この記事でわかること
DIRTY LEMON(ダーティ・レモン)を初めて知った時、そのキャッチーな名前に加え、調べても情報があまり出てこない秘密めいた感じに心惹かれるものがありました。
実はそういった感覚もあって、5つのD2C海外事例をご紹介した時も1つはDIRTY LEMONにしたのです。
ただその際は「DIRTY LEMONは一番売れているチャットボットECを展開するブランドです。」の文章とともに、オンラインとオフラインをうまく組み合わせた「ドリンクD2Cブランド」だとお伝えしました。
間違いじゃないのですが、このドリンクブランドの魅力はそれだけではありません。今回はDIRTY LEMONにまつわる5つの話とともに、その魅力に迫りたいと思います。
参考:6つのD2C国内事例。ブランド成長のキーワードは「モノづくり×パーソナライズ」? / 5つのD2C海外事例。若い世代が求める究極にユニークな顧客体験とは?
SMS(テキストメッセージ)を採用したDIRTY LEMON
なんと言ってもDIRTY LEMONは、購入方法がユニークです。日本ではLINEをうまく使うD2Cブランドが増えてきた印象ですが、DIRTY LEMONが採用したのは、なんとSMS(テキストメッセージ)です。
https://dirtylemon.com/checkout
ECサイトで購入しようとすると、このように電話番号を求められます。ここから先のやりとりはHEAPS Magazineに詳しいのですが、SMS内で住所や決済情報を送って購入する流れになっています。
後述する店舗でも同じ方法を採用していて、SMS(テキストメッセージ)を介して商品を購入します。必要な情報を入力すれば2回目以降は入力の必要がなく、他社のアプリも必要ないし、何よりSMS1本に絞っているので、極力コミュニケーションコストを下げることができます。
おそらく単価が低いドリンクを扱っていることもありますが、DIRTY LEMONは決済方法だけでなく、いろんなものをミニマルに設計しているブランドでもあるのです。
ミニマルなブランドサイト
「ミニマルな設計」と書きましたが、象徴的なのはDIRTY LEMONのブランドサイトです。
サクボではAWAYやWarby Parkerの事例を挙げつつ、ブランドストーリーの重要性を何度かお伝えしてきました。
しかし、DIRTY LEMONのブランドストーリーは見当たりません。基本的にはプロダクトを全面に押し出して、余計なコンテンツを省き、買う場所として提示しているようです。(ブランドサイト、というよりもECサイトと呼んだ方が良いかもしれません。)
探しても簡単に創業ストーリーが見つからないので、おそらくWarby ParkerのようにPR会社が入ってストーリーテリングに力を入れているというよりも、SNS(特にInstagarm)の毎日のコンテンツ更新をメインに、地道にファンを増やしているようです。
https://www.instagram.com/dirtylemon/?hl=ja
裏を返せば、Instagramでのコミュニケーションでエンゲージメントを十分に高められているため、サイトに訪れた顧客に改めて余計なコンテンツを読んでもらう必要はないのかもしれません。
※2020年4月時点で、DIRTY LEMONのInstagramは10.6万人フォロワーがいます。AWAYのInstagramは55.6万人ですが、コメント数を見ると引けをとりません。
ただのドリンクではなく「ウェルネス」ドリンク
サイトもさることながら、プロダクト自体のデザインもシンプルです。しかしラインナップは豊富で、現時点で11本のフレーバーが確認できます。(2020年4月時点)
表現が難しいのですが、DIRTY LEMONは単なるドリンクとして売っているというより、栄養を補えるドリンク、いわばウェルネスドリンクとして顧客に提案しています。
Facebookの公式ページには「Better Beverages To Drink Daily.」とあることからも、毎日づかいできるサプリメントのような存在を目指しています。
https://dirtylemon.com/drink/rose
それを証拠に、サイトには各フレーバーの効果効能が詳しく記載されていて、単なる味だけの訴求ではなく、例えば「ストレスを緩和する〜」といった機能性も紹介されています。
ウェルネスドリンクゆえに、ブランドイメージだけで売るのではなく、機能性も伝える努力が垣間見えるのです。
トライベッカの無人店舗(小さく点でアプローチする?)
DIRTY LEMONを語る上で外せないのが、無人店舗の存在です。マンハッタンはトライベッカと呼ばれる、ブルックリンからほど近いおしゃれなエリアにオープンしました。
大々的なプロモーションはせず、集客方法は既存顧客へのアナウンスとInstagramでの告知なので、すでにDIRTY LEMONへの好感度が見込める人に来てもらいたいという意図が感じられます。
購入方法は先述したSMS(テキストメッセージ)の方法なので、盗もうと思えば盗めるようですが、GLOBETRENDERという海外メディアの2019年3月の記事によると、2018年9月のオープンから数えて5%ほどしか盗難にあっていないとのことです。
この点も含めて簡単にまとめると、以下のような狙いがあったと想像できます。
- 大々的なプロモーションをしない。
- なるべくクローズドなコミュニケーションをとる。
それによって
- 対象をブランドのファンに近い人に絞る。
- ファンのエンゲージメントを高められる。
- ファンではないけどDIRTY LEMONに関心がある人をファンにする。
- 一方、盗難などのリスクをなるべく低くできる。
あるいは、もう少し踏み込んで想像すると、以下のような狙いがあったかもしれません。
- 無人店舗 ≒ 在庫保管スペースとして捉えて保管コストを下げる実験。
- 店舗販売は実質配送料がかからないため、原価率が高い新たなチャネルの開拓。
- 店舗を起点にSNSで生まれるコミュニケーションの創出。
さらに今後、画像解析やセンサーの技術と組み合わせれば、どんな人がどんな商品を手に取るかのデータがとれるので、新たな視点でマーケティングに活かすことができます。
ここまで整理すると、DIRTY LEMONは大きく面でアプローチするのではなく、小さく点でアプローチして顧客のファン心理を深める戦略だと言うことがわかります。
そのDIRTY LEMONがデータをマーケティングに活かす、いわば顧客が本当に望んでいるかわからない施策を展開するかは分かりませんが、可能性としては考えてみても面白いかもしれません。
DIRTY LEMONに一貫するのは「ミニマル」
「小さく点でアプローチ」といった話をしましたが、DIRTY LEMONに一貫していることを改めてキーワードにすると、やはり「ミニマル」です。
ブランドサイト然り、購入方法や無人店舗も然り、一貫して余計なことはせずに徹底的に無駄を省いたミニマルな設計やアプローチを繰り返しています。
特に海外はそうですがD2Cは華やかなブランドが多く、ブランドサイトも店舗も世界観を作り込むために多額の投資をしているケースが目につきます。
しかし、DIRTY LEMONのようにミニマルなブランドもまた、その中において逆説的に目立ち、独自の魅力を放っています。
どちらが良いかの話ではなく、あくまでブランドの資本力や思想によるところもありますが、国内ではまだ類を見ない稀有な事例であることは間違いないでしょう。
<参考記事>
THIS CASHIERLESS NEW YORK STORE ONLY SELLS HEALTH DRINKS VIA SMS(GLOBETRENDER)
Does Dirty Lemon Really Work? I Tried It For A Week — & Noticed This Difference(The Zoe Report)
The 'Dirty Lemon' Store Concept Is Questionable. But The Brand Is A Great Idea(Forbs)
テキストで購入するジュース、Dirty Lemonって?(FIGARO.jp)
Dirty Lemon Might Be Delicious, But Is It Good For You?(Refinery29)
自分以外に誰もいない店。社会実験か?健康ドリンクを並べる小さな“レジ無し”ショップ、支払いは〈自己申告制〉(HEAPS Magazine)

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