基礎知識

オムニチャネルとは?マルチチャネルとの違いやメリット、事例から学ぶ顧客体験最適化のマーケティング戦略

オムニチャネルとは?マルチチャネルとの違いやメリット、事例から学ぶ顧客体験最適化のマーケティング戦略

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この記事でわかること

    オムニチャネルとは、実店舗・ECサイト・SNS・アプリ・カスタマーサポートなど、あらゆる顧客接点(チャネル)を統合し、一貫した顧客体験を提供するマーケティング戦略です。
    現代の消費者は、情報収集から購入、アフターサポートまでを複数のチャネルを自由に行き来するため、企業がチャネルごとに異なる対応をしていては、顧客満足を損なうリスクが高まります。
    近年では、アパレル・小売・金融・飲食など幅広い業界でオムニチャネルの導入が進み、国内外の大手企業もこの戦略によって競争優位を確立しています。
    また、テクノロジーの進化により、中堅・中小企業でもオムニチャネルに取り組むことが可能になりました。

    本記事では、「オムニチャネルとは何か?」という基本概念から、マルチチャネルとの違い、導入による具体的なメリット、実際の活用事例、そして導入プロセスまで、マーケティング初心者にもわかりやすく体系的に解説していきます。

    なお、マーケティングやUGCに関連する基本知識や周辺領域をさらに学びたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
    オムニチャネル戦略とは?導入すべき理由や成功事例3選をご紹介|ecforce blog
    オムニチャネルの成功事例5選!アパレルから化学、小売業界まで一気に紹介|ecforce blog

    オムニチャネルとは?

    スマートフォンの普及やSNSの浸透により、顧客の購買行動は大きく変化しました。現代の消費者は、商品やサービスを認知してから購入、さらにはアフターサポートに至るまで、複数のチャネルをまたぎながら情報収集や意思決定を行います
    こうした多様な行動に対応し、「どのチャネルを利用しても一貫性のある体験を提供する」という考え方が、オムニチャネルの核心です。

    「Omni=すべての」チャネルを統合する戦略

    「オムニチャネル」という言葉は、「すべての」を意味するラテン語「Omni(オムニ)」と「Channel(チャネル)」を組み合わせたものです。
    ここでいう「すべての」とは、単にチャネルの数が多いということではなく、実店舗・EC・アプリ・SNS・コールセンターといったあらゆる顧客接点が、分断されず連携している状態を指します。
    オムニチャネル戦略の目的は、こうした多様な接点を顧客にとってひとつながりの体験として提供すること。
    すべてのチャネルを有機的に連携させ、ストレスのない、滑らかな購買体験を実現することにあります。
    具体的には、以下のような連携がオムニチャネルに該当します。

    • 実店舗で商品を試着し、ECサイトで購入して自宅に配送
    • ECサイトで在庫切れの商品を、近隣店舗から取り寄せて受け取る
    • LINEやアプリでの問い合わせ履歴を店舗スタッフが確認し、同じ顧客として接客を引き継ぐ

    いずれも、「どこで買っても、誰に接しても、同じように対応してもらえる」体験が生まれることで、顧客に安心感と快適さをもたらし、企業への信頼や再来店・再購入につながっていくのです。

    顧客中心主義のマーケティングへのシフト

    かつてのマーケティングは、「どこで商品を売るか」「どう効率的に届けるか」といった企業起点の発想が主流でした。
    実店舗・EC・カタログなど、チャネルごとに戦略を分けて考えることが一般的だったのです。
    しかし今は、「顧客がどこで買いたいか」「どのチャネルが一番便利か」が購買行動の主導権を握っています。
    つまり、チャネル中心ではなく、顧客中心のアプローチに切り替える必要があるということです。

    オムニチャネルは、こうした消費者主導の時代に適応するためのマーケティングの再構築でもあります。
    チャネルを起点に施策を積み上げるのではなく、顧客がどのように情報を得て、どこで購入し、どんな体験を求めているのかを起点に、すべての接点を再設計する考え方です。
    このような視点に立つことで、企業は顧客との関係性をより深く築けるようになり、結果としてLTV(顧客生涯価値)の最大化やロイヤルカスタマーの創出につながります。
    一人ひとりの顧客に合わせた最適な体験を提供することが、これからの企業の競争力を支える鍵となるのです。

    オムニチャネルと他のマーケティング戦略との違い

    オムニチャネルという言葉は広く知られるようになってきましたが、似たような意味で使われがちな「マルチチャネル」「クロスチャネル」「O2O(Online to Offline)」などと混同されることも少なくありません。
    しかし、それぞれの戦略はチャネルの連携度合いや顧客へのアプローチの深さが大きく異なります。
    ここでは、それぞれのマーケティング戦略の特徴と違いを整理しながら、オムニチャネルの本質を明確にしていきましょう。

    マルチチャネル:複数のチャネルが独立して機能する状態

    マルチチャネルは、企業が実店舗・ECサイト・カタログ通販・コールセンターなど、複数の販売・接点チャネルを持つ戦略です。
    特徴的なのは、各チャネルがそれぞれ独立して機能している点です。顧客情報や在庫、購入履歴などはチャネルごとに個別管理されており、連携されていません。
    たとえば、ある商品をECサイトで購入した顧客が、実店舗でサポートを求めた際、購入履歴が共有されておらずスムーズな対応ができないというケースは、マルチチャネルにありがちな課題です。

    クロスチャネル:複数のチャネルが連携し合っている状態

    クロスチャネルは、マルチチャネルより一歩進んだ戦略です。各チャネルが部分的に連携し、チャネルをまたいだ購買体験が可能になります。
    代表的な例としては、次のようなものが挙げられます。

    • ECサイトで注文 → 実店舗で受け取り(クリック&コレクト)
    • 店舗で在庫切れ → ECサイトから配送手配

    ただし、連携はまだ限定的であり、すべてのチャネルが統合されているわけではありません。あくまでチャネル同士をつなぐことに注力した形です。

    O2O(Online to Offline):オンラインから実店舗へ顧客を誘導する施策

    O2Oは「Online to Offline」の略称で、Webサイト・アプリ・SNSなどのオンライン上の施策によって、実店舗などのオフラインへ顧客を誘導するマーケティングです。
    例えば、次のような施策が該当します。

    • アプリでクーポンを配信 → 店舗で提示・利用
    • スマートフォンの位置情報で近隣店舗のキャンペーンを通知

    O2Oはあくまでオンラインとオフラインを往来させる仕組みであり、オムニチャネルのように全体を統合・最適化する考え方とは異なります。

    オムニチャネル:すべてのチャネルを統合し、顧客視点で最適化

    オムニチャネルは、これらのマーケティング戦略を包括するような、最も高度で顧客中心のアプローチです。
    特徴は次の3点です。

    • すべてのチャネルが一元的に統合されている
    • 顧客データ・在庫情報・購買履歴がリアルタイムで共有されている
    • 顧客にとってどのチャネルでも変わらない体験を提供する

    つまり、顧客はチャネルを意識せず、企業と一つの接点を持っているかのような体験が可能になるのです。

    各マーケティング戦略の違いを一目で比較

    戦略名 チャネル連携 顧客視点の体験 代表的な特徴
    マルチチャネル 連携なし バラバラの体験 チャネルが複数存在するが独立している
    クロスチャネル 一部連携 多少スムーズな体験 ECと店舗など一部連携による購買体験が可能
    O2O 一方向の送客 オンライン⇄オフライン切替の体験 オンラインから実店舗への誘導が中心
    オムニチャネル 完全統合 シームレスで一貫した体験 顧客中心にすべてのチャネルが統合されている

    このように、各戦略の違いは「チャネル同士がどの程度つながっているか」「顧客体験に一貫性があるかどうか」がポイントになります。
    オムニチャネルは、それらの集大成ともいえる最も高度なアプローチです。

    なぜ今オムニチャネルが重要視されるのか?

    近年、オムニチャネル戦略の導入が急速に進んでいる背景には、テクノロジーの進化と顧客行動の変化があります。特にスマートフォンやSNSの普及は、消費者の購買プロセスや企業との接点の在り方を根本から変えました。
    かつては「実店舗=商品を買う場所」だったのに対し、現在では実店舗・ECサイト・アプリ・SNSが相互に連携し、購買体験を形成する複合的な接点(タッチポイント)となっています
    企業はこうした変化に対応し、すべてのチャネルで一貫性のある顧客体験を提供することが求められているのです。

    スマートフォンとSNSの普及が購買行動を変えた

    消費者は今、いつでもどこでもスマートフォンを使って情報収集やショッピングができる環境にいます。たとえば以下のような購買行動は、もはや日常的です。

    • 実店舗で商品を見ながら、スマホで価格やレビューを比較
    • SNSで見つけた商品リンクからECサイトへ遷移してそのまま購入
    • アプリで事前注文し、帰宅途中の店舗で受け取る

    このように、オンラインとオフラインの垣根が消失し、チャネルをまたいで行動するのが消費者にとって自然なスタイルとなりました。
    その結果、「チャネルごとにバラバラな体験」があると、ユーザーはストレスを感じ、すぐに離脱してしまいます。
    これを防ぎ、どの接点でも同じようにスムーズな体験を提供するために、オムニチャネルが必要なのです。

    顧客体験(CX)の向上が企業成長の鍵に

    現代の消費者は、購買に至るまでの過程で複数のチャネルを自由に行き来しながら、自分にとって最適な情報や手段を選択しています。
    ひとつの商品を購入する場合でも、次のような流れが一般的です。

    • SNS広告で見かけた商品に興味を持つ
    • ECサイトで詳細やレビューを確認する
    • 実店舗で試着・体験した上で購入する
    • 購入後はアプリを通じてサポートを受ける

    このように、顧客は企業の都合ではなく、自分にとって便利な接点を主体的に選びながら購買行動を進めているのです。
    だからこそ、チャネルごとにバラつきのある体験ではなく、すべての接点で一貫性が保たれたスムーズな体験(=良質なCX)を提供することが、企業にとって欠かせない取り組みとなっています。

    市場の成熟と価格競争の限界

    日本国内の多くの業界では、市場が成熟しきっており、価格やスペックだけでは差別化が困難になっています。
    その中で企業が生き残るには、価格ではなく「体験価値(顧客にとっての便利さ・気持ちよさ・感動)」で選ばれることが重要です。
    オムニチャネル戦略は、この体験価値を最大化するための強力な手段となります。

    オムニチャネル導入によって得られる4つのメリット

    オムニチャネル戦略を導入することで、企業は単に「顧客接点を増やす」だけではなく、ビジネス全体のパフォーマンスを底上げするような本質的な効果を得ることができます。
    ここでは、特に注目すべき4つのメリットを取り上げ、企業にもたらす具体的な成果を明らかにします。

    一貫したサービス提供で顧客満足度が向上する

    オムニチャネルでは、実店舗、ECサイト、アプリ、コールセンターなど、あらゆるチャネルで顧客情報を統合し、どの接点でも変わらないサービスを提供できる環境が整います。この一貫性こそが、顧客に安心感と信頼を与える要素となります。
    たとえば、以下のようなケースでは、チャネルを跨いでも「一つの企業として対応されている」という体験が実現され、満足度の向上につながります。

    • 店舗での接客内容がECサイトのマイページに連携されている
    • オンラインチャットでのやり取りが、後日の来店時にスタッフ間で共有されている
    • 購入履歴や問い合わせ履歴を元に、アプリやメールで適切なフォローアップが届く

    こうした体験により、顧客は企業とのつながりを深く実感し、「次もここで購入したい」という感情が生まれやすくなります。
    顧客ロイヤルティや継続利用率の向上にも直結する、戦略的な顧客接点の最適化と言えるでしょう。

    販売機会の損失を防ぎ、売上の最大化が図れる

    従来のマルチチャネル型運用では、チャネルごとの在庫や注文情報が分断されているため、「店舗に在庫がないから販売機会を逃す」「ECでは品切れでも実店舗に在庫があるのに通知できない」といった機会損失が頻発していました。
    オムニチャネルでは、これらの課題を解消する在庫・注文データの連携が可能です。
    顧客の購買意欲を無駄にせず、あらゆるチャネルを通じて販売機会を最大限に活かせるようになります。
    具体的には、以下のような対応が可能になります。

    • 店舗で在庫がない商品でも、ECサイトや別店舗の在庫をその場で確認し、配送や取り寄せを提案できる
    • ECサイトで入荷待ちの商品が、近隣店舗に在庫がある場合は、受け取り予約や案内通知ができる
    • 購入を検討している商品が再入荷した際、アプリやメールで即時に通知を送信できる

    このような仕組みによって、本来失われていた購買チャンスを確実に収益へと変換できる体制が整い、売上の最大化が実現します。

    顧客データを統合し、マーケティング分析に活用できる

    オムニチャネルでは、これまでチャネルごとに分散していた顧客の行動履歴や属性情報を、一元的に統合して分析することが可能になります。
    これにより、一人ひとりの顧客に合わせたパーソナライズ施策を実行しやすくなるという大きな利点があります。
    たとえば、以下のようなデータ活用が実現可能です。

    • 実店舗での購買履歴と、ECサイトでの閲覧履歴を組み合わせて、個別のレコメンドを最適化
    • アプリの利用頻度や行動データに基づいて、開封率の高い時間帯に合わせた通知を送信
    • 問い合わせ履歴や過去の対応状況を参照しながら、サポート部門が最適なコミュニケーションを提供

    これらの取り組みは、顧客との関係性を深化させ、LTV(顧客生涯価値)を高めるマーケティング基盤として極めて有効です。
    単なるメルマガ配信や一斉割引では届かない個への最適提案が、オムニチャネル戦略のもたらす大きな強みです。

    統一された体験がブランド価値を高め、競合との差別化に直結する

    価格や商品スペックではなく、「どんな体験ができるか」で選ばれる時代において、顧客が接するすべてのチャネルで統一感のある体験を提供できることは、それ自体がブランド価値の源泉となります。
    オムニチャネルによって、以下のような一貫した企業姿勢が伝わるようになります。

    • どのチャネルでも変わらぬ接客品質や対応スピードが担保されている
    • 顧客の属性や購入状況に応じた提案が、どの窓口からでも受けられる
    • 問い合わせやクレームへの対応履歴が共有され、適切なフォローがされている

    このような「ブランドとしての体験の統一性」は、顧客からの信頼を獲得し、継続的な利用や口コミの促進にもつながります。
    さらに、これらの取り組みは価格競争に陥らず、価値で選ばれる企業への転換を後押しします。
    他社との差別化を図るために、顧客体験の質に注力することは、これからの時代において不可欠です。

    このように、オムニチャネルは売上アップの手段だけではなく、企業文化やブランドの在り方にも直結する戦略的な投資です。
    導入によって得られるメリットは、短期的な成果だけにとどまらず、中長期的な成長にも貢献します。

    オムニチャネル導入前に知っておきたい3つのデメリットと注意点

    オムニチャネルは顧客体験を向上させ、企業の成長を支える有力な戦略ですが、導入には一定のコスト・手間・組織的変革が求められます。
    これらを軽視すると、期待した成果が得られず、途中で頓挫するリスクも伴います。
    ここでは、導入前に知っておくべき3つの主なデメリットと、それに対応する注意点について解説します。

    システム導入や改修に初期コストがかかる

    オムニチャネル戦略を実現するためには、顧客データや在庫情報を一元管理する基幹システムやCRM、MAツールなどのシステム構築・連携が不可欠です。
    既存システムとの統合や再構築には、初期投資として相応のコストが発生します。
    加えて、次のような要素もコストに含まれます。

    • CDP(顧客データ基盤)や在庫管理システムの導入・カスタマイズ費用
    • システム改修やデータ移行にかかるエンジニアリソース
    • セキュリティ対策やプライバシー保護の強化に伴う設備投資
    • 社内研修・教育コンテンツの開発コスト

    こうした費用は、企業規模や業種によって数百万円〜数千万円規模にのぼることもあります。
    ROI(投資対効果)を明確にシミュレーションし、中長期視点での投資判断を行うことが重要です。

    組織間の連携が求められるため、調整コストが発生する

    オムニチャネル戦略は、単独の部署では完結しません。実店舗、EC、マーケティング、顧客サポート、物流など、複数の部門を横断して運用する必要があります。
    しかし、従来の組織構造では各部門が独立して動いており、以下のような連携障壁が生まれやすい状況があります。

    • 部門ごとに異なるKPIや評価制度が設定されているため、協力体制が取りづらい
    • 顧客情報や在庫データの扱いに対して、認識や優先度がバラバラ
    • 責任範囲の不明確さから、トラブル時の対応が属人化する

    こうした問題を回避するには、全社共通の目的を設定し、経営層がリーダーシップを持って組織横断的な体制づくりを推進することが不可欠です。
    情報共有の仕組みや、部門間での定期的なコミュニケーションの場を設けることも有効です。

    現場の業務オペレーションを大幅に見直す必要がある

    システム面や組織連携だけでなく、現場レベルの業務プロセスも大きく変化します。
    特に実店舗やカスタマーサポート部門では、従来の業務に加えて、新たな対応が求められることになります。
    たとえば、店舗スタッフには以下のような業務変化が起こります。

    • ECサイトの在庫状況をその場で確認し、顧客に案内する
    • アプリで取り置きされた商品の準備や受け渡し対応を行う
    • 顧客情報や過去の問い合わせ内容をもとに、パーソナライズされた接客を提供する

    一方で、カスタマーサポート担当者にも、下記のような新たなスキル・知識が求められます。

    • チャネルをまたいだ問い合わせ履歴を即時に把握し、対応を引き継ぐ
    • オンライン注文の配送状況や店舗受け取りのステータスまでカバーする

    これらの対応には、マニュアルの再整備、社内研修、オペレーション変更などが不可欠です。
    現場を巻き込み、段階的かつ計画的に移行を進めることが、スムーズな定着のカギとなります。

    このように、オムニチャネル導入には多面的なハードルが存在しますが、あらかじめ課題を認識し、経営・現場・IT部門が連携して準備を進めることで、リスクを最小限に抑えつつ確実に導入を進めることが可能です。

    【業界別】オムニチャネルの成功事例

    オムニチャネル施策は多くの企業がすでに導入しており、実際に売上や顧客満足度の向上といった成果につながっていることが明らかになっています。
    ここでは、実際に取り組みを進めている国内企業の事例を、業種別に紹介します。

    アパレル|在庫連携と柔軟な受け取り・返品導線でCXを強化

    ユニクロは、ECと実店舗を連携させたオムニチャネル戦略に早期から注力しています。顧客がオンラインで在庫確認を行い、最寄りの店舗で受け取る「クリック&コレクト」が可能な仕組みを構築。
    さらに、購入後の商品はオンライン・店舗問わず柔軟に返品・交換ができるなど、チャネルを超えた対応が標準化されています。
    このような設計により、顧客は買いやすさだけでなく安心感も享受でき、店舗・ECのどちらからでも同じサービス品質を受けられる環境が整っています。
    加えて、商品在庫の可視化・統合によって、販売機会の損失を減らし、在庫回転率の向上にも貢献しています。

    出典:
    ユニクロ クリック&コレクトについて|株式会社ファーストリテイリング
    ユニクロのオムニチャネル戦略を解剖!顧客体験向上と売上アップの秘訣|株式会社SHIROホールディングス

    生活雑貨|アプリを中心に、店舗とデジタル接点を融合

    無印良品(良品計画)は、アプリ「MUJI passport」を通じて、顧客とのオンライン・オフラインの接点を統合しています。
    来店チェックイン、商品購入、レビュー投稿などすべての顧客行動に対して「MUJIマイル」を付与する仕組みを導入し、リアル店舗とデジタル行動の両方を可視化。
    これにより、行動データをもとにパーソナライズされた提案や販促が可能になっています。
    また、同社は店舗スタッフがデジタル上の顧客履歴を活用できる環境を整備し、「あなただけのおすすめ提案」を実店舗でも実現
    オムニチャネルの枠を超えた「OMO(Online Merges with Offline)」への進化を遂げています。

    出典:
    MUJI passport アプリ|株式会社良品計画
    無印良品OMO推進者の事例に学ぶ|株式会社サーキュレーション
    4期連続最高益の「無印良品」、オムニチャネルの先駆者が気にかける“顧客からの見られ方”|ウイングアーク1st株式会社

    コスメ・化粧品|ECサイトを中心にOMO戦略を推進

    資生堂は、自社ECサイト「ワタシプラス」および会員統合システム「Beauty Key」を中核としたOMO(Online Merges with Offline)戦略を積極的に展開しています。
    これにより、顧客はオンライン・実店舗・アプリといった複数のチャネルを、ひとつの会員IDでシームレスに利用が可能になり、肌診断や美容相談、購入履歴などの個人データは一元化され、各チャネルでの体験に活用されます。
    また、オンライン上で受けた美容カウンセリングをもとに、実店舗で商品を購入したり、アプリ経由でおすすめ商品を提案されたりといったチャネル横断の顧客体験を実現。
    バーチャルメイクやAIによるレコメンド機能なども積極的に導入されており、デジタルとリアルの融合が顧客満足度と売上の双方を押し上げています。
    さらに、社内には複数部門を横断するDX体制を整備し、UI/UXとマーケティング、顧客対応部門が連携することで、デジタル接点の最適化を継続的に推進しています。

    出典:
    Beauty Key|株式会社資生堂
    資生堂に学ぶ7つの次世代ECマーケティング戦略|forUSERS株式会社
    EC化率35%をめざす資生堂のDX&EC戦略と「ワタシプラス」改善事例|株式会社インプレス

    家具|アプリと店舗を融合した体験設計で、購買のハードルを下げる

    ニトリは、公式アプリを中核に据えたOMO戦略を展開し、オンラインと実店舗の垣根を感じさせないスムーズな購買体験の構築に取り組んでいます。
    実店舗では、アプリを通じて商品のバーコードを読み取ることで、ECページで詳細情報や在庫状況を確認できる仕組みを提供。
    店頭で商品を見つけた後、そのままECで購入・配送手配を行うこともでき、実店舗をショールーム化しながらオンライン購入へと自然に誘導しています。
    また、アプリはデジタル会員証としても機能しており、オンラインとオフラインの購買履歴やポイントを一元管理。
    店舗スタッフによる案内やサポートにもスムーズに活用されており、接客・購買・会員管理がチャネルをまたいで統合された環境を実現しています。
    さらに、ニトリはパーソナライズ配信を強化するために「Repro App」を導入し、2200万人を超えるアプリ会員に対して、行動データに基づいた情報提供やプッシュ通知によるタイムリーな販促を行っています。
    こうした取り組みにより、「店舗で見て、オンラインで買う」という現代的な購買スタイルに適応した体験設計を実現しています。

    出典:
    ニトリ公式アプリ|株式会社ニトリホールディングス
    購入体験の向上を実現する「ニトリ」のマーケティング7施策|forUSERS株式会社
    ニトリ、公式アプリに「Repro App」導入でオムニチャネル強化|株式会社イード

    オムニチャネルを実現するための主なソリューションとツール

    オムニチャネル戦略を実行に移すためには、単なる組織間の連携やチャネル追加だけでは不十分です。
    顧客データ、在庫、購買履歴など、膨大な情報をリアルタイムで統合・活用するためのシステム基盤(ソリューション)が不可欠となります。

    ここでは、オムニチャネル戦略を支える主要なソリューションの種類と役割を紹介します。

    CDP(カスタマーデータプラットフォーム)|顧客理解の土台をつくる基盤

    CDPは、顧客データを収集・統合し、マーケティングや接客に活用できる形に整えるためのシステムです。
    ECサイトの閲覧履歴、店舗での購入履歴、アプリの利用状況、問い合わせ内容など、チャネルをまたいだ顧客行動を統合して「ひとつのID」で管理します。
    たとえば、ECで商品をカートに入れたが購入に至らなかった顧客が、翌日実店舗を訪れたとき、その情報をもとに店舗スタッフが的確な提案を行えるという、データドリブンな接客を支えるのがCDPです。
    顧客ごとの興味関心や購買傾向を深く把握できるようになるため、パーソナライズ施策やセグメント別施策の精度を大きく高める効果があります。

    CDPについては、以下の記事でも詳しく解説しています。
    CDPマーケティングとは?4つの役割とおすすめのツール3選をご紹介|ecforce blog

    CRM(顧客関係管理システム)|リピートやロイヤルティ強化に不可欠な運用ツール

    CRMは、主に既存顧客との関係性を構築・維持するためのシステムです。
    顧客情報の管理をはじめとして、メール配信、ポイント管理、問い合わせ対応履歴の蓄積など、中長期的な関係づくりを支援します。
    オムニチャネルの文脈においては、CRMを活用することで、チャネルごとに分断されがちな顧客対応を統一し、ブランドとしての一貫性を維持することができます。
    さらに、ロイヤルカスタマーの育成や休眠顧客の掘り起こしといった施策もCRM上で管理できるため、LTV向上や継続率改善にも直結します。

    CRMについては、以下の記事でも詳しく解説しています。
    【保存版】CRMで売上・LTVを最大化!EC事業者向け活用ガイド&導入ツール比較|ecforce blog

    MA(マーケティングオートメーション)|最適なタイミング・内容でアプローチ

    MAは、顧客の行動データに基づいて、適切なタイミングで適切なチャネルから、適切なコンテンツを自動配信する仕組みを構築するツールです。
    たとえば、「初回来店から7日以内に再訪がないユーザーにリマインドクーポンを配信する」「誕生日月に店舗限定キャンペーンを通知する」など、ルール設計に基づいて継続的なコミュニケーションを自動化できます。
    オムニチャネルでは、複数チャネルから得た情報を活用しながら、クロスチャネルでシナリオを設計・運用することが求められるため、MAの導入によってマーケティングの工数を削減しつつ、CXを高めることが可能になります。

    MAについては、以下の記事でも詳しく解説しています。
    ECにMAツールはなぜ必要?導入メリット・活用事例・選び方まで徹底解説|ecforce blog

    OMS・WMS(在庫・注文管理システム)|販売機会を逃さない裏側の連携基盤

    OMS(Order Management System)やWMS(Warehouse Management System)は、顧客が商品を「いつ・どこで・どのように受け取るか」を柔軟に設計するうえで不可欠なシステムです。
    たとえば、「ECサイトで在庫切れだった商品を近隣店舗から取り寄せて受け取る」「店舗で欠品している商品を、ECから自宅に配送する」など、チャネルを横断した在庫連携や配送手配をリアルタイムに行うには、こうした基盤が欠かせません。
    また、在庫状況や納期の可視化によって、顧客満足度を高めながら、販売機会の最大化と返品率の低減にもつながる効果が期待されます。

    WMSについては、以下の記事でも詳しく解説しています。
    WMS(倉庫管理システム)とは?EC物流の在庫管理を効率化する選び方と導入メリット|ecforce blog

    統合型コマースプラットフォーム|中堅・中小企業でも導入しやすい選択肢

    近年では、ECサイト・POS・CRM・在庫管理などをパッケージ化したクラウド型のコマースプラットフォームが登場しており、初期投資を抑えながらオムニチャネル戦略に取り組む中堅・中小企業の導入も進んでいます。
    たとえば、BASEやShopify Plus、ecforceなどのサービスでは、チャネル統合・在庫管理・顧客対応・売上分析といった機能を一体化して提供しており、スモールスタートからのスケール拡張が可能です。
    「社内にIT人材がいない」「システム構築に不安がある」といった企業にとっても、導入しやすいソリューションの選択肢が広がっています。

    オムニチャネルは「戦略」であり、「仕組み」であり、「技術の連携」でもあります。
    目的に応じたソリューションを選定し、自社のフェーズや課題に合わせて段階的に導入・統合していくことが、長期的な成功の鍵を握ります。

    オムニチャネル戦略を成功させるための導入ステップ

    オムニチャネル戦略は、単にチャネルを統合するだけでは成功しません。
    「なぜ導入するのか」「どのように連携させるのか」といった目的の明確化と、全社を巻き込んだ段階的な実行プロセスが必要です。
    ここでは、戦略設計からシステム選定、組織構築、運用改善に至るまで、オムニチャネルを実現するための基本ステップを5つに分けて解説します。

    ステップ1|目的と課題を明確にする

    導入を検討する際、最初に必要なのは「なぜオムニチャネル化したいのか?」という目的の整理です。
    目的が曖昧なまま施策を進めると、チャネルを連携させること自体がゴールになり、本来得たい効果(売上・顧客満足度・LTV向上など)を見失いがちです。
    あわせて、現在のチャネル運用における課題を棚卸しし、たとえば以下のようなポイントを洗い出すことが推奨されます。

    • 実店舗とECの在庫が連携されておらず、販売機会を逃している
    • 顧客情報がチャネルごとに分断され、一貫した接客ができない
    • 来店顧客の行動データが取得・活用できていない

    このプロセスを経て、「課題を解決するためにオムニチャネルに取り組む」と全社で共通認識を持つことが、導入成功の第一歩です。

    ステップ2|顧客の行動シナリオ(カスタマージャーニー)を設計する

    顧客が商品やサービスに出会い、購入・利用に至るまでの一連の行動を時系列で可視化したものが「カスタマージャーニー」です。
    オムニチャネルにおいては、このジャーニーがチャネル横断的に設計されているかどうかが肝となります。
    たとえば、以下のようなシナリオを具体的に描き出します。

    • SNS広告で商品を認知 → ECサイトで商品詳細を閲覧 → 実店舗で試して購入 → アプリでサポートを受ける
    • ECサイトで買い物かごに入れた商品 → 店舗で実物を確認 → アプリから購入 → メールでレビュー依頼が届く

    この設計により、どのチャネルでどんな役割を担わせるのか、チャネル間のスムーズな連携ポイントを洗い出すことができます。

    ステップ3|必要なシステム・ツールを選定する

    カスタマージャーニーが描けたら、その流れを支えるためのテクノロジー基盤を選定します。
    この段階では、前セクションで紹介したCDP/CRM/MA/OMSなどを、自社のリソースや目的に応じて取捨選択することが重要です。
    導入時には以下の観点を押さえましょう。

    • 既存の業務フロー・基幹システムとの連携性
    • 将来的なチャネル追加や拡張に対応できる柔軟性
    • IT部門・現場のオペレーションに過度な負荷がかからないか

    「機能が多い=優れている」ではなく、自社のフェーズや優先課題にフィットした使えるソリューションを選ぶ視点が欠かせません。

    ステップ4|部門横断の連携体制を構築する

    オムニチャネル施策は、営業、マーケティング、EC、店舗、物流、カスタマーサポートなど、複数部門の協働なくして成立しません。
    そのため、早い段階で以下のような部門横断型の推進体制を整えることが求められます。

    • オムニチャネル推進プロジェクトを立ち上げ、専任リーダーを配置
    • 各部門から代表者を選出し、定例的な情報共有・進捗確認を実施
    • 目標や評価指標(KPI)を全社共通で定義し、縦割りの弊害を排除

    こうした連携体制があることで、チャネルや部門ごとの温度差・利害対立を減らし、施策の継続性と実行力を担保できます。

    ステップ5|効果測定と改善を繰り返す

    オムニチャネル戦略は一度導入して終わりではなく、継続的にPDCAを回していく運用プロセスが不可欠です。
    事前に設定したKPI(例:オムニチャネル経由の売上割合、EC→店舗送客数、アプリ経由CVRなど)を定期的に測定・分析し、以下のような改善アクションに反映させていきます。

    • ジャーニー上で離脱が多い接点の改善
    • データ活用不足によるセグメント設計の見直し
    • 店舗オペレーションやスタッフ教育のアップデート

    成功企業の多くは、初期は一部チャネルや地域に絞って導入し、効果を見ながら順次拡大するスモールスタート型で進めています。
    焦らず、確実に整備・改善していくことが、最終的な成功につながります。

    このように、オムニチャネルの導入には「戦略・設計・システム・組織・運用」の5段階を順を追って整えるアプローチが求められます。
    表面的なツール導入だけではなく、顧客体験を軸にした全社的な変革が必要不可欠です。

    まとめ

    オムニチャネルとは、実店舗・ECサイト・アプリ・SNS・コールセンターといったあらゆる顧客接点を連携・統合し、どのチャネルでも一貫した体験を提供するマーケティング戦略です。
    顧客の購買行動が複雑化・多様化する中、企業が提供する「体験の質」が、売上やブランドロイヤルティを大きく左右する時代になっています。
    こうした背景から、オムニチャネルは一部の先進企業だけの施策ではなく、業種・規模を問わず必要とされる戦略へと進化しています。

    本記事で紹介したとおり、オムニチャネル戦略には多くのメリットがある一方で、導入にはシステム投資や組織連携、オペレーション整備といった複合的な取り組みが求められます。
    成功の鍵を握るのは、顧客視点に立った全体設計と段階的な導入・改善です。
    これからオムニチャネルに取り組む企業は、自社の課題を明確にし、スモールスタートでも良いので顧客体験を中心に据えた仕組みづくりから始めることが重要です。
    テクノロジーと組織をうまくかけ合わせ、真に選ばれるブランドへと進化していきましょう。

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