目次
※この記事は 時点の情報をもとに執筆しています。
通販の在庫管理の効率化とは、分散した在庫情報と手作業を整理し、少ない手間で正確に在庫を回せる状態をつくることです。
販売チャネルや商品数が増えるほど在庫の所在は分かれ、実在庫とデータのずれが起きやすくなります。
この記事では、非効率になる原因と見直しのサイン、効率化の5つのアプローチを整理します。
あわせて自社運用と外部委託の判断基準、システムの選び方、効果を測るKPIまで触れ、何から着手すべきか判断できる状態を目指します。
【この記事の主な内容】
- 通販の在庫管理が非効率になる主な原因
- 在庫管理の見直しが必要なサインのチェックリスト
- 在庫管理を効率化する5つのアプローチ
- 自社運用と外部委託を選ぶ判断基準
- 効率化の効果を測るKPIと改善サイクル
関連記事:ECサイトの在庫管理とは?適正在庫を実現する方法と安全在庫の計算・システム選びを解説|ecforce blog
通販の在庫管理が非効率になる主な原因

在庫管理の効率化を考える前に、どこで手間やズレが生まれているのかを切り分けると、打ち手を選びやすくなります。
通販では、販売チャネルの増加、手作業による更新の遅れ、担当者依存のルール、返品やセット商品による在庫変動といった要因が重なりやすい傾向があります。
ここでは、代表的な4つの原因を、EC特有の構造とあわせて整理します。
販売チャネルが増え、在庫の所在が分散する
BtoC-ECの市場規模は拡大が続いているとされ、出荷件数の増加に対して物流や倉庫の人手が追いつきにくい状況も指摘されています。
事業の伸びがそのまま作業量の増加につながる点は、在庫管理が非効率になりやすい背景のひとつといえます。
自社EC、モール、実店舗、卸のように販売経路が増えると、同じ商品の在庫情報が複数の管理画面に分かれていきます。
それぞれの在庫数を人の手で振り分けている場合、どこかの更新が遅れるだけで在庫情報の整合が崩れます。
在庫が残っているのに販売を止める機会損失や、在庫がないのに受注してしまう売り越しにつながります。
チャネルごとに在庫を按分して持たせる運用も、安全のために余剰を持つぶん在庫が寝やすく、キャンペーン時の偏りにも対応しづらい面があります。
在庫の所在が分散しているほど、欠品とキャンセル対応の両方に人手が割かれ、効率化の効果が見えにくくなる点に注意が必要です。
出典:
令和6年度電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました|経済産業省(2025年8月公表)
物流を取り巻く動向と物流施策の現状・課題|国土交通省
手作業・エクセル運用で更新にタイムラグが出る
エクセルや紙の台帳による管理は導入しやすい一方、入出庫のたびに人が入力する前提のため、現場の動きが数字に反映されるまで時間差が生まれます。
商品数や出荷件数が増えると、入力待ち、入力漏れ、転記ミスが積み上がり、実在庫と帳簿上の在庫が合わない状態が慢性化しがちです。
在庫状況を確認するために複数のファイルを開き直す運用になっていると、発注や販促の判断そのものが遅れていきます。
差異が出るたびに確認作業を足す対応では作業量が増え続けるため、更新の仕組み自体を見直す段階に入っていると判断できます。
エクセル運用をもう少し整えてから移行を検討したい場合は、エクセルでできる在庫管理表の作り方|テンプレート・関数・運用ルールまで徹底解説|ecforce blogが参考になります。
担当者依存でルールが共有されていない
在庫管理は例外処理の多い業務で、返品時の戻し方、破損品の扱い、セット商品の引き当て方など、判断が必要な場面が日常的に発生します。
こうしたルールが特定の担当者の頭の中にしかない場合、担当者の不在時に業務が止まり、代わりに入った人の判断で数字が変わることもあります。
属人化した運用は引き継ぎの負担も大きく、システムを導入しても現場の運用が揃わないため、効率化の効果が限定されやすくなります。
先に判断基準を文書化しておくと、仕組み化の効果が出やすくなる傾向があります。
返品・キャンセル・セット商品が在庫差異を生む
通販では注文後のキャンセルや返品が一定の割合で発生し、受注時に確保した引当在庫と実在庫が一時的に乖離します。
返送品の検品が滞ると、再販可能な在庫が数字に戻らないまま倉庫に積み上がり、欠品と過剰在庫が同時に起きることもあります。
セット商品や同梱プロモーションを扱う場合は、親商品の販売時に構成品の在庫をどう引き当てるかが決まっていないと、単品在庫の見え方が崩れます。
返品や特殊な構成をイレギュラーとして扱うのではなく、あらかじめパターン化しておくことが差異の抑制につながります。
返送物の処理を業務フローとして設計する観点は、D2C物流センターの返品業務フロー!上手な設計方法と重要性|ecforce blogで詳しく整理されています。
【チェックリスト】在庫管理の見直しが必要なサイン

効率化の打ち手は、いまの運用がどの段階にあるかで変わります。
以下の項目のうち、自社に当てはまるものがいくつあるかを確認してみてください。
- 在庫確認のために複数のファイルや管理画面を開いている
- 在庫の更新が1日1回以下で、リアルタイムに把握できていない
- 月次の棚卸差異が毎回発生し、原因の特定に時間がかかっている
- 売り越しによるキャンセルや謝罪連絡が月に数件以上ある
- 発注量を特定の担当者の経験や勘で決めている
- 商品コードや単位の付け方が統一されておらず、表記ゆれがある
- 返品・交換の処理ルールが明文化されていない
- 繁忙期になると出荷が翌日以降にずれ込む
- 出荷件数の増加に合わせて人員を増やす以外の選択肢がない
- セット商品やロット・賞味期限の管理を手作業で追っている
該当数の目安から、優先して取り組む領域を判断できます。
| 該当数 | 現状の見方 | 優先して取り組む内容 |
|---|---|---|
| 0〜2個 | 運用は概ね回っている | 現行ルールの文書化と商品マスタの精度維持。 棚卸差異と欠品率を定点観測し、悪化の兆しを早めに拾う |
| 3〜5個 | 運用改善で改善余地が大きい | 業務フローの棚卸しで二重入力と確認作業を削減。 商品コード・単位の統一と発注ルールの明文化を先に済ませる |
| 6〜8個 | 手作業の限界に近い | 在庫連携と在庫更新のシステム化。 入荷・出荷・棚卸のうち手戻りの多い工程から自動化する |
| 9個以上 | 体制そのものの見直しが必要 | システム化と外部委託(3PL)の並行検討。 定番商品の委託から試し、在庫データの管理責任と確認体制を決める |
該当数が多いほど大きな投資が必要になるわけではなく、データ整備のように投資を伴わない打ち手から着手できる場合もあります。
判定はあくまで優先順位づけの目安として使い、次章のアプローチと照らして進め方を決めるとよいでしょう。
通販の在庫管理を効率化する5つのアプローチ

在庫管理の効率化は、システム導入だけを指すものではありません。
業務フローの棚卸し、商品マスタやロケーションの整備、適正在庫と発注ルールの設計といった準備段階の打ち手が、その後の仕組み化の効果を左右します。
そのうえで、システムによる在庫連携の自動化、物流業務の外部委託という選択肢が加わります。
ここでは、着手しやすい順に5つのアプローチを整理します。
1. 業務フローを棚卸しし、ムダな工程を減らす
最初に取り組みやすいのは、入荷から出荷までの工程を書き出し、どこで時間と手戻りが発生しているかを可視化する作業です。
受注データの取り込み、在庫の引き当て、ピッキングリストの作成、出荷実績の記録といった工程を分解すると、同じ情報を複数の場所に入力している二重入力や、念のために行っている確認作業が見つかることがあります。
工程を減らす判断では、ミスの発生箇所と、1件あたりの処理時間の両方を見ると優先順位が付けやすくなります。
一方で、検品のように品質を担保する工程まで削ると誤発送が増えるため、削減対象と維持すべき工程は切り分けて考えると判断を誤りにくくなります。
倉庫側の工程を前提から確認したい場合は、物流センターの基本的な業務の流れ!EC担当者なら押さえたい物流センターの実務とは?|ecforce blogが参考になります。
2. 商品マスタ・SKU・ロケーションを整備する
在庫データの精度は、商品マスタの整い方に左右されます。
SKU(在庫管理上の最小単位)ごとに情報を一意に管理できる状態が出発点になります。
商品コード、品名、規格、単位、入数、バーコードといった項目の付け方が統一されていないと、同じ商品が別物として扱われ、集計のたびに突合作業が発生します。
商品識別に用いられるJANコードは、国際的にはGTINと呼ばれる標準の識別コードで、利用にはGS1事業者コードの登録が必要とされています。
標準コードを軸にマスタを整えると、集計時の突合作業が減ります。
保管場所(ロケーション)と棚番の命名規則も決めておけば、システム導入時のデータ移行や外部委託時の連携が進めやすくなります。
マスタ整備は効果が見えにくい工程ですが、後工程の自動化の前提条件になるため、先送りにすると効率化の効果が伸びにくくなる傾向があります。
出典:GS1事業者コード・GTIN(JANコード)とは|GS1 Japan(一般財団法人流通システム開発センター)
3. 適正在庫・発注ルールを決める
効率化の議論は「どれだけ在庫を持つべきか」を決めないまま進むと、欠品対策と在庫削減が両立しません。
需要のばらつきと調達リードタイムから安全在庫を見積もり、在庫が一定水準を下回ったら発注する発注点方式、あるいは期間を固定する定期発注方式のどちらを採るかを商品特性ごとに決めていきます。
定期購入(サブスク)を扱う場合は、継続会員数と解約率から将来の出荷見込みを置き、確保すべき在庫を先に押さえる考え方が判断材料になります。
計算式を細かく運用に落とす前に、まずは売れ筋と死に筋を分けてルールの対象を絞ると、現場に定着しやすくなります。
計算方法の詳細は、適正在庫の計算方法4選|注意点と維持するコツも解説|ecforce blogで確認できます。
4. システムで在庫連携・更新を自動化する
運用とデータが整ったら、在庫の更新と連携をシステムに任せる段階に進みます。
モールや自社ECの受注を自動で取り込み、在庫を一元管理して各チャネルに反映できれば、手作業の振り分けと更新の遅れをまとめて減らせます。
バーコード検品やハンディ端末と組み合わせると、出荷時の照合と在庫引き落としを同時に処理でき、誤発送の抑制にもつながります。
ただし、自動化は現状の運用をそのまま速くする仕組みではなく、ルールが曖昧な業務を自動化すると誤ったデータが高速に積み上がる点に注意が必要です。
自動化の対象範囲や進め方は、在庫管理の自動化とは?メリットやツール、導入時の注意点から活用事例まで|ecforce blogで詳しく整理しています。
5. 物流・保管を外部に委託する(3PL・フルフィルメント)
保管、ピッキング、梱包、発送といった物流業務を専門事業者に委託する3PLやフルフィルメントサービスは、自社で倉庫と人員を抱えずに出荷体制を整える選択肢です。
出荷件数の波が大きい事業や、コア業務に人員を集中させたい場合には向く選択肢です。
一方で、同梱物の差し替えや細かな流通加工には柔軟に対応しづらいケースもあり、委託範囲と費用構造の確認が判断のポイントになります。
在庫を持たない無在庫販売(ドロップシッピング)も在庫リスクを避ける手段ではありますが、仕入先の在庫状況に依存し品質確認も難しいため、在庫管理の効率化策としては補足的な位置づけと考えるのが妥当です。
委託先の比較軸や費用感は、今さら聞けないEC倉庫(EC物流倉庫)とは?メリットや特徴・費用・選び方まで完全網羅|ecforce blogが参考になります。
自社運用と外部委託、どちらを選ぶかの判断基準

自社運用と外部委託は優劣で決まるものではなく、出荷規模や商品特性によって適した形が変わります。
判断材料としては、月間出荷件数、SKU数(在庫管理上の最小単位の数)、同梱や流通加工の有無、繁閑差、社内の人員体制の5つが目安になります。
| 判断軸 | 自社運用が向きやすい条件 | 外部委託が向きやすい条件 |
|---|---|---|
| 月間出荷件数 | 少量、または自社の人員で吸収できる範囲 | 増加が続き、人員追加が追いつかない |
| SKU数 | 限定的で、管理ルールを維持しやすい | 多く、保管効率の設計が負担になっている |
| 同梱・流通加工 | 施策ごとに内容を変える運用が多い | 定型化でき、仕様を固定できる |
| 繁閑差 | 年間を通じて平準化している | セールや新商品で波が大きい |
| 人員体制 | 物流の知見を社内に蓄積したい | コア業務に人員を集中させたい |
判断に迷う場合は、全量をどちらかに寄せる必要はありません。
定番商品だけを委託し、限定品や同梱施策の多い商品を自社で扱う併用も選択肢になります。
委託後も在庫データの管理責任は自社に残るため、在庫情報をどの単位で受け取り、誰が差異を確認するかを取り決めておくと運用が安定します。
EC物流全体の流れと課題の整理は、EC物流とは?業務の流れや課題・解決方法について解説|ecforce blogが参考になります。
在庫管理を効率化するシステムの種類と選び方

システムを比較する際は、名称よりもカバーする業務範囲で捉えると違いが分かりやすくなります。
在庫管理システム、OMS、WMS、カート一体型はそれぞれ得意な領域が異なり、RPAやIoT、AIは既存の仕組みを補完する位置づけになります。
ここでは、種類ごとの役割、補完技術で対応できる範囲、選定時に確認したいポイントの順に整理します。
在庫管理システム/OMS/WMS/カート一体型の違い
在庫管理システムとは、入出庫と在庫数を記録し、在庫状況をリアルタイムに把握するためのシステムです。
OMS(Order Management System)とは、受注から出荷、入金までの注文情報を一元管理するシステムのことで、複数チャネルの在庫連動を含む運用に向いています。
WMS(Warehouse Management System)とは、倉庫内の入荷、保管、ピッキング、検品、出荷を管理するシステムで、庫内作業の標準化に効果があります。
カート一体型は、ECサイトの構築機能と受注・在庫管理を同じ基盤で扱う形態で、ツール間の連携作業を減らしやすい点が特徴です。
OMSの機能範囲や選定の考え方は、OMS(注文管理システム)とは?機能・メリット・選び方をわかりやすく解説|ecforce blogで確認できます。
庫内作業側の要件を整理したい場合は、WMS(倉庫管理システム)とは?EC物流の在庫管理を効率化する選び方と導入メリット|ecforce blogが参考になります。
| 種類 | 主なカバー範囲 | 向きやすい事業状況 | 留意点 |
|---|---|---|---|
| 在庫管理システム | 在庫数・入出庫の記録と可視化 | まず在庫の見える化から着手したい | 受注や庫内作業は別ツールとの連携が前提 |
| OMS | 受注〜出荷・入金、複数チャネルの在庫連動 | モールと自社ECを並行運営している | 倉庫内の作業指示までは担わない場合がある |
| WMS | 入荷〜出荷の庫内作業管理 | 自社倉庫で出荷件数が多い | ハンディ端末などの機器投資が伴う |
| カート一体型 | サイト構築+受注・在庫管理 | 自社ECを軸に運用を集約したい | 既存の基幹システムとの役割分担の整理が前提になる |
受発注業務側の効率化とあわせて検討する場合は、Web受発注システム完全ガイド|導入メリット・最新比較7選・失敗しない選び方を解説|ecforce blogも判断材料になります。
RPA・IoT・AIで補完できる範囲
RPA、IoT、AIは、在庫管理の主軸となるシステムを補完する技術です。
それぞれの意味と、在庫管理で対応できる範囲を整理します。
RPA(Robotic Process Automation)とは、PC上の定型操作をソフトウェアで代行する仕組みです。
画面操作や転記が中心の作業に向き、運用フローを大きく変えずに手作業を減らせます。
在庫管理では、受注データの取り込みやモール在庫の突合が対象になります。
IoT(Internet of Things)とは、モノにセンサーと通信機能を持たせ、状態をデータとして収集する技術です。
在庫管理では重量センサーが用いられ、棚や箱の重量変化から残量を推定します。
個数を数えにくい消耗品や梱包資材の管理に向く傾向があります。
AI(人工知能)とは、蓄積したデータから規則性を学習し、予測や判断を支援する技術です。
在庫管理では需要予測に使われ、販売実績や季節性から発注量の目安を示します。
ただし販売データの乏しい新商品では、精度が出にくい点に留意が必要です。
いずれも在庫管理の土台を置き換えるものではありません。
既存システムの不足を補う位置づけで検討すると、投資判断を誤りにくくなります。
選定時に確認したい5つのポイント
システム選定では、機能の多さよりも自社の商材とチャネル構成に合うかどうかが判断の分かれ目になります。
- 利用中のモール・カートと連携できるか(対応チャネルの範囲と更新頻度)
- 実店舗やPOSとの在庫連動に対応できるか
- セット商品、ロット、賞味期限、シリアル管理などの特殊要件に対応しているか
- API連携や外部ツールとの拡張性があるか
- サポート体制とセキュリティ対策が運用体制に見合っているか
在庫管理システムは顧客情報や売上データを扱うため、アクセス権限の設定、データのバックアップ、委託先を含めた管理体制の確認も選定時の観点に含めておきたいところです。
中小企業が押さえるべき対策の考え方は、公的機関のガイドラインで段階的に整理されています。
出典:中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン|IPA(独立行政法人情報処理推進機構)
【業務別】在庫管理を効率化する具体策

効率化の効果は、工程ごとに課題と打ち手を対応させると見積もりやすくなります。
入荷、出荷、棚卸、発注、返品の5工程について、よくある課題、打ち手、期待できる効果の順に整理します。
自社でどの工程に時間が取られているかを踏まえて読み進めると、着手順を決めやすくなります。
入荷|検品と登録のズレを減らす
入荷時の課題は、納品数と状態を正確に記録し、在庫データに反映させることです。
納品書と突き合わせて手入力する運用では、数え間違いや入力漏れが起きやすく、初期時点で実在庫とのズレが生じます。
打ち手としては、バーコードやQRコードの読み取りによる入荷登録、入荷予定データとの自動照合が挙げられます。
登録の手戻りが減ることで、入荷から販売可能になるまでの時間も短縮しやすくなります。
出荷|誤発送とキャンセルを抑える
出荷工程では、正しい商品を正しい数量でピッキングし、在庫を確実に引き落とすことが課題になります。
受注データと連携してピッキングリストを自動生成し、ハンディ端末で照合しながら在庫を引き落とす運用にすると、似た商品の取り違えを抑えられます。
複数チャネルの在庫反映が早くなるため、売り越しによるキャンセル連絡の削減にもつながります。
出荷作業では、商品本体だけでなくチラシやサンプルなどの同梱物も在庫として管理対象になります。
顧客セグメント別に同梱物を出し分ける場合は、封入ミスや旧版の混在が起きやすいため、出荷指示への反映方法まで含めて設計しておくと安全です。
同梱物の企画から運用・効果測定までの進め方は「通販の同梱物とは?目的別アイデアと費用相場・法規制を解説|ecforce blog」で解説しています。
棚卸|差異の原因を追える状態にする
棚卸の課題は、実在庫と帳簿在庫を照合し、差異の原因を特定することです。
バーコードスキャンによる棚卸データの即時反映や、RFIDを用いた一括読み取りは、複数商品の確認をまとめて進められる方式です。
重要なのは作業の速さだけでなく、差異が出た工程をさかのぼって確認できる履歴が残ることです。
年次の一斉棚卸に加えて、対象を絞った循環棚卸を取り入れると、差異の発見が早まる傾向があります。
発注|属人化した判断を仕組みに戻す
発注業務では、適切なタイミングと数量を判断できる状態をつくることが課題になります。
担当者の経験に依存した発注は、欠品と過剰在庫のどちらにも振れやすく、判断の根拠も共有されません。
先に決めた発注ルールをシステム側に登録し、在庫が発注点を下回った時点で発注候補が自動作成される状態にすると、判断が仕組みに戻ります。
自動化した場合も、季節要因や販促計画は人が補正する前提で運用すると精度を保ちやすくなります。
返品|再販可能在庫を早く戻す
返品工程の課題は、返送品の検品と在庫への戻し入れが滞り、在庫が数字に反映されないことです。
返品理由と状態のパターンをあらかじめ定義し、再販可否の判断基準と処理期限を決めておくと、在庫の滞留を抑えられます。
返品率や理由別の内訳を記録しておけば、商品説明やサイズ表記の改善といった前工程の対策にもつなげられます。
効率化の効果を測るKPIと改善サイクル

効率化の取り組みは、作業が楽になった実感だけでは継続の判断が難しくなります。
在庫と出荷の状態を数値で追い、改善の頻度を決めておくと、投資判断や次の打ち手を検討しやすくなります。
| KPI | 測り方の目安 | 見るポイント |
|---|---|---|
| 在庫回転率 | 期間の売上原価 ÷ 平均在庫金額 | 売れない在庫が滞留していないか。 商品カテゴリ別の差も見る |
| 欠品率 | 欠品SKU数 ÷ 全SKU数(期間平均) | 売れ筋商品で欠品が起きていないか。 欠品が集中する商品を特定する |
| 棚卸差異率 | 差異金額 ÷ 棚卸金額 | どの工程でズレが生じたかを辿れるか。 差異が繰り返されていないか |
| 出荷リードタイム | 受注から出荷までの平均所要時間 | 繁忙期に出荷が遅れていないか。 通常期との差を見比べる |
| 一人あたり出荷件数 | 出荷件数 ÷ 作業人時 | 出荷件数が増えても生産性を保てているか。 人員追加の判断材料にする |
最初からすべてを追う必要はなく、欠品率と棚卸差異率のように課題が直結する2〜3指標に絞ると運用が続きやすくなります。
改善サイクルは、週次で欠品と差異の発生状況を確認し、月次でKPIの推移を振り返り、四半期で在庫方針や委託範囲を見直す程度の頻度が目安になります。
過剰在庫が積み上がった場合は、値引きやセット販売による消化計画も含めて、在庫金額の推移とあわせて確認していく流れになります。
効率化を進める4ステップと費用の目安

効率化は一度に全社へ広げるよりも、範囲を絞って試し、結果を見て広げる進め方が現場の混乱を抑えやすくなります。
- 現状の可視化:工程ごとの作業時間、ミスの発生箇所、在庫差異の実績を洗い出す
- 目標設定:欠品率や棚卸差異率など、測れる指標で1〜2つの目標を決める
- 範囲を絞った試行:特定カテゴリや1拠点に限定して運用変更やシステムを試す
- 横展開:得られた改善点を反映し、対象商品や拠点、委託範囲を段階的に広げる
費用は選ぶ手段によって幅があり、クラウド型のシステムは月額利用料型が中心で、初期費用と月額費用の組み合わせで設計されることが一般的です。
これに加えて、ハンディ端末などの機器費用、データ移行や設定の費用、委託時の保管料や出荷手数料が発生します。
投資回収を見積もる際は、削減できる作業時間を人件費に換算します。
欠品による機会損失と過剰在庫の保管コストの減少分も含めて判断すると、効果を過小評価しにくくなります。
ITツール導入に対しては公的な補助制度が設けられている場合があるため、対象要件と公募時期を公式ページで確認しておくとよいでしょう。
出典:デジタル化・AI導入補助金(中小企業デジタル化・AI導入支援事業)|独立行政法人中小企業基盤整備機構
効率化で失敗しないための注意点

仕組みを入れても効果が出ない背景には、いくつか共通したつまずき方があります。
データ整備の先送り、現場での定着不足、例外処理の設計漏れ、移行時のデータ不整合は、いずれも導入後に発覚しやすい論点です。
ここでは、事前に押さえておきたい4点を整理します。
1.データ整備を後回しにしない
商品マスタや在庫数の精度が低い状態でシステムを導入すると、誤ったデータがそのまま各チャネルへ反映されます。
導入前に重複データや表記ゆれを整理し、単位や入数の考え方を揃えておくと、稼働後の差異対応を抑えやすくなります。
2.現場の運用として定着させる
機能を使いこなせるかどうかは、現場の作業手順に落とし込めているかで決まります。
入力タイミングや確認担当を決めたマニュアルを用意し、一定期間は手作業との並行運用で検証すると、切り替え時の混乱を抑えられます。
3.例外処理を設計しておく
返品、破損、誤出荷、セット商品のばらしといった例外は、運用開始後に発生しやすい領域です。
誰がどの権限で在庫を修正できるかを決めておかないと、修正履歴が追えず差異の原因が特定できなくなる点に注意が必要です。
4.乗り換え時の移行を計画する
既存システムからの乗り換えでは、移行対象データの範囲、切り替え日の在庫確定方法、並行稼働の期間を事前に決めておくと、移行時の混乱を抑えられます。
繁忙期を避けて移行時期を設定すれば、想定外の不具合が出た際も影響を限定しやすくなります。
通販事業者の在庫管理 効率化事例

効率化の進め方は、事業の規模や商材によって最適解が異なります。
ここでは、在庫の可視化によって過剰在庫の損失を抑えた例と、データの一元化によって集計業務を削減した例を取り上げます。
定期通販事業者|在庫の可視化と施策設計で過剰在庫を利益に転換
終売にともない約1万個の在庫が残る見込みとなったEC事業者では、既存会員へのオファー設計を段階的に検証しながら在庫処分を実施しました。
配信対象を分割して反応を確認し、改善を反映しながら次の配信に進める進め方により、結果として7,500個の在庫を消化し、負債となりかけていた約700万円を利益に転換したとされています。
在庫数と発注点、消費期限別の在庫状況を可視化しておくことが、こうした判断を早める前提になります。
施策の設計と検証の進め方は、700万円を利益に変えた在庫処分。とあるEC事業者の事例を徹底解説!|ecforce blogで確認できます。
参考|受発注データの一元化で集計業務を削減
通販以外の業種の参考例として、電子機器の設計・製造を手がける企業では、営業・購買・経理のデータが分散し、案件ごとの原価把握に1〜2週間を要していたとされています。
クラウド型の管理システムで受注から発注までを一元化した結果、当月の利益予測をリアルタイムで確認できる状態になり、手入力の手間と転記ミスの削減にもつながったと報告されています。
在庫単体ではなく、受注・発注・原価まで含めてデータをつなぐ発想は、通販事業の在庫管理にも応用できる考え方です。
出典:1~2週間かかっていた利益の集計作業がゼロに!利益をリアルタイムに確認できるようになった!|楽楽販売(株式会社ラクス)
通販の在庫管理の効率化に関するよくある質問

Q1通販の在庫管理は何から効率化すべきですか?
業務フローの棚卸しと商品マスタの整備から始めると、投資を伴わずに着手できます。
工程ごとの作業時間とミスの発生箇所を洗い出し、二重入力や表記ゆれを解消したうえでシステム化を検討する順序が、効果の出やすい進め方とされています。
Q2エクセル管理はいつまで続けられますか?
更新のタイムラグが実害につながっているかが判断の目安になります。
在庫確認に複数ファイルを開いている、棚卸差異が毎回発生する、売り越しが月に数件あるといった状態が続く場合は、システム化の検討段階に入っていると考えられます。
Q3在庫管理システムとOMS・WMSはどう使い分けますか?
カバーする業務範囲で使い分けます。
在庫の見える化が目的なら在庫管理システム、複数チャネルの受注と在庫連動が課題ならOMS、自社倉庫の庫内作業の標準化が課題ならWMSが軸になります。
Q4費用はどれくらいかかりますか?
手段によって幅があり、クラウド型は初期費用と月額費用の組み合わせが一般的です。
機器費用、データ移行費用、委託時の保管料や出荷手数料も含めて総額を見積もり、削減できる作業時間と機会損失の減少分と比較して判断するとよいでしょう。
Q5小規模な通販事業者でも効率化できますか?
規模が小さいほど、ルールの統一とデータ整備の効果が早く現れる傾向があります。
システムを導入する場合も、対象を主要チャネルや売れ筋商品に絞って始めれば、運用負荷を抑えながら効果を確認できます。
Q6効率化の効果はどの指標で判断すればよいですか?
欠品率と棚卸差異率、出荷リードタイムの3つが起点になります。
在庫金額の削減を狙う場合は在庫回転率、人員体制の見直しを検討する場合は一人あたり出荷件数を加えると、判断材料が揃います。
在庫と受注を一元管理できるecforce

複数チャネルの在庫と受注を同じ基盤で扱えると、在庫の振り分けや更新にかかる手作業を減らしやすくなります。
株式会社SUPER STUDIOが提供するecforceは、EC販売、店舗販売・OMO、データ統合・分析までをカバーするAIコマースプラットフォームです。
在庫や顧客データを同じ基盤で扱いながら、運用を進められる設計になっています。
また、導入企業数1,500以上(2024年10月末日時点の契約件数)、利用継続率は99.7%という実績があります。
複数チャネルの在庫を一元管理できる
自社EC、モール、実店舗といった複数の販売チャネルで発生するデータを同一基盤で扱えるため、チャネル間の在庫連携にかかる作業を集約できます。
在庫の状態と顧客データを同じ環境で確認できることは、販促計画と在庫方針をつなげて考えるうえでも判断材料になります。
受注から出荷までの処理を効率化する
受注データの取り込みから出荷指示までを同じ仕組みで扱えると、ツール間の転記や二重入力を減らせます。
売上を伸ばすためのCVR・LTV向上機能も標準で備えており、受注件数の増加と運用負荷の抑制を並行して検討できる構成です。
売上分析や施策の企画・制作をチャットから依頼できるecforce AIも提供されています。
また、機能アップデートは月に10〜20個のペースで行われています。
導入から運用までを支援する体制
ecforceではシステムの提供だけでなく、契約前の要件定義からサイト開設、リリース後のシステムサポートまでをカバーする体制が用意されています。
新規ブランドの立ち上げ支援やデジタルマーケティング支援を行うecforce consulting、ユーザー限定コミュニティ「ecforce compass」もあり、社内に専任者がいない場合の進め方も相談しながら整えられます。
まとめ|小さく始めて指標で改善を続ける在庫管理へ

通販の在庫管理は、業務とデータの整理、仕組み化(システムまたは外部委託)、指標による改善サイクルの3段階で捉えると、着手順を決めやすくなります。
チャネルの分散、手作業による更新遅れ、属人化したルール、返品やセット商品による差異のうち、自社でどれが主要因になっているかを見極めることが出発点です。
手段を選ぶ場面では、出荷件数、SKU数、同梱や流通加工の有無、繁閑差、人員体制の5つを比較し、自社運用と外部委託のどちらに寄せるか、あるいは併用するかを判断していきます。
システムを検討する際も、機能の多さではなく、既存チャネルとの連携範囲と商材特性への対応が判断材料になります。
次の一歩としては、チェックリストで該当項目を確認し、欠品率や棚卸差異率のように測れる指標を1つ決めて現状値を把握することから始められます。
数値の変化を見ながら対象範囲を広げていけば、担当者が変わっても回る運用に近づき、事業の成長に合わせて在庫管理の形を更新し続けられる体制につながります。
※2:ecforce導入クライアント38社の1年間の平均データ / 集計期間 2021年7月と2022年7月の対比
※3:事業撤退を除いたデータ / 集計期間 2022年3月~2022年8月
