目次
※この記事は 時点の情報をもとに執筆しています。
ECサイトのパーソナライズとは、顧客の属性や購買履歴、閲覧履歴などのデータを活用し、一人ひとりに合った商品や情報、体験を提供する取り組みです。
商品レコメンドだけでなく、サイト内の表示やメール、Web接客などにも活用できます。
本記事では、ECサイトでパーソナライズが重要な理由やメリット、具体的な施策、導入・運用のポイントを解説します。
ECサイトのパーソナライズとは

ECサイトのパーソナライズとは、顧客ごとに異なる属性や行動データをもとに、サイト上で表示する商品やコンテンツ、メールなどのコミュニケーションを出し分ける取り組みで、「パーソナライゼーション」と呼ばれることもあります。
例えば、過去に見た商品に近いアイテムをトップページに表示したり、購入履歴をもとに関連商品をメールで案内したりする方法があります。ECサイト上だけでなく、メールや広告、アプリなど複数の顧客接点で活用できます。
実店舗で顧客の好みに合わせて商品を提案するような接客を、データを活用してデジタル上で実現する考え方と捉えるとわかりやすいでしょう。
レコメンド・カスタマイズ・セグメントとの違い
レコメンドは、顧客の行動や購買履歴などをもとに、おすすめの商品やコンテンツを提示する方法で、パーソナライズを実現する代表的な施策の一つです。
カスタマイズは、ユーザー自身が設定や表示内容などを好みに合わせて変更することを指します。企業側がデータをもとに表示や提案を最適化するパーソナライズとは、最適化する主体が異なります。
また、「20代女性」「リピーター」など一定の条件で顧客を分けるセグメントマーケティングは、グループ単位での最適化が中心です。パーソナライズでは、行動や嗜好などを加味し、より一人ひとりに合った体験を提供します。
セグメントの切り方や代表的な分析手法は、「ECの顧客セグメントとは?売上・LTVを最大化する分類手法と実践施策」で解説しています。
ECでパーソナライズが重要な理由

ECでパーソナライズが注目される背景には、顧客ニーズの多様化や情報量の増加、データ活用技術の進歩があります。
顧客のニーズや価値観が多様化している
顧客が商品を選ぶ基準や価値観はさまざまです。同じ年代や性別でも、好みのブランド、価格帯、購入頻度、直近で興味を持っている商品は異なります。
そのため、すべての顧客に同じ商品や情報を見せるだけでは、一人ひとりのニーズに十分応えられない場合があります。閲覧や購買などのデータを利用して提案内容を変えることで、顧客の関心に近い情報を届けやすくなります。
より良い顧客体験が求められている
商品や情報の選択肢が増えるなか、顧客が自分に必要な情報へ短時間でたどり着ける体験が求められています。パーソナライズは、単に販売機会を増やすためだけの仕組みではありません。「自分に必要な情報を見つけやすい」「目的の商品にたどり着きやすい」と感じられる環境を整え、ECサイトの利便性を高める役割もあります。
AIやデータ活用技術が進化している
ECでは、購買履歴だけでなく、閲覧ページやクリック、検索、カート追加など、さまざまな行動データを取得・分析できます。さらに、AIやデータ分析技術の進化により、大量のデータをもとに顧客ごとの興味や行動傾向を捉え、商品やコンテンツを出し分けることも可能になっています。
こうした技術の発展によって、ECでも一人ひとりに合わせた情報提供を実施しやすくなりました。ただし、AIの導入自体を目的にするのではなく、どのような顧客体験を実現したいのかを明確にしたうえで、必要な仕組みを選ぶことが重要です。
ECサイトをパーソナライズするメリット

ECのパーソナライズは、顧客に合った情報を届けやすくするだけでなく、CVRや顧客単価、リピート率などの改善にも活用できます。パーソナライズの主なメリットを見ていきましょう。
CVRや顧客単価の向上につながる
顧客の興味に近い商品を見つけやすくすることで、購入を後押しし、CVRの向上につながることが期待できます。
また、購入を検討している商品と相性のよい関連商品を提示するクロスセルや、より上位の商品を提案するアップセルにも活用できます。顧客のニーズに合った提案ができれば、自然な形で関連商品の購入や上位商品の検討を促し、顧客単価の向上につなげられます。
顧客体験・顧客満足度を高められる
顧客に関係の薄い情報を減らし、興味のある商品やコンテンツを見つけやすくできる点もパーソナライズのメリットです。商品を探す手間が減れば、サイト内を迷わず閲覧しやすくなります。こうした利便性の向上は、顧客満足度を高めることにもつながるでしょう。
顧客の潜在ニーズにアプローチできる
パーソナライズでは、閲覧履歴や購買履歴などのデータをもとに、顧客がまだ自分で探していない商品を提案できます。関連商品や好みに近い商品を提示することで、顧客自身がまだ意識していなかった商品への関心を高め、新たな商品との出会いや購入のきっかけにつなげられる可能性があります。
マーケティングを効率化できる
すべての顧客に同じメールや商品情報を届けるのではなく、興味や行動に応じて内容を変えられるのもパーソナライズの利点です。
例えば、MAやレコメンドツールなどを利用すれば、条件に応じたメール配信や商品提案を自動化できる場合があります。担当者が一人ひとりに手作業で対応する負担を減らし、施策運用の効率化につなげられます。
ECにおけるMAの活用方法や導入メリットについては、「ECにMAツールはなぜ必要?導入メリット・活用事例・選び方まで徹底解説」で詳しく解説しています。
ECサイトでできるパーソナライズ施策5選

ECのパーソナライズは、サイト内から購入後のコミュニケーションまで、さまざまな部分で活用できます。
1.商品をレコメンドする
パーソナライズの代表的な施策が商品レコメンドです。閲覧履歴や購買履歴、カートの内容などをもとに、顧客が興味を持ちそうな商品を表示します。
例えば、閲覧商品と似たアイテム、購入商品と一緒に使える関連商品、過去に購入した消耗品などを提示する方法があります。商品詳細ページやカート画面など、顧客の購買行動に合った場所で提案することが重要です。
2.サイト内のコンテンツや検索結果を最適化する
顧客によってトップページの商品やバナー、特集コンテンツなどを出し分ける方法もあります。初回訪問者には人気商品を、リピーターには過去の閲覧履歴に近い商品を表示するといった使い分けが考えられます。検索結果や商品一覧の表示順を顧客の嗜好に合わせて調整すれば、目的の商品を見つけやすくすることもできます。
3.メール・LINE・プッシュ通知を出し分ける
顧客がECサイトを離れた後のコミュニケーションにもパーソナライズを活用できます。
例えば、閲覧した商品の再入荷通知や値下げ情報、購入履歴をもとにした関連商品、購入サイクルに合わせた再購入の案内などです。全員へ同じ内容を送るのではなく、顧客の行動や状況に応じて配信内容やタイミングを変えることで、より関心の高い情報を届けやすくなります。
4.カゴ落ち通知やクーポン配信を最適化する
商品をカートに入れたまま購入せずに離脱した顧客に、リマインドメールや通知を送る方法もあります。
また、訪問回数や購入状況などに応じてクーポンやオファーを出し分けることも可能です。すべての顧客へ一律に割引を提示するのではなく、顧客の行動や購買状況に応じて配信のタイミングを調整することで、購入を後押しできます。
5.AIチャットボットなどで接客を最適化する
AIチャットボットなどを活用し、会話を通じて顧客の希望を聞きながら商品を案内する方法もあります。
例えば、用途や予算、好みについて質問し、その回答に合った商品を提示することで、実店舗の接客に近い商品選びを支援できます。購買履歴などの顧客データと連携できる仕組みであれば、過去の利用状況を踏まえた提案も可能です。
ECサイトのパーソナライズに活用するデータ

ECサイトのパーソナライズでは、顧客の興味や行動を把握するために、複数のデータを組み合わせて活用します。主に使われるのは、次のようなデータです。
- 購買データ:購入した商品、購入頻度、購入金額、購入時期など
- 行動データ:閲覧ページ、検索履歴、クリック、カート追加、お気に入り登録など
- 属性データ:年齢、性別、居住地域、会員情報など
- コミュニケーションデータ:メールの開封・クリック、LINEやプッシュ通知への反応など
例えば、購買データから関連商品や再購入商品を提案したり、行動データをもとに関心の高い商品を表示したりできます。複数のデータを組み合わせれば、より顧客の状況に合った提案につなげやすくなります。
重要なのは、集められるデータをすべて利用するのではなく、パーソナライズの目的に応じて必要な情報を整理することです。顧客情報が複数のシステムに分散している場合は、必要に応じてデータを統合し、施策に活用しやすい環境を整えましょう。
行動データからは読み取りにくい顧客本人の好みや購入意向を集める方法は、「ゼロパーティデータとは?ECでの収集方法・活用方法をわかりやすく解説」をご覧ください。
また、顧客データの種類ごとの分析の進め方や施策への落とし込み方は、「ECの顧客データ活用とは?分析の進め方や活用施策、成功のポイントも解説」で詳しく解説しています。
ECサイトにおけるパーソナライズの活用事例

ECのパーソナライズは、商品レコメンドや情報配信だけでなく、診断結果をもとに商品そのものを提案したり、顧客に合ったサービス体験を設計したりする形でも活用されています。ここでは、ecforceを導入してパーソナライズを実践している企業の事例を紹介します。
Sparty|髪質や悩みに合わせて商品を提案する「MEDULLA」
株式会社Spartyが展開する「MEDULLA(メデュラ)」は、一人ひとりの髪質や悩みに合わせて商品を提案するパーソナライズヘアケアブランドです。オンライン上で髪質診断を行うほか、専門カウンセラーによるヒアリングやフィードバックを通じて、顧客に合ったシャンプーやトリートメントなどを提供しています。
同社ではもともと、質問への回答をもとに顧客に合う商品を届ける仕組みを独自開発していました。しかし、スクラッチ開発では小さな改修にもエンジニアの対応が必要となり、施策の実行に時間がかかることが課題でした。
そこで基幹システムをecforceへ移行した結果、アップセルやオファー改善などの施策を実行するスピードが体感で約5倍に向上しています。マーケティング担当者が自ら設定できる範囲も広がり、施策の試行回数を増やせる運用体制につながりました。
パーソナライズでは、顧客に合った提案の仕組みをつくるだけでなく、顧客の反応やニーズに合わせて施策を継続的に見直せる運用環境を整えることも重要です。
Spartyの取り組みについては、「ecforceへの移行で施策の実行スピードが5倍に向上。パーソナライズヘアケアブランド『MEDULLA』を展開するSpartyが得た、メーカーとしての基礎体力と強い運用体制」でも紹介しています。
YOUR MEAL|診断結果をもとに一人ひとりに合った食事を提供
株式会社YOUR MEALが展開する「YOUR MEAL」は、栄養バランスのとれたメニューを、一人ひとりの目的や好みに合わせてカスタマイズして届けるサービスです。ユーザーの診断結果をもとに、それぞれに合った食事を提供しています。
同社ではYOUR MEALの立ち上げにあたり、パーソナライズ診断と定期購入を組み合わせた仕組みの実現を検討していました。自社開発では今後の事業規模に対してスピードや対応力が不足する懸念がある一方、当時は必要な機能を実現できるASPも限られていたといいます。
そこで、一人ひとりに合った商品やサービスを提案する「ecforce profile」が事業に合うと判断し、ecforceを導入しました。診断を通じて得た情報を商品・サービスの提案につなげることで、EC上でも顧客ごとに異なるニーズに応じた体験を実現しています。
株式会社YOUR MEALのパーソナライズやサービス改善の取り組みについては、「カスタマーサポートの工数52.2%削減&解約改善率7.5%。ユーザーと共にサービス進化をする『Muscle Deli』がecforceを使う理由。」もあわせてご覧ください。
ECサイトをパーソナライズする際の注意点

パーソナライズの精度を高めることだけを追求すると、かえって顧客体験を損なう場合があります。情報の偏りとプライバシーの両面に配慮して運用しましょう。
おすすめする情報が偏らないようにする
過去の閲覧・購買履歴だけをもとに提案を続けると、似た商品ばかり表示され、顧客が新しい商品を知る機会を狭める可能性があります。また、以前興味を持っていた商品が、現在も必要とは限りません。
ECサイトをパーソナライズする際は、過去のデータだけに依存せず、直近の行動や季節、トレンドなども踏まえて内容を見直すことが重要です。ときには新しい商品やカテゴリーを提案し、顧客が新たな選択肢に出会える余地を残しましょう。
パーソナライズをやりすぎない
パーソナライズを細かく行いすぎると、かえって顧客に違和感や不快感を与える場合があります。例えば、閲覧した商品を何度も表示したり、本人が意識していない行動まで細かく反映したりすると、「行動を監視されている」と感じさせる可能性があります。
パーソナライズは、企業が保有するデータを示すためではなく、顧客の買い物を便利にするための施策です。精度だけを追求せず、顧客にとって自然で使いやすい体験になっているかを確認しながら、表示内容や配信頻度を調整しましょう。
個人情報の扱いに注意する
パーソナライズでは、購買履歴や閲覧履歴、会員情報など、顧客に関するさまざまなデータを活用します。そのため、どの情報を何の目的で取得・利用するのかを明確にし、個人情報保護法などに沿って適切に管理することが重要です。
また、Cookieなどの端末識別子や、それらを通じて収集した閲覧履歴などは、個人情報に該当しない場合でも、個人関連情報に該当することがあります。他の情報と容易に照合することで特定の個人を識別できる場合には、全体として個人情報に該当します。必要なデータを適切な範囲で取得・管理し、顧客のプライバシーに配慮して運用しましょう。
ECサイトのパーソナライズで顧客一人ひとりに合った体験を提供しよう

ECのパーソナライズは、顧客データを活用して、一人ひとりに合った商品・情報・体験を提供する取り組みです。商品レコメンドだけでなく、サイト表示や検索、メール、Web接客など幅広い場面で活用できます。
重要なのは、高度な仕組みを導入すること自体ではなく、自社の課題と目的を明確にすることです。まずは利用できるデータを整理し、必要な施策から始めましょう。施策の成果を確認しながら改善を重ねることで、顧客体験とECサイトの成果の両方を高めていくことができます。
※2:ecforce導入クライアント38社の1年間の平均データ / 集計期間 2021年7月と2022年7月の対比
※3:事業撤退を除いたデータ / 集計期間 2022年3月~2022年8月
