この記事でわかること
Allbirdsの日本初となる店舗が原宿にオープンしました。
一部のファンの間で秘かに話題になっていたD2Cブランドは、今や多くの人が知るメジャーな存在になりつつあります。
しかし、その実態を知る人はまだそう多くありません。
皆さんはAllbirdsにどんな印象を持っているでしょうか。
環境に優しい取り組みをするサスティナブルなブランド、そう思う人も多いでしょう。確かに企業努力は特筆すべきものがあります。
しかし注意深くAllbirdsを見ると、支持される理由はそれだけではありません。今回は5つのキーポイントから、Allbirdsに迫ってみることにしましょう。
参考:6つのD2C国内事例。ブランド成長のキーワードは「モノづくり×パーソナライズ」? / 5つのD2C海外事例。若い世代が求める究極にユニークな顧客体験とは?
B Corporationを認証されるサスティナブルな取り組み
Allbirdsはサスティナブルな取り組みを、以下のような形で実践しています。
・ユーカリの木から生成した素材でアッパーを作る
・環境への負荷が低いとされるサトウキビから生成した素材で、ソールを作る
・炭素排出量を抑えるため、インソールに石油ではなくヒマシ油を使用
・製造・販売の全工程でカーボンニュートラル(※)を達成
・靴箱は90%再生可能
・使用済みのソールはSoles4Soulsを通じて世界中で再活用
※排出されるCO2と吸収されるCO2が同量であるという概念。
一つずつ見てみると、難しいチャレンジを積み重ねながら、世界の環境をより良くしようとする姿勢が伺えます。
Allbirdsのデザイン性が高いことは、プロダクトを一目見ればわかります。さらに機能性が優れていることは、一度でも靴に足を入れればわかることです。
しかし、D2Cブランドはデザインや機能性が優れていても、それだけでは支持されません。
Allbirdsの創業者の1人、Joey Zwillinger(ジョーイ・ズウィリンガー)氏は、「より良い世界を作ろう」と口癖のように言う人だそうです。
「Everlaneを理解するための5つのポイント」を挙げた時も、サスティナブルかグリーンウォッシングかと問題提起しました。
実際にJoey Zwillinger氏の言葉が信頼できるのは、先に挙げた取り組みそれぞれが素晴らしいからではないでしょうか。
それを証明するかのように、Allbirdsは2016年にB Corporation(※)を認証されました。
出典:Allbirds, Inc. | Certified B Corporation
※ 参考:B Corporation(Bコーポレーション)とは・意味 (Sustainable Japan)
優れているのはプロダクト開発
D2Cブランドは慈善事業ではなく、モノを作るメーカーです。体験やストーリーが大事なことは再三お伝えしてきましたが、モノが良いことは前提の話です。
「サスティナブルな取り組み」は耳心地が良いものですが、そこだけが先走りしてもいけません。
Allbirdsが優れているのは、Joey Zwillinger氏のマテリアルサイエンスにおける知見を活かしたプロダクト開発にあります。
https://www.allbirds.com/pages/our-materials-wool
Allbirdsの履き心地は機能性に裏打ちされたデザインと、サスティナビリティを考慮した上で追求される素材の良さがあって、初めて実現するものです。
さらに特徴的なのは、Allbirdsは技術を自分たちだけのものにせず、ソフトウェアの世界ではよく知られるオープンソースで公開している点です。
まさにJoey Zwillinger氏の「より良い世界を作ろう」の思想がベースにある証拠です。氏は良い情報が正しく使われることで、世界をより良くすることを願っているのでしょう。
この点も含め、Allbirdsのプロダクト開発は秀逸であると言えます。
マイナーチェンジを繰り返すAllbirds
過去にAllbirdsで靴を買った方が、最近のプロダクトを手に取るとわかると思います。
実はAllbirdsの靴は決まった型で作られるわけではなく、靴にしてはめずらしくマイナーチェンジを繰り返しているのです。
インターネットビジネスに慣れている人にはピンとこないかもしれませんが、モノを作るビジネスにおいて、マイナーチェンジは口で言うほど簡単ではありません。
たった一つの小さな変更をするだけで、本来は膨大なコストと時間がかかります。
おそらくAllbirdsはプロダクトを永遠の未完成品と捉え、顧客のフィードバックを受けなが
ら改善を続ける環境を自ら作っているはずです。
素早くPDCAを回せる生産体制を構築することで、マイナーチェンジをしながらも、コストと時間を最小限に抑える努力をしているのでしょう。
後発ながらも「D2C」であるAllbirds
Allbirdsがここまで成長を続けている理由として、D2Cブランドとして後発だったことは見逃せない要因です。
Allbirdsの創業は2014年です。2010年に創業したBonobosやEverlaneと比べると、実に4年ほどの開きがあります。
後発というとネガティブな印象がありますが、正攻法が確立しないD2Cにおいてはそうとも限りません。Allbirdsは先を行くBonobosやEverlaneの背中を見ながら、D2Cの何たるかを少しずつ体現してきました。
以下はNewsPicksのインタビューに応えたJoey Zwillinger氏の言葉です。
── 一方でEコマースなら、アマゾンや楽天に載せるという選択肢もあるわけですね。
今までお伝えしてきたD2Cのメリットは、そうしたプラットフォームに頼ると、ほとんど失われてしまいます。
アマゾンや楽天のようなECのプラットフォームは、あらゆる製品のカタログみたいなものです。自分たちのブランドが、機能の一つみたいになってしまう。しかも、ストーリーテリングは失われ、製品にかけてきた「深み」も損なわれてしまう。
おそらくAmazonや楽天を使えば、Allbirdsの売上は倍増するするはずです。それでもJoey Zwillinger氏はプラットフォームに頼ることはしていません。
それはAllbirdsがあくまでD2Cである、という信念があるからではないでしょうか。
Amazonにも屈しないAllbirdsの信念
これはJoey Zwillinger氏がAmazonのJeffrey Bezos(ジェフ・ベゾス)氏に当てて書いた手紙のようなブログです。Allbirdsの信念はここでも垣間見えます。
Dear Mr. Bezos, − Joey Zwillinger(Medium)
事の発端はAmazonのプライベートブランドがAllbirdsにそっくりな靴を売っていたことにありました。
もともとAllbirdsはオープンソースで様々な情報を開示するブランドです。Allbirdsに対するリスペクトがあった上でインスパイアされたり、Hip Hopのようにサンプリングされたりする分には、手紙を書くまでに至らなかったのではないでしょうか。
しかしAmazonのプロダクトには、Allbirdsが大事にしているサスティナビリティの精神がありません。つまりAllbirdsへのリスペクトが無いと捉えられても仕方ないのです。
Joey Zwillinger氏は文末でこのように述べています。
Please steal our approach to sustainability.(どうか我々のサスティナビリティへのアプローチも盗んで欲しい。)
※意訳はサクボ編集部
まさにAllbirdsからAmazonへの強烈な皮肉です。
マテリアルサイエンスに裏打ちされた最高のプロダクトと共に、巨大企業にも屈せず自分たちの信念を貫くAllbirdsが、今後どのような展開を見せるのか。
これからも目が離せません。
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<参考記事>
【独白】僕らが「D2C」で成功した全軌跡(NewsPicks)
世界一快適なスニーカー「Allbirds」日本上陸、シリコンバレーも熱狂!(ダイヤモンド・オンライン)
Allbirdsがいま、日本市場に参入したワケ──オープン日の売上は過去1位を記録(Forbs)
プロダクトではなく「ライフスタイル」を売る:D2CブランドAllbirdsは、日本のリテールに変革をもたらすか(WIRED.jp)
※2:ecforce導入クライアント38社の1年間の平均データ / 集計期間 2021年7月と2022年7月の対比
※3:事業撤退を除いたデータ / 集計期間 2022年3月~2022年8月