーカーは存在するため、見積もりの入手後に「何にどのくらい費用がかかっているのか」を詳しく確認すると、原価の妥当性や原価の値下げ交渉が可能となります。
健康食品の場合も化粧品と同じく製造工程や仕入れルートによって価格に影響がでる商材の一つ。対策のひとつとして、OEMメーカーの得意分野を確認しておくことです。
OEMメーカーにより得意な製法や素材があるため、得意分野のメーカーに依頼すると原価を抑える可能性があります。
どのような商材であっても、共通して言える原価を下げる要素は「ロット数とマージン率」の2つです。
ロット数は、製造工程にもよりますが、発注するロット数を増やすことで原価を下げることが可能。しかし、OEMメーカーの原料の在庫によるため、予めロット数に応じた原価を確認するようにしましょう。
一方で、マージン率はOEMメーカー側からマージン率を引き出すことは困難なため、製造工程や原料仕入れ料などを聞き出して、マージン率を想定しましょう。
これらの感覚を掴むために相見積もりを取ることが重要なのです。
「OEM=下請け」扱いしない重要性
近年、様々なD2C商品が誕生していくと同時に、OEMメーカーの需要はますます高まっています。つまり現状OEMメーカーは受託数に困っておらず、OEMメーカー側が依頼を断ることができる強い立場にもなりえるということです。
どのビジネスにも言えますが、相手に対する敬意を忘れずお互い大切なパートナーシップを組める関係になりましょう。OEMメーカーは自社にはない製造技術を持った一企業です。「OEM=下請け」という考え方は捨てて、丁寧に対話を続けつつ、押さえるべきところは押さえる付き合い方が、円滑に商品を作るポイントです。
EC業界で生き残るためには、他社製品との違いを明確にアピールすることが必要です。OEMで削減できたコストや時間で企画・販売を強化し、メーカー側に常に新たな提案や企画を提出できるような努力をしましょう。メーカー側を下請け扱いすることなく、自社の努力と成長を続けることが何より重要なことなのです。
最後に、私たちのこともご紹介させていただきます。
D2C顧客体験型ECプラットフォーム「ecforce」を企画・開発する私たちSUPER STUDIOは、自社でもブランド立ち上げを行っており、日々ノウハウを貯めています。
常に様々なビジネスモデルにチャレンジしており、以下のようなブランドの事例に加え、2022年1月時点で50件近くの支援実績があります(詳しくは以下の画像をご覧ください)。
- ふつうのマヨネーズ
- GO WITH WHITE.
- しぐにゃる
- kipkip
- groomin
- CILY 他
また、これらの事例で培ったノウハウを基に、EC・D2Cビジネスを総合支援するecforce consultingを展開していますので、ぜひお気軽にご相談ください。
100社を超える認定パートナー様とのリレーションを活用し、製造、マーケティング、物流、コールセンターなど、ECビジネスに必要な全領域におけるフルサポートをさせていただける体制が整っております。
100ロットから製造可能なOEM様など、弊社経由でのご紹介でご用意いただける特別なプランを用意いただいている事業者様も多数ございます。
「いまは、問い合わせをするほどではない」。そういった方は、おそらく自ら商品開発・OEMをご検討しているかと思います。
その際は、以下からECの商品開発・OEMをぜひご覧ください。商品開発・OEMの極意を事例ベースで解説しているので、御社事業に役立つ情報があるはずです!
※2:ecforce導入クライアント38社の1年間の平均データ / 集計期間 2021年7月と2022年7月の対比
※3:事業撤退を除いたデータ / 集計期間 2022年3月~2022年8月