この記事でわかること
D2C海外事例としても取り上げたBonobos(ボノボス)。
数あるD2Cブランドの中でも1,2 を争うほど、有名なアパレルブランドとして非常に学びが多いものがあります。
これからD2Cブランドを立ち上げようとする人にとって、Bonobosはすでに遥か彼方の先を行く存在かもしれません。しかし、その道程を知ることは多いに参考になるでしょう。
それでは5つのTIPSをご紹介しながら、Bonobosを紐解いていきましょう。(D2Cの国内外の事例は以下を参考にしてください。)
参考:6つのD2C国内事例。ブランド成長のキーワードは「モノづくり×パーソナライズ」? / 5つのD2C海外事例。若い世代が求める究極にユニークな顧客体験とは?
DNVB(Digital Native Vertical Brand)を掲げるAndy Dunn氏
D2Cブランドを理解する上で、創業者の考えは無視できません。
そのセオリーにのっとると、Bonobosを知るには創業者であるAndy Dunn(アンディー・ダン)氏の考えを知りたいところです。
Andy Dunn氏は自身のブログで、D2Cという一般化された言葉ではなくDNVB(Digital Native Vertical Brand)という言葉を使ってブランドを表現しています。
DNVBを簡単に説明すると、デジタルネイティブ向けに何らかのジャンルに特化して、プロダクトの企画から製造・販売までを垂直統合(Vertical )したブランドを意味しています。
「D2C(Direct to Consumer)」の場合、「顧客と直接コミュニケーションをとり、中間業者を介さず販売する」といった側面がフォーカスされがちな一方で、DNVBの方がより本質を言い表していると考えたり、双方は別のものだと考える人もいます。
なぜならDNVBを構成する要素のひとつ、「Vertical Brand」であることが、とても重要なことだからです。
以前、データドリブンで顧客の声を施策に反映することをD2C的なマーケティングと表現しました。これができるのも、「Vertical(垂直統合)」だからです。またブランディングに関しても、「Vertical(垂直統合)」だからこそ、作り込まれた世界観を提示することができます。
川上から川下までのサプライチェーンのうち、どこか一箇所でも他の業者に任せてしまったら、D2Cで求められる最高の顧客体験をつくることはできないでしょう。
同時にこの「Vertical(垂直統合)」という特徴は、Bonobosを理解する上で忘れてはならないキーワードだと言えます。
参考:「DNVB」ブランディング3つの特徴。求められる良質なブランド体験とは
服をECで買うのは非常識?2007年に創業したBonobos
Bonobosが創業したのは2007年です。以前ご紹介したEverlaneの創業が2010年なので、それよりも3年ほど前ということになります。
海外のデータプラットフォームサイトの数値を参考にすると、アメリカの小売売上に対するEC売上の割合は、10%強の現在に比べて2010年時点でおよそ半分の4%程度です。
商材を加味していないので単純に比較できませんが、2010年は今以上にECの伸び代が大きかったことがわかります。
Bonobosの創業はそのさらに3年前。しかも日用品ではなく、服を新しいアイディアで売ろうとしていたのですから、いかに先進的な挑戦だったかがわかります。
アメリカでも「服をECで買う」なんて、非常識なことだと思われたことでしょう。
ninjaがつくる最高の顧客体験(Zapposを参考に)
Andy Dunn氏はBonobosを成長させる過程において、数多ある企業の中でも特にZappos(ザッポス)を参考にしていたようです。
Zapposは靴をメインに取り扱うアパレルECサイトで、2009年にAmazonに買収されました。あらゆる要素が複合的に絡み合うECにおいて、Zapposは特に「カスタマーサービス」を重要視していました。
その点は、創業者であるTony Hsieh(トニー・シェイ)の本『顧客が熱狂するネット靴店 ザッポス伝説―アマゾンを震撼させたサービスはいかに生まれたか』を読むとよくわかります。
通常は社員の顧客対応の時間を計算して、なるべく短い時間で適切な対応をすることを考えますが、Zapposは違います。顧客に「ワオ!」 (感動)をもたらすことを第一義として、たとえ時間がかかっても、とにかく顧客が喜ぶサービスに尽力するのです。
BonobosもZapposにならい、自社のカスタマーサービスをninja(ニンジャ)と呼んで顧客体験を最高にしようと努力しました。
その結果、素晴らしい顧客体験を作ったブランドとして二度も賞を受賞しています。
レジのない店舗『Bonobos Guideshop(ボノボス・ガイドショップ)』
D2Cブランドが店舗を展開するのは今でこそめずらしくありませんが、先進的な事例を作ったのはBonobosです。(Warby Parkerも似た形式の店舗を出しています。)
Bonobosは『Bonobos Guideshop(ボノボス・ガイドショップ)』と銘打ち、試着のためだけのおしゃれな店舗をニューヨークにオープンしました。
買いたいものがあれば「ECサイトで購入して、自宅に配送」します。そのため、スタッフはレジ業務から解放されるとともに、目の前のお客様に集中することができます。
さらに事前に予約することで担当のスタッフがついてくれるため、お客様とより近い距離でのコミュニケーションをとることができます。
ちなみに国内ではFABRIC TOKYO(ファブリック トウキョウ)が、「店舗で採寸をして購入はECサイト」というBonobosに近い体験を提供しています。
FABRIC TOKYOについては以下の記事をぜひ参考にしてみてください。
参考:6つのD2C国内事例。ブランド成長のキーワードは「モノづくり×パーソナライズ」?
2017年、WalmartによるBonobos買収
順調に成長したBonobosは2017年、独立独歩の歩みを止めてWalmart(ウォルマート)によって買収されました。(2007年の創業から約10年という歩みでした。)
ちなみにAndy Dunn氏は、WalmartにD2C的な方法論や考え方を持ち込み、新たなブランド立ち上げに関わっています。(彼の言葉を借りるなら、DNVB的ですね。)
この買収劇についてはDIGIDAYの記事が詳しいのですが、「Bonobosのカルチャーは維持されている」という言葉を今でも信じれば、WalmartによるBonobosの買収は、どこかAmazonによるZapposの買収を彷彿とさせます。
ZapposもAmazonに買収されましたが、前述したカスタマーサービスを生み出す独特なカルチャーは毀損されることなく、Amazonとは一線を画した存在で今なおZapposらしさは健在です。
Bonobosも同様にWalmartのカルチャーに染まるのではなく、独自のカルチャーが今後も生き続けるのであれば、ninjaが提供するサービス然り、買収前と変わらず良い顧客体験を作り続けることでしょう。
さて、大手企業によるD2Cブランドの買収は今後も続いていく可能性があります。
Bonobosのように独自のカルチャーを残したまま存続し、Andy Dunn氏のように起業家が大手企業の資産を活用して新たなブランドを立ち上げるのは、一つのケーススタディとして非常に参考になります。
私たちサクボ編集部も、今後その辺りを注意深く見ていきたいと思います。
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<参考記事>
【ボノボス】アメリカ発 オンライン・メンズアパレルブランド Bonobos 成功物語 (ビートラックス (btrax) : freshtrax ブログ)
ウォルマート と ボノボス 、買収後の「両者繁栄」の道すじ:独立性維持でウインウイン(DIGIDAY)
※2:ecforce導入クライアント38社の1年間の平均データ / 集計期間 2021年7月と2022年7月の対比
※3:事業撤退を除いたデータ / 集計期間 2022年3月~2022年8月