この記事でわかること
「ブランドがメディア化する」といった言葉を聞いたことがありますか?
よく考えると、何とも不思議な表現です。
しかしD2Cを理解する上で、この言葉の意味することが重要なのもまた事実です。
ちなみにD2Cブランドの成長戦略を描く上でメディア戦略も大事ですが、この言葉はそう言った意味合いではなく、ブランドの在り方を説いています。
実はこの言葉が実際に出てくるのは、サクボでも取り上げたことのある『D2C 「世界観」と「テクノロジー」で勝つブランド戦略』です。本稿ではこの本を参考にしながら、「ブランドがメディア化する」の真意を考えていきたいと思います。
D2Cブランドのメディア化とは
『D2C 「世界観」と「テクノロジー」で勝つブランド戦略』には、このような文章が出てきます。
これまで紹介してきたAway、Casper、Warby Parker、Everlane、Himsを見ると、彼らがメディア化したブランドであることがわかるだろう。文字通り雑誌を作り、ポッドキャストを配信し、日々Instagramのストーリーで“読者スナップ”をリポストし、写真コンテンツのクオリティに配慮している。先ほど言及したHimsの「Learn(学ぶ)」のページはまさにメディアそのものだ。
Away、Casper、Warby Parker、Everlane、Himsと名だたる海外D2Cブランドが取り上げられていますが、どのブランドも共通しているのはコンテンツを毎日、継続的に発信している点です。
ここでは雑誌、ポッドキャスト、Instagramのストーリー、そしてHimsのLEARNというより深くブランドを知るためのコンテンツページが紹介されていますが、形態は問わずコンテンツを常に発信する体制・姿勢はまさにメディアだと言えるのではないでしょうか。
「ブランド」と言えばもともとGUCCI、HERMES、Louis Vuittonのような、いわゆる高級ブランドを指しましたが、彼らのかつての在り方と、今のD2Cブランドを比較すると違いは顕著です。
高級ブランドには建物の壁面に巨大な広告を出したり、雑誌の見開きに広告を出したりといったいわゆる定石がありますが、顧客に対して毎日コンテンツを配信するようなことはしていませんでした。
もしあなたが一定期間でも、毎日D2Cブランドのコンテンツに実際に触れれば、「ブランドがメディア化している」ことを肌で感じるはずです。
「ブランドのメディア化」背景にある変化
それでは「ブランドがメディア化している」背景にはどんな変化があるのでしょうか。
以前、D2Cブランドがサスティナビリティを重要視する3つの理由をお伝えした際に以下のように述べました。
モノが溢れる現代において、D2Cブランドはモノの機能性だけで勝負せず、意味レベルの価値を作ることに尽力しています。
先進国においては、モノが無いため必要に駆られて購入をしていた時代は過ぎ、今では「モノ自体」は飽和状態にあります。つまり総じて機能的価値での差別化は難しく、人々は「意味レベルの価値」を求めていると言えるのです。
必要に駆られての購入や機能的価値を満たすための買い物でないので、ブランドはただ機能を伝えても売れず、より深く顧客と関係性を構築しなくてはならない状況にあります。
そのためブランドは継続的なコンテンツ発信によって、顧客との関係構築を努力するようになったのです。
ちなみに『D2C 「世界観」と「テクノロジー」で勝つブランド戦略』では「継続性」に加えて、さらに長尺のコンテンツの可能性も示唆されています。
Glossierはコンテンツ企業 ≒ メディア?
最後にD2Cブランドがメディア化した事例として、非常に興味深いアプローチをしているブランドを紹介したいと思います。
そのブランドとは、サクボでも何度もピックアップしているGlossier(グロッシアー)です。Glossierの創業者であるEmily Weiss(エミリー・ワイス)氏は、Glossier自らを「コンテンツ企業」と名乗り、プロダクトすらコンテンツであると言います。
「プロダクト=コンテンツ」と言われてもピンとこない人が多いと思いますが、コンテンツを“何らかの理由で人々が話題にする対象”だと捉えると、この言葉の真意が見えてくると思います。
機能的価値しかないプロダクトは、よほど機能に新規性が高いなど、特別な理由がなければ人々の話題にはなりません。
Glossierは様々なプラットフォームでのコンテンツ配信を継続的に行いつつ、さらにプロダクト単体を切り取ってもコンテンツ(人々が話題にする対象)と言えるほど緻密に練られた世界観やデザインを携え、人々を魅了し続けるコンテンツ企業 ≒ メディアなのです。
【最後に】
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※2:ecforce導入クライアント38社の1年間の平均データ / 集計期間 2021年7月と2022年7月の対比
※3:事業撤退を除いたデータ / 集計期間 2022年3月~2022年8月